当センター では、平成20年より野生動物の森林利用状況及び生態を観察するため、林道沿いに赤外線センサーカメラを設置する調査を行っています。
この調査は、6~7月と9~10月の間で年2回行っており、林道を利用する様々な動物たちを昼夜問わず撮影することが可能で、普段は見られない動物たちの姿を見ることができ、毎回楽しみな調査の一つとなっています。
今回は、10月の調査結果をほんの一部ご紹介します。

この子は、角が生えているのでオスジカです。
また、この角は細く、枝分かれがないので若い個体かと思われます。
ちょっとカメラ目線で、どうやら自動撮影装置に気づいた様子です。

丸丸としたキタキツネです。
何かいい物でも落ちていたのでしょうか?

こちらも自動撮影装置の常連組、ヒグマです。
首回りにツキノワグマのような白い模様が入っているので今後の個体認識に役に立ちそうです。

そして、この月の輪模様入りのヒグマは後日、別の地点の自動撮影装置にも写っているのが確認できました。あちこちへのパトロールで忙しいのでしょうか?
なわばりの広さがうかがえます。

こちらは夜間に撮影されたメスのエゾシカです。
動物の目にフラッシュ(ライト)が当たるとキラッと反射するのは夜行性の動物だけだそうです。

次は今回の調査でとても興味深いものです。
何が写っているか分かりますか?
これは、左端中央にエゾリスが背を向け、倒木に生えたキノコ(おそらくヌメリスギタケ)を食べているところです。
調査を始めた日、この倒木にキノコは全く生えていませんでしたが、日が経ち、この地点での撮影枚数が増えることによってキノコは、にょきにょきと増殖、成長し、このエゾリスが登場した次の写真では、キノコは全くなくなっていたのです。このエゾリスがこの倒木に生えるキノコをどれ位食べたのかは分かりませんが、キノコも大事な食料の一つとなっているようです。

エゾリスがキノコを捕食してから数日後の写真にはヒグマが写っていました。
先ほどのエゾリスが乗っていた倒木にキノコは一つもありません。

反省すべき一枚です。
真ん中辺りにエゾクロテンが写っているのですが、写真がクリアに撮れていません。
これは、カメラを保護するために包んでいる透明フィルムの張り方が緩くて、フィルムのシワが写ってしまっているためです。
自動撮影装置の設置は、丁寧さが要求される調査です。
些細な異変に気がついていかないと、せっかくの調査が無駄になってしまうこともあります。

調査地の林道内で工事作業中の際、通りかかった重機も写っていました。
この他、素早く走り抜ける乗用車なども撮影されており、動物だけではなく人間の利用も多い事が分かりました。
このように自動撮影装置を使って調査することによって、林道が動物の生活の一部として利用されていることが分かり、さらに動物数の増減や外来種の侵入状況なども確認できるようになってきています。
今後もこの調査を続け、林道内における生物多様性を見守っていきたいと思います。
(知床森林生態系保全センター 小林 三希子)
防鹿柵の補修を行っています。(11月27日)
知床半島の国有林には、エゾシカの樹皮食いなどの被害から守るため、国立公園内も含め、防鹿柵等が設置されており、当センターでは、そのうちの5箇所について管理を行っています。
防鹿柵は、金網と鉄柱で構成されて頑丈にできていますが、倒木などが金網の上に落ちてしまうと、防鹿柵は大きなダメージを受け、柵の中に鹿が入り込んでしまうかもしれないので、当センターではGSSや職員で壊れた防鹿柵が発生した際、補修作業を行っています。

補修前

補修後
今年は、10月の爆弾低気圧と台風23号の影響もあり、どこの防鹿柵も盛大に壊れ、補修作業で大忙しでした。

潰れた金網は、ラチェットなどを多数、同時に引っかけ少しづつ上げていきます。

つり上げられた金網は手作業で伸ばしていきます。

最後に金網とワイヤーを金具で固定して終了です。

補修前

補修後
最初、地面まで落ちて潰れた金網を見て、途方にくれていましたが、皆で知恵を出し合いながら補修作業に没頭し、少しずつ形になっていきました。補修箇所もあと数カ所を残すのみとなりました。世界遺産の名に恥じない森を守っていけるよう、今後も従事していきたいと思います。
おまけ・

防鹿柵を注意深く見ていると・・・
金網にヒグマの毛のような物が挟まっているのを時々見かけます。
これは、おそらく・・・
金網の下を掘って柵内に侵入した痕跡かと思われます。
柵の補修中にヒグマと遭遇することはありませんでしたが、防鹿柵の中に何か興味があったのでしょうか。
(知床森林生態系保全センター 小林 三希子)