上川南部森林管理署 奥落合森林事務所 森林官 宮田 英明

経歳鶴（けいせいかく,標高930m）から十勝岳連峰と下ホロカメットク（標高1668m）を望む

 上川南部森林管理署奥落合森林事務所は、空知郡南富良野町にあります。
南富良野町は、北海道の中心である富良野市の南に位置し、人口約3千人の小さな町で、上川地方の最南部に属しています。

南富良野町を流れる空知川水系には、環境省のレッドリスト絶滅危惧IB類（EN）に指定されているイトウが生息し、2009年に全国で初めて「イトウ保護管理条例」が制定され、国有林においても生態に配慮した森林施業を実施しています。

その他にも、北海道レッドデータブック留意種に指定されているエゾサンショウウオなど貴重な動植物が生息しており、豊かな森林の栄養分が起点となって、河川の多種多様な生態系を形成しています。

エゾサンショウウオ 

奥落合森林事務所は、管理署に併設された合同森林事務所となっており、幾寅・トマム・落合・奥落合・金山の5森林事務所で管理署全体の約半分に相当する6万1千ヘクタールの広大な国有林野を管理経営しています。

その中で、奥落合森林事務所では、十勝岳連峰の南端に位置しシーソラプチ川の源流となっている上ホロカメットク（標高1920m）から国道38号線の狩勝峠までの南北約30kmを帯状に15千ヘクタールの森林を管轄しています。

当事務所部内は、大雪山系と日高山脈の中間に位置することから、管理面積の約30％が林野庁の「緑の回廊」に指定されています。

林野庁では、原生的な森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護などを目的として、区域を定め禁伐等の管理経営を行うことにより保護を図る森林を「保護林」として定めており、大雪山系及び日高山脈が森林生態系保護地域として設定されています。

その保護林を相互に連携させ、森林生態系の構成者である野生動植物の多様性の保全のために、その移動経路を確保し、生息・生育地の拡大と相互交流を促すために設けたものが「緑の回廊」です。

「緑の回廊」

当森林事務所部内の緑の回廊対象林班においても、設定前は木材を伐採・搬出し、木材生産を主体として事業を行っていましたが、緑の回廊になった現在は下刈りなどの造林事業を中心とした事業のみを行っています。

こうして、木材生産を主体とする事業から、自然環境維持、野生動植物保護を主体とする事業に転換することにより、現在でもヒグマや希少野生動植物を確認することが出来ます。

 狩勝峠に現れたヒグマ

今年は名古屋で生物多様性の保全を主題としてCOP10が開催され、来年は国連の定める国際森林年として、森林の持続可能な経営・保全・開発が国連で話し合われるなど、森林の多面的な機能、森林と人間とのつながりが国際レベルで議論され、森林の果たす役割に対する期待はより高くなるものと考えます。

私の管轄する森林は、世界の森林の面積の1％にも満たない面積ではありますが、国有林を自然環境に応じて適切に管理・保全していくことで、緑豊かな森林は多様な動植物を育み、森・川・海が一体となっておりなす多様な生態系の保全の一翼を担えればと考えています。

上川南部森林管理署 奥落合森林事務所 空知郡南富良野町幾寅栄町 電話0167-52-2772

後段：基幹作業職員3名 前段：竹内森林官（向かって左）、宮田森林官（中央）、伊藤森林官（向かって右）