大滝森林事務所は、札幌南端に隣接する伊達市大滝区に所在し、国有林は集落を包囲するような形で位置しています。
伊達市は温暖な気候と小雪地帯であることから「北海道の湘南」などと称されることがありますが、当地はその真逆と言える気象条件で、周囲を山地に囲まれ当森林事務所地点での標高が約370m。
そのため、寒冷かつ豪雪地帯で、農林業には非常に厳しい条件の土地柄です。
大滝区は、元々は「大滝村」と言う、独立した自治体でしたが、2006年3月に伊達市へ編入され、大滝村区域は伊達市の地域自治区「大滝区」となりました。飛び地合併と言うこともあり、住民にとっては生活などそれほど変化はないようです。
山深いゆえ、色々と生活に難点が有るのも事実ですが、逆に家の周囲には、思わぬ訪問者が現れたりで、私にとっては楽しい側面も多々あります。

思わぬ訪問者(エゾフクロウ)
大滝区内には北海道自然100選にも選ばれた、胆振管内最高峰のホロホロ山(1,322m)や、徳舜瞥(トクシュンベツ)山(1,309m)は、札幌からも日帰りで登山に挑め、帰りには有名な北湯沢温泉につかる事もできるとして人気の山です。
この両峰は山頂が尾根で繋がっており、一登りで二度美味しい山と言うことでの人気もありますが、登山のみならず、春にはチシマザクラやナンブソウ、初夏にはオガラバナにウコンウツギ、ゴゼンタチバナなどなど、多様な花を楽しむこともできます。時期として最も花が楽しめるのは6月中旬です。

チシマザクラ
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オガラバナ
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ウコンウツギ
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ゴゼンタチバナ
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当地は大都市札幌に隣接しながらも、いわゆる僻地であり、それゆえに幸か不幸か人手が入りえない山深い個所も多いため、植生や動物の生態については資料に乏しいのが現状です。
一見豊かな自然環境に見える大滝区ではありますが、標高が高く厳しい条件のためか、哺乳類ではエゾクロテンや各種コウモリは確認できていますが、ヒグマは少ないようで、痕跡も殆ど確認できません。

コテングコウモリ
爬虫類ではニホンマムシが確認できないため、ヒグマと合わせて、私にとっては刺激に欠ける生態系でもあります。

シマヘビ黒化型(俗に、カラスヘビとも言われます)
また、当地は雪深いにも関わらず、近年ではエゾシカの流入が目立ち始めています。
いわゆる森林被害と呼べるようなものはありませんが、林道縁ではエゾシカが食べないイケマ(つる性の多年草で山地の林縁に自生。根はアルカロイドを含み毒性)が目立ち始めるなど、植生の変化が見られてきており、今後の要観察事項であるなと感じております。
私は、水系にも興味ありますが、ニホンザリガニはいまだ確認できていません。魚類に関しても上流すぎるためか、自然が溢れる環境でも、魚影が濃いと言えるような状況ではありません。しかし、個体数は少ないようですが準絶滅危惧種であるオショロコマは確認したところです。
以上のように、現在大滝区内の希少種の生息把握を行い、その資料作りを行っています。どこまで作り上げられるかは分かりませんが、実のあるものに仕上げたいなと打ち込んでいます。
大滝区は残念ながら過疎化により、学校の統合などが行われ、身近に学校などは無く、なかなか地域の人たちに森林について知ってもらえる場や機会が乏しい現状にあります。
しかしながら、大滝や伊達市と言う行政区の概念のみにとらわれない活動により、多くの人たちに森林について知っていただける機会が得られるよう努力していきたいと考えています。