希少野生生物種保護管理対策
希少野生生物種保護管理対策
国内には、野生の動物・植物が数多く生息・生育しています。野生動植物は、人間の存在基盤である生態系の基本的な要素で、現在のみならず将来の人間生活に欠かすことのできない役割を果たしています。しかし、これらの野生動植物の中には、密猟・盗掘、生息環境の変化、様々な開発などにより、個体数が急激に減少し、絶滅の危機に瀕している種が数多くあります。
そのような国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、平成5年度に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が定められました。この中で、本邦における生息生育状況が人為的影響により存続に支障を来す状況が生じていると判断される種(国内希少野生動植物種)が指定されています。
このうち、国の行政機関(農林水産省、環境省、文化庁等)、地方公共団体などが主体となり、個体繁殖の促進、生息地または生育地の整備、その他の国内希少種の保存を図るための保護増殖事業を行うものがあります。
関連リンク:希少な野生動植物種の保全(環境省)、国内希少野生動植物種一覧(環境省) 、保護増殖事業(環境省)
九州森林管理局の対策
九州森林管理局では、上記保護増殖事業に基づき、国内希少野生動植物の中から管内国有林に生息する14種について、独自に「希少野生生物種保護管理対策」に取り組んでいます。具体的には、生息地等の巡視、環境管理、調査、データ整理等の保護対策を実施しています。
(1)野生動植物の保護・保全等のために行う「巡視事業」
(2)生息・生育環境の維持・整備に必要な森林等の保護管理手法の調査を行う「保護管理対策調査」
(3)生息・生育環境の維持・整備、採餌場の確保などを行う「生息地等環境管理」
(4)その他、希少野生動植物の保護に資するための普及・啓発等の事業
(1) 野生動植物の保護・保全等のために行う巡視事業
事業の実施地域においては、森林管理局長が任命した自然保護管理員や森林管理署の森林官等の職員が、種が確認される時期を中心に巡視を実施し、生息状況の把握や入林者への保護の呼びかけ等を行い、種の保護に努めています。
![]() 生息状況を確認する自然保護管理員 |
![]() ツシマヤマネコの糞 |
また、種の保護や国有林内の事業の普及啓発のために標識設置及びその管理、巡視路の作設や修理等を行っています。
![]() 国道沿いに標識を設置 |
![]() 巡視路に標識を設置 |
そのほか、効率的に巡視を実施するために次のようなことも実施しています。
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自動撮影カメラを設置している地域(対馬、奄美大島、西表島、沖縄本島北部)
水飲み場や動物の通り道に設置した自動カメラ
(対馬・西表島)
撮影された野生動物
(対馬地域)
![]() コウライキジ |
![]() ツシマヤマネコ |
![]() ツシマテン |
(奄美大島地域)
![]() オオトラツグミ |
![]() オーストンオオアカゲラ |
![]() アマミヤマシギ |
![]() アマミノクロウサギ |
(沖縄本島北部地域)
![]() ヤンバルクイナ |
![]() アカヒゲ |
![]() キジバト |
![]() フイリマングース(特定外来種) |
![]() ノグチゲラ |
![]() シロハラ |
![]() ヤマガラ |
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委託巡視員との巡視検討会
(沖縄森林管理署)
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小学生等を対象に自然観察会を実施
(熊本南部森林管理署)
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ヤンバルクイナの事故防止の呼びかけの様子
(沖縄森林管理署)
(2) 生息環境の維持・整備に必要な森林等の保護管理手法の調査
森林等の保護管理手法等を検討するために、ゴイシツバメシジミ(熊本南部森林管理署管内)について、保護管理対策調査を委託により実施しています。
令和6年度委託業務の様子
(熊本南部森林管理署管内ゴイシツバメシジミ希少個体群保護林)
(3) 生息地等環境管理
種の適正な保護管理を推進するために、森林施業等の実行による効果が期待される箇所については、事業実施地域内において次の事業を実施しています。
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本数調整伐を行った跡に、広葉樹を植栽
(長崎森林管理署)
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水飲み場に出現したツシマヤマネコ
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![]() 管理小屋 |
![]() プランターへの移植 |
樹木への移植
(4) その他
事業を実施するためには環境省や市町村などの関係機関との連絡調整も必要なことです。そのため、お互いに情報交換等を行いながら円滑な事業の実施に努めています。
また、一般市民の方々への普及啓発のために、事業を紹介したパンフレットやパネルの作成、各種イベント等の場での配付・掲示及び小学生等を対象に自然観察会を行うなど、本事業に対する理解と協力を得ることにも努めています。
普及用の各種クリアファイルとパンフレット
希少動物の観察をする小学生(熊本南部森林管理署)
九州森林管理局で事業を実施している種
(種名をクリックすると詳細情報がご覧いただけます)
実施署等 | 地域 | 種 | 実施年度 |
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長崎 | 対馬 | ツシマヤマネコ | 巡視:平成5年度~,継続中 |
ツシマウラボシシジミ | 巡視:令和3年度~,継続中 | ||
熊本 | 内大臣地区 | ゴイシツバメシジミ | 巡視:平成8年度~,継続中 |
熊本南部 | 市房地区 | ゴイシツバメシジミ | 巡視:平成10年度~,継続中 |
鹿児島 | 奄美大島 | オオトラツグミ | 巡視:平成6年度~,継続中 |
オーストンオオアカゲラ | 巡視:平成6年度~,継続中 | ||
アマミヤマシギ | 巡視:平成8年度~,継続中 | ||
アマミノクロウサギ | 巡視:平成17年度~,継続中 | ||
沖縄 | 西表島 | イリオモテヤマネコ | 巡視:平成5年度~,継続中 |
カンムリワシ | 巡視:平成9年度~,継続中 | ||
本島北部 | ヤンバルテナガコガネ | 巡視:平成10年度~,継続中 | |
ノグチゲラ | 巡視:平成10年度~,継続中 | ||
ヤンバルクイナ | 巡視:平成14年度~,継続中 | ||
オキナワトゲネズミ | 巡視:令和2年度~,継続中 | ||
ケナガネズミ | 巡視:令和2年度~,継続中 | ||
詳細情報の参考文献 改訂 日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック- 鳥類 / 環境省編 2002年8月 改訂 日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック- 哺乳類 / 環境省編 2002年3月 日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック- 脊椎動物編 / 環境省編 1991年4月 日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック- 無脊椎動物編 / 環境省編 1991年8月 沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 -レッドデータおきなわ- / 1996年3月 日本の天然記念物 / 講談社 1995年3月 |
お問合せ先
計画保全部計画課
担当者:生態系保全係
ダイヤルイン:096-328-3612