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九州森林管理局

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    ツシマヤマネコ

    ツシマヤマネコ


    食肉目ネコ科  Prionailurus bengalensis euptilurus  絶滅危惧IA類,天然記念物

    ツシマヤマネコ
    撮影:山村  辰美  氏

    生息地

       ツシマヤマネコは、国内では長崎県対馬のみに生息しています。
    日本に生息している野生ネコ科2種のうちの1種です。もう1種は、沖縄県西表島に生息するイリオモテヤマネコです。

    形態

       ツシマヤマネコの体重は、雄約3~4kg・雌約2.5~3.5kgとされ、雄がやや大型です。イエネコと大体同じ位ですが、一回り大きいです。体の色は、イリオモテヤマネコに比べて薄く、栗色からクリーム色で、輪郭の不鮮明な褐色の斑紋があります。尾が太くて長い、耳の先は丸く、裏側には黒色の中に白斑があるのが特徴で、額には褐色と白色の明確な縦縞があります。

    食べ物

       ツシマヤマネコは、小型哺乳類・鳥類・両生類・は虫類・昆虫類などさまざまな動物を餌にする完全肉食です。特に、年間を通じて小型ほ乳類(ネズミ類)を捕食します。上島には、御岳ツシマヤマネコ希少個体群保護林があり、ツシマヤマネコの生息も確認されています。この保護林に広く生息しているネズミ類はアカネズミとヒメネズミが挙げられ、アカネズミは下層植生の発達した環境に強い選好性を示し、ヒメネズミは高木層が発達しリター層(落葉落枝)が厚い環境を選好しているとされていますので、これらを捕食していると考えられます。この他に草本類を付随的に食べますが、(イネ科植物が糞に混じることがある)これは、消化を助けるための行為と考えられています。
       糞を分析した報告がありますが、その結果から、年間を通して6~8割がネズミやモグラなどを食べ、残りは、春の渡りの時期には鳥を、田に水が張られたときはカエル類を食べるなど季節や生息環境に応じて、様々なものを食べるとされています。季節的には、夏場にネズミ類の割合が高く、冬場はツグミ類等鳥類の割合が高くなるとのことです。これは、ツグミやアトリ渡りをする鳥たちが冬場に渡ってきて、雑木林などの林床で採食することとも関係していると考えられているようです。(参考資料:井上朋子(1972)ツシマヤマネコの糞内容物から見た食性、哺乳動物学雑誌55(5))

    生息している場所

       生息場所は、比較的標高の低い地域の谷間・林縁部・山腹斜面、落葉広葉樹林や草地などで生活しています。集落の近くの開けた場所や海岸近くにも姿を見せることがあります。
    ツシマヤマネコが活動する環境は、コナラ林・ススキ草原・耕作地などに集中しており、農道・林道なども頻繁に利用しています。また、一日のうちで、特に日没前後に多く活動する傾向があります。ツシマヤマネコの行動圏は雌で1キロメートル~2キロメートルの範囲で生活し、定住性が強いとされています。又、冬季は、雄は雌の7-8倍拡大するとされています。これは、この時期が、発情期で繁殖行動のため拡大するのではないかと考えられています。

    個体数

       生息個体数は、1960年代頃まではほぼ対馬全島に分布し、その数は250-300頭であったとされています。
    しかし、1994~1996年の環境庁の調査では、70 -90頭という結果になるなど減少傾向にあり、急減したとされています。
       統計的平均値では全生息頭数は、約90頭程度とされています(95%信頼区間   72.5~109.24)。対馬の上島では全域に生息しているとされ、最近まで、上島だけしか確認されていなかったのが下島でもわずかに確認されるようにもなっています。ただし、この生息確認地域は連続しておらず、上島からの分布拡大によるものと言われており、依然として厳しい状況に変わりありません。

    保護管理する対象地域について

    希少野生生物種保護管理事業(巡視事業、生息・生育育環境の維持・整備に必要な森林等の保護管理対策調査、生息地環境管理、普及啓発等)は次の保護林及びその周辺で実施されています。

    御岳ツシマヤマネコ希少個体群保護林

       佐護御岳国有林・瀬田御岳国有林からなる「御岳ツシマヤマネコ希少個体群保護林」(145ha)は、ツシマヤマネコの繁殖地・生息地等の保護や学術研究などを目的に、1993年4月に林野庁が指定しました。
    この保護林は、対馬上島のほぼ中央部に位置する雄岳・雌岳・平岳の3峰を中心にした地域で、対馬では数少ない針広混交の老齢天然林です。「壱岐対馬国定公園」「御岳鳥獣保護区」にも指定されています。

    お問合せ先

    計画保全部計画課

    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612