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九州森林管理局

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    御岳(みたけ)ツシマヤマネコ希少個体群保護林

    1.概要

       当保護林の保護・管理の対象個体群は、ツシマヤマネコの生息地 であるモミ、アカガシ等の針広混交林を構成する種。保護林設定管理要領における「希少化している個体群」に該当。
    本保護林は、対馬上島の北部の仁田川中・上流域と佐護川上流域に挟まれた山地部の尾根雄岳(479m)を中心に、雌岳(標高453m)及び平岳(標高457m)の3峰が連なる御岳山系に位置し、尾根部と北側、南側の中傾斜の斜面部(標高100m~480m)に分布する、モミ及びアカガシ等からなる林齢145年生以上の針広混交林。地質は新生代古第三紀の泥質岩(頁岩)。
       ツシマヤマネコは、国内希少野生動植物種の指定を受けており、環境省の2013(平成25)年調査時点では、本保護林及びその周辺には、少なくとも3頭程度の生息と繁殖が確認されている。これらの個体は山地から低地までを含む広範囲を利用しており、本保護林も貴重な生息地となっている。
       行動圏とコアエリア内の利用環境調査によると、植生では広葉樹と針葉樹林の割合が高く、次いで草地、農地・水田、集落・人工裸地の順となり、地形では谷部が最も高い割合を示し、次いで斜面部、尾根部の順に低くなる傾向があるとの報告があり、メスの行動圏は餌資源量によって影響を受け、オスの行動圏は資源量に加えて繁殖可能なメスの存在が影響するといわれている。
       ツシマヤマネコの主要なエサは小型ほ乳類(ネズミ類)で、本保護林に広く生息しているネズミ類としてはアカネズミとヒメネズミが挙げられ、アカネズミは下層植生の発達した環境に強い選好性を示し、ヒメネズミは高木層が発達しリター層(落葉落枝)が厚い環境を選好している。鳥類もツシマヤマネコにとって重要な餌資源であり、特に餌資源が不足する冬季に捕食可能な鳥類は重要である。本保護林を含む国有林一帯は鳥類70種以上が生息すると言われ、この内22種がここでの繁殖が確認されている。
       以前実施した保護林モニタリング調査(2008年)では、老齢のモミとアカガシの極盛相となっており、下層植生は全体として草本が少なく、落葉で一面が覆われていた。
       2019(令和元)年度のモニタリング調査では、2019年9月の台風被害と思われる尾根筋に生育するアカガシやモミの大径木の倒伏が確認され、高木層の自然枯損も確認された。稚樹や実生個体のモミ、ツガ、ヒメシャラ、ウラジロガシ、ミズメ、アサダが確認されたが、草本層の植被率は極めて低く貧弱又はシカの忌避植物が優占していた。シカによる植生被害レベルは2から3へと過年度(2013年)より高くなっていた。ツシマヤマネコは自動撮影カメラで撮影され、当保護林における生息が再確認された。
       また、シカとイノシシの撮影頻度が高く、ツシマヤマネコの餌資源である鳥類やネズミ類も確認され、鳥類では希少種としてカラスバトや旅鳥のマミチャジナイ(対馬では留鳥、繁殖地とされる記載あり)が確認され、ツシマヤマネコの冬の餌資源となる留鳥のシロハラ、その他のツグミ類が多く確認された。
       当保護林は、大正12年にキタタキ(キツツキ科)生息地として「天然記念物」に指定されたが、キタタキは絶滅し、幻の鳥になったため、昭和47年に「御岳鳥類繁殖地(史跡名勝天然記念物)」に名称を変更された。また、この外に「壱岐対馬国定公園」及び「御岳鳥獣保護区」にも指定されている。当保護林内にある御岳は古くから霊山として島民からあがめられ、頂上には祠があり参拝される登山者は多い。

    御岳林内 近景 遠景

    2.目的

    ツシマヤマネコ「国指定の天然記念物:S 41・9・30」の繁殖地及び生息地等の保護を図り、併せて学術研究等に資する。

     希少野生生物保護管理対事業を実施している種

    ツシマヤマネコ

    3.所在地

    長崎県 対馬市 上県町

    4.設定年月日

    平成5年3月31日

    5.面積

    156.26 ha

    6.関係森林管理署等

    長崎森林管理署

    7.現況

    林種:天然林

    標高:200m

    傾斜:急

    地質:古3頁岩

    土壌型:BC・BD(d)

    林齢:130年生以上

    気候帯:日本海型(山陰型)

    8.法指定等

    鳥獣保護区(特)、壱岐対馬国定公園(特保)、史跡名勝天然記念物

    9.取り扱い方針

       繁殖または生息する動物の生態特性を踏まえた保護及び管理を行うこととし、このために必要な森林施業は行うことができることとしている。
       また、モニタリング、学術研究その他公益上必要な行為、非常災害のために行う応急措置行為、軽微な施設の設置、その他法令等の規定に基づき行うものとする。
       さらに、近年は、対馬島内のシカ被害が進行しているため、もう一箇所の保護林「対馬スダジイ等生物群集保護林(名称変更予定)」とともに、ツシマヤマネコの錯誤捕獲に注意しつつ、シカの個体数管理、シカ柵の設置等各種対策を実施することとし、関係機関と連携したシカ対策を着実に実施していくこととしている。

    お問合せ先

    計画保全部計画課

    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3621