第1部 特集 第3節 再造林推進に向けた取組(2)
(2)造林の省力化・低コスト化
(省力化・低コスト化の必要性)

森林資源の充実に伴って主伐が本格化し、今後更に全国的に増加する可能性がある中、主伐後の再造林を推進していく上で、従来の造林方法では造林初期費用が立木販売収入を上回ることや育林従事者の⾧期的な減少傾向が続いていることなどが課題となっている。このため、育林経費の約7割を占める造林初期費用を縮減するとともに、造林作業の省力化や労働負荷の軽減を図ることが重要である(資料 特-22、23)。
(コンテナ苗の活用と伐採と造林の一貫作業)
コンテナ苗(*43)は均一的な形状の根鉢があり、専用の植栽器具を用いることで植栽作業の効率化が図られるほか、乾燥ストレスの影響を受けにくく、通常の裸苗(*44)の植栽に適さない時期も含め、幅広い期間において植栽が可能である。
また、伐採・搬出時に使用した林業機械を活用し、伐採・搬出作業と並行又は連続して機械による地拵(ごしら)えや植栽を行う伐採と造林の一貫作業の導入により、従来人力で実施していた作業を機械化することで、造林の省力化・低コスト化が図られる。この一貫作業を進める上では、伐採作業と造林作業の実施時期を合わせる必要があることから、植栽期間の長いコンテナ苗が有効である。
一貫作業の実施に当たっては、伐採と造林の作業方法・時期に関する連携が重要であることから、伐採と造林を実施する事業者間の協議の場を設けることや、同一事業者が実施する場合であっても、作業間の連携に留意が必要である(資料 特-24)。
コンテナ苗の植栽面積は年々増加し、令和6(2024)年度には約1.2万haとなり一定程度普及が進むとともに、伐採と造林の一貫作業の実施面積も令和6(2024)年度には約7,000haまで増加している(資料 特-25)。

(*43)キャビティ(育成孔)の内側にリブ(縦筋状の突起)やスリット(縦⾧の隙間)、底面の開口部を設けることで、根巻きを防止できる容器を使用し生産された、根鉢付き苗木。
(*44)根系についている土を払った苗木。
(成長等に優れた特定苗木(エリートツリー等の苗木)(*45)を活用した下刈り回数の削減等)
造林初期費用のうち3割以上を占める下刈りについては、植栽木が成長して雑草木による被圧がなくなるまでの5~6年程度、毎年実施することが一般的であるとされてきたが、下刈り回数を削減することができれば、造林の省力化・低コスト化につながる。
これまでの研究において、植栽木の周囲に雑草木が繁茂していても植栽木の樹冠が雑草木に完全に覆われていなければ、顕著な樹高成長の低下はみられないとの報告(*46)があり、雑草木との競合状態に応じて実施の要否を判断することで、下刈り回数の削減が可能となる。
また、植栽木として、成長等に優れたエリートツリー等の苗木や大苗(*47)などを活用することにより、周辺の雑草木との樹高競争から早期に抜け出させ、下刈りが必要な期間を短縮し、下刈り回数を削減することが可能であり、地拵え・植栽から下刈りまでのトータルで低コスト化が期待できる(資料 特-26)。
さらに、下刈りの回数を削減するだけでなく、下刈りの作業面積を削減することも省力化・低コスト化に寄与する。下刈りの作業方法としては、従来、造林地の区域内の全ての雑草木を刈り払う「全刈り」が実施されてきたが、植栽木の成⾧に直接影響を及ぼす周辺の雑草木のみを刈り払う「筋刈り(*48)」や「坪刈り(*49)」により、作業の効率化が期待できる(資料 特-27)。
これまでの取組により、省力・低コスト造林の実施面積は着実に増加しており、令和6(2024)年度には人工造林面積に占める割合が60%まで上昇している(資料 特-28)。
このほか、シカ等の野生鳥獣の被害が考えられる箇所においては、伐採・搬出時に使用した林業機械により、獣害防護柵等の運搬を造林等と一体的に行うことで、省力化を図りつつ野生鳥獣被害対策を実施することが可能である。


(*45)特定苗木については、第1章第2節(2)58-59ページを参照。
(*46)山川博美ら「スギ植栽木の樹高成長に及ぼす期首サイズと周辺雑草木の影響」(日本森林学会誌 98巻(2016)5号:241-246)
(*47)各地域で通常使用される苗木と比較して、苗長のより大きな苗木。具体的には、「山林用主要苗木の標準規格設定について」(昭和33(1958)年12月24日付け33林野造第16622号林野庁長官通知)に定めるコンテナ苗の1号又は2号相当の苗木。
(*48)筋刈りは、植栽列等を帯状に刈り払う方法。
(*49)坪刈りは、植栽木の周辺を1m程度の円状に刈り払う方法。
(造林の省力化・低コスト化技術の普及)
林野庁では、これまで造林に係る省力化・低コスト化技術の実証や調査等を実施するとともに、全国各地で取り組まれてきた先進的な造林技術等について取りまとめ、その普及に努めてきた。令和7(2025)年3月には、これらの成果を踏まえ、広く全国で効果が認められている技術を整理した「造林に係る省力化・低コスト化技術指針」を策定し、公表している。同指針においては、伐採と造林の一貫作業や低密度植栽、下刈り回数の削減等の技術を対象としており、個々の技術の効果や根拠について、図表を用いて解説している。また、同指針を踏まえ、各地での取組事例等を紹介する「令和6年度造林に係る省力化・低コスト化技術指針事例集」を公表するとともに、令和7(2025)年度には、「岩手県・青森県」、「和歌山県」、「徳島県」、「熊本県」の4か所において、現地検討会や研修会を開催し、造林に係る省力化・低コスト化技術の普及・定着を図っている(資料 特-29)。

(省力化を図る新技術の開発・実証)
全国各地で省力化・低コスト化の取組が進められる中、再造林の更なる省力化に向けては、苗木運搬や植栽、下刈りといった造林作業の各工程において、現地の条件に応じた新技術の導入も必要である。
例えば、苗木運搬においては、フォワーダ等の林業機械を活用できない場合や、作業条件により作業道脇等から植栽場所までの運搬の負担が大きい場合に、小型運搬車を用いて苗木を運搬する方法が実践されている。小型運搬車は、造林する者が扱いやすく、不整地でも機動力があるものが開発されてきており、比較的安価であることから、導入しやすく直ちに省力化の効果が表れることが期待される(資料 特-30)。
下刈りにおいては、傾斜地や不整地においても使用できる遠隔操作の機能を有する下刈り機械が開発されており、下刈り作業の省力化、労働安全の確保が期待される。また、事前に設定した走行ルート上を自動走行し、下刈り作業を行うことが可能な自動運転の機能を有する下刈り機械の開発も進められており、令和9(2027)年頃に実用化されることが見込まれている(資料 特-30)。これらの下刈り機械等の導入に当たっては、機械の走行等が可能となるような植栽間隔や植栽列の設定とするなど、機械化を前提とした施業方法の検討が重要である。
このほか、急傾斜地等においては、苗木や造林資材などの運搬の省力化を図るためドローンを活用する事例も増加している。費用対効果の観点からは、複数の事業者の運搬作業をドローンを所有する事業者が一括して受託することや、農業用など他用途との併用により、効率的な利用が図られる可能性もある。

コラム 地域の実情に応じた人工造林における植栽密度
我が国の人工造林における植栽密度については、1万本/ha程度の密植・多間伐で優良材を生産する奈良県の吉野(よしの)地域など、地域において様々であった。江戸時代においては小径の間伐材に価値がある地方では密植された一方で、搬出・運搬等の条件から間伐材が利用しがたい地方では疎植でもよいとされていた。その後、拡大造林が進められる中、一部の古くからの林業地を除き、おおむね3,000本/ha程度を植栽することが一般化していった。
近年は、木材の需要が役物等の優良材から変化してきている中、従来の3,000本/ha程度よりも低密度の2,000本/haや1,500本/ha等で植栽する低密度植栽が、地域の実情に応じて行われている。
低密度植栽により生産される木材の節の形成については、スギを1,500本/haと3,000本/haで植栽した場合の比較において、1,500本/haの方が節の数が多くなり、節の直径も大きくなるものの、節の数については4mの板材当たり10個程度、直径については平均2~3mm程度の差にとどまり、その影響は軽微であると考えられるとの報告がある(注)。
また、こうした木材の強度等に関する検証も進められており、1,500本/haで植栽されたスギ、ヒノキについてヤング係数の推計を行った結果、一般的に住宅の柱等に用いる木材として十分な値が確認されたとの報告もある。
これらの知見を踏まえると、製材品、集成材、合板等の用途に応じた性質が求められる中、低密度植栽は地域の実情や木材需要の変化に対応した施業の選択肢の一つとなっている。
注:松本純「疎植造林による育林施業体系の開発-低密度植栽による節への影響-」(大分県農林水産研究指導センター林業研究部年報, No.66 (2025))
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