第1部 特集 第3節 再造林推進に向けた取組(1)
(1)林業適地の選定と林業経営体への集積・集約化
(林業適地の選定)
森林資源の循環利用や公益的機能の持続的な発揮に向けては、林地生産力が高く、車道や集落からの距離が近い、平均傾斜が緩やかであるなどの条件の良い箇所では、更新の際に再造林を確実に進めていく必要がある。一方で、自然的・社会的条件が勘案されずに条件の良い箇所でも再造林がされていないケースがある。
林野庁では、循環利用を図るべき森林を明らかにするため、林地生産力が比較的高く、車道(開設見込みのものを含む。)や集落からの距離が近いといった自然的・社会的条件が良い林業適地の選定を推進している。具体的には、地域の森林・林業の特徴を踏まえた森林整備の基本的な考え方やこれを踏まえたゾーニング、森林施業の規範等について定める市町村森林整備計画において、「特に効率的な施業が可能な森林の区域」の設定を推進しており、区域内の人工林の皆伐跡地については、原則として植栽による更新を行うこととされている(資料 特-20)。
また、中長期的な森林吸収量の確保を図る観点から、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」に基づき、成長等に優れた樹木(特定母樹)から採取された種穂から育成された苗木(特定苗木)による再造林を推進するため、「特定植栽促進区域」の設定を推進している。
さらに、林業適地を適切に判定し、区域設定を効率的に行えるよう、GISを活用したゾーニング補助ツールの普及にも取り組んでおり、令和6(2024)年度末時点で「特に効率的な施業が可能な森林の区域」の設定面積は109万ha(*36)、「特定植栽促進区域」の設定面積は62万ha(*37)となっている。
くわえて、林業適地においては、森林施業の基盤となる路網が重要であり、林道(林業専用道を含む。)と森林作業道を適切に組み合わせた路網の整備を進めている(*38)。
なお、林業を継続するための条件が厳しい人工林については、帯状又は群状の伐採を行い、侵入広葉樹の活用等により針広混交林化(*39)等を進めることとしている。

(*36)林野庁計画課調べ。
(*37)林野庁計画課調べ。
(*38)路網の整備については、第1章第2節(4)62-63ページを参照。
(*39)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に広葉樹を天然更新等により生育させることにより、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林にすること。
コラム 主伐面積の推計の精度向上と人工造林面積の割合
全国の主伐面積のうち、民有林の主伐面積については、これまで国産材供給量を都道府県が整備する森林簿等の森林蓄積で割り戻すなどして推計しているが、この森林蓄積は各都道府県が採用している成長モデルにより算出された蓄積を集計したものであり、高齢級の精度が不十分となっている可能性が指摘されている。
このような中、林野庁が平成11(1999)年度から1期5か年で継続的に実施している全国レベルの森林調査(National Forest Inventory(NFI))(注1)の結果を活用し、全国の森林蓄積をより高い精度で推計できるようになってきた。これを基に算出した森林蓄積で国産材供給量を割り戻して推計すると、主伐面積は従来の推計よりも小さくなることが明らかとなっている。
また、急速に普及が進んでいる衛星画像解析技術を活用して伐採箇所を抽出し、統計的手法により主伐面積を推計する研究が進んでおり、この方法を用いると主伐面積はNFIを活用した推計と同程度の規模となることが示されている。
このほか、森林所有者等が市町村長に対して伐採及び伐採後の造林の届出を行う伐採造林届出制度等の行政情報の活用も考えられ、林野庁では、この方法も含めて主伐面積の推計の精度向上のための検証を進めていくこととしている。
これらの新たな推計方法による主伐面積を用いると、いずれも近年の主伐面積に対する人工造林面積(注2)の割合は5~6割程度となるが、現在主伐が行われているのは条件の良い森林であることが多いと考えられることから、森林資源の循環利用に向けては、引き続き再造林の推進が不可欠である。
注1:林野庁が継続して実施している「森林生態系多様性基礎調査」を指す。国土全域に4km間隔の格子点を想定し、その格子点を調査地点(森林は約1.5万点)とする標本調査であり、5年間で全国を一巡するサイクルで実施されている。
2:森林環境保全整備事業等実績定期報告や国有林野事業統計等により把握した実績。
資料:林野庁計画課・整備課・業務課調べ。

(林業経営体への集積・集約化)
林業適地を選定した上で、持続的な経営を担える林業経営体への森林の経営管理に必要な権利の集積と経営管理の集約化(以下「森林の集積・集約化」という。)を図ることにより、再造林を着実に進めていくことが重要である。林野庁では、これまでも森林経営計画(*40)の作成や森林経営管理法(*41)に基づく経営管理実施権の設定などを推進することにより、森林の集積・集約化を進めてきた。令和8(2026)年4月施行の改正森林経営管理法では、地域の関係者が森林の経営管理の将来像を共有して「集約化構想」を作成することで、集積・集約化を通じた森林資源の循環利用を進める新たな仕組みが創設されている(資料 特-21)。
この仕組みの活用等も通じて、再造林の実施体制を備えた林業経営体が、森林を長期間経営し得る権利等を取得し地域の林業経営を担っていくことで、計画的かつ確実な再造林の実施が期待される。また、各地域において、林業経営体に森林を集積・集約化し、再造林の拡大を図る独自の取組もみられる(事例 特-1)。
地域によっては、素材(*42)生産等を行う林業経営体が中心となって、環境に配慮した伐採・再造林の着実な実行を推進するために遵守すべき作業手順や行動指針を定めたガイドラインを策定し、実践している例もある。平成20(2008)年には宮崎県の特定非営利活動法人ひむか維森の会が、全国に先駆けて「責任ある素材生産業のための行動規範」、「伐採搬出ガイドライン」を策定し、それ以降、同様の取組が他の地域にも広がっている。令和4(2022)年には、伐採搬出・再造林ガイドライン全国連絡会議が発足し、サミットの開催や、ガイドラインに関する情報の発信・共有を通じて、適正な伐採と再造林に向けた取組を進めている。

事例 特-1 秋田県における再造林拡大の取組
秋田県では、民有林の多くを占めるスギ人工林が利用期を迎え、素材生産量が増加傾向にある中、森林資源の循環利用の確立に向けて、再造林対策の強化を図っている。
同県では、高齢化や後継者不在などによる造林地の今後の管理等に対する不安感が、森林所有者の再造林意欲の喪失の大きな要因となっていることから、令和4(2022)年度から造林地を林業経営体に集める仕組みを導入している。本仕組みでは、再造林の働き掛けを行う「あきた造林マイスター」が在籍する林業経営体と、将来の森林の経営管理に不安を抱える所有者が10年間の「造林保育管理契約」を締結し、林業経営体が再造林や下刈り、造林地の管理を実施する。あきた造林マイスターは、省力・低コスト造林技術や造林の適地判定、収支プランの作成等の能力を有する者として同県が育成・認定しており、所有者の不安感と負担感の軽減・解消に貢献している。
また、造林保育管理契約に基づき再造林を実施する林業経営体と所有者に対しては、造林地集積促進事業により、再造林を実施した面積に応じて、同県と秋田県再造林推進協議会による支援措置が講じられている。
これらの取組により、秋田県における再造林面積は令和3(2021)年度の394haから令和6(2024)年度には約2倍の735haまで増加するなど、着実に成果が上がっている。

(*40)森林経営計画については、第2章第1節(4)122ページを参照。
(*41)森林経営管理法については、第1章第2節(5)64-66ページを参照。
(*42)製材・合板等の原材料に供される丸太等(原木)。
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