第1部 第2章 第2節 特用林産物の動向(2)
(2)薪炭・竹材・漆の動向
(薪炭の動向)
木炭は、家庭用の燃料としては使用する機会が少なくなっているが、飲食店、茶道等では根強い需要があるほか、電力なしで使用できるなどの利点から災害時の燃料としても活用されている。木炭(黒炭、白炭、粉炭、竹炭及びオガ炭)の国内生産量は、長期的に減少傾向にあり、令和6(2024)年は前年比6.4%減の1.6万トンとなった(資料2-27)。
多孔質(*84)である⽊炭は、燃料としての利⽤以外にも浄⽔施設のろ過材や消臭剤としての利⽤のほか、近年では、⼟壌改良材として農地に施⽤する「バイオ炭(*85)」が注⽬されている。バイオ炭の農地施⽤は、難分解性の炭素を⼟壌に貯留する効果があり、気候変動緩和効果も期待できることから、J-クレジット制度(*86)において、温室効果ガスの排出削減活動としてクレジット化が可能となっている。また、国産⽊炭は、和⾷⽂化の拡がりに加え、その品質の⾼さによる海外の需要も期待されることから、海外市場への参⼊を⽬指す動きもみられる。
これらの取組が木炭の需要の拡大につながり、伝統的な製炭技術の継承や第径化が進む薪炭林の若返りにもつながることが期待される。
販売向け薪の生産量についても、石油やガスへの燃料転換等により減少傾向が続いていた。平成19(2007)年以降は、ピザ窯やパン窯用などとしての利用や、アウトドア需要等を背景に増加傾向で推移してきたが、令和6(2024)年の生産量は、前年比1.0%減の6.2万m3となった(資料2-28)。
(*84)木炭は表面に無数の微細な孔を持つ。孔のサイズ分布や化学構造によって、水分子におい物質などの吸着機能や、孔内に棲息する微生物による分解機能を有し、湿度調整や消臭、水の浄化などの効果を発揮する。これらの効果は、木炭の原材料や炭化温度により異なる。
(*85)燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物。
(*86)J-クレジット制度については、第1章第2節(6)71-73ページを参照。
(竹材の動向)
竹材は従来、身近な資源として、日用雑貨、建築・造園用資材、工芸品等様々な用途に利用されてきた。このような利用を通じて整備された竹林は、里山の景観を形作ってきたのみならず、食材としてのたけのこを供給する役割を果たしてきた。しかし、プラスチック等の代替材の普及や住宅様式の変化、安価な輸入たけのこの増加等により、国内における⽵材やたけのこの生産は減退してきた。このため、管理が行き届かない竹林の増加や、周辺森林への竹の侵入などの問題も生じている。
竹材の生産量は、製紙原料としての利用の本格化等を背景に、平成22(2010)年から増加に転じたが、平成29(2017)年以降再び減少傾向にあり、令和6(2024)年は前年比2.2%減の88万束(*87)となった(資料2-29)。
近年では、竹資源の有効利用に向けた取組として、家畜飼料や土壌改良材などの農業用資材、竹材の抽出成分を原料にした洗剤等の日用品、舗装材等の土木資材等への活用が進められている。また、たけのことしての収穫適期を過ぎて成長した若い竹をメンマに加⼯・販売することで竹林整備につなげる取組や、竹資源の需要と供給のミスマッチ等の解決に向けた産学官連携の取組も⾏われている(*88)。
(*87)2.6万トン(1束当たり30kgとして換算)。
(*88)例えば、「令和6年度森林及び林業の動向」第2章第2節(2)の事例2-4(128ページ)を参照。
(漆の動向)
漆は、樹木であるウルシから採取された樹液と樹脂の混合物を精製した塗料で、食器、工芸品、建造物等の塗装や接着に用いられてきた。化学塗料の発達や生活様式の変化などを背景に、漆の消費量は長期的に減少しており、令和6(2024)年の国内消費量は31.2トンと、昭和55(1980)年と比較して6.9%となっている(*89)。令和6(2024)年の国内生産量は消費量の5.7%に相当する1.8トンとなっており、岩手県等の主要産地において、天候に恵まれ前年に非べて作業日数が確保できたことなどから、前年比8.5%増となった(資料2-30)。
平成26(2014)年度に文化庁が国宝・重要分文化財建造物の保存修理に原則として国産漆を使用する方針としたことを背景に、各産地では漆の生産振興に力を入れるとともに、生産者からの生漆の買取価格の引上げを図ったことから、国産漆の生産量は平成27(2015)年以降増加に転じた。しかし、国産漆の生産量は、国宝・重要文化財建造物の理想的な修理周期での保存修理における漆の年平均使用量である約2.2トン(*90)に満たない上、工芸品等向けの国産漆の需要もあることから、国産漆の生産量を増やしていくことが重要となっている。このような中、漆の産地ではウルシ林の造成・整備等が進められている(事例2-7)。
事例2-7 地域の人々と共に取り組む漆文化を守る活動
特定非営利活動法人丹波漆(京都府福知山(ふくちやま)市)は、国内で数少ない漆の産地である福知山市の夜久野(やくの)地域において、ウルシの植栽・管理や漆掻(か)き技術の継承に取り組みながら、地域の人々と共に漆文化を守る活動を行っている。
毎年100本のウルシの木を植樹することを目標に、植樹祭等を通じてウルシの木を植える取組を進めており、同法人が平成24(2012)年に設立した当時約400本だったウルシの木は約1,800本となっている。それに伴い、漆掻き職⼈は1人から5人に増え、技術の継承も図っている。また、多くの⼈に漆について知ってもらい、協力を得ることがこれらの取組の継続につながるとの思いから、「丹波漆」の魅力や生産状況などに関する講演会を実施するほか、福知山市営「やくの木と漆の館」と協働で漆を使用した工芸品の展示や「漆掻き現場見学&漆塗り体験」ツアーの開催を行なっている。さらに、丹波漆を次世代に受け継ぐため、学生と共に漆の魅力を広める活動にも力を入れている。
同法人は、令和6(2024)年に全国で日本文化財漆協会(東京都台東区)、日本うるし掻き技術保存会(岩手県二戸(にのへ)市)に次いで3番目、西日本では初めての団体として、文化庁から選定保存技術注「日本産漆生産・精製」の保存団体に認定された。令和7(2025)年6月には、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に丹波漆を出展し、地域住民もスタッフとして加わりながら、会場での展示や、植栽地からの漆掻きの生中継等を通じて丹波漆の魅力をPRするなど、認定後も様々な活動を行っており、今後も同法人の活動が地域の人々の参画も得ながら発展していくことが期待される。
(注)文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能である「文化財保存技術」のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを「選定保存技術」として選定している。
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