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林野庁

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第1部 特集1 第1節 我が国の林業経営を取り巻く状況(2)

(2)林業経営体の現状

(森林施業の主体は林家・森林組合・民間事業体)

森林所有者は森林を所有する権限に基づき自ら森林施業を行う場合もあれば、委託により第三者に森林施業を実施してもらう場合もある。このように、自ら又は委託により森林施業を実施する森林所有者や、森林所有者からの受託・立木購入により森林施業・素材生産を行う者のことを林業経営体という。

林業経営体の数は3.4万経営体であり、そのほとんどが森林を保有している(*6)(資料 特1-3)。


林業経営体の作業面積をみると、組織形態ごとに特徴がみられる。保有山林における作業面積(*7)では、林家を中心とする個人経営体(*8)の割合は、主伐を除き50%程度と高くなっている(*9)(資料 特1-4)。


作業受託面積では、民間事業体や森林組合の存在感が大きくなる。主伐は民間事業体が中心で、植林・育林は森林組合が中心となっている。また、民間事業体や森林組合全体では、保有山林における作業面積よりも、受託による作業面積の方が大きいことが分かる。

主伐と植林の作業面積に着目すると、受託作業では植林が主伐の6割程度の面積となっている。一方、保有山林での作業では、立木販売分の主伐面積が含まれないため単純な比較はできないものの、主伐と植林がほぼ同面積で、特に個人経営体では植林の作業面積の方が大きい。


(*6)農林水産省「2020年農林業センサス」。林業経営体は、(ア)保有山林面積が3ha以上かつ過去5年間に林業作業を行うか森林経営計画を作成している、(イ)委託を受けて育林を行っている、(ウ)委託や立木の購入により過去1年間に200m3以上の素材生産を行っている、のいずれかに該当する者。2020年農林業センサスの結果は、令和3(2021)年4月に一部が公表され、その後、順次公表される。林業経営体の保有山林面積等、林業経営体の動向については、第2章第1節(2)121-128ページも参照。

(*7)作業面積には、他の林業経営体に作業を委託した面積も含まれる。

(*8)家族で経営を行う、法人化していない林業経営体。

(*9)農林水産省「2015年農林業センサス」



(素材生産規模の拡大)

林業経営体の数が減少する一方で、我が国の素材生産量は増加している。林業経営体当たりの素材生産量も増加するとともに、年間素材生産量が1万m3を超える林業経営体の割合が増加するなど、規模拡大が進行している(資料 特1-5)。経営体数の減少率が大きい個人経営体についても、1経営体当たりの素材生産量は増加している(資料 特1-6)。

小規模の林業経営体が減り、大規模の林業経営体に素材生産が集約化されていく状況となっている。


(林業経営体の経営状況)

林業経営統計調査によると、家族経営体(*10)の林業所得は減少している。家族経営体の中では規模の大きい森林所有面積100~500haの家族経営体においても、昭和48(1973)年は平成30(2018)年貨幣価値換算で1,400万円以上の所得を得られていたが、年々減少し、平成30(2018)年には、平均でみると、林業のみではほとんど利益が出ない状況となっている(資料 特1-7)。


会社経営体の経営状況をみると、全国平均で営業利益は270万円となっている(資料 特1-8)。これらの経営体の素材生産量の平均は1万m3程度と比較的大きいが、林業事業のみでは赤字となっている。また、規模別にみると、総じて売上高が大きくなるにつれて、経常利益率が高くなるなど経営は安定し、林業事業売上高が3億円以上になると林業事業のみで黒字となる。この理由として、従業員の効率的な配置や高性能林業機械の稼働率の向上等の余地が増えることが影響しているものと考えられる。

資料 特1-8 会社経営体の経営状況

(*10)家族で経営を行う林業経営体(法人化している者も含む。)。



(林業従事者の動向)

我が国の生産年齢人口(15歳~64歳)は平成7(1995)年をピークに、総人口も平成20(2008)年をピークにそれぞれ減少しており(資料 特1-9)、様々な業界で、これまで以上に人材確保が難しくなると考えられる。


こうした中、この10年間でふるさと回帰支援センターへの相談件数は8倍に増加するなど(資料 特1-10)、都市部居住者の中で、地方での暮らしを求める若者が一定程度増加傾向にある。


現場業務に従事する「林業従事者」の数は長期的に減少傾向で推移し、平成27(2015)年には45,440人となっているが(資料 特1-11)、「緑の雇用」事業の効果もあり、毎年3,000人程度が現場技能者として林業経営体へ新規に就業している(資料 特1-12)。この結果、若年者率(35歳未満の従事者の割合)は、平成2(1990)年以降は上昇傾向にある。


特に、「緑の雇用」事業を通じ林業に従事した場合は、就業後3年経過時の定着率は全産業よりも高い。一方で、年数が経過するにつれて定着率は下がり、7年以上経過で50%以下となり、長期的な人材定着が課題となっている(資料 特1-13)。

資料 特1-13 林業従事者の定着率

また、素材生産量が増加傾向にある中で、高性能林業機械の導入等で労働負荷が低減し、かつ通年雇用のしやすい伐木・造材・集材従事者は、近年増加している。一方で、機械化が進んでおらず、季節労働の面のある育林従事者は長期的に減少傾向で推移しており、主伐面積が増加する中、再造林を実施するための育林従事者をいかに確保していくかが課題である。


(林業従事者の所得水準)

「緑の雇用」事業に取り組む事業体への調査結果によれば、林業従事者の年間平均給与は、平成25(2013)年から平成29(2017)年までで38万円(12%)上昇している。しかし、全産業平均に比べると、差は縮まったものの、90万円程度低い。特に30代から50代にかけて全産業平均との差が大きく、定着率が下がる原因の一つと考えられる(資料 特1-14)。

このため、長期的な定着率の向上を図る上で、林業の収益性向上や従事者のキャリアアップの仕組みづくりが課題である。


(高い労働災害発生率)

林業は急傾斜地など条件の悪い作業環境の中で、チェーンソー等の刃物を使用し、重量物である木材を扱う、危険を伴う業種である。

林業労働における死傷者数は長期的に減少傾向にあるものの、林業における労働災害発生率は、令和元(2019)年の死傷年千人率(*11)でみると20.8で全産業平均の9.4倍となっており、安全確保に向けた対応が急務である(*12)(資料 特1-15)。


(*11)労働者1,000人当たり1年間で発生する労働災害による死傷者数(休業4日以上)を示すもの。

(*12)厚生労働省「労働災害統計」



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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