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林野庁

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第1部 森林及び林業の動向 トピックス

1.2050年カーボンニュートラルを視野に「グリーン成長」の実現を⽬指す森林・林業基本計画

2.「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行~「ウッド・チェンジ」に向けて~

3.「「奄美大島(あまみおおしま)、徳之島(とくのしま)、沖縄島北部(おきなわじまほくぶ)及び西表島(いりおもてじま)」が世界⾃然遺産に登録

4.令和3年7月、8月に発生した大雨による山地災害等への対応


1.2050年カーボンニュートラルを視野に「グリーン成長」の実現を⽬指す森林・林業基本計画

平成28(2016)年5月に閣議決定された前回の森林・林業基本計画では、人工林資源が本格的な利用期を迎えたことなどを背景に、林業・木材産業の成長産業化を掲げ、各般の施策を推進してきました。その結果、国産材供給量の拡大、林業産出額や従事者給与の増加など一定の成果が上がる一方、立木販売収入から再造林費用を賄える状況にはなっておらず、近年の主伐面積に対する再造林面積の割合は低位にとどまっています。

こうした課題等を踏まえ、令和3(2021)年6月に閣議決定された新たな森林・林業基本計画では、新技術を活用して伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業」の展開や、木材産業の競争力の強化、都市等の建築物における新たな木材需要の獲得などに取り組むこととしており、再造林等により森林の適正な管理を図りながら、森林資源の持続的な利用を一層推進して引き続き成長産業化に取り組むことにより、2050年カーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現していくこととしています。

→第1章第1節(2)を参照

これからの施策の方向と5つのポイント

2.「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行~「ウッド・チェンジ」に向けて~

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建築物における木材利用は、「伐って、使って、植えて、育てる」という森林資源の循環利用を進め、人工林の若返りを図る上で有用なだけでなく、建築物に炭素を貯蔵することから、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献します。

平成22(2010)年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」制定以降、低層の公共建築物を中心に木造化が図られ、令和2(2020)年度は、新しく整備される低層の公共建築物の約3割が木造となっています。民間非住宅分野・中高層分野の木造率は依然として低位ですが、耐震・耐火性能等の技術革新や建築基準の合理化により、木材利用の可能性は拡大し、都市部において、先導的な取組として中高層木造建築物の建設が進められています。

これらを背景として、同法が改正され、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法)として令和3(2021)年10月1日に施行されました。同法において、民間建築物を含む建築物一般での木材利用を促進するため、新たに「木材利用促進本部」の設置、「建築物木材利用促進協定制度」の創設、「木材利用促進の日」(10月8日)及び「木材利用促進月間」(10月)の制定などが措置されました。令和4(2022)年3月末時点で、国においては一般社団法人全国木材組合連合会や野村不動産ホールディングス株式会社等と5件の協定が締結されています。

BUZZMAFF ばずまふ(農林水産省)

また、令和3(2021)年9月には、川下から川上までの関係者が広く参画する「民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェンジ協議会)」を立ち上げ、民間建築物等における木材利用に当たっての課題や解決方法の検討、木材利用の先進的な取組等の発信など、木材を利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。

さらに、建築物への木材利用による地球温暖化防止への貢献について対外的に発信する手段として、建築物に利用されている⽊材の炭素貯蔵量を分かりやすく表示する方法を示したガイドラインを定めました。

林野庁では、法改正を契機として、このような取組を進めており、今後も、関係省と連携し、更なる「ウッド・チェンジ(*1)」に向けた取組を国民運動として展開していきます。

→第3章第2節(1)を参照





(*1)ウッド・チェンジとは、身の回りのものを木に変える、木を暮らしに取り入れる、建築物を木造化・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジする行動を指す。



3.「奄美大島(あまみおおしま)、徳之島(とくのしま)、沖縄島北部(おきなわじまほくぶ)及び西表島(いりおもてじま)」が世界⾃然遺産に登録

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令和3(2021)年7月に「奄美大島(あまみおおしま)、徳之島(とくのしま)、沖縄島北部(おきなわじまほくぶ)及び西表島(いりおもてじま)」が新たにユネスコの世界自然遺産に登録されました。我が国において「白神山地(しらかみさんち)」(青森県及び秋田県)、「屋久島(やくしま)」(鹿児島県)、「知床(しれとこ)」(北海道)、「小笠原諸島(おがさわらしょとう)」(東京都)に続き、5件目となります。

本遺産地域は、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄島北部と西表島の4地域から構成され、その大部分が常緑広葉樹の亜熱帯多雨林に覆われています。生物多様性が突出して高く、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコ等のIUCN(国際自然保護連合)レッドリストの絶滅危惧種95種(そのうち75種は固有種。)を含め、多くの希少な生物が生育・生息しています。自然性が高く、これらの極めて重要な生物の生育・生息地が数多く含まれていることが、世界自然遺産の「生物多様性」の基準に合致していると評価されました。

林野庁では、遺産地域の面積(約4万3千ha)の約7割を占める国有林野のほぼ全域を「森林生態系保護地域」(保護林の一種)に設定し、希少種保護のための巡視や外来植物の分布状況調査及び駆除、入林状況の把握や希少動物の密猟防止、希少植物の盗掘防止に係る啓発等の取組を行い、森林の厳格な保護・管理に努めています。

また、今回の登録に伴い、世界遺産委員会から、(ア)西表島等における観光管理、(イ)絶滅危惧種の交通事故死減少のための対策、(ウ)包括的な河川再生戦略の策定、④緩衝地帯における森林管理に対する要請がありました。国、県、地元市町村及び地域の関係者が連携して、これらの要請に対応するとともに、引き続き、適切な保全・管理を行っていくこととしています。

第1章第3節(3)及び第4章第2節(1)(ウ)を参照





4.令和3年7月、8月に発生した大雨による山地災害等への対応

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令和3(2021)年7月及び8月には、梅雨前線や台風等の影響により、全国各地で記録的な大雨による災害が発生し、人的被害は死者43名、行方不明者2名となりました。

林野関係については、42都道府県において山腹崩壊等の山地災害等が発生し、被害箇所数は林地荒廃1,205か所、治山施設67か所、林道施設等6,451か所、木材加工・流通施設9件、特用林産施設等15件に上り、被害額は約548億円となりました。

特に、8月9日から10日にかけて、台風第9号から変わった温帯低気圧の通過に伴い、青森県下北半島のむつ市や風間浦村(かざまうらむら)では、崩壊や侵食が進みやすい溶岩や火山砕屑物(さいせつぶつ)で覆われるぜい弱な地質に、およそ10km2の範囲に局地的な大雨がもたらされ、山地災害が同時多発的に発生し、土砂や流木が流出しました。また、国道の寸断や橋梁(りょう)の流出により、海岸沿いの集落などが一時孤立しました。

林野庁では、このような災害の発生直後から、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協定に基づいた人工衛星からの緊急観測の結果を活用しつつ、被災県と合同で、土砂移動等のあった箇所においてヘリコプターによる被害調査を実施しました。また、被災地に災害対策現地情報連絡員(リエゾン)・技術系職員(MAFF-SAT)を派遣し、国立研究開発法人森林研究・整備機構の専門家の協力を得ながら、被害状況の把握や災害復旧に向けた技術的支援を行いました。このような調査等を踏まえ、崩壊地や荒廃渓流の早期復旧、被災した治山施設や林道の復旧整備を行っています。一方、今回被害が集中した地域でも、治山施設が設置されていた箇所で、土砂や流木の流出が抑制され、下流の被害が軽減された事例も確認されました。

青森県の山地災害は、令和2(2020)年までの過去5年間は年平均約4か所で推移していましたが、令和3(2021)年は29か所で確認されました。このように、これまで山地災害が多発していない地域であっても、降水形態の変化により山地災害が多発するケースがあり、引き続き、「防災・減災、国土強靱(じん)化のための5か年加速化対策」(令和2(2020)年12月11日閣議決定)等に基づく計画的な治山対策を推進していくこととしています。

また、7月1日からの大雨により、静岡県熱海(あたみ)市において土石流災害が発生し、多くの尊い人命と貴重な財産が失われました。この災害では、盛土の崩落が被害の甚大化につながったとされ、関係機関連携の下、盛土による災害防止に向けた総点検を全国で実施し、都道府県に対し安全性確保のために必要な支援を行いました。さらに、令和4(2022)年3月に国会に提出された、危険な盛土を包括的に規制する「宅地造成等規制法の一部を改正する法律案」を踏まえ、盛土による災害の防止に取り組んでいくこととしています。

→第1章第3節(2)を参照



「農林水産祭」における天皇杯等三賞の授与

林業・木材産業の活性化に向けて、全国で様々な先進的な取組がみられます。このうち、特に内容が優れていて、広く社会の賞賛に値するものについては、毎年、秋に開催される「農林水産祭」において、天皇杯等三賞が授与されています。ここでは、令和3(2021)年度の受賞者(林産部門)を紹介します。

天皇杯 出品財:経営(林業経営) 山長林業株式会社・株式会社山長商店(代表:榎本 長治 氏) 和歌山県田辺(たなべ)市

山長林業株式会社は、所有山林を核として周辺の森林を集約化し、通直で良質な紀州材を地域として生産しています。グループ会社である株式会社山長商店は、伐り出した良質材から高品質なプレカット無垢材製品を生産し、首都圏の工務店に直接供給することで、建築用材の高付加価値化を実現しています。これら森づくりから家づくりまでを一気通貫で見据え、山元の収益向上を実現する経営手法は、年間約50組もの林業関係者や工務店が視察に訪れる全国モデルとなっています。

内閣総理大臣賞 出品財:技術・ほ場(苗ほ) 大森 茂男 氏 岩手県二戸(にのへ)市

大森氏は、苗木生産に不向きな積雪寒冷地に適した生産技術体系を確立しました。近年はコンテナ苗を中心に生産を拡大し、裸苗も含めた山行苗木の本数を20年間で年間約140万本から約220万本に増産させています。コンテナ苗の生産施設や保冷庫の導入など、様々な技術開発に取り組み、その独自開発した育苗技術を広く普及することで苗木生産者の作業効率向上に寄与しています。今後もコンテナ苗の増産等を計画しており、再造林を支える経営体として活躍が期待されています。

日本農林漁業振興会会長賞 出品財:経営(林業経営) 杉本 英夫 氏 杉本 淑美 氏 福井県福井市

杉本氏は、平成5(1993)年に淑美夫人の実家の農林業を承継し、スギ林の管理を始め、製炭、養蚕、しいたけ生産など、多岐にわたる産物を夫婦二人三脚で効率的に生産する複合的林業経営を実践することで経営の安定化を図っています。特に、製炭業では茶の湯や刀鍛冶に欠かせない菊炭や松炭を生産し、養蚕業では我が国の在来種「小石丸」を原種とする「玉小石」を飼育するなど、地域需要に応じた生産品目の拡大に取り組むことで、伝統文化の維持や発展にも寄与しています。


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