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九州森林管理局

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    屋久島(やくしま)森林生態系保護地域

    1.概要

       森林生態系保護地域は、国有林のうち原生的な天然林を保存することにより、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究などに役立てるとともに、これらの森林を後世に引き継ぐことにしている森林である。
       屋久島は、九州本土の最南端、佐多岬の南方約65km、鹿児島市からは南へ約130kmの海上に位置し、南海の洋上に屹立する周囲約132km(道路周囲105km)のほぼ円形に近い形をした山岳島で、標高約2,000mに迫る山岳を有し、最高峰宮之浦岳(標高1,936m)をはじめ、標高1,500m以上の高峰が連なった急峻な地形を呈し海岸近くまで稜線が続き、地形は一般に急峻である。地質はもともと島周囲に見られる四万十層群に属し、島中心部から火山活動により生まれた新第三紀花崗岩が貫いて地表に隆起し、奥地の登山道沿いには、その周囲の山体一帯に奇岩となって現れる特異な形状を見ることができる。花崗岩は、島の南西方向へ走り西部地域まで拡がっている。
       林相は、暖温帯と冷温帯からなり、山頂部はヤクシマダケ、ヤクシマシャクナゲの群集、中央地帯である山岳地域の標高600~1,800m付近には縄文杉に代表される樹齢千年以上のヤクスギが分布し、その尾根部では、モミ、ツガ等が混生した針葉樹林を形成する。また、中腹部ではイスノキ、ウラジロガシ、アカガシ、ヤマグルマ等の常緑広葉樹と混生し、海岸部低地林にはアコウ、ガジュマル等の亜熱帯性常緑広葉樹による植生も見られる。
       これら植生を概観すると、亜熱帯性植物を含む海岸植生から、山地の温帯雨林、山頂付近の冷温帯性ササ草地や高層湿原に及ぶ植生帯の垂直分布の連続性を保持している。北半球の温帯域では他にほとんど例がない顕著な生態系である。屋久島の植物は、1,900種と極めて多様で、しかも固有種や、屋久島を南限または北限とする種が多い。また、日本の森林帯の一般系列として出現しなければならない、ブナ、トウヒ、シラベ等が欠如している。樹齢1,000年を超えるヤクスギの原生林がつくりだす景観は、標高600~1,800m付近まで出現するが最も多く生育しているのは1,000m前後である。
    (下記、7現況   1   自然環境   ウ.植物、エ.屋久島の北限種、南限種、固有植物   の項目に詳細に記載)

       また、屋久島の山地温帯雨林は、年間降水量が8,000mm~10,000mmを超えるような多雨・高湿度環境に適応した渓流植物や着生植物を豊富に含む特異な生態系と優れた自然景観が見られる点に特徴がある。
       なお、屋久島は、平成5年(1993年)12月の第17回世界遺産委員会において世界遺産のクライテリア(評価基準)(7)(自然景観)、(9)(生態系)の2つに合致する顕著な普遍的価値を有すると認められ、秋田、青森にまたがる白神山地、クライテリア (9)(生態系)とともに、世界自然遺産に登録された。

    ※屋久島の自然遺産地域に該当するクライテリア※
    クライテリア (7)(自然景観)
    屋久島は、小規模な島嶼にありながら標高2,000mに迫る山岳がそびえ、中心部の山岳地帯から海岸線に至るまで、際立った標高差が存在するとともに、古いものでは樹齢3,000年に及ぶスギを含む原生的な天然林を有するなど、小さな島の中に生物学や自然科学の分野や自然美の観点から重要な地域が存在する点で非常に価値がある資産。
    クライテリア (9)(生態系)
    屋久島は、北緯30度付近では稀な高山を含む島嶼生態系であり、暖温帯地域の原生的な天然林という特異な残存植生が海岸線から山頂部まで連続して分布しており、自然科学の各分野の研究-進化生物学、生物地理学、植生遷移、低地と高地の生態系の相互作用、水文学、暖温帯地域の生態系のプロセス-を行う上で非常に重要。
    (※クライテリアの数字標記は一般には、ローマ数字を使用しますが機種依存文字のためアラビア数字を使用しました。)

    縄文杉 西部垂直分布 投石平(風衝地のスギ)
    縄文杉 西部の植生垂直分布 投石平(風衝地)のスギ
    強風に耐えるよう葉の長さが極端に短い

     

    2.目的

       原生的な天然林を保存することにより、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究などに役立てるとともに、これらの森林生態系を後世に引き継ぐことを目的とする。

    3.所在地

    鹿児島県 熊毛郡 屋久島町 
      

    4.設定年月日

    平成4年3月30日

    5.面積

    総面積は15,185.44ha
    内保存地区:9,600.55ha
    保全利用地区:5,584.89ha
    なお、この面積は、屋久島全体の約30%、屋久島国有林の約40%に相当する。

    6.森林管理署等

    屋久島森林管理署

    7.現況

       現況については、林野庁、環境省、文化庁、鹿児島県、屋久島町により策定された屋久島世界遺産地域管理計画(以下、管理計画という)に詳しい記載があるが、これを参考に、屋久島の植生、動物相のほか自然環境全般について概略を記載する。
       なお、上記の管理計画は、作成年の平成24年から、かなりの時間が経過していることから、記載事項に修正が必要になってきている。
    現在、科学委員会、関係機関等により見直し作業が進められている段階であり、最新のものが作成された時点で、反映していくこととする。
       また、ここでは現在大きな問題となっているヤクシカの食害状況等についても関連情報として参考までに掲載する。
    (下記、1のカ.キ.)別途作成した「ヤクシカ好き嫌い植物図鑑」、「ヤクシカによる被害状況について」があり、リンクURLを張っている。

       1  自然環境


    ア.地形・地質
       遺産地域が位置する屋久島は、面積約500㎢、周囲約132kmのほぼ円形の島である。島の中央部に九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)を主峰として1,000mを超える山岳が45以上連座している。これらの山々の特に山頂部は風化を受けた花崗岩の奇岩が露出する特徴的な景観を呈している。平地部の降水量は年間4,000mmを超え、山頂部の降水量は年間10,000mmを超える。この多量の降雨が、多数の河川となり、花崗岩の岩盤に深い谷を刻んでいる。また、屋久島では麓から山頂までの地表面のすぐ下に、約7,300年前に屋久島北方40kmの海にある鬼界カルデラが大噴火した際の噴出物が堆積しており、幸屋火砕流堆積物(アカホヤとも言う)と呼ばれている。

    イ.気候
       屋久島は太平洋側気候区の南端部にあって、亜熱帯性気候の南西諸島気候区と接しており、海岸部に亜熱帯性気候がみられる。世界屈指の大きな海流である黒潮の影響により、気温は温暖多雨である。
    屋久島の8月の平均最高気温は約30℃で、1月の平均最低気温が8~9℃、年平均気温は19℃である。年間降水量は、平地部で4,000mmを超え、山岳地帯では8,000~10,000mmにも達する。島の中央部に九州最高峰の宮之浦岳を有するため、山頂付近では12月から3月までの平均気温が-5℃以下となることもあり、積雪も見られる。海岸部の平地から中央部の山岳地帯である奥岳までの標高差が大きいことから、亜熱帯から冷温帯までの気候を有している。

    ウ.植物
       屋久島は洋上に海抜約2,000mも屹立している島であり、海岸部・暖温帯から冷温帯・高層湿原に及ぶ多様な植生の垂直分布が顕著に見られる。海岸付近にはアコウ、ガジュマル等の亜熱帯性植物が生育し、海岸部から標高700~800m付近まではシイ類、カシ類を主とした暖温帯常緑広葉樹林、標高700~800m付近から標高1,200m付近までは暖温帯針葉樹林、標高1,200m~1,800m付近までは冷温帯針葉樹林、その上部の山頂部にはヤクシマダケ、ヤクシマシャクナゲの低木林が見られる。また、冷温帯域の標高1,600m付近には日本最南端の高層湿原があり、ミズゴケ、コケスミレ等が生育する一方、九州や本州などで冷温帯域を代表する樹種であるブナ、ミズナラ等はここ屋久島では欠如している。
       また、植物相は地理的特性や自然環境の多様性から1,900種以上の種が分布するほか、蘚苔類は600種に及ぶとされ。シダ類の種類も豊富とされる。モミ、ツガ、スギ等の屋久島を分布の南限とする種は200種以上、ナンテンカズラ、オニヒノキシダ等の北限種も多数確認されている。北限種、南限種、固有種については、次項でまとめる(下記、屋久島の植物図鑑に詳細な記述がある。)。
       さらに、屋久島では高地において矮小化した種や、岩場や渓流といった特殊な環境に生育する種など、多くの固有種や希少種が確認されている。希少種としては、環境省レッドリスト(2007)※によると、絶滅危惧1A類が47種、絶滅危惧1B類が52種、絶滅危惧2類が73種、準絶滅危惧種が31種報告されており、固有種としては、種・亜種・変種を含めて94種が報告されている。遺産地域内では、例えば、冷温帯域の山頂部にイッスンキンカ、ヒメコイワカガミ等の矮小化した植物やヤクシマリンドウ等の岩場の植物が、渓流にホソバハグマ等の渓流植物が、暖温帯域の尾根部にヤクタネゴヨウが、それぞれ生育している。山頂部に生育するヤクシマウスユキソウや中標高地域の林床部に生えるヤクシマタニイヌワラビ等は、現存する個体数が極度に少ない種として、特に絶滅のおそれが懸念されている。
    また、島の中央山岳地帯である奥岳地域を中心に、標高600m付近から1,800m付近にかけて天然スギが分布する。一般的なスギの寿命は最大800年程度とされているが、雨が非常に多く湿度の高い屋久島では、天然スギの生長は非常に遅く、樹脂が豊富で年輪が緻密であるため腐りにくいという特徴を有し、樹齢が千年を超えることも珍しくない。屋久島では、樹齢千年以上の天然スギは「ヤクスギ」(以下「ヤクスギ」という。)、千年未満の天然スギは「コスギ」と称し、樹齢3,000年に及ぶヤクスギを含む原生的な天然林は、独特の美しい景観を呈している。(※レッドリストのランク標記は一般には、ローマ数字を使用するが機種依存文字のためアラビア数字を使用した。)

    エ.屋久島の北限種、南限種、固有植物
       屋久島を分布の北限とする植物で、主なものを挙げるとナンテンカズラ、ホザキサクラ、テンノウメ、カキバカンコノキ、キダチキンバイ、ミヤマハシカンボク、タイワンヤマツツジ、オキナワクジャクなど多数に上る。種子島とともに、分布北限になっている主なものは、ガジュマル、コンロンカ、トキワヤマブキ等がある。分布南限植物は極めて多い。その主なものは、カヤ、ツガ、モミ、スギ、アカマツ、クリ、クヌギ、アケビ、ナナカマド、サンショウ、ツゲ、ヒメシャラ、フキなど200種余に上る。自生固有種としては、初島住彦氏によれば、オニヒノキシダ、ヤクシマタニイヌワラビ、オトメイヌワラビ、ヤクシマヒメイヌワラビ、ヤクシマチシダなど94種を挙げている。
       屋久島の概ね標高1,000m以上の冷温帯域は、本土ではブナなどの落葉広葉樹林となっているが、屋久島にはこの帯域を代表するブナ、トウヒ、シラベが欠如している。(このうち、ブナについては、隣の島、種子島の博物館で出土した葉の化石展示があったことから、過去にこの辺りまで到達していたと思われるが、定着までには至らなかったと考えられる。)このような特徴はあるものの、標高500mから1,000mの標高域に暖温帯性常緑広葉樹林、1,000m以上に冷温帯性針葉樹林が成立し、この2つの林帯にまたがって、平坦部にスギ常緑広葉樹林型が、また、岩塊尾根にツガ型の群落が分布している。
       なお、屋久島の植物については、下記リンクでその特徴、標高別の生育分布などについて少し詳しく紹介している。
    (シカの好き嫌いの観点から整理した好き嫌い図鑑も次項以降で参考掲載した。)

          屋久島の植物(食性の特徴と標高階層別)図鑑(写真)、掲載種574種内写真掲載367種

         屋久島植物図鑑2(あいうえお順、種数は187種)


    オ.動物
       屋久島が九州本土から切り離されて以来、1万5千年に及ぶ歴史の時間と変化に富む地形、地質、気候などが屋久島における多様性豊かな自然環境、生物の生息環境を創出してきたことで、そこに息づく野生動植物は、南限種、北限種、多くの固有種や亜種を生み出してきた。
       哺乳類は、ヤクシカ、ヤクシマザル、ヤクシマジネズミ、ヤクシマヒメネズミの4種の固有亜種、コイタチなどを含む16種が確認されている。このうち、ヤクシカについては、生息数が増加し、下層植生や落葉等の過剰な採食等の結果、嗜好種の減少、忌避植物の優占等による森林の構成種の単純化、下層植生の消失や階層構造の欠落、森林の更新阻害、裸地化による土壌流出や一部植物の絶滅が懸念されるなど、遺産地域の生態系や生物多様性への影響が危惧されている。また、鳥類では、ヤクシマカケス、ヤクシマヤマガラの2種の固有亜種を含む167種が確認されており、このうちアカヒゲ、カラスバト、イイジマムシクイ、アカコッコの4種が天然記念物に指定されている。このほか、爬虫類が15種、両生類が8種、昆虫類が約1,900種確認されるなど、屋久島は、面積の小さい島としては極めて豊富な動物相を有している。  

    カ.ヤクシカ好き嫌い植物図鑑
       屋久島においては、上記でも触れたようにヤクシカが在来植性や森林の下層植生、農林業に与える影響が大きな問題となっており、その生態系回復や被害回避のために、関係機関等において捕獲による個体数管理や植生保護柵の設置等様々な対策が行われてきている。
       これまで屋久島においては、ヤクシカの生態、食害の状況、他の動植物への影響など、多くの研究者等により広範な調査研究が行われ、膨大な知見も蓄積されてきた。
       ここでは、これらの研究成果や既往の文献等を参照しつつ、捕獲事業における知見を加えて作成した「ヤクシカ好き嫌い植物図鑑」(2012~2022一部改訂)を紹介する。とりまとめ時点から年数が経過し、知見はさらに増え加筆修正事項も多くあると思われるが、現在でも参考資料として引用され、ヤクシカ対策に活用されており、ヤクシカの生態系に与える影響、嗜好、不嗜好種の大まかな判別、行動特性等を把握する上で、数少ない資料となっている。
       一般的なニホンジカの食性、行動などにも共通する点も多いと思われるので、参考までに以下にリンクを張る。
    (令和2年度野生鳥獣との共存に向けた生息環境等整備調査(屋久島地域)報告書の最新の調査結果を反映し、より実態に合ったものとなるよう一部、修正を加えている。)
    ヤクシカ好き嫌い植物図鑑

    キ.ヤクシカによる植生への食害状況

    ヤクシカ被害の事例として、農林業被害や森林生態系への影響があるが、下記のURLで特に森林地域での被害事例を紹介している。
    ヤクシカの食害




    2   森林生態系保護地域及びその他の保護制度等

       「森林生態系保護地域」は、我が国の森林帯を代表する原生的な天然林が相当程度まとまって存在する地域を保存することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、森林施業・管理技術の発展、学術研究等に資することを目的としている。森林生態系保護地域は、林野庁が「国有林野の管理経営に関する法律」に基づき計画的に国有林野の管理経営を行う中で、地域毎の具体的な管理経営の計画策定に係る細部事項を定めた「国有林野管理経営規程」により策定された「国有林野施業実施計画」において設定し管理する地域であり、保護林の規模としては最も大きな区分になる。
    (保護林制度https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/keikaku/hogorin/index.html) 
       本制度の趣旨に沿い、平成4年(1992 年)3 月に屋久島の中心部の地域が「屋久島森林生態系保護地域」に設定された。「保存地区」は、最も原生的状況を呈する林分で、森林生態系の厳正な維持を図る地区であり、学術研究や非常災害時の応急処置のための行為等を除き、原則として、人手を加えずに自然の推移に委ねることとしている。「保全利用地区」は、保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう緩衝の役割を果たす地区であり、木材生産を目的とする森林施業は行わず、自然的条件等に応じて、森林の教育的利用、大規模な開発行為を伴わない森林レクリエーションの場としての活用を行うものとしている。
       屋久島における保護制度は、この他、原生自然環境保全地域、国立公園、天然記念物、鳥獣保護区、保安林などがあり、森林生態系地域が広がる地域とも重なるように重層的に保護の網がかけられている。
       なお、上記保護制度とは別に、屋久島は生物圏保全地域(MAB計画)(ユネスコエコパーク※)として、屋久島・口永良部島ユネスコエコパークに区域指定がされいる。

       ※ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は、生物多様性の保護を目的に、ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画(1971年に開始した、自然及び天然資源の持続可能な利用と保護に関する科学的研究を行う政府間共同事業)の一環として1976年に開始された。
    ユネスコエコパークは、豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域です。(認定地域数:131か国727地域)。うち日本のユネスコエコパークは、1980年(昭和55年)に登録された「志賀高原」、「白山」、「大台ヶ原・大峯山・大杉谷」、「屋久島・口永良部島」、2012年(平成24年)に登録された「綾」、2014年(平成26年)に登録された「只見」、「南アルプス」、2017年(平成29年)に登録された「祖母・傾・大崩」、「みなかみ」及び2019年(令和元年)に登録された「甲武信」の10か所がある。(太字が九州局管内)※2021年9月現在
      世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然を厳格に保護することを主目的とするのに対し、ユネスコエコパークは自然保護と地域の人々の生活(人間の干渉を含む生態系の保全と経済社会活動)とが両立した持続的な発展を目指している。(文部科学省HPより)

    8.法指定等

    保安林(森林法)、国立公園(自然公園法)、自然環境保全地域(自然環境保全法)、鳥獣保護区(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)、天然記念物(文化財保護法)  
    7.現況2   森林生態系保護地域及びその他の保護制度参照

    9.管理と利用に関する事項

    1.基本的事項

       屋久島森林生態系保護地域に係る保護・管理及び利用に関する事項については、基本的には、保護林設定管理要領(WORD : 39KB)(平成27年9月28日付け27林国経49号)に定められた取扱方針に従うものとする。
       これとは別に本保護林は、平成4年3月の設定当初、森林生態系保護地域の取り扱いに係る「屋久島森林生態系保護地域計画」が策定されているが、既にその内容は様々な課題を包含する現状とはほど遠いものとなっている。
       一方、世界自然遺産地域登録後の平成24年に、遺産地域の保全に係る各種制度を所管、管理する実施主体の関係機関(環境省、林野庁、文化庁、鹿児島県及び屋久島町)により策定された「屋久島世界遺産地域管理計画」があり、この中で、前段で触れた自然環境に係る事項と併せて、保護・管理、利用に関する事項がより具体的に記載されている。(なお、本管理計画は、これまでの状況の変化を踏まえて、現在見直し作業が行われている。)
       本保護林の保護・管理及び利用に関しては、上記の取扱方針に加えて、この計画の趣旨、考え方との整合性を持たせて取り組む必要がある。 ここでは、計画の概略を記載しながら、計画策定後の保全管理に係る特筆すべき事項について取り上げ紹介する。
       

    2.屋久島森林生態系保護地域を取り巻く現状と課題

      管理を行うに当たっては科学的知見を踏まえて順応的管理を行うこととしている。 屋久島には、現在、島内の広範囲にヤクシカの生息数の著しい増加があり、下層植生や落葉等の過剰な採食、構成種の単純化や森林の更新阻害、裸地化による土壌流出や一部植物の絶滅が懸念されている。さらに、気候変動による影響、外来種の侵入・定着、登山利用増加に伴う様々な影響など、遺産地域の生態系や生物多様性への大きな負の影響が懸念されるようになっている。
       屋久島は、先に触れたように原生的な生態系と自然景観を有しており、これら普遍的価値を後世に引き継いでいくことが重要とされている。基本的には、自然状態における遷移に委ね、各種制度に基づく厳正な保護を図り、必要に応じて能動的な管理を行うこととしている。

     

    3.管理に当たって必要な視点(世界自然遺産地域としての視点)と様々な対策への取組

      このような課題の解決に当たっては、遺産地域の特異な生態系や優れた自然景観を統合的・順応的に管理する必要があり、植物、動物、地形・地質、土壌、気象などの自然科学分野に加え、エコツーリズム、土地や資源としての利用のあり方などの社会科学分野も含めた様々な分野の研究機関や研究者の協力を得て、総合的対策を行う必要がある。
       このことを受け、平成 21 年(2009 年)には、様々な分野の科学者・専門家等で構成される科学委員会、その下に位置づけられるヤクシカワーキンググループなどが設置され、これら専門家等からの助言を踏まえて、関係機関が各種対策の実施や情報共有等を図るなど連携協力をしながら、順応的管理を行うことにより効果的な保全対策につなげることとしている。

    屋久島世界遺産地域連絡会議、科学委員会、ヤクシカワーキング
    https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/yakusima/kagakuiinkai.html

     

    4.九州森林管理局、屋久島森林管理署、屋久島森林生態系保全センターの取組

     九州森林管理局においては、地元屋久島森林管理署、屋久島森林生態系保全センターの職員や現地に密着したグリーンサポートスタッフ(GSS)による巡視活動、森林環境教育などきめ細かな保全活動が取り組まれている。

    屋久島森林生態系保全センター
    https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/yakusima_hozen_c/

       このほか、現地におけるモニタリング調査として、屋久島島内の東西南北、中央山岳部に設置した複数のモニタリング箇所を5年に一度、各種調査を継続実施している。さらに、シカ対策として、シカの生態調査を進めると共に、捕獲事業にも取り組みがおこなわれており、ヤクシカワーキングへの報告を行い、専門家からの助言を得て、さらに具体的施策につなげるなど大きな成果を上げている。
     

    5.その他(関連リンク等)

       屋久島自然環境保全に影響を与え問題となっていた山岳部におけるゴミ、し尿処理問題等を総合的に解決するため、「エコツーリズム」の推進の一環で、山岳部環境保全協力金制度が創設されている。これを運用することにより登山者等によるこれらの問題解決や観光客のコントロール、利用ルールの徹底、利用の適正化等に資するものとなっている。

       世界自然遺産屋久島山岳部環境保全協力金

       また、地域における関係者間協議(屋久島森林管理署等も設立時協議に参画)を経て、資源の保全と利用が調和する適正な利用ルールの設定、地域における持続可能な観光と地域振興、それらを啓発・実践するガイド活動の推進等を目的として、平成28年度に新たに「屋久島公認ガイド」の制度が設立され、全国的にも先進的な登録認定ガイドの制度となっている。

    屋久島登録認定ガイド制度
    https://www.env.go.jp/park/yakushima/ywhcc/ecotour/guide.htm

     伐採利用の歴史と林業遺産(屋久島の林業集落跡及び森林軌道跡)
       屋久島は、樹齢数千年にも達する天然杉のヤクスギが生育する自然豊かな島であるが、一方で、島の天然林はかなり以前から利用されて来た歴史がある。記録に残る本格的伐採利用の始まりは、屋久島が慶長17年(1612年)に島津氏の直轄領となった後、儒学者泊如竹が藩主島津氏へ年貢(屋根を葺く材料の平木(ひらぎ)として)の利用を進言したことに遡る。ここから木材利用の歴史が始まったとされている。その後、明治、大正を経て、昭和30年代から40年代にかけて、時代毎の要請に応えるように、島内各地に生育する天然杉や広葉樹林は、用材、薪炭材、パルプ資源など様々な用途で利用されてきた。
       これを裏付けるように、天然林のヤクスギの樹齢は、現在300年前後の若いものが多いとされ、それは島内各地に今も残る切り株跡から推定されている。その次の高樹齢グループは800年~1000年以上なっていて、中間の樹齢が少ないとされている。
       屋久島の森林(天然杉林等)の更新は、台風や斜面崩壊による自然攪乱だけに帰するわけでなく人為的攪乱による天然更新・再生もその一端を担っていたとされている。
     
    このような歴史が有る屋久島の林業の歴史の中で特に近代の林業を象徴する時代が、昭和30年代40年代にあり、高度経済成長の時代を支え、屋久島の経済発展、インフラ整備にも貢献したとされる屋久島の林業を象徴する林業集落跡ほかが、2016年林業遺産に登録されている。(屋久島自然遺産地域管理計画ほかより)

    林業遺産https://www.forestry.jp/efforts/forestryheritage/

       林業遺産:日本各地の林業は、地域の森林をめぐる人間の営みの中で編み出され、明治期以降、今日に至るまで、多様な発展を遂げてきた。日本森林学会において、学会100周年を契機に、日本各地の林業発展の歴史を、将来にわたって記憶・記録していく試みとして、「林業遺産」選定事業が始まった。林業発展の歴史を示す景観、施設、跡地等、土地に結びついたものを中心に、体系的な技術、特徴的な道具類、古文書等の資料群を、林業遺産として認定している。2020年現在で45件が登録されている。このうち、「屋久島の林業集落跡及び森林軌道跡」は、201619番目に登録されている。
    (日本森林学会HPより一部改変)

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsk/83/0/83_34/_pdf/-char/ja

    https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/2908-3.pdf

        また、古くから屋久島の山岳地域は島民の信仰の対象とされてきた歴史があり、現在も岳参り(だけまいり)という風習が各地の集落に残されており、このような地域住民の価値観や理念の文化的背景も森林生態系地域の保全管理にあたり留意する必要がある。

    10.屋久島森林生態系保護地域の区域図

    屋久島森林生態系保護地域区域図






    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612
    FAX:096-325-3804