第2章 林業と山村(中山間地域)









1.林業の動向
(1)林業生産の動向
林業産出額は近年増加傾向、2024年は5,713億円。国産材の素材生産量は2002年を底に増加傾向で推移、2024年は前年より減少
➢ 我が国の林業産出額は増加傾向で推移。2024年は、栽培きのこ類の価格の上昇や燃料用チップ素材の生産量の増加などから、前年比2.9%増の5,713億円。このうち約6割を占める木材生産は前年比0.8%増の3,276億円
➢ 国産材の素材生産量(製材、合板及びチップ用材)は、2002年を底に増加傾向で推移してきたが、2024年は前年比4.3%減の1,976万m3
(2)林業経営の動向
1林業経営体当たりの素材生産量は増加し、林業経営体の規模拡大が進行

➢ 林家69万戸のうち保有山林面積が1ha以上10ha未満の林家が88%を占め、小規模・零細な所有構造
➢ 林業経営体による素材生産量の約8割は森林所有者からの受託や立木買い。また、民間事業体や森林組合が素材生産全体の約8割を担っている状況
➢ 1林業経営体当たりの平均素材生産量は増加。年間素材生産量が1万m3以上の林業経営体による生産量が約7割を占めるまで伸展し、規模拡大が進行
➢ 森林組合数は602(2023年度)。森林整備の中心的な担い手であるが、規模の小さい組合も存在し経営基盤の強化が必要
(3)林業従事者の育成・確保及び所得向上
林業従事者の育成・確保に向けて「緑の雇用」事業等を推進

➢ 林業従事者数は、⾧期的には減少傾向であったが、近年横ばいに転じ、2020年は4.4万人。全産業の若年者率が低下する中、林業では、横ばいで推移
➢ 「緑の雇用」事業により新規就業者の確保・育成を図っており、これを活用した2024年度の新規就業者は708人。同事業による3年後の定着率は73.2%で、全産業(高校卒)の62.1%よりも高い状況
➢ 一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる特定技能制度について2024年に林業分野が追加
➢ 林業大学校は、2025年度末時点で全国に28校設置され、林業の現場で即戦力となる人材や将来林業経営を担う人材を輩出。緑の青年就業準備給付金事業により、林業大学校等で林業への就業を目指して学ぶ学生等を対象にした給付金の給付を支援
➢ 林業の労働災害発生率は他産業に比べて高いため、安全衛生装備・装置の導入や、安全巡回指導等を推進
➢ 林業従事者の通年雇用化が進展し、年間平均給与も361万円(2022年)まで増加しているが、全産業平均より100万円程度低い状況。特に30代から50代にかけて全産業平均との差が大きく、所得向上が重要。技能検定を含む能力評価による処遇の改善等を推進
➢ 林業従事者の技能向上、就業環境の整備及び社会的・経済的地位の向上、労働災害の減少への寄与を目的として、2024年に技能検定の職種に「林業職種」が新設。これまでに239人の「林業技能士」が誕生
➢ 林業に従事する女性は2,730人(2020年)。森林組合において、正組合員に占める女性の割合や女性役員が配置されている森林組合の割合は徐々に上昇
(4)林業経営の効率化に向けた取組
林業経営体への集積・集約化や、労働安全の確保や生産性の向上に向けた取組を推進
森林の集積・集約化
➢ 生産性向上、コスト低減等を図るためには、森林の経営管理に必要な権利の集積と経営管理の集約化が必要
➢ 森林経営管理制度や森林経営計画制度などの活用により、集積・集約化を推進
➢ 地籍調査の実施状況は地域間の進捗の差が大きく、林地における地籍調査の進捗が遅れている中、林野庁では、森林境界の明確化を図るため、森林整備地域活動支援対策により、現地立会等が省略できるリモートセンシングデータを活用した調査手法(航測法)等への支援を全国の市町村等に対して実施
➢ 所有者が不明な森林に対しては、森林経営管理制度により、一定の手続を経て市町村が経営管理権を設定できる特例措置を、2025年度末までに12市町において活用
➢ 2024年における外国法人等による森林取得は382ha。2026年2月に、森林の土地の所有者届出書の届出事項及び市町村が管理する林地台帳の記載事項に所有者の国籍等を追加する改正(届出書は2026年4月、林地台帳は2027年4月に施行)
➢ 所有者や境界の情報等を一元的に管理する林地台帳の活用、都道府県での森林クラウドの導入や森林関連情報のオープンデータ化など、林業経営体に対して集積・集約化に必要となる森林情報を提供する取組を推進
➢ 提案型集約化施業を行う「森林施業プランナー」や、木材の有利販売など持続的な経営を実践する「森林経営プランナー」の育成を支援


労働安全の確保や生産性の向上に向けた取組


➢ 林業は、造林から収穫まで⾧期間を要し、自然条件下での人力作業が多いことから、労働安全の確保や生産性の向上が課題
➢ 林業機械等の導入による生産性の向上等の従来の取組に加えて、新技術の活用により伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業」に向けた取組を推進
➢ 2022年度から2024年度にかけて、全国12か所において、収益性の向上につながる経営モデルの実証により、「新しい林業」の経営モデルの構築・普及の取組を支援。林野庁では、これらの取組内容を取りまとめた資料を公表するなど、「新しい林業」の普及を実施
➢ 先端技術等を活用した自動運転や遠隔操作の機能を有する林業機械の開発・実証を推進
➢ 多様な関係者で構成される地域コンソーシアムにおいて、地域一体で森林調査から原木の生産・流通に至る林業活動にデジタル技術をフル活用する「デジタル林業戦略拠点」の取組を推進
➢ 2026年3月に「スマート林業技術の現場実装ビジョン」を策定し、スマート林業の必要性や目指すべき将来像などを提示

事例 各種証明書のデジタル化とデータ活用に向けた取組
➢ デジタル林業戦略拠点(鳥取地域)では、生産流通SCM(サプライチェーンマネジメント)システムの構築を推進
➢ 木材のサプライチェーンにおいて、紙で運用していた見積・納品情報や県産材証明などをデジタル処理できるシステムを開発し、試行運用を開始
➢ このシステムにより、県産材証明書については約8割のコスト削減が可能と試算。また、木材の規格や取引数量などの情報を一括管理することで、関係者間の情報共有を円滑化するとともに、将来的には、蓄積されたデータを活用し、木材需給状況の把握や在庫管理の適正化などを推進

2.特用林産物の動向
(1)きのこ類等の動向
特用林産物は林業産出額の約4割、このうちの9割以上がきのこ類
➢ 特用林産物は林業産出額の約4割。地域経済の活性化や山村地域における所得の向上等に大きな役割
➢ 特用林産物の産出額の9割以上がきのこ類で、2024年の生産量は前年比0.2%減の43.5万トン。生産者戸数は高齢化や原木調達の困難などにより減少傾向
➢ きのこ類は国内需要の88%を国内で生産。きのこ類の安定供給に向けて、効率的な生産を図るための施設整備等や、生産性向上に取り組む生産者の先進的な取組を支援
➢ きのこ類の消費拡大に向け、きのこ類の関係団体や民間企業では、きのこ料理コンクール等を通じたPR活動等の取組を展開
➢ 2025年のきのこ類の輸出量は、乾しいたけが増加したものの、生鮮きのこ類については鮮度保持の課題等により減少しており、前年比15.3%減の978トン

事例 デジタル技術を活用した原木しいたけ栽培
➢ 生産者の高齢化や担い手不足が進む中、熊本県椎茸農業協同組合では熊本県と連携して、原木しいたけの栽培を次世代につなげるため、デジタル技術を活用した生産の効率化や生産技術のデータ化の取組を推進
➢ しいたけの生育や質に大きな影響を与える温度や湿度、照度、ほだ木の含水率等を計測するセンサーを設置し、環境データを収集する取組を開始。リアルタイムかつ継続的に正確な環境データの取得が可能となるとともに、収穫量データとの照合により、最適な条件の分析や予測が可能となり、品質向上や生産増加につながる成果
(2)薪炭・竹材・漆の動向
2024年の木炭、薪、竹の生産量は前年より減少、漆の生産量は増加

➢ 2024年の木炭の生産量は、前年比6.4%減の1.6万トン。2024年の薪の生産量は、前年比1.0%減の6.2万m3
➢ 竹材の生産量は、2017年以降減少傾向にあり、2024年は前年比2.2%減の88万束。近年は、家畜飼料、土壌改良材、メンマ、洗剤など、竹資源の有効利用に向けた取組が進展
➢ 2024年の漆の生産量は、前年比8.5%増の1.8トン。国宝・重要文化財建造物の保存修理に使われるほか、工芸品等向けの国産漆の需要もあることから、ウルシ林の造成・整備等を進める地域も

事例 地域の人々と共に取り組む漆文化を守る活動
➢ 特定非営利活動法人丹波漆は、漆の産地である京都府福知山市の夜久野地域において、ウルシの植栽・管理や漆掻き技術の継承に取り組みながら、地域の人々と共に漆文化を守る活動を実施
➢ 植樹祭等を通じてウルシの木を植える取組を進め、2012年当時約400本だったウルシの木は約1,800本となり、漆掻き職人は1人から5人に増加するほか、技術も継承
➢ 同法人は、2024年に西日本では初めての団体として、文化庁から選定保存技術「日本産漆生産・精製」の保存団体に認定。大阪・関西万博では、地域住民もスタッフとして加わり、丹波漆の魅力をPR
3.山村(中山間地域)の動向
(1)山村の現状
山村の地域資源に対し都市住民や地方移住希望者等から大きな関心
➢ 山村は、林業を始めとする様々な生業が営まれる場であり、森林の多面的機能の発揮に重要な役割
➢ 山村振興法に基づく「振興山村」は国土面積の約5割、林野面積の約6割を占めるが、その人口は全国の2.5%であり、過疎化・高齢化が進行し、森林の荒廃等の問題が発生
➢ 山村の豊富な森林・水資源、景観、文化等に対しては、都市住民や地方移住希望者等から大きな関心
(2)山村の活性化
林業・木材産業の成⾧発展に加え、地域資源の発掘と付加価値向上等の取組を支援

➢ 山村地域での生活を成り立たせていくためには、地域資源を活かした産業の育成等を通じた山村の内発的な発展が不可欠。林業・木材産業を成⾧発展させるほか、特用林産物、広葉樹、ジビエ等の地域資源の発掘と付加価値向上等の取組を支援
➢ コミュニティの維持・活性化のため、地域住民や地域外関係者(関係人口等)による里山林の継続的な保全管理や利用等の協働活動や、林業高校・林業大学校への就学、「緑の雇用」事業によるトライアル雇用等を契機とした移住・定住を促進
➢ 農林水産省が2025年5月に取りまとめた「地方みらい共創戦略」では、「森業(もりぎょう)」が位置付け。森林浴など森林空間を活用した体験サービスの提供や企業による森林(もり)づくり活動、森林由来J-クレジットの取引等を通じて、人と森林の関係を深めるとともに、林業と相まって森林所有者に利益を生み出し、豊かな森林づくりにつなげる森業を推進
お問合せ先
林政部企画課
担当者:年次報告班
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