第3章 木材需給・利用と木材産業









1.木材需給の動向
(1)世界の木材需給の動向
世界の産業用丸太消費量はおおよそ20億m3で推移
➢ 世界の産業用丸太消費量は、近年おおよそ20億m3で推移し、2024年は前年比2.0%増の19億6,095万m3
➢ 世界の産業用丸太輸入量は2024年は前年比1.2%減の9,819万m3。最大の輸入国は中国で、世界の輸入量に占める割合は36.8%
(2)我が国の木材需給の動向
2024年の我が国の木材需要量、国産材供給量は共に増加。木材自給率は42.5%
➢ 木材需要量は、燃料材や建築用材等の需要が増加したことにより、2024年は前年比2.5%増の8,187万m3
➢ 国産材供給量は、我が国の森林資源の充実等により2002年を底に増加傾向。2024年は前年比1.4%増の3,481万m3
➢ 木材輸入量は、丸太は減少したものの、製品及び燃料材がともに増加した結果、2024年は前年比3.2%増の4,707万m3
➢ 木材自給率は、木材需要量の増加割合に比べて国産材供給量の増加割合が小さかったため、2024年は前年比0.4ポイント低下し42.5%。建築用材等の自給率は前年比2.4ポイント低下し52.9%
(3)木材価格の動向
2025年の木材価格は2021年のピーク時からは下落
➢ 2025年の木材価格は、製品・素材(丸太)ともに、2021年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)時から下落傾向。国内企業物価指数が上昇している中ではあるが、価格上昇前の2020年よりも高い状況
(4)違法伐採対策
川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等の義務付け等を内容とする改正クリーンウッド法が2025年4月に施行
➢ 2025年4月に施行された改正クリーンウッド法(正式名称:合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)により、川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等を義務付け
➢ 事業者による合法性確認の取組や普及啓発の支援のほか、合法性確認情報の伝達等を行うシステムの運用等を実施
2.木材利用の動向
(1)木材利用の意義
木材利用は、炭素の貯蔵、エネルギー集約的資材の代替、化石燃料の代替の面で地球温暖化防止に貢献。調湿作用や高い断熱性などがあるほか、心理面・身体面等に好影響
➢ 森林から搬出された木材を建築物等に利用することで、炭素を長期的に貯蔵することが可能。木材は製造・加工時のエネルギー消費が他資材よりも比較的少なく建築に係る二酸化炭素の排出削減に貢献。さらに、建築用材等としての利用後も化石燃料の代替とすることが可能
➢ こうした意義は、都市(まち)の木造化推進法(正式名称:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)に規定されるとともに、地球温暖化対策計画(2025年2月閣議決定)等にも反映
➢ 木材は、調湿作用や高い断熱性などがあるほか、心理面・身体面等に好影響

(2)建築分野における木材利用
建築用木材の需要の大部分は低層住宅分野。非住宅・中高層建築物の木造化・木質化も一部で進展
建築分野における木材利用の概況

➢ 着工建築物の木造率(床面積)は、1~3階建ての低層住宅では80%を超えるが、低層非住宅建築物及び4階建て以上の中高層建築物は低位。住宅(木造軸組工法)における国産材の使用割合は約5割
➢ 建築用木材の需要の大部分を占める低層住宅分野において、国産材の利用を拡大していくことが重要。同時に、人口減少等により新設住宅着工戸数が長期的には減少していく可能性を踏まえると、非住宅・中高層建築物での木造化・木質化を進め、新たな木材需要を創出することが重要

住宅分野における木材利用の動向
➢ 住宅に用いられる木材製品については、品質・性能が求められていることから、寸法安定性の高い人工乾燥材の割合が上昇
➢ 大手住宅メーカーでは、柱材等において輸入集成材からスギ集成材等へ転換する動きがみられ、一戸当たりの国産材使用割合が上昇。工務店では、部材によらず国産材製材品の使用割合が比較的高い傾向
➢ 林野庁では、素材生産業者や製材業者、木材販売業者、大工・工務店、建築士等の関係者が一体となって消費者の納得する家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進
➢ 花粉発生源対策の観点も含め、スギ材で対応可能な住宅用部材のスギJAS構造材等への転換を推進
非住宅・中高層建築物における木材利用の動向

➢ 非住宅・中高層建築物に関しては、建築基準の合理化が図られるとともに、製材品やCLT、木質耐火部材、内装材等の技術開発が進展。木材を構造部材等に使用した10階建てを超える先導的な高層建築等の例も出現
➢ ウッド・チェンジ協議会での検討、都市(まち)の木造化推進法による建築物木材利用促進協定の締結(国:32件、地方公共団体:192件)など、建築物の木造化・木質化に向けて官民を挙げた取組を実施

公共建築物等における木材利用
➢ 2024年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は15.9%、うち低層は33.4%。都道府県ごとでは、低層の公共建築物の木造率について1~2割と低位な都府県がある一方、5割を超える県も存在
➢ 大規模災害後に木造応急仮設住宅を速やかに供給するため、全国で災害協定の締結が進展。岩手県大船渡市における林野火災では、長屋型の木造応急仮設住宅のほか、戸建風の木造のものが建設
(3)木質バイオマスの利用
新たなマテリアル利用に向け開発を推進。エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加
木質バイオマスの新たなマテリアル利用
➢ 化石資源由来の高機能プラスチックを代替する改質リグニンについて、SBIRフェーズ3基金事業「農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業」を活用し、愛媛県⿁北町でスタートアップ企業が行う大規模製造技術実証を支援
➢ 改質リグニンの原料調達から製造、廃棄に至るLCAを実施。二酸化炭素排出量の多い高機能プラスチックを代替することによる排出削減効果を定量化
➢ 軽量ながら高強度で保水性に優れるセルロースナノファイバー(CNF)については、製造設備が各地で稼働しており、輸送機器部品、食品等に使用。国産材チップの調達が容易な中山間地域における事業化を念頭に、需要者からの要求に合わせた材料特性の調整等が可能な小規模設備によるCNFの一貫製造技術の開発を支援し、これまでに木材保護塗料が製造・販売

木質バイオマスのエネルギー利用
➢ エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加し、2024年における燃料材の国内消費量は前年比11.0%増の2,258万m3、うち国内生産量は同9.7%増の1,227万m3
➢ FIT・FIP制度により木質バイオマス発電施設が各地で稼働
➢ 燃料材の安定供給に向けて、全木集材による枝条等の活用や林地残材の効率的な収集・運搬システムの構築等を支援
➢ 木質バイオマス発電におけるエネルギー変換効率は20~30%程度であるが、熱利用におけるエネルギー変換効率は80%以上を得ることが可能であることから、積極的な熱利用が必要。地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築を推進
(4)消費者等に対する木材利用の普及
「木づかい運動」「木育(もくいく)」等により木材利用の意義を発信
➢ 一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開。都市(まち)の木造化推進法で10月を「木材利用促進月間」として位置付け、木材利用の意義等を情報発信
➢ 「ウッド・チェンジロゴマーク」や「木づかいサイクルマーク」を企業等に使用してもらうことにより消費者等の認知度を向上させ行動を促進。このほか、「Japan WoodLabel」及び「Wood Carbon Label」のロゴマークを定め、製品等における国産材の使用状況や炭素貯蔵量を可視化
➢ 大阪・関西万博において、「木づかいシンポジウム2025 in 万博」を開催
➢ 「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見できる製品や取組等を表彰
➢ 子供から大人までが木に触れつつ木の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」を推進
(5)木材輸出の取組
木材輸出額は近年増加傾向。2025年は596億円
➢ 木材輸出額は近年増加傾向。2025年は前年比10.8%増の596億円
➢ 品目別にみると丸太が50.1%と最も多く、その約9割が中国へ輸出され、こん包材、土木用等に利用。また、米国向けの製材品は、主にフェンス材に利用
➢ 製材・合板を輸出重点品目とし、丸太中心の輸出から、付加価値の高い製品の輸出への転換を促進
➢ CLT等の輸出基盤の構築に向けたテストマーケティングの取組等への支援を実施。また、(一社)日本木材輸出振興協会を中心に、海外展示会への出展やセミナー等を通じた販売促進活動、米国への日本産樹種の構造材輸出に向けた性能検証など、業界共通の課題解決に向けた様々な取組を実施
3.木材産業の動向
(1)木材産業の概況
木材・木製品製造業の付加価値額は近年増加傾向
➢ 木材産業は、森林資源に近い地域で営まれることが多く、地域における雇用の創出や経済の活性化に貢献
➢ 木材・木製品製造業の付加価値額は、近年増加傾向で推移しており、2023年は1兆222億円
(2)木材産業の競争力強化
木材産業における国際競争力や地場競争力の強化に向けた取組が進展
➢ 国際競争力の強化に向け、品質・性能の確かな製品を低コストで安定供給していくため、製材・合板等の工場において大規模化・集約化が進展
➢ 中小製材工場等の地場競争力の強化に向け、多品目の製品を生産する取組や、地域の素材生産業者、工務店等の関係者の連携による、付加価値の高い製品の企画・開発・プロモーションの取組等を支援
➢ 品質・性能の確かなJAS構造材の供給に向け、JAS構造材の生産体制の整備の支援、「JAS構造材活用宣言」を行う建築事業者等の見える化、JAS構造材の利用実証の支援、製材工場等におけるグレーディングマシン等導入への支援を実施
➢ 国産材製品の供給力強化に向け、生産性の向上や国内人材の確保に加えて、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる特定技能制度について2024年に木材産業分野が追加
➢ 労働災害防止に向け、専門家による安全パトロールや研修、製材工場等における「安全診断・評価マニュアル」の作成等を支援

事例 地域の関係者が連携した乾燥材の高付加価値化の取組
➢ 木材市場等を営む肥後木材株式会社は、人工乾燥材(KD材)の取扱い拡大に向け、乾燥機8基等を整備し、2025年3月から乾燥加工事業を開始
➢ 熊本県内の中小製材工場の事業継続にも寄与するため、5社と協定を締結。5社はグリーン材を安定的に供給し、乾燥・仕上げと販売は肥後木材が行うなど、安定した品質のKD材生産を実施
(3)国産材活用に向けた製品・技術の開発・普及
国産材の活用に向けた新たな製品・技術の開発・普及を推進
➢ 増加が見込まれる大径材に対応した木取りが必要であり、それに対応した製材や加工、乾燥の技術の開発・普及等を支援
➢ 非住宅・中高層建築物での木材利用拡大に向け、「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」に基づき、標準的な木造化モデルの作成・普及やCLTパネルの寸法の標準化等を推進。2026年3月には、2026年度以降を対象とした「CLTの普及に向けた第4次ロードマップ」を作成
➢ 低層非住宅建築物の木造化に向け、製材品等の一般流通材で大スパンを実現できる工法の開発が進展。各地域での拡大が期待できる4階建て木造ビルや共同住宅等について、コスト・施工性等の面で高い競争性を有し、広く展開が期待できる構法等を普及

事例 カラマツ集成材を活用した23m超のスパンによる大空間の実現
➢ 株式会社マルオカは、プレカット工場の建設に当たり、有識者からアドバイスを受けつつ、地域で一般流通している寸法のカラマツ集成材を活用して23m超のスパンによる大空間を実現。既存の金物やプレカットラインを使うことができ、施工もスムーズに行うことが可能に
➢ また、完成した工場の見学会やセミナーを行うなど、ノウハウも普及
(4)木材産業の各部門の動向
製材業、集成材製造業、合板製造業では国産材の利用割合が長期的に上昇傾向
(ア)製材業
➢ 製材品の出荷量は近年ほぼ横ばいで推移。2024年は前年比4.5%減の760万m3。原木入荷量の82.9%が国産材
(イ)集成材製造業
➢ 国内での集成材の生産量は、2024年には前年比4.7%増の175万m3であり、用途別では構造用が大半。国内の集成材生産量のうち国産材割合は47.0%で、長期的に上昇傾向
➢ 集成材の製品輸入は77万m3で、集成材供給量全体に占める割合は30.5%
(ウ)合板製造業
➢ 普通合板の生産量は、2024年には前年比1.0%減の251万m3であり、用途別では構造用が大半
➢ 合板への国産針葉樹の利用が拡大し、2024年には国内の合板生産における国産材割合は94.3%に上昇
➢ 製品輸入を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は51.0%で上昇傾向
(エ)木材チップ製造業
➢ 2024年の木材チップ(燃料用チップを除く。)の生産量は前年比15.3%減の446万トン。原木以外に工場残材、解体材・廃材等から生産。一方、木材チップの輸入量は2024年には前年比0.6%減の1,105万トン
(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業
2024年のパーティクルボードの生産量は前年比5.4%減の88万m3、繊維板の生産量は前年比8.0%減の57万m3
(カ)プレカット製造業
➢ 木造軸組工法におけるプレカット加工率は2024年には94%まで上昇
(キ)木材流通業
➢ 2023年の製材工場等に向けた国産原木の流通において、素材生産業者等から製材工場等へ直接販売されたものは41.8%、木材市売市場等を経て販売されたものは31.0%、木材販売業者等を経て販売されたものは27.3%
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