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林野庁

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第1部 特集 第2節 木材利用拡大に向けた取組(1)

(1)建築物への木材利用に関する制度的・技術的な対応

(ア)制度的な対応

森林が国土の約3分の2を占め、木材が身近な材料であった我が国においては、建築物の構造部材等として古くから木材が利用されてきた。建築物の木造化等に関する制度は、建築物に求められる性能や木材利用に関する技術の進展等に合わせて見直し等が行われてきている(資料 特-1)。

資料 特-5 建築物の木造化等に関する制度の変遷

(戦後の建築物の非木造化)

戦後の1950年代には、耐火性能への要請や森林資源の枯渇、国土の荒廃への懸念等から、建築物の不燃化・非木造化が進められた。昭和25(1950)年に衆議院で決議された「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」においては、新たに建設する官公庁建築物は、原則として不燃構造とすることとされたほか、昭和30(1955)年に閣議決定された「木材資源利用合理化方策」においては、耐火建築の普及奨励を推進し国及び地方公共団体が率先垂範することや、用途規模により建築物の木造禁止の範囲を拡大することが明記された。

このような時代背景の下、昭和25(1950)年に制定された建築基準法においては、高さ13m又は軒高9mを超えるなどの大規模な建築物は、主要構造部を木造としてはならないとされるなど、木造建築物に対して強い規制がかけられた。


(木造建築物に対する規制の合理化)

その後、昭和62(1987)年の建築基準法改正により、安全上・防火上一定の技術的基準に適合するものについては、大断面集成材を用いた燃えしろ設計(*15)による大断面木造建築物の建築が可能となるなど、木造建築物に対する規制は徐々に合理化されてきた。

平成10(1998)年の改正では、材料や寸法などの仕様を具体的に規定する「仕様規定」から、強度、耐火性能等の性能を満たせば仕様を問わない「性能規定」へと見直されることとなった。この性能規定化によって、主要構造部の木材を防火被覆等により耐火構造とすることで木造の耐火建築物の建築が可能となり、木造建築の可能な範囲が大きく広がった。


(*15)火災時の燃え残り部分で構造耐力を維持できる厚さを確保する設計。



(建築物への木材利用促進へ)

平成22(2010)年には、木造率が低く潜在的な需要が期待できる公共建築物に重点を置いて木材利用を促進するため、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下「公共建築物等木材利用促進法」という。)が制定された。同法においては、国が「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」を策定し、この中で公共建築物については可能な限り木造化又は内装等の木質化を図る方針が明確化された。

平成25(2013)年には、非住宅・中高層建築物での木材利用拡大に向けて、直交集成板(CLT(*16))に関する日本農林規格(JAS)(*17)が制定された。また、平成28(2016)年には、CLTパネル工法について、建築基準法に基づくCLTを用いた建築物の一般的な設計法に関する告示が制定されるなど、利用拡大に向けた制度的な環境整備が進展してきた。

さらに、令和3(2021)年には、民間建築物を含む建築物一般で木材利用を促進するため、公共建築物等木材利用促進法が改正された。これにより、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下「都市(まち)の木造化推進法」という。)として、法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大されるとともに、建築物木材利用促進協定制度が創設された(*18)。

建築基準についても、近年では、平成30(2018)年の建築基準法改正により、耐火構造等とすべき木造建築物の対象が、「高さ13m又は軒高9m超」から「高さ16m超又は階数4以上」に見直されるとともに、耐火構造等とすべき場合でも、延焼範囲を限定する防火の壁等の設置など消火措置の円滑化を図ることで、燃えしろ設計により構造部材の木材をそのまま見せる「現(あらわ)し」での建築が可能となった。令和4(2022)年にも、建築基準法改正により、3,000m2超の大規模木造建築物において燃えしろ設計による「現(あらわ)し」での建築が可能となるほか、耐火性能が要求される大規模建築物において、防火上・避難上支障がない範囲内で、部分的な木造化が可能となった。

なお、令和7(2025)年7月からは、製材JASの改正(*19)により、寸法許容差の合理化や標準寸法表の簡素化等が図られるなど、JAS構造材の利用ニーズに合わせた対応がなされている。


(*16)Cross Laminated Timberの略。一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着したもの。

(*17)「直交集成板の日本農林規格」(平成25年農林水産省告示第3079号)

(*18)建築物木材利用促進協定については、第3章第2節(2)161-164ページを参照。

(*19)令和7(2025)年の製材JASの改正については、第3章第3節(2)182-184ページを参照。



(イ)技術的な対応

建築基準の合理化と併せて、耐火性能を有する木質耐火部材や、強度性能が担保されるJAS構造材の開発・利用が進展するなど、建築物への木材利用に向けた技術的な対応が行われてきた。


(木質耐火部材の開発・普及)

建築基準法に基づき必要に応じて使用される木質耐火部材については、これまでに1時間耐火から3時間耐火までのものが開発されている。3時間耐火の性能を有する木質耐火部材であれば、耐火要件上は、階数に制限なく木造で建築することが可能となっている(資料 特-6)。

耐火部材としては、火災による一定時間の加熱が終了した後も、建築物が倒壊しないための性能が求められることから、木質耐火部材として、(ア)木材を耐火性能のある石膏(こう)ボードで被覆したもの、(イ)モルタルや難燃薬剤処理を施した木材等を燃え止まり層として集成材等の内部に配置したもの、(ウ)鉄骨を木材で被覆したものが開発されてきている(資料 特-7)。また、令和5(2023)年4月の改正建築基準法施行令の施行により、階数に応じた基準の合理化として最上階から数えて5~9階部分の耐火要求時間が2時間から1.5時間に見直されたことなどから、これに対応した木質耐火部材の開発が進んでいる。

資料特-6 木炭の国内生産量の推移
資料特-6 販売向け薪の国内生産量と価格の推移

(CLTの開発・普及)

非住宅・中高層建築物に使用できるCLTの開発・普及の取組も進められてきており(資料 特-8)、共同住宅、ホテル、オフィスビル、校舎等の建築物の壁や床などに使用されている。

資料 特-8 CLTの構成

CLTの普及に向けては、「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」において作成された令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までを期間とする「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」(令和4(2022)年改定)に基づき、取組を進めている。ロードマップにおいては、CLTの普及に向けた課題として、CLTの認知度が低いことや、コスト面の優位性が低いこと、活用範囲が狭いことなどを挙げている。

林野庁では、CLTの認知度の向上に向けて、CLTを用いた先駆的な建築物の設計・建築等の実証を支援しており、支援実績は令和7(2025)年度までの累計で184件となっている。

また、CLTの製造に当たって効率的な量産体制の構築が図られるよう、CLTパネルの寸法の標準化を推進するとともに、設計・施工コストの低減に向けて、CLTパネル工法の標準的な木造化モデルの作成・普及等を推進している(資料 特-9)。

資料 特-9 標準寸法のパネルを活用したCLTパネル工法普及モデル

さらに、より自由度の高い設計を可能とするため、強度性能の高い9層9プライ(*20)の基準強度の設定に必要な強度データを収集するほか、既存のCLTより薄くても強度性能を確保できる可能性のある非等厚CLT(*21)の開発等を実施している。

CLTを活用した建築物は、令和7(2025) 年度末までに1,700件を超える見込みであるほか(*22)、令和7(2025)年6月時点で、JAS認証を取得したCLT工場は全国で計11工場、生産能力は年間約10万m3となっている。


(*20)ラミナをその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものが「プライ」、直交集成板を構成するプライ又はプライをその繊維方向を互いにほぼ平行に積層接着したものが「層」。

(*21)異なる厚さ(非等厚)のラミナで構成されたCLT。

(*22)内閣官房ホームページ「CLTを活用した建築物の竣工件数の推移」



(一般流通材等を使用した新たな工法の開発・普及)

大規模な建築物では、高い構造安全性等を満たすため、大断面集成材やCLTなどの高耐力な木材製品等が使用される場合が多く、これらの製品は個々の建築物の設計に対応した特注品になることが多いが、低層・中層の非住宅建築物等においては、住宅建築で一般的に使われる木材製品や建築手法等を用いることで、設計・施工の低コスト化を図ることが可能である。

林野庁では、地方においても展開が期待される、一般流通材等を活用した低層・中層の標準的な木造化モデルの作成・普及を支援しており、3階建て、4階建てのオフィスの標準モデルが設計されている(資料 特-10)。また、国土交通省と連携して、木造4階建ての事務所及び共同住宅について、コスト・施工性等の面で高い競争性を有し、広く展開が期待できる構法の解説集(*23)を取りまとめ、普及を行っている。

さらに、低層非住宅建築物のうち、体育館、倉庫、店舗など柱のない大空間が求められる場合であっても、大断面集成材を使わず、一般流通材で大スパン(*24)を実現できる工法も開発されている(*25)。

資料 特-10 3階建て、4階建て木造ビルの標準モデル


(*23)公益財団法人日本住宅・木材技術センター「みらいを切り拓く!中大木造建築~中大木造建築物の普及加速化に資する構法解説集~」(令和7(2025)年3月)

(*24)建築物の構造材(主として横架材)を支える支点間の距離。

(*25)一般流通材で大スパンを実現した建築事例については、第3章第3節(3)の事例3-8(189ページ)を参照。



(大径材を含む国産材の利用技術の開発)

住宅分野においても、構造部材として用いられる木材製品に寸法安定性や強度等の品質・性能が求められている。中でも、梁(はり)や桁などの横架材については、高い曲げヤング率(*26)が求められることなどから、輸入材が高いシェアを有しているほか、我が国の木造の新設住宅着工戸数の約2割のシェアを占める枠組壁工法(ツーバイフォー工法)の構造用製材についてもこれまで国産材割合は低位であった。

これらの分野における国産材利用を進めるため、林野庁では、出材量の増加が見込まれる国産大径材等から、横架材やツーバイフォー工法用の構造材を効率的に製造する技術等の開発・普及を推進している(資料 特-11)。

資料 特-11 大径材の利用技術の開発


(*26)ヤング率は材料に作用する応力とその方向に生ずるひずみとの比。このうち、曲げヤング率は、曲げ応力に対する木材の変形(たわみ)のしにくさを表す指標。



(内装材等における国産樹種を活用した製品開発)

内装材等についても、国産樹種を活用した製品の開発や販売が行われている。近年、建築物のリフォーム等の受注高は、堅調に推移してきており、リフォーム需要の一定割合を占める内装等において木材利用が期待できる。

内装材へのスギ等の国産針葉樹材の活用に向けては、材質が比較的柔らかく傷がつきやすいといった特性をカバーするため、圧密加工により表面硬度を高めた板材の開発が行われてきたほか、特殊建築物(*27)や3階建て以上等の建築物など内装制限のかかる箇所における内装木質化のため、難燃薬剤処理を施した内装材の開発等が行われてきている。

また、近年は広葉樹材の輸入が減少傾向にある中、国産広葉樹材の供給ニーズも高まっており、これまであまり活用されてこなかった国内の里山広葉樹を使用した内装材・家具 等の製品開発も行われている。


(*27)不特定又は多数の人が利用する建築物や就寝に利用する建築物など、火災時における利用者の避難安全性確保に特に配慮を要する建築物。



(ウ)建築物への木材利用の進展

建築物への木材利用に関する制度的・技術的な進展がみられる中で、非住宅・中高層建築物の木造化・木質化に取り組む例が広がりをみせており(資料 特-12)、中高層木造建築物の新築着工床面積は増加傾向にある(資料 特-13)。また、住宅分野においては、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)における構造用製材の国産材使用割合が20%まで上昇している(資料 特-14)。

円安の影響等もある中、建築用材等における国産材の割合は近年上昇傾向で推移し、令和6(2024)年は製材用材・合板用材ともに国産材割合が5割を超えており、建築用材等全体では52.9%となっている(資料 特-15)。

資料 特-12 非住宅・中高層建築物における木材利用の事例1
京橋キノテラス外観 京橋キノテラス内観 奥村組西川口寮外観 奥村組西川口寮内観 キャプション by Hyatt(外観) キャプション by Hyatt(内観) ブランシエスタ目黒中央町(外観) ブランシエスタ目黒中央町(構造) 伊藤忠商事寄宿舎棟(木造写真(写真提供:井上隆司氏)) 伊藤忠商事寄宿舎棟(寄宿舎パース) TQ渋谷宇田川町(外観(夜景)) TQ渋谷宇田川町(内観)
資料 特-12 非住宅・中高層建築物における木材利用の事例1
NISHIGAWA TERRACE(外観) NISHIGAWA TERRACE(内観) 六戸町立義務教育学校六戸学園(外観(トリミング)) 六戸町立義務教育学校六戸学園(大階段) MOTOMACHI Wood Terrace(外観) MOTOMACHI Wood Terrace(内観) 旭川中央警察署大町交番(外観) 旭川中央警察署大町交番(内観) TODA BUILDING 写真提供:株式会社エスエス TODA BUILDING 写真提供:御園生 大地 氏 第2名古屋三交ビル 第2名古屋三交ビル


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