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第3章 木材需給・利用と木材産業

1.木材需給の動向

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(1)世界の木材需給の動向

世界の産業用丸太消費量は約20億m3

➢ 世界の産業用丸太消費量は、近年おおよそ20億m3で推移し、2022年は前年比2%減の20億2,606万m3

➢ 世界の産業用丸太輸入量は前年比17%減の1億1,858万m3。最大の輸入国は中国で、世界の輸入量に占める割合は近年上昇し、2022年は37%


(2)我が国の木材需給の動向

2022年の我が国の木材需要は増加。木材自給率は40.7%

➢ 木材需要量は、建築用材の需要が減少したが、燃料材の需要が増加したこと等により、2022年は前年比3.6%増の8,509万m3

➢ 国産材供給量は、我が国の森林資源の充実等により2002年を底に増加傾向で、2022年は建築用材等で前年比1.9%増の1,785万m3、全体で前年比2.7%増の3,462万m3

➢ 木材輸入量は、2022年は燃料材等の輸入量の増加により、前年比4.3%増の5,048万m3

➢ 木材自給率は、2022年は前年比0.4ポイント低下の40.7%と4割を維持。建築用材等の自給率は前年比1.5ポイント増の49.5%

➢ 2022年3月、ロシアはウクライナ情勢に関連して我が国を含む非友好国に対してチップ、丸太、単板の輸出を禁止。同年4月に我が国も輸入を禁止


(3)木材価格の動向

2023年の木材価格は2021年のピーク時から低下したが、以前よりも高い水準で推移

➢ 2023年の木材価格は、製品・素材(丸太)ともに、2021年の木材不足・価格高騰から下落傾向にあるものの、価格上昇前の2020年よりも高い水準で推移


(4)違法伐採対策

改正クリーンウッド法が2023年4月に成立

➢ 2017年に施行されたクリーンウッド法(正式名称:合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)により、合法性の確認等の措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、登録木材関連事業者として登録。登録件数は660件(2024年3月末時点)。第一種登録木材関連事業者によって合法性が確認された木材は約3,500万m3で、2022年木材需要量の約4割

➢ 川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等の義務付け等を内容とする改正クリーンウッド法が2023年4月の第211回通常国会にて成立


2.木材利用の動向

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(1)木材利用の意義

木材利用は2050年カーボンニュートラルの実現等に貢献

➢ 森林から搬出された木材を建築物等に利用することにより、森林が吸収した炭素を長期的に貯蔵することが可能。木材は製造・加工時のエネルギー消費が他資材よりも比較的少なく建築に係る排出削減に貢献。さらに、建築用材等としての利用後もカーボンニュートラルな燃料として化石燃料を代替することが可能

➢ こうした意義は、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献するものとして、都市(まち)の木造化推進法(正式名称:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)に規定されるとともに、「地球温暖化対策計画」(2021年10月閣議決定)にも反映

➢ 木材には調湿作用や高い断熱性があるほか、生理・心理面に好影響

循環利用のイメージ

(2)建築分野における木材利用

非住宅・中高層建築物の木造化・木質化が進展。「都市(まち)の木造化推進法」等により更なる木材利用を後押し

建築分野における木材利用の概況

➢ 着工建築物において、床面積ベースでみると、低層住宅(1~3階建て)の木造率は80%を超えるが、低層非住宅建築物及び中高層建築物(4階建て以上)の木造率は低位。住宅(木造軸組工法)における国産材の使用割合は約5割

➢ 建築用木材の需要の大部分を占める低層住宅分野において、国産材の利用率を増やしていくことが重要。一方、人口減少等により新設住宅着工戸数が長期的には減少していく可能性を踏まえると、非住宅・中高層建築物での木造化・木質化を進め、新たな木材需要を創出することが重要


住宅分野における木材利用の動向

➢ 大手住宅メーカーでは、横架材は輸入材が高いシェアを持つ状況。一方、柱材は国産のスギ集成柱の利用も増加

➢ 工務店では製材の使用率が高く、部材によらず国産材の使用率が高位

非住宅・中高層建築物における木材利用の動向

➢ 非住宅・中高層建築物については、製材やCLT、木質耐火部材等に係る技術開発の進展、建築基準の合理化など、技術的・制度的に利用環境の整備が一定程度進み、木材を構造部材等に使用した10階建てを超える先導的な高層建築が出現

➢ 更に木材利用を進めるため、設計者等の育成、標準的な設計・工法の普及に加え、部材の標準化や建築基準の合理化等を推進するとともに、ウッド・チェンジ協議会での検討、都市(まち)の木造化推進法による建築物木材利用促進協定の締結(国協定17件、地方協定113件)など、都市の木造化・木質化に向けた官民挙げた取組を実施

➢ 国の建築物の木造化・木質化に関する支援事業・制度等に関する一元的な案内窓口「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」を木材利用促進本部事務局に設置


公共建築物等における木材利用

➢ 2022年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は13.5%、うち低層は29.2%

➢ 都道府県ごとでは、低層の公共建築物の木造率について4割を超える県も存在

➢ 大規模災害後に木造応急仮設住宅を速やかに供給するため、全国で災害協定の締結が進展


(3)木質バイオマスの利用

エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加

木質バイオマスの新たなマテリアル利用

➢ 「GX推進戦略」において、森林由来の素材を活かしたイノベーションの推進等に向けた投資の促進を明記

➢ 軽量ながら高強度で、保水性に優れる素材であるCNF(セルロースナノファイバー)は、製造設備が各地で稼働し、食品、塗料等に使用

➢ リグニンは、高付加価値材料への活用が期待されており、改質リグニンの実用化に向けた製品開発を推進


木質バイオマスのエネルギー利用

➢ エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加し、2022年における燃料材の国内消費量は前年比18.0%増の1,739万m3、うち国内生産量は同9.8%増の1,026万m3

➢ 再生可能エネルギーの固定価格買取制度により木質バイオマス発電施設が各地で稼働

➢ 燃料材の安定供給に向けて、全木集材による枝条等の活用や林地残材の効率的な収集・運搬システムの構築等を支援

➢ また、地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築を推進


(4)消費者等に対する木材利用の普及

「木づかい運動」「木育」等により木材利用を促進

➢ 一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開 。都市(まち)の木造化推進法で、10月が「木材利用促進月間」として位置付け

➢ 「ウッド・チェンジロゴマーク」や「木づかいサイクルマーク」を企業等に使用してもらうことにより消費者等の認知度を向上させ行動を促進

➢ 森林資源の循環利用の普及啓発のため、長谷川町子美術館と協力体制を構築し、サザエさん一家に「森林(もり)の環(わ)応援団」を委嘱

➢ 「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見できる製品や取組等を表彰

➢ 子供から大人までが木に触れつつ木の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」を推進


(5)木材輸出の取組

木材輸出額は近年増加傾向。2023年は505億円

➢ 木材輸出額は近年増加傾向。2023年は前年比4.2%減の505億円

➢ 品目別にみると丸太が45.8%と最も多く、その9割が中国へ輸出され、こん包材、土木用等に利用。また、米国向けの製材は、主にフェンス材に利用

➢ 輸出に取り組む産地の育成、相手国の建築士等を対象にした木造技術講習会の開催等の支援のほか、認定農林水産物・食品輸出促進団体である(一社)日本木材輸出振興協会が中心となって、輸出環境の整備やマーケティング等を促進


3.木材産業の動向

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(1)木材産業の概況

木材・木製品製造業の付加価値額は近年増加傾向

➢ 木材・木製品製造業の付加価値額は、近年増加傾向で推移し、2021年は1兆489億円


(2)木材産業の競争力強化

木材産業における国際競争力や地場競争力の強化に向けた取組が進展

➢ 国際競争力の強化に向け、品質・性能の確かな製品を低コストで安定供給していくため、製材・合板等の工場において大規模化・集約化が進展

➢ 中小製材工場等では地場競争力の強化に向け、多品目の製品を生産する取組や、地域の素材生産業者、工務店等の関係者と連携し、地域のニーズに対応した特色ある取組等を促進

➢ 中大規模建築物への木材利用の促進や小規模な木造建築物における改正建築基準法施行令への対応のために、品質・性能の確かなJAS構造材の供給が必要。JAS構造材の生産体制の整備、利用実態に即したJAS規格の区分や基準の合理化等の見直しを行うとともに、JAS構造材の利用実証等を支援

➢ 原木の安定供給体制の構築に向けて、川上と川中の安定供給協定の締結等を推進

➢ 国産材の供給力強化に向けて、労働力を確保するため、生産性の向上や国内人材の確保の取組とあわせ、外国人材の受入れ拡大に向けた取組を推進

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事例 鹿児島県で原木調達から住宅の製造・販売まで一貫して行う大規模工場が稼働


➢ 鹿児島県湧水町で、国産材の新たな加工・流通拠点として、建設・不動産企業や地元木材関係企業等が出資するMEC Industry株式会社の鹿児島湧水工場が2022年から本格稼働

➢ 大径材に対応した直径60cmの原木まで受入れ可能なラインを導入し、原木の調達、製材から製品・住宅の製造・販売まで一貫した事業を行っており、原木利用量は2024年度に5.5万m3の見込み


(3)国産材活用に向けた製品・技術の開発・普及

国産材の活用に向けた新たな製品・技術の開発・普及を推進

➢ 今後出材の増加が見込まれる大径材に対応した木取り等、製材や加工、乾燥の技術の開発・普及を推進

➢ 非住宅・中高層建築物への木材利用拡大に向け、「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」に基づき標準的な木造化モデルの作成・普及やCLTパネル等の寸法等の標準化等を進めるとともに、木質耐火部材の技術開発等を推進

➢ 低層非住宅建築物の木造化に向け、一般流通材で大スパンを実現する構法の開発・普及を推進

➢ 各地域での拡大が期待できる中層木造建築について、コスト・施工性等において高い競争性を有し広く展開できる構法と、製材を始めとする部材供給等の枠組みの整備・普及を推進

➢ 内装・家具等における国産材需要の拡大に向け、国内樹種を活用した新たな製品開発・普及を推進


(4)木材産業の各部門の動向

製材業、集成材製造業、合板製造業では国産材の利用割合が長期的に増加傾向

(ア)製材業

➢ 製材品の出荷量は近年ほぼ横ばいで推移。2022年は前年比5.4%減の860万m3。原木入荷量の79.1%が国産材


(イ)集成材製造業

➢ 集成材の生産量は、2022年には前年比16.3%減の166万m3であり、用途別では構造用が大半。集成材供給量における国産材割合は47.1%で、長期的に増加傾向

➢ 集成材の製品輸入は104万m3で、集成材供給量全体に占める割合は38.5%


(ウ)合板製造業

➢ 普通合板の生産量は、2022年には前年比3.6%減の306万m3であり、用途別では構造用が大半

➢ 合板への国産針葉樹の利用が拡大し、2022年には国内の合板生産における国産材割合は91.7%に上昇
 輸入製品を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は50.0%で増加傾向


(エ)木材チップ製造業

➢ 2022年の木材チップ(燃料用チップを除く。)の生産量は前年比13.0%減の528万トン。原木以外に工場残材、解体材・廃材等から生産。一方、木材チップの輸入量は2022年には前年比2.9%増の1,131万トン


(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業

➢ 2022年のパーティクルボードの生産量は前年比1.9%減の98万m3、繊維板の生産量は前年比0.4%減の72万m3


(カ)プレカット製造業

➢ 木造軸組工法におけるプレカット加工率は2022年には94%まで拡大


(キ)木材流通業

➢ 2018年の国産原木の流通において、素材生産者から木材市売市場等に出荷したものは40.7%、木材販売業者等へ販売されたものは19.1%、伐採現場等から工場へ直送されたものは40.2%



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