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第1部 特集1 第2節 林業経営体の収益性向上の取組(2)

(2)木材生産・育林コスト低減の取組

木材の販売単価の向上は需要の動向に左右される面があり、並材の単価向上には限界がある中で、収益性を確保するためには、経営体自らが主体的に取り組める生産・育林コストの低減は重要である。海外に比べるとコストが割高という報告もあり、効率化が求められている。


(ア)生産・流通コストの低減

(丸太価格に占める高い生産・流通コスト)

丸太価格に占めるコストを、日本と比較的類似した地形や森林所有規模等の条件を有するオーストリアと比較すると、日本の伐出、運材、流通のコストはいずれも割高であり、山元立木価格を押し下げる原因となっている(資料 特1-20)。

資料 特1-20 丸太価格にかかるコスト比較

オーストリアでは、日本と同様に山岳地域には急しゅんな地形が多いが(*25)、高い路網密度を達成し、大型の林業機械を用いた生産性の高い作業システムが導入されている。そのため、労働者1人が1日で生産する丸太の量は車両系の作業システムで30~60m3/人日、架線系で7~43m3/人日と、高い生産性を有している(*26)。

一方、我が国においては、施業の集約化や高性能林業機械の導入等により生産性は徐々に向上しているものの、平成30(2018)年においても間伐で約4m3/人日、主伐で約7m3/人日である(資料 特1-21)。

資料 特1-21 林業経営体の生産性

(*25)久保山裕史(2013)オーストリアの林業・林産業における近年の変化-日本との比較を通じて-. 森林科学, 68:9-12.

(*26)林野庁「諸外国における森林の小規模分散構造に対応した林業経営システムに関する調査」(平成20(2008)年3月)



(生産性の目標)

素材生産の生産性については、地形・地質等の地況や、樹種・蓄積・樹高・直径等の林況等の諸条件の影響を大きく受けるもので単純に比較できるものではないが、個々の事業体で施業地の状況を見定めながら目標を定め、向上させていくことが重要である。このような中で、いわゆる意欲と能力のある林業経営者への集積・集約化を進めていく「森林経営管理法(*27)」の運用においては、その担い手となり得る林業経営者の要件として、経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有すると認められることを定めている。具体的には、生産性については、5年間で約2割以上又は3年間で約1割以上向上させることを目標として有していることとしている。ただし、生産性の実績が、間伐8m3/人日、主伐11m3/人日を目安として一定の水準以上の場合は、当該実績以上の目標を有していることとしている(*28)。このように、林野庁は、個別の施策段階においても生産性の向上を意識した制度運用を行っている。様々な施策により、我が国林業全体の生産性向上が期待される。

なお、この生産性の向上は個別の生産工程や特定の作業現場において一時的に達成されるべき目標ではなく、準備や片付け、待機、移動等の間接作業も含めた工程全体として、また、年間の事業量全体として達成されるべき目標値である。したがって、4人のオペレーターで構成される作業システムであれば、1年間の稼働日数を210日とした場合、6,700~9,200m3程度が事業量のおおまかな目安となる。


(*27)「森林経営管理法」(平成30年法律第35号)

(*28)「森林経営管理法の運用について」(平成30(2018)年12月21日付け30林整計第713号林野庁長官通知)



(高性能林業機械の効率的活用)

高性能林業機械を導入することで作業システム当たりの林業従事者を減らすことができ、生産性の向上が期待される(事例 特-4)。我が国において高性能林業機械の導入は昭和60年代に始まり、近年では、路網を前提とする車両系のフォワーダ、プロセッサ、ハーベスタ(*29)等を中心に増加しており、令和元(2019)年度は合計で10,218台が保有されている(資料 特1-22)。

事例 特-4 次世代型のハーベスタとフォワーダ導入による生産性向上

株式会社柴田産業(岩手県一戸町)は、平成8(1996)年頃から高性能林業機械を導入して生産性の向上に取り組んでおり、現在は、次世代型のハーベスタとフォワーダを組み合わせ、2台の機械と2人のオペレーターで伐採から運材までを行う作業システムを構築している。

この作業システムは、登坂用のウインチを装備し最低地上高が680mmのハーベスタと8輪駆動と前輪がリフトアップする機構を持つ大型フォワーダにより、急斜面や伐根等の影響を受けることなく林内で伐倒・造材や短幹集材を行うものであり、高い生産性と安全性を両立している。

さらに、同社では林業機械のメンテナンス部門を有し、日常的な保守・点検に加え、油圧ホースの交換や電気系統の故障等にも対応し、高稼働率を確保している。

この結果、素材生産の生産性は11~14m3/人日から28~45m3/人日とオーストリア並みに向上し、生産コストについても、機械経費が従来型に比べ1.6倍となるものの、3,400~4,200円/m3から2,800~3,800円/m3に改善されている。


注:生産性・コストは路網作設を除く数値。

資料:林野庁「令和元年度林業機械化推進事例」



素材生産量全体のうち、高性能林業機械を活用した作業システムによる生産量の割合は向上しており、令和元(2019)年度には8割となっている。

高性能林業機械への投資額は大きなものとなるので、その稼働率を十分に高めることが資本効率の観点からも望ましく、生産性の向上にも必要となる。現に、生産性が高くなるにつれ、機械稼働率が80%を超える林業経営体の割合が多くなっている(資料 特1-23)。しかしながら、ハーベスタやプロセッサの稼働率の平均は55%程度にとどまっている。稼働率の向上には、施業地の計画的な確保及び集約化、作業システムの選択、工程管理、路網整備といった取組を積み重ねていく必要がある。


このうち、特に工程管理は、林業従事者の協力が欠かせない。この点からも、生産性向上の果実の一部を、森林所有者のほか、林業従事者にも賃金増として還元していくことが重要と考えられる。

一方、いわゆる自伐林家や自伐型林業を含め、事業量の少ない林業経営体の場合、高性能林業機械を導入しても稼働率を高めることは難しく、コストも割高となる。このため、少ない木材生産量に合わせた設備投資の小さい作業システムを用いることが合理的な選択となる。


(*29)フォワーダは、木材をつかんで持ち上げ、荷台に搭載して運搬する機能を備えた車両。プロセッサは、木材の枝を除去し、長さを測定して切断し、切断した木材を集積する作業を連続して行う機能を備えた車両。ハーベスタは、立木を伐倒し、枝を除去し、長さを測定して切断し、切断した木材を集積する作業を連続して行う機能を備えた車両。



(施業地の確保・集約化)

十分な事業量を確保しない状態では、高性能林業機械の導入により個々の作業現場での生産性が向上したとしても、稼働率が伸び悩み、1日当たりの生産コストは高止まりする。このため、稼働日数の裏付けとなる十分な事業量を確保していくことが重要となる。

また、事業量が確保されたとしても、各々の作業現場が小さく離れていれば、現場間の移動に手間・経費を要するなど固定経費が嵩むため、生産性向上・経費削減につながらない。事業地の団地化を図り、一箇所当たりの施業面積を効率的な規模とするなど、森林施業の集約化も重要である。

林業経営体が集約化に必要な森林情報を把握できるようにするため、国や地方公共団体は「森林整備地域活動支援対策」や林地台帳の整備など様々な支援を行っている(*30)。


(*30)森林情報の把握・整備を含め施業の集約化については、第2章第1節(4)130-136ページを参照。


コラム 自伐林家・自伐型林業の森林施業方法

近年、自伐林家又は自伐型林業が、地域の森林整備や地域活性化の面から注目されている。自伐林家には明確な定義はないが、保有山林において素材生産を行う家族経営体に近い概念と考えると、約6,600経営体であり、我が国の素材生産量の約1割(年間約180万m3)を生産している 。

さらに、森林を所有していない場合であっても、山林を借用し、又は施業を受託するなどして小規模な林業を行う、いわゆる「自伐型林業」の取組も各地で進んでいる(注)。

この自伐林家又は自伐型林業には、週末ボランティアや木の駅プロジェクトに少量の木材を出すようなもの、兼業、専業など、多様な林業経営の概念が含まれている。

主な作業システムとしては、伐採はチェーンソー、集材は(ア)人力(滑車、ロープ等を使う場合もある)、(イ)エンジン一体型のロープウインチ、(ウ)林内作業車によるウインチや軽架線を使う方法等があるが、NPO法人自伐型林業推進協会は、本格的な施業を行う場合、作業道を敷設して、間伐生産した原木を2トントラックか1~3トンの林内作業車で搬出・運搬するシステムを推奨している。1人当たりの施業面積は限られるが、複数の者が協力することにより、より大きな面積の施業も可能となる。

同協会は、収入を向上させるためには丁寧な作業で森林を健全に維持していくことが必須条件であり、限られた森林から持続的に収入を得ていくためには、森林の成長量を越えない弱度な間伐生産を繰り返して、面積当たりの蓄積量を増やしていく長伐期・択伐(多間伐)施業が肝要としている。さらに、壊れない作業道を敷設して使い続けることにより採算性が高まるとしている。また、自伐林家の場合、自家労働を提供することにより収入を得るため、施業を委託するよりも黒字化しやすい。

長伐期・択伐施業については、奈良県の吉野よしの林業や三重県熊野くまの市の「なすび伐り林業」等、古くからの林業地や林家で行われており、吉野では、山守が山林所有者の森林を管理し、密植と弱度な間伐を繰り返し、長期にわたり優良材を生産してきた。同協会は、吉野の林家等からも学び、自然条件に合わせ、間伐等により林内に入る風・雨・光をコントロールし、管理する森林の持続性を担保することが重要であるとしている。


注:佐藤宣子(2020)地域の未来・自伐林業で定住化を図る, 一般社団法人全国林業改良普及協会:2.

資料:農林水産省「2015年農林業センサス」(組替集計)



(作業システムの選択)

素材生産には、立木の伐倒(伐木)、木寄せ(*31)、枝払い及び玉切り(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)、椪積はいづみ(*32)といった複数の工程がある。素材生産の作業システムを考える際には、これらの工程について、(ア)工程数を減らす、(イ)各工程の生産性を高める、(ウ)工程間の連携をスムーズにする、(エ)作業員の数を必要最小限にするといった原則を元に考える必要がある。

また、作業システムとしては、大きく分けて、林内に路網を整備し、伐採、搬出等に車両系の林業機械を用いて行う車両系作業システムと、伐採は人力(チェーンソー)で行い、林内に架線を張り集材を行う架線系作業システムとがある。一般に車両系作業システムは架線系作業システムよりも生産性が高いが、急しゅんな地形が多い我が国では架線系作業システムが適した地域もある。このため、高性能林業機械の導入に当たっては、各地域の地形、林況や路網の状況、事業量に適した作業システムの選択が求められる。


(*31)林内に点在している木材を林道端等に集める作業。

(*32)集材した丸太を同じ材積や同じ長さごとに仕分けして積む作業。


コラム 生産性とコストの関係

生産性の向上によるコスト削減は、直接的には事業者の収益となるが、これを原資として自らの事業利益、作業員の賃金、山元立木価格を向上させることが可能となる。

平成30(2018)年に林野庁が委託事業で作成した「生産性向上ガイドブック」では、生産性が7m3/人日から10m3/人日に上がった場合を試算しており、この試算例では、作業員の賃金を上げつつ、生産費の削減1,600円/m3について、事業利益に470円/m3、立木価格に1,130円/m3を配分している(左図)。

ここで生産性とコストの関係を考えると、1m3当たりのコストは、1日当たりの経費を生産性で割ったものである。稼働率を一定とし、1日当たりの減価償却費等の経費を固定して考えて試算した場合に、生産性とコストの関係は双曲線のグラフとなり、生産性が向上すればコストは下がる(右図)。

また、生産性が低い場合は双曲線が立っており、生産性向上によるコスト低減効果が大きい。生産性が低い場合はコストの変動が大きく経営が安定しない状態であり、高生産性ではコスト変動が少なくなるために経営が安定するということも読み取れる。この高生産性の段階に移行することが重要である。


資料:林野庁「生産性向上ガイドブック」(平成30(2018)年)


 生産性とコスト(双曲線)

(作業日報を活用した工程管理)

一般に、作業システムの中で生産性の低い工程(ボトルネック)があると、その工程が足を引っ張り全体の生産性の向上を妨げる。作業日報を活用し、工程ごとの作業量を把握することで、生産性の低い工程を見つけ出すことが可能となり、そこから全体の作業効率を上げるための、機械や作業員の配置を工夫することが可能となる。

例えば、造材が完了しているにもかかわらず、搬出が終わっていない場合、造材の担当者が搬出も行うといったように、柔軟に分担を見直すことで少ない人数で生産量を上げることができる。生産の流れを止めない状況を作ることが重要であり、そのために従事者が様々な機械を扱える「多能工」化することも様々な林業経営体で取り組まれている(事例 特-5)。

また、チェーンソーによる伐倒、グラップルによる木寄せ、プロセッサによる造材を行う場合は、プロセッサの造材能力を極力高めるために、先行して伐倒、木寄せを行うなどの工夫が実施されている。

作業日報の作成にはスマートフォンやタブレットで入力できる日報が開発されており、工程の計算の自動化など業務効率化に役立てられている。

事例 特-5 多能工化と柔軟な作業工程や人員配置の見直しによる生産性向上

しそう森林組合(兵庫県宍粟しそう市)は、間伐を中心に年間2.4万m3程度の素材生産を行っており、高性能林業機械の導入を積極的に進めるとともに、従事者全員で情報を共有し作業効率の改善を積み重ねることで、生産性向上につなげている。

具体的には、毎朝作業前にミーティングを行い、従事者同士で作業の無駄を洗い出した上で、1週間分の事業計画を見直しながら、その日の作業工程と人員配置を決定している。柔軟な人員配置を行えるよう、チェーンソーによる伐倒、高性能林業機械による木寄せ・造材等のどちらも行える多能工を育成している。

また、各々の工程では、グラップルで木寄せしやすいような伐倒方向にする、造材しやすい材の向きや位置に木寄せするなど、各工程で次の作業工程を効率化するための工夫を行い、日々作業の無駄を省くことに努めている。

この結果、搬出間伐作業において、各工程を効率化するとともに工程間の生産性を平準化することで、路網整備等を含む生産性を従来の7.7m3/人日から10.0m3/人日まで向上させ、生産コストを9,800円/m3から6,195円/m3まで低減させた(注)。


注:今回の作業箇所は蓄積609m3/ha、平均胸高直径22cmの人工林。

資料:令和元年度国有林間伐・再造林推進コンクール表彰事例



(流通コストの低減)

流通コストは運送距離や輸送車両、積卸し回数、販売方法によって変動する。直送など物流・販売経路の見直しに加え、トラックやトレーラーの大型化等により流通コストが低減できる可能性がある。

物流コストだけを考えれば、まず、運送距離が長くなればなるほど運送コストが高くなるため、近隣の工場、市場への販売が有利となる。また、不要な積替えによるコスト増大は極力避けるとともに、市場や商社等を通す場合の手数料も勘案して、利益を最大化できる運送、流通、販売方法を決定することが重要であり、なるべく簡素な流通経路が望ましい。

一方、輸送距離が長くなる場合は、中間土場を活用して量を確保し、大型トラックやセミトレーラー等により1回の輸送量を大きくすることで、積替えのコストを考慮しても、運送コストを抑えることができる可能性がある。

なお、収益性の向上を考えると、流通コストだけでなく、集材コストや販売単価も考える必要がある。トラックが小さくなったとしても、そのことによりフォワーダでの集材距離を短くすることが可能であれば有利となる場合もある(*33)。輸送距離が長くとも、販売単価が高い工場・市場へ販売することが有利な場合もある。

素材生産・流通・販売全体から収益性を考え、流通方法を決定していくことが重要である。


(*33)集材した丸太を同じ材積や同じ長さごとに仕分けして積む作業。



(生産性向上と流通コスト低減に寄与する路網整備)

林道や森林作業道等からなる路網を適切に整備することで、造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うことが可能となる。また、作業現場へのアクセス方法の改善、施業方法に対応した機械の導入による安全性の向上、労働災害時の搬送時間の短縮等が期待できることから、林業の労働条件の改善等にも寄与するものである。

さらに、路網の中でも、セミトレーラー等の大型車両が通行できる林道の整備が進めば、木材を効率的に運搬することが可能となり、流通コストの低減に寄与する。タワーヤーダ等大型の高性能林業機械を搬送・配置するためにも、林道の整備を進めていくことが重要である。

林業経営体は、補助事業等も活用し路網の整備を進めており、令和元(2019)年度末の公道等も含めた林内路網密度は23.0m/haとなっている(*34)(資料 特1-24)。一方、オーストリアでは、林道整備が積極的に進められ、1990年代で約89m/ha(*35)という高い路網密度を達成している。


林業経営体を対象にした意識・意向調査によると、現在の路網の整備状況は50m/ha以下の路網密度であると回答した者が約6割であったのに対し、今後は50m/ha以上の路網密度を目指したいと回答した者が6割を超えており(資料 特1-25)、林業経営体による更なる路網整備が期待される(*36)。


(*34)「公道等」、「林道」及び「作業道」の現況延長の合計を全国の森林面積で除した数値。林野庁整備課調べ。

(*35)Austrian Federal Ministry of Agriculture, Forestry, Environment and Water Management(オーストリア連邦農林環境水管理省)「Österreichische Waldinventur 1992/96」(オーストリア森林インベントリー1992/96)による生産林の数値。なお、これ以降に同国で実施された森林インベントリーでは、同国の路網密度は掲載されていない。

(*36)林野庁や地方公共団体の路網整備の取組については、第2章第1節(4)136-137ページを参照。


コラム 林業現場で使用可能な悪路走行用のダンプトラックの開発

林内の走行テスト時の様子

小型トラックによる木材の搬出は、フォワーダより走行速度が速く、公道を走ることも可能なことから、間伐等の小規模な木材搬出等では有利なことがある。

一方、作業道は幅員が狭く急勾配でカーブが連続し、降雨後にぬかるむことも多く、その走行には一般道と異なる性能が必要とされる。しかし、そのような小型ダンプトラックは廃番となっており、旧型のトラックを修理しながら使用するしかない状況となっていた。

奈良県吉野よしの郡で山林経営を行う清光林業株式会社とポロ・ビーシーエス株式会社は、SNS上で声を上げ、多くの賛同があったのを契機として、平成28(2016)年、日野自動車株式会社と林業現場で有用な小型ダンプトラックの開発に着手することとした。

新明和工業株式会社や奈良日野自動車株式会社、松原自動車有限会社等の協力を得て、複数回にわたる意見交換や現場走行テストを経て、令和元(2020)年5月に林業仕様の日野デュトロダンプ(2.7トン全低床標準四駆ダンプ)が製品化され、同年12月に完成車が納入された。この車両は林地での安全走行を可能とするため、最小回転半径が小さく(5.2m)、4,000cc超の大排気量エンジンと、超低速域で高いパワーが出せ、排気ブレーキの効きが良いなどの特徴を持っている。

さらに各地の林業事業体や森林組合との1年に及ぶ意見交換や走行テストで要望の高かった改良を重ね、車高40mmアップ、3トン積載量を実現した改良車両も令和3(2021)年2月に完成した。

このようにメーカーと林業現場の意見交換により必要な機材が改良・開発され、森林整備の推進や林業振興につながることが期待される。


(イ)造林・育林の低コスト化に向けた取組

(再造林費用の現状と課題)

ごしらえから下刈りまでの再造林初期費用は、山元立木価格の水準を大きく上回っている状況にある。さらに獣害が発生している地域ではその対策も講じる必要があり、これらが再造林の進まない要因となっている(資料 特1-26)。

資料 特1-26 再造林費用の現状

再造林においては、地ごしらえ、植栽、下刈りという3つの作業が進められていく。このそれぞれの作業においてコストや労働負荷を削減する技術の開発が進められ、実証段階に至るものも出てきており、その積極的な活用を図っていく必要がある。

その際、苗木の種類、植栽の方法により、必要となる経費は大きく異なってくることから、どのような山を作りたいか、将来の仕向け用途も見据えながら取り組んでいくことが重要となる。

また、獣害対策については地域の被害の状況に応じた対策を講じる必要がある。シカの生息密度が高い地域では、捕獲を進めつつ、防護柵の整備に当たっては丈夫なステンレス入りのネットの使用や柵の設置方法等を適切に選択し、整備後は見回り等の維持管理を定期的に実施することにより、追加コストを抑制させる必要がある(*37)。


(*37)野生鳥獣による被害状況及び対策については、第1章第3節(4)98-100ページを参照。



(「伐採と造林の一貫作業システム」の導入)

ごしらえと植栽の経費及び労力の削減として、伐採と並行又は連続して地ごしらえや植栽を行う「伐採と造林の一貫作業システム」(以下「一貫作業システム」という。)が、近年導入されつつある。

一貫作業システムは、グラップル等の集材や搬出用の林業機械を用いて伐採跡地の末木枝条を除去・整理して地拵えを実施し、丸太運搬用のフォワーダ等の機械で苗木を運搬した上で植栽を行うものである。架線系の作業システムにおいても、架線を苗木の運搬に使用することで、苗木運搬の工程を省力化することが可能であり、また、降雪地帯においては、秋に伐採・搬出を行う際に林業機械で地ごしらえを行った上で、翌春、下草の繁茂時期を迎える前に植栽するといったやり方も行われている。

このように一貫作業システムでは、地ごしらえと苗木運搬の工程を省力化することとなり、労働投入量の縮減等により作業コストを大きく縮減することが可能となる(*38)。特に林業機械による作業範囲が広く、伐採作業時に枝条整理を行う場合のコスト削減効果が大きい(*39)。

しかし、一貫作業システムの導入状況は人工造林全体の1割以下にとどまっている。伐採と造林の作業方法・時期の連携ができていないなどの課題があり、更なる普及に向けて、伐採と造林を行う者の連携を深め、体制を整備していくことが重要である(資料 特1-27)。

資料 特1-27 一貫作業導入の課題

(*38)労働投入量の縮減等については、「平成28年度森林及び林業の動向」第1章第2節(1)13ページを参照。

(*39)林野庁(2018)低コスト造林技術の導入に向けて:11.



(植栽期間の長いコンテナ苗の生産拡大)

一貫作業システムを行うためには、伐採と再造林のタイミングを合わせる必要があり、従来の裸苗では春又は秋に限られていた植栽適期を拡大していくことが必要となる。

「コンテナ苗」は、裸苗はだかなえとは異なり、根鉢があることで乾燥ストレスの影響を受けにくいと考えられ、寒冷地の冬季や極端に乾燥が続く時期を除き、通常の植栽適期(春や秋)以外でも高い活着率が見込めることが研究成果により示されている(*40)。

このため、伐採時期に合わせて植栽適期を拡大できる可能性があり、コンテナ苗生産量は年々増加している(資料 特1-28)。


しかし、コンテナ苗生産では、得苗率が生産者間でも大きな違いが出るなど、生産技術が標準化されていない(資料 特1-29)。また、一貫作業システムにより労務費が低減するものの、スギで比較すると、裸苗はだかなえ70~196円/本に比べてコンテナ苗140~273円/本(*41)と価格が高い。このため、林野庁では、コンテナ苗の普及に向け、苗木生産の技術開発を進めるとともに、生産コストは一事業者の年間生産本数が増加するに従って下がる傾向にあることから、生産規模5万本以上を要件にコンテナ苗生産設備の導入を支援している。

資料 特1-29 コンテナ苗生産における得苗率の違い

(*40)研究成果については、「平成28年度森林及び林業の動向」第1章第2節(1)14ページを参照。

(*41)令和2(2020)年度森林整備事業標準単価に使用されている苗木単価。



(低密度植栽)

我が国においては従来、植栽後15年程度で植栽木の林冠が閉鎖することを前提として、3,000本/ha前後の植栽密度で造林を実施してきたが、植栽木の特性や生産目標等に応じて植栽本数を抑えることで、苗木代や植栽時の労務費を低減することが期待されている。

このため、林野庁は、全国19か所に試験地を設定し、5か年にわたり実証試験を行い、これまでの研究成果も含め、令和2(2020)年3月に「スギ・ヒノキ・カラマツにおける低密度植栽のための技術指針」と「低密度植栽導入のための事例集」として公表した。この中で、スギでは1,000~1,500本/ha以上、ヒノキでは1,500本/ha以上、カラマツでは1,000本/ha以上であれば、成林に影響が少ないと整理された。また、植栽コストが低減したことに加え、下刈りについても植栽密度が低くなるほど作業時間が短くなる傾向がみられた(資料 特1-30、31)。

資料 特1-30 低密度植栽によるコスト削減例
資料 特1-31 植栽密度ごとのha当たり下刈り作業時間

低密度植栽されたスギの強度については、建築材料としての利用が十分可能なレベルであるという報告も出されている(*42)。

なお、実際に植栽する場合は、保安林の場合には指定施業要件の中で定められている植栽密度や、都道府県の補助対象となる最低植栽密度との関係も検討する必要がある。普通林の場合も、造林地の地位級等にも配慮して植栽密度を検討することが望ましい。

また、古くからの林業地では、生産目的(木材の用途)等により、1,000本程度から10,000本超の植栽密度が採用されており(資料 特1-32)、長野県は、杭材生産を目的に、カラマツの高密度植栽施業モデルの開発に着手している(*43)。低密度植栽は再造林コストを下げられる可能性はあるが、下枝の枯れ上がりが遅くなる、梢殺うらごけの形状となるおそれがあるといった課題があり、役物ではなく並材の生産を目指す際の選択肢である。生産目的に合わせて植栽密度や樹種を考えることが重要である。


(*42)地方独立行政法人 青森県産業技術センターホームページ「低密度植栽されたスギの生育と木材強度」

(*43)令和2(2020)年10月7日付け林政ニュース:18.



(下刈りの省力化・効率化)

造林経費の多くを占める下刈りは、通常、植栽してから5~6年間は毎年実施されていたが、現地の植栽木と雑草木の競合状態に応じて実施を検討することで省力化が可能である。例えば、スギの場合は樹冠が完全に下草に被覆されていない場合には樹高成長の低下は少ないことも、下刈り省略の判断基準となる(*44)。

秋田県での実証試験では、一貫作業システムと組み合わせることで、再造林全体のコストは3割程度削減可能となった。さらに、一貫作業システムにおいて、地ごしらえで末木枝条や植生を破砕する場合は、雑草木の再生を遅らせ、下刈りの開始年を遅くできる可能性がある。クラッシャを用いた北海道での実証例では、破砕物が障害となり植栽経費が増えるものの、雑草木の再生も抑えられ、最大39%の再造林経費の削減が可能としている(*45)(資料 特1-33)。

資料 特1-33 クラッシャによる地拵え
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また、植林地にワラビ(*46)等を生育させることで他の競合植生の発生を抑制し下刈りを省力化するカバークロップ等、下刈りを省力化するための様々な取組が試験されている(*47)。

さらに、従来のように全ての雑草木を下刈りするのではなく、筋刈や坪刈に変更することで効率化が可能であり、筋刈や坪刈を想定した低密度植栽を実施することで、作業の効率化が期待できる(資料 特1-34)。

資料 特1-34 筋刈によるコスト縮減例

(*44)国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所九州支所(2013)低コスト再造林の実用化に向けた研究成果集:26-27.

(*45)国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所(2019)低コスト再造林に役立つ“下刈り省略手法”アラカルト:10-11.

(*46)ワラビの場合、生育したワラビを収穫・販売することによる収入確保の効果もある。

(*47)国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所「低コスト再造林に役立つ“下刈り省略手法”アラカルト」(平成31(2019)年)



(エリートツリー等の利用拡大)

特に優良な種苗を普及するため、エリートツリー(*48)等の中から「特定母樹(*49)」が413種類指定されている。特定母樹由来の苗木は従来の苗木と比べ成長に優れるため、下刈り期間の短縮が期待されている(資料 特1-35)。また、伐期の短縮による育林コスト回収期間の短縮や、二酸化炭素吸収量の向上も期待される。

資料 特1-35 エリートツリーと一般苗の樹高成長の推移(大分県玖珠町の試験地例)

特定母樹由来の苗木の令和元(2019)年度の出荷本数は、スギが九州を中心に266万本、カラマツ(クリーンラーチ(*50))が北海道で22万本の合計288万本となっており、本格的な普及はこれからである(資料 特1-36)。

資料 特1-36 特定母樹由来苗木の出荷(予定)

このため、林野庁では特定母樹由来の苗木が今後の再造林に広く利用されるよう、都道府県や苗木生産者等による特定母樹の採種園や採穂園の整備を推進している。また、原種苗木の増産技術の開発に取り組んでいる(事例 特-6)。

事例 特-6 日本製紙株式会社による採穂園整備と苗木生産技術開発

スギ・ヒノキ特定母樹の実生苗(静岡県の委託生産先)

日本製紙株式会社は、スギ特定母樹の採穂園(39系統、約6,800本)を熊本県錦町にしきまち内の同社圃場に造成し、その一部で採穂された挿し木苗の生産を熊本県、大分県で行うとともに、静岡県においては、スギ・ヒノキ特定母樹種子の実生から苗木を生産している。令和2(2020)年度は、九州地区で約3万本、静岡県では特定母樹以外も含めて約13万本の苗木を生産した。

同社は、挿し木苗生産では挿し穂サイズや発根環境の最適化等、実生苗生産では播種時期や育苗用土の組成等の効率的な苗木生産の技術開発を行った。この結果、実生苗生産では、一般的に2年間の生産期間を要するところ、実生苗、挿し木苗ともに1年間で出荷規格を満たすコンテナ苗生産技術を確立している。

生産に当たっては、各地域の苗木生産者に委託し、委託生産者が散水頻度等を適切に調節できるように、育苗施設内のカメラとセンサーで苗の画像、気温、日射量、水分量等を常に把握し、それを共有できる体制を整えている。

民間企業も含め特定母樹の採穂園が整備され、効率的な方法で苗木生産が行われることで、優良な苗木の生産拡大が期待される。


(*48)国立研究開発法人森林研究・整備機構により、成長や材質等の形質が良い精英樹同士の人工交配等から得られた個体の中から選抜された、成長等がより優れた精英樹のこと。

(*49)エリートツリー等のうち、生長量が同様の環境下の対照個体と比較しておおむね1.5倍以上、材の剛性や幹の通直性に著しい欠点がなく、雄花着生性が一般的なスギ・ヒノキのおおむね半分以下等の基準を満たすものを「特定母樹」として指定。特定母樹については、第1章第2節(1)78-79ページを参照。

(*50)グイマツ精英樹とカラマツ精英樹の交配品種で、カラマツの成長性や強度とグイマツの野鼠抵抗性を兼ね備えている。



(早生樹の利用に向けた取組)

短期間で成長して早期に活用できる早生樹についても、その活用方法を含め、知見が蓄積されてきている。

東日本から九州までの照葉樹林帯では、新たな林業用樹種としてコウヨウザン(*51)が注目されている。幼齢期の成長としては、宮崎県の例で、5年で平均約5mに成長したという報告がある。萌芽再生力が強く再造林の低コスト化が期待されている。また、材の強度については、ヒノキと同等の強度を示す例もある(*52)。各地で試験的な植林が行われているほか、広島県の林産試験場では苗木生産に取り組んでいる。

また、広葉樹早生樹であるセンダンは、20年生程度で家具材として利用可能になるほど成長が早く、その木材はケヤキの代替材として利用されることから注目されている。熊本県は施業方法を取りまとめ(*53)、福岡県大川おおかわ市等の家具製造業者への素材供給に向け、荒廃農地等でセンダンの人工林面積を約200haに伸ばしたいとしている(*54)。

これらの早生樹について、施業技術の開発・実証が進められている。林野庁は、令和2(2020)年2月に、センダンとコウヨウザンを植栽する際の参考となるように、これまでの知見を整理し「早生樹利用による森林整備手法ガイドライン」を公表した。


(*51)中国大陸や台湾を原産とし、学名は、Cunninghamia lanceolataである。我が国には江戸時代より前に寺社等に導入され、国有林等では林分として育成されているものもある。

(*52)国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター「コウヨウザンの特性と増殖の手引き」(平成30(2018)年)

(*53)熊本県ホームページ「センダンの育成方法H27改訂版」

(*54)令和元(2019)年11月1日付け西日本新聞電子版



(ウ)林業経営の効率化に向けた技術開発

ここまで紹介してきた様々な施業技術等に加え、木材生産・育林コスト低減に向けて様々な技術開発・実証の取組が進められている。また、デジタル化や機械化を進めることで、労力の低減や安全性の向上も期待される。林野庁においても、令和元(2019)年12月に策定した「林業イノベーション現場実装推進プログラム」に基づき、情報通信技術(以下「ICT」という。)や新たな機械開発など先端技術を活用したスマート林業を推進している。


(ICTの活用)

これまで立木の材積は人力の森林調査により把握されてきたが、航空機やドローンによるレーザ計測により材積、立木本数、樹種、樹高等を高い精度で効率的に把握できるようになっており、地域単位や民間事業者等で利用が開始されている。森林整備の計画策定等に活用されるだけでなく、詳細な地形データを得られることから路網計画や境界確認にも活用可能である。

また、市町村や林業経営体が森林情報を共有できるように、16の都道府県が、森林計画図、林地台帳情報、路網情報等を森林クラウド(*55)に集積している。今後、レーザ計測データ等の高精度の情報を森林クラウドに集積することで、境界確認、施業集約化、事業計画の策定が簡素化されることが期待される。

さらに、ICTを活用した生産管理手法として、生産され、土場に椪積はいづみされた丸太の数量をタブレットやスマートフォンで計測する取組が進展している。計測した丸太の量を流通業者、加工業者等と共有するアプリケーションも開発されており、在庫の適正管理と効率的なトラック配送による経営の効率化が期待される(事例 特-7)。

事例 特-7 検収システムでの流通改善等ICTを用いた効率化

スマートフォンを用いた原木量の入力(写真提供:一般社団法人農林水産業みらい基金)

北信州森林組合(長野県)は、航空レーザ計測や森林GISを活用し、山林情報のデジタル化を推進してきたが、さらにICTを活用し丸太の生産量を共有し、流通の効率化にも努めている。

伐り出した丸太は、フォワーダに積み込む際に、独自開発した検収システムのアプリで直径、本数等の生産量のデータをスマートフォンに手入力か音声入力している。生産量の情報は、トラック配送を担う長野県森林組合連合会のシステムに送信・集約され、これを元に翌週のトラック配送計画が金曜日に共有される。出材のタイミングをコントロールしやすくすることで、中間土場に材を溜めないようにでき、現場作業が止まることを防止できるようになった。

また、中間土場は大型車でもアクセスしやすい場所に設置し、製材用、中国向けの輸出用、バイオマス燃料用など規格ごとに仕分けて大量に丸太をストックできるようにしている。中間土場では車両の重さを計測することで木材の積載量を算出し、樹種情報は、ドライバーがQRコードをスキャンすることで簡単に入力できるようにし、効率化も進めている。


資料:一般社団法人農林水産業みらい基金ホームページ「北信州森林組合」、林野庁「生産性向上ガイドブック」(平成30(2018)年)


(*55)クラウドとは、従来は利用者が手元のコンピューターで利用していたデータやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのこと。



(林業機械の自動化、造林の効率化の取組)

林内作業の省人化・効率化・軽労化や安全性向上のため、林業機械等の技術開発が進んでいる。

木材生産作業においては、映像伝送技術やAI等を駆使した機械の遠隔操作化や自動化が検証されている。伐倒については40度の傾斜でも走行可能なリモコン式の小型伐倒作業車が開発され、自動化の実証も進んでいる(資料 特1-37)。架線集材についてはリモコン式架線集材機が製品化を予定し、自動化の実証も進んでいる。搬出については自動走行フォワーダの開発・実証が進んでいる。

資料 特1-37 新たな林業機械の開発
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造林作業においても、通信技術やドローン等を活用した機械化の取組が始まっている。植林作業については、ドローンによる苗木運搬が導入されつつある。地ごしらえ・下刈り作業については、乗用型の造林用作業機械が製品化されており、下刈りや植付け作業の遠隔操作化に向けた開発・実証も進んでいる。

将来的に、これらの機械が導入されることにより、更なる効率化や安全性向上が期待される。


(異業種からの新規参入に向けた取組)

イノベーションには、これまでの関連企業による取組に加え、異業種からの参入により新たな知見を活かした解決策の模索が図られることが重要である。

岐阜県立森林文化アカデミーとNPO法人森とITは、平成29(2017)年から「林業×ITハッカソン」として、林業関係者とIT技術者等が一緒になって林業の課題解決を考えるイベントを開催している。

林野庁も、令和元(2019)年に林業分野の人材と異分野の人材が協同して造林や林業の課題解決を図るためのビジネスを具体化する課題解決型事業共創プログラム「Sustainable Forest Action」を実施し、令和2(2020)年度もこの取組を支援している。

コラム 航空機等によるリモートセンシング技術の進展

高度な森林管理に役立てるため、航空レーザ計測による森林資源情報の取得や解析が全国的に加速している。

令和2(2020)年3月末時点で航空レーザ計測(4点/m2)が実施された森林面積は、全民有林面積の約3割に達しており、その計測情報を解析することにより、樹種、立木本数、材積等の詳細な資源量を把握することが可能である。

一方、数ha程度の小面積の計測には、ドローンを活用する動きもある。

例えば、株式会社ジツタは、ドローン写真を利用した森林資源計測システムを開発し、撮影用ドローン、解析用PC及び専用ソフトウェアのリースを実施している。

また、精密林業計測株式会社は、北信州森林組合において、ドローン写真を活用した間伐の半自動選木技術の実証と精度検証を行っている。

機動性に富むドローンの活用により、精緻な森林情報をピンポイントかつ時間をかけずに取得できるため、有人機による航空レーザ計測の情報も併用しながら、計測作業等の省力化・効率化を目指す林業経営体を中心に導入が進みつつある。

また、林野庁は、令和2(2020)年度に、造林、間伐等を支援する森林整備事業の検査について、リモートセンシング技術等の活用を可能とする運用改善を行った。これを受け、各都道府県は、申請・検査でのリモートセンシング技術の本格的な導入に向けた実証的な取組を始めている。

今後も、森林調査のさらなる軽労化や精緻な木材生産計画の作成、路網設計等、林業の生産性を高める様々な用途への活用が期待されている。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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