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林野庁

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第1部 特集1 第3節 林業従事者の確保・育成と労働環境の向上(1)


持続的な林業経営を実現する上で、伐採や造林の現場を支える林業従事者の確保は重要である。また、その育成に当たり、技術力や生産性の向上を図ることは、林業経営体の収益改善、ひいては林業従事者の処遇改善、就業意欲や定着率の向上につながることが期待される。

本節では、林業従事者の確保、技術力向上や能力評価に関する取組、労働安全や雇用体系等の労働環境について記述する。

(1)林業従事者の確保・育成

(新規就業者の確保・育成)

山間部で行われる林業は、都市部の就業希望者にとってなじみのない職種である。また、地域との関わりも深いことから、定着に当たり、地域の暮らしについての理解も必要である。地域住民以外の様々な方にも林業に携わってもらうため、林野庁では、林業に関心のある都市部の若者等が就業相談等を行うイベントの開催や、林業への適性を見極めるためのトライアル雇用を支援している。

また、新規就業者が林業経営体で働きながら技術力を高め、林業に必要な基本的な知識や技術、技能を習得することで、安全で効率的な林業を行う基礎を身につけた「フォレストワーカー」として育成するため、3年間の体系的な研修を行っている。

このような事業を通じ、林業経営体が新規就業者を確保していくことが期待される。


(新規就業に向けた人材の育成)

林業従事者の技術の向上を図り、安全な作業を行うためには、就業前の教育・研修も重要である。

近年、道府県等により、各地で就業前の林業技術者の教育・研修機関を新たに整備する動きが広がっており、令和2(2020)年度は、北海道立北の森づくり専門学院が開校するなど、全国で19校が開校している(資料 特1-38)。


林野庁は、「緑の青年就業準備給付金事業」により、林業大学校等に通う者を対象に給付金を支給しており、令和元(2019)年度の受給者のうち160名が令和2(2020)年4月に林業に就業するなど就業希望者の裾野の拡大や、将来的な林業経営の担い手の育成を支援している。

このほか、都道府県知事が指定する林業労働力確保支援センターにおいて、新たに林業に就業しようとする者に対し、林業の技術等を習得するための研修や、林業への就業に向けた情報の提供、相談等を行っている。


(技術力向上・処遇改善に向けて)

木材生産・育林コストの低減には、林業従事者の技術力向上が欠かせない。同じ林業機械で同じ工程の作業を行う場合に、熟練者は無駄のない必要最小限の範囲で動かすなど、林業従事者の習熟度で生産性が大きく変わる。機械の導入時には最初に操作技術の向上を図ることが重要であり、また新人と熟練者を組み合わせて作業するなど、林業経営体の中で育成する仕組みを構築する工夫がみられる。

林業経営体の経営者と従業員が経営理念を共有するとともに、作業システムの改善等を行う中で各自の問題意識を共有していくことで主体性を持たせていくことも従業員のモチベーションアップにつながる。

さらに、従業員の能力・業績を客観的かつ公正に評価することで給与に反映するなど、役割を明確化し能力評価システムを導入することで、従業員のモチベーションアップにつなげている林業経営体もある(事例 特-8)。

事例 特-8 能力評価システムの導入によるモチベーション向上

平澤林産有限会社(長野県)は、林業の仕事は過酷な労働条件が多く、若い従業員は長続きしないと考え、ハードな仕事からソフトな仕事に転換することを決め、高性能林業機械の導入を県内でも早い段階から進め、労働負荷の軽減と労働災害の防止に取り組んできた。また、従事者の技術力、仕事に取り組む姿勢を高めるため、人材育成に力を入れてきた。

さらに、平成28(2016)年度から、能力評価システムを導入し、評価結果に基づく能力に応じた給与・賞与を決定している。導入以前は明確な支給基準がなく、社長の思いで個々の賃金を決定してきたが、明確な基準による公正な処遇、従業員個々の役割の明確化により、今後の組織拡大にも対応できるとしている。

また、経営理念を反映した能力評価基準を明示することで、従業員のモチベーションが上がり、自主的に能力開発に取り組むなどの意識改革が促され、生産性の向上、業務の効率化につながっている。


資料:一般社団法人全国林業改良普及協会「能力評価システム導入事例集」(令和元(2019)年)


(キャリアアップを後押しする仕組み・研修)

林野庁は、このような林業労働者の技術力向上やキャリア形成につながる取組を後押しするため、キャリアアップのモデルを提示し、林業経営体の経営者による教育訓練の計画的な実施を支援している。また、「緑の雇用」事業により、新規就業時に加え、その後の現場管理責任者等のキャリアに合わせた研修を用意している。キャリアアップにより意欲と誇りを持って仕事に取り組めるよう、この研修の修了者については、習得した知識、技術・技能のレベルに応じて名簿に登録する制度が運用されている。

さらに業界団体は、平成31(2019)年4月に「林業技能向上センター」を立ち上げ、技能検定制度への林業の追加を目指している。この技能検定制度は、労働者の技能の習得レベルを評価する国家資格であり、林業を追加することで林業従事者の技能や経済的地位の向上等に寄与することが期待される。また、技能検定制度への林業の追加は、在留期間が1年の「外国人技能実習1号」による受入れのみ可能な林業において、在留期間が通算3年となる「外国人技能実習2号」の評価試験の構築にもつながるものである。外国人材については、愛媛県において平成29(2017)年度から県の委託事業として外国人技能実習1号の実習生の受入れが行われるなど関心が高まっており、この面からも、技能検定制度への林業の追加が期待されている。

都道府県においても就業者の技能向上に向け取組を行っており、三重県は、平成31(2019)年に主に就業者を対象とした「みえ森林・林業アカデミー」を設立し、現場技能者、中間管理者層、経営者層のそれぞれに合わせたコースを開講している(*56)。

また、林業大学校は主に就業前の研修がメインとなるが、林業従事者を対象に技術を向上させる研修等を行っている事例がある。例えば、和歌山県農林大学校は架線の研修、くまもと林業大学校は自伐林家向けの研修を行うなど、地域の特色に合わせた取組が行われている。


(*56)一般社団法人全国林業改良普及協会「現代林業」令和2(2020)年6月号:24-30.



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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