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林野庁

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第1部 第1章 第4節 行政機関、研究機関、教育機関等における人材の動向(1)


林業の成長産業化と森林の適切な経営管理を実現するためには、林業経営体や林業従事者の取組だけではなく、地域課題や技術的課題等の解決に関し、行政機関、研究機関、教育機関等との連携が重要な要素となる。また、市町村による森林経営管理制度の運用には都道府県の林業普及指導業務等の取組が、新たな技術の開発に関しては研究機関の取組が、また、新規就業者や現に林業に就業している者の知識や技術の習得には教育機関の取組が、それぞれ重要となってくる。本項では、こうした行政機関、研究機関、教育機関等の現状や果たすべき役割について示していくこととする。


(1)行政機関の職員

(市町村の職員)

市町村における林務担当職員の数は、平成19(2007)年の3,269人から平成29(2017)年には3,045人と微減の状況となっている。また、1,000ha以上の私有人工林を有する市町村においても、林務を専門に担当する職員が0~1人程度の市町村がおよそ4割を占めるなど(*44)、森林・林業行政の体制が十分でない市町村が多い状況となっている。今後、市町村が主体となって森林経営管理制度を進めていくためには、「森林総合監理士(フォレスター)」や「林業普及指導員」等の技術者を「地域林政アドバイザー(*45)」として活用することが重要である(資料1-19)。

職員が中心となって、地域の森林資源の有効活用を積極的に進めている市町村もある。北海道中川町(なかがわちょう)では、町有林の担当職員の主導により、森林管理局、北海道、北海道大学、森林組合、民間事業体、木工デザイナー、家具作家等の様々な人材と連携して、天然林の施業や広葉樹の素材に関するミーティングを開催している。こうした取組を基礎として、中川町(なかがわちょう)は「森林文化再生構想」を策定し、家具メーカーや木工作家への広葉樹材の販売体制の確立や、フォレストツーリズムの試行など多様な形での森林の経済的利用を進めている(事例1-8)。


(*44)総務省「地方公共団体定員管理調査」を基に林野庁において算出。

(*45)森林・林業に関して知識や経験を有する者を市町村が雇用することを通じて、森林・林業行政の体制支援を図る制度。平成29(2017)年度に創設され、市町村がこれに要する経費については、特別交付税の算定の対象となっている。



(都道府県の職員)

都道府県における林務担当職員の数は、平成19(2007)年の9,268人から平成29(2017)年には7,902人と1割以上の減少となっている。都道府県の職員のうち林業普及指導員は、試験研究機関と連携して研究成果の現地実証等を行うとともに、森林所有者等に対する森林施業技術の指導及び情報提供、林業経営者等の育成・確保、地域全体での森林整備や木材利用の推進等の取組を進めている。林業普及指導員数は、平成30(2018)年4月現在、全国で1,288人となっており、研修の実施や人事交流等の推進により資質の向上を図ることとしている。

また、林業普及指導員を中心として森林総合監理士に登録された者は、長期的・広域的な視点に立って地域の森林(もり)づくりの全体像を示すとともに、「市町村森林整備計画」の策定等の市町村行政を技術的に支援する役割を担っている。森林総合監理士は、平成30(2018)年度現在、1,274人が登録されており、このうち都道府県職員は1,017人と、全体の約8割を占めている(資料1-20)。

鹿児島県姶良(あいら)市の姶良(あいら)・伊佐(いさ)地域振興局で林業普及指導員として活動している森林総合監理士・長濱孝行氏は、地域の木材生産の増大に向け、地域の森林・林業・木材産業における、合意形成、森林整備、人材育成、技能向上等の課題に、共通の目標設定と進捗管理、現場研修等の積極的な開催等の様々なアプローチから取り組んでいる。同地区では、平成26(2014)年からの3年間で、地域の素材生産量を3割増とするとともに、再造林面積も3倍弱に伸ばしている(事例1-9)。

森林経営管理制度の推進に当たっては、市町村による制度運用を円滑に進めるため都道府県による支援が求められており、森林総合監理士を始めとした人材の活躍がますます期待されている。


(国有林野事業の取組)

国有林野事業では、その組織力、技術力及び資源を活用し、多様な森林整備を推進する中で、森林施業の低コスト化を進めるとともに、民有林関係者等と連携した施業の推進、施業集約化への支援、林業事業体や森林・林業技術者等の育成及び林産物の安定供給等に取り組むことを通じ、林業の成長産業化の実現に貢献することとしている。

また、都道府県や市町村の林務担当職員数が減少傾向にあり、国有林野事業の職員は森林・林業の専門家として、地域において指導的な役割を果たすことが期待されている。

こうした中、国有林野事業では、専門的かつ高度な知識や技術と現場経験を有する森林総合監理士等を系統的に育成し、地域の林業関係者との連携促進や市町村行政に対し「市町村森林整備計画」の策定とその達成に向けた技術支援等を行っている。


(国の機関等による研修の実施)

国による森林・林業に関する研修のために国が設置する機関である林野庁森林技術総合研修所では、森林・林業行政に関わる林野庁や地方公共団体等の職員を対象に、森林・林業についての知識及び技術の習得を目的とした総合的な研修を実施している。平成30(2018)年度は、市町村の林務担当者を対象とした研修や、森林総合監理士の育成研修など、77コースの研修を実施し、1,600人が受講した。

また、近年、ICTの発達等を受けて、行政機関・民間を問わず、最新の技術の習得やスキルアップに対するニーズが高まっている。このため、林野庁森林技術総合研修所では、高度森林情報(森林クラウド)を活用した新しい森林管理手法、地上設置型レーザによる森林調査、山地における迅速な情報収集への利用等が期待されるドローンの活用技術に関する研修も実施している。

さらに、林野庁では民間団体への委託等により、ICT等を活用した路網計画等作成のための高度な知識・技術を有した技術者や、木材生産現場における高度技能者等の育成に取り組んでいる(資料1-21)。


このほか、都道府県においては、林業経営体の経営者等を対象とした育成研修が実施されている例もあり、コスト分析及び経営状況分析や、マネジメント力を向上するために林業経営、木材流通、木材生産技術に関する講座等が実施されている(資料1-22)。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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