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林野庁

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第1部 第1章 第2節 林業経営体の動向(4)


(4)林家、苗木生産事業者の現状

(林家の状況)

「農林業センサス」によると、法人化していない家族経営体は平成22(2010)年の125,136経営体から、平成27(2015)年には77,692経営体に減少している。

このうち、保有山林において素材生産を行った経営体数は6,517経営体(*22)であり、このような自伐による生産量はおよそ173万m3となっている。

これらの、いわゆる自伐林家は、森林の経営管理を適切に行う意欲と能力を有し、地域の森林・林業を支える中核となる者も生まれている。


(*22)素材生産を行った法人化していない家族経営体の内数。



(苗木生産事業者の状況)

今後主伐の増加が予想される中、主伐後の再造林を確実に行い、資源の循環利用を進めていくためには、苗木の確保が非常に重要な課題となってくる。苗木生産事業者は、平成24(2012)年の約1,000事業者から、平成29(2017)年には、約850事業者と減少している。一方で、山行(やまゆき)苗木(*23)の生産量は平成25(2013)年のおよそ5,600万本を底に増加に転じており、平成28(2016)年にはおよそ6,000万本となっている。特に、平成20(2008)年度に約6千本だったコンテナ苗の生産量は、近年大幅に増加しており、平成28(2016)年度は前年度比52%増の約715万本となっている(資料1-6)。

コンテナ苗は、一般的に裸苗(はだかなえ)に比べて育苗期間が短いことや、床替(とこが)えや根切り作業が不要となることなどから、育苗作業の効率化や労働負荷の軽減が可能である。一方で、裸苗とは異なる生産技術が必要とされることから、更なる生産量の増加に向け、生産技術の習得や向上に向けた現地検討会や講習会等が全国各地で開催されている。

資料1-6 コンテナ苗と裸苗

(*23)植林現場に運ばれ利用に供される苗木。



(林家、苗木生産事業者等の特徴的な取組)

林家や苗木生産事業者等は、森林組合や民間事業体に比べて小規模な場合が多いが、地域の林業を支える重要な役割を果たしている。林業の成長産業化や森林の適切な経営管理の観点から特徴的な取組としては、次のような事例がある。

福井県福井市高田町(たかたちょう)の林家である八杉健治氏は、雪起こし、除伐、枝打ち、間伐といった施業を適期に実施して年輪幅をコントロールし、地域での需要が多い芯去り材の製材にふさわしい大径材を百年以上かけて育てている。さらに、自らの所有森林における自伐だけではなく、集落ぐるみの木材生産計画づくりや林業技術の指導に取り組んでいる。こうした取組により、この二十数年で集落内での木材生産量が10倍以上増加している。

また、自己の所有山林において自営で伐採等を行う自伐林家等の全国的な取組としては「木の駅プロジェクト」がある。この取組は、林家等が自ら生産した間伐材等を軽トラック等で搬出し、地域住民やNPO等からなる実行委員会が地域通貨で買い取り、チップ用材やバイオマス燃料等として販売するものであり、地域経済を活性化する点でも注目されている。平成30(2018)年12月には、広島県安芸高田(あきたかた)市において「第7回木の駅サミット」が開催され、同様の取組を行っている地域の関係者等が集まり、農業機械を改造した搬出用機械などの事例や知識の共有、意見交換等が行われた。

林業への新たな参入を促す取組としては、地域おこし協力隊の仕組みを活用した取組が全国の市町村で行われている。例えば、高知県本山町(もとやまちょう)では、地域おこし協力隊として林業に参入した者がLLP(有限責任事業組合)を立ち上げて活動を継続するなど、その活動が広がりつつある。また、高知県佐川町(さかわちょう)においては、平成26(2014)年から自伐型林業に取り組む地域おこし協力隊の募集を行い、現在10人が活動している。

苗木生産事業者の意欲的な取組としては、宮崎県宮崎市田野町(たのちょう)の株式会社長倉樹苗園の例がある。同社では、森林組合との協定による穂木の安定的な供給、従来秋期に限定されていた穂木の植付を一年中可能とする新技術の開発等を行っている。また、根鉢の成長が十分ではない苗木(*24)の再活用による苗木不足への対応、植付作業の省力化に寄与する自動植付機の開発など様々な取組を行っている(事例1-5)。


(*24)コンテナ内の根の生長が十分ではなく、根と土壌とが一体となった状態(根鉢)が形成されていない苗木。一般的に苗木としては利用されない。


挿絵2

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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