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林野庁

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第4章 木材産業と木材利用


1. 木材需給の動向

(1)世界の木材需給の動向

➢ 世界の木材消費量は2008年秋以降減少したが、2010年以降は再び増加傾向

➢ 2017年、針葉樹製材の生産量及び消費量は、欧州、ロシア、北米のいずれの地域においても増加
欧州、ロシアの最大の輸出先国は中国

➢ 北米では旺盛な需要と深刻な山火事等の影響により針葉樹製材価格が上昇し、その影響が世界の市場へ波及

➢ 日EU・EPAが2019年2月に発効
TPP11協定が2018年12月に発効


(2)我が国の木材需給の動向

➢ 木材需要量は、2009年を底に回復傾向で、2017年は前年比4.8%増の8,185万m3(丸太換算。以下同じ)

➢ 国産材供給量は、2002年を底に増加傾向で、2017年には前年比9.3%増の2,966万m3となり、そのうち燃料材供給量は前年比35%増の604万m3と、大幅に増加

➢ 木材輸入量は、2017年には木材需要量が増加したことなどにより、前年比2.5%増の5,219万m3

➢ 木材自給率は、上昇傾向で推移しており、2017年には7年連続で上昇し、前年比1.4ポイント上昇の36.2%、用材で前年比0.5ポイント上昇の31.6%


(3)木材価格の動向

➢ 2018年の国産材素材価格はやや上昇、製材品価格はほぼ横ばい。国産木材チップ価格は上昇。


(4)違法伐採対策

➢ 2017年5月に施行されたクリーンウッド法により、全ての事業者に、合法伐採木材等を利用するよう努力義務
特に木材関連事業者は、取り扱う木材等について「合法性の確認」等の取組を実施

➢ 合法伐採木材等利用確保のための措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、登録実施機関(現在、6機関が業務実施中)に申請、「登録木材関連事業者」として登録
現在212事業者が登録済み(2019年3月末時点)


(5)木材輸出対策

➢ 木材輸出額は2013年以降増加し、2018年は前年比7%増の351億円
輸出拡大に向け、日本産木材製品のPR等を通じて、丸太中心の輸出から、付加価値の高い製品輸出への転換に向けた取組を実施

➢ 中国への輸出促進の取組として、同国の木構造の設計基準となる「木構造設計規範」の改定作業に日本も参画
日本産木材と木造軸組構法を盛り込む改定がされ、「木構造設計標準」として2018年8月に施行

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事例 欧州に向けた高付加価値木材製品の輸出を促進する取組

ジャパンパビリオンの様子

➢ (一社)日本木材輸出振興協会は、フランスのストラスブールで行われた工芸見本市「サロン・レゾナンス」においてジャパンパビリオンを設置

➢ 組子を使った木製パネルや木製ハンドバッグ等、日本の伝統的な加工技術と現代のデザイン性が融合した「和」を表現する高品質な木材製品のPRを行った

➢ このような取組をきっかけとして、欧州市場の新たな開拓へとつながることが期待される


2. 木材産業の動向

(1)木材産業の概況

➢ 木材産業は、林業によって生産される原木を、消費者・実需者のニーズに応じて様々な木材製品(製材、集成材、合板、木材チップ等)に加工し供給

➢ 木材・木製品製造業の製造品出荷額等は、2009年を底に回復傾向で推移し、2016年は前年と同程度の約2.7兆円

➢ 我が国の木材産業では、競争力のある木材製品を供給できる体制の構築が課題
林野庁では、需要者ニーズに対応した木材製品の安定的・効率的な供給体制構築に資する加工・流通施設の整備に対する支援を実施

(2)製材業

➢ 製材品出荷量は2009年まで減少、2010年以降はほぼ横ばいで推移し、2017年は前年比1.8%増の946万m3であり、製材用素材入荷量の75%以上が国産材

(3)集成材製造業

➢ 国内における集成材の生産量は、2017年には169万m3となり、原料の内訳は、国産材26%、欧州材67%、米材6%
集成材の製品輸入は98万m3で、集成材供給量全体に占める国産材割合は低位

(4)合板製造業

➢ 普通合板の生産量は、2017年には前年比7%増の329万m3であり、用途別にみると構造用合板が大半

➢ 合板への国産材針葉樹の利用が拡大し、2017年には国内の合板生産における国産材割合は82%に上昇
輸入製品を含む合板用材供給量全体に占める国産材割合は39%

(5)木材チップ製造業

➢ 2017年の木材チップ(燃料用チップを除く)の生産量は前年比2%増の595万トン

➢ 木材チップ用素材の入荷量のほとんどが国産材であり、国産材に占める針葉樹の割合は年々増加傾向にあり、2017年には57%

(6)プレカット加工業

➢ 木造軸組構法におけるプレカット材の利用率は2017年では92%まで拡大し、施工時に使用される木材の選択に重要な役割
 中大規模木造建築の普及に伴い加工技術も進化

(7)木材流通業

➢ 木材流通業者は原木や木材製品の流通を業務とし、「木材市売市場」(原木市売市場と製品市売市場)、「木材販売業者」(木材問屋や材木店・建材店)等が存在

(8)CLT等新たな製品・技術の開発・普及

セルロースナノファイバーの実用化

➢ CLT、木質耐火部材、地域材を活用した横架材等の新たな製品・技術の開発・普及に向けた取組を実施

➢ 木質バイオマスについては、効率的なエネルギー変換・利用に加え、セルロースナノファイバー(CNF)や改質リグニン等を活用した高付加価値製品の開発が進むなど、マテリアル利用に向けた動きが進展

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事例 CLT、木質耐火部材を使用した都市部における中高層建築物の建設

竣工した耐火構造(2時間)による10階建てマンション(宮城県仙台市)

➢ 2019年2月、宮城県仙台市に木造と鉄骨造を組み合わせた10階建ての集合住宅が竣工

➢ 同施設では、2017年に耐火構造(2時間)の国土交通大臣認定を取得した木質耐火部材を柱の一部に利用し、一部の居室では木製の柱が現しとなっている。さらに、CLTを4~10階の床版及び1~5階の耐震壁として利用。CLTの原料には国産のスギを、木質耐火部材の原料には国産のスギ及びカラマツをそれぞれ使用

➢ 木質耐火部材やCLTといった木質材料を構造材として本格的に利用した建築物としては国内で最高層

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事例 「改質リグニン」の活用により日本の森林資源が生まれ変わる!?

写真:森林総合研究所、産業技術総合研所、(株)宮城化成、(株)光岡自動車

➢ 2018年10月、スギから抽出した新素材「改質リグニン」を用いた内外装部品を搭載した試作車が公表された

➢ 改質リグニン製造技術の研究に取り組んできた森林総合研究所は、スギからリグニンを安定的に取り出せる製造技術の確立に成功

➢ 今後、自動車用部材等の様々な高付加価値製品が実用化され、改質リグニン製造という新産業が創出されることで、中山間地域の振興につながることが期待

(9)合板・製材・構造用集成材等の木材製品の競争力強化

➢ 2017年7月の日EU・EPAの大枠合意及び同11月の11か国によるTPP11協定の大筋合意を踏まえ、同11月24日に「総合的なTPP等関連政策大綱」を決定し、木材製品の競争力強化に向けた加工施設の生産性向上等の取組を支援

3. 木材利用の動向

(1)木材利用の意義

➢ 木材利用は、快適で健康的な住環境等の形成に寄与するだけでなく、地球温暖化の防止、森林の多面的機能の持続的な発揮及び地域経済の活性化にも貢献

➢ 木材には、調湿作用、高い断熱性等の特徴があるとともに、木材による嗅覚、触覚、視覚刺激が生理・心理面に与える影響についても科学的根拠の蓄積等が進展

(2)建築分野における木材利用

➢ 我が国では、新設住宅着工戸数の約半分が木造であり、木材需要に大きな影響

➢ 森林所有者から大工・工務店等の住宅生産者までの関係者が一体となって家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進

➢ 2018年6月、木造建築を巡る多様なニーズへ対応する観点から、耐火構造等とすべき木造建築物の規模の見直し等が盛り込まれた改正建築基準法が公布

(3)公共建築物等における木材利用

木材に囲まれた空間を実現した病室内の様子(写真提供:千里リハビリテーション病院、住友林業株式会社)

➢ 2017年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は、前年比1.7ポイント上昇の13.4%、うち低層では前年比0.8ポイント上昇の27.2%

➢ 都道府県ごとでは、低層で5割を超える県があるものの、ばらつきあり

➢ 低層の公共建築物のうち民間事業者が整備する公共建築物が全体の6割以上を占めており、そのうち約8割が医療・福祉施設
これらの施設における木造化・木質化の在り方等の検討や、検討結果を踏まえた普及ツールの作成等に対し支援を実施

(4)木質バイオマスのエネルギー利用

木材チップ生産量の推移

➢ エネルギー利用された間伐材等に由来する木質バイオマス量は年々増加し、2017年に木材チップや木質ペレット等の形でエネルギーとして利用された量は前年比35%増の603万m3

➢ 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用した木質バイオマス発電施設が各地で稼働し、地域経済への効果が期待される一方、木質バイオマスの安定供給の確保等が課題

➢ 熱利用や熱電併給等を通じた森林資源の地産地消による有効活用に向けて、「地域内エコシステム」の構築等に向けた取組を推進

(5)消費者等に対する木材利用の普及

➢ 一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発するため、「木づかい運動」を展開

➢ 「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見させる製品や取組等について、特に優れたものを消費者目線で評価、表彰し、2018年度は189点が受賞

➢ 全国で広がりつつある「木育(もくいく)」の取組を支援
ワークショップ等を通じた実践的な活動や、関係者間のネットワーク構築の取組等、様々な活動が多様な主体により実施

2018年度 木育・森育楽会(石川県金沢市)
長門おもちゃ美術館(山口県長門市)

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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