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林野庁

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第1部 第 III 章 第1節 林業の動向(2)

(2)林業経営の動向

(ア)森林保有の現状

(森林所有者の保有山林面積は増加傾向)

農林水産省では、我が国の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにするため、5年ごとに「農林業センサス」調査を行っている。

平成28(2016)年に公表された「2015年農林業センサス」では、林業構造の基礎数値として、「林家」と「林業経営体」の2つを把握している。このうち「林家」とは、保有山林面積(*2)が1ha以上の世帯であり、「林業経営体」とは、(ア)保有山林面積が3ha以上かつ過去5年間に林業作業を行うか森林経営計画又は森林施業計画(*3)を作成している、(イ)委託を受けて育林を行っている、(ウ)委託や立木の購入により過去1年間に200m3以上の素材生産を行っている、のいずれかに該当する者である(*4)。

同調査によると、林家の数は、5年前の前回調査(「2010年世界農林業センサス」)比で9%減の約83万戸、保有山林面積の合計は前回比で1%減の約517万haとなっている。なお「1990年世界農林業センサス」によると、保有山林面積が0.1~1ha未満の世帯の数は145万戸であったことから、現在も保有山林面積が1ha未満の世帯の数は相当数にのぼるものと考えられる(*5)。

また、林業経営体の数は、前回比で38%減の約8.7万経営体、保有山林面積の合計は前回比で16%減の約437万haとなっている。このうち、1世帯(雇用者の有無を問わない。)で事業を行う「家族経営体(*6)」の数は約7.8万経営体で、林業経営体の9割を占めている(資料 III -7)。

林家について保有山林規模別にみると、88%の林家は保有山林面積が10ha未満である。これに対して、保有山林面積が10ha以上の林家は、全林家数の12%にすぎないものの、林家による保有山林面積の61%に当たる316万haを占めている(資料 III -8)。なお、前回調査と比べると、100ha未満の林家の数は減少し、100ha以上の林家の数は増加している。このことから、林家数は前回比で9%減少した一方で1林家当たりの保有山林面積は9%増加し、約6.2haとなっている(資料 III -9)。

林業経営体について保有山林規模別にみると、林業経営体の56%は保有山林面積が10ha未満である。これに対して、保有山林面積が100ha以上の林業経営体は、全林業経営体数の4%にすぎないものの、林業経営体による保有山林面積全体の76%に当たる331万haを占めている(資料 III -8)。なお、前回調査と比べると、全階層で数が減少しているが、特に10ha未満の減少率が高い。このことから、林業経営体数は前回比で38%減少した一方で1林業経営体当たりの保有山林面積は36%増加し、約51haとなっている(資料 III -10)。

このように、林家及び林業経営体の数は減少傾向にあるものの、保有山林面積の大きい林家及び林業経営体の割合が増えることにより、1林家当たり、1林業経営体当たりの保有山林面積は増加しており、規模拡大が進んでいる傾向がみられる(資料 III -9、10)。また、1林業経営体当たりの素材生産量も増加しており、このことからも規模拡大の傾向がみてとれる(*7)。


林家の数と1林家当たりの保有山林面積の推移
データ(エクセル:52KB)
        林業経営体の数と1林業経営体当たりの保有山林面積の推移
データ(エクセル:49KB)

(*2)所有山林面積から貸付山林面積を差し引いた後、借入山林面積を加えたもの。

(*3)30ha以上のまとまりを持った森林について、造林や伐採等の森林施業に関する5か年の計画で、平成24(2012)年度から「森林経営計画」に移行。

(*4)林業経営体のうち、(ア)に該当する者は全て林家に含まれるが、(イ)又は(ウ)に該当する者は保有山林が1ha未満又は山林を保有していない場合もあるため、全て林家に含まれるとは限らない。

(*5)「1995年農林業センサス」以降この統計項目は削除された。

(*6)家族経営体78,080経営体のうち、山林(3ha以上)を保有する経営体は76,969経営体(99%)であることから、家族経営体(定義上は山林を保有する世帯に限らない)のほとんどが林家(山林(1ha以上)を保有する世帯)に含まれる。

(*7)1林業経営体当たりの素材生産量の動向については、95-96ページを参照。



(森林所有者の特定と境界の明確化が課題)

我が国の私有林(*8)では、森林所有者の高齢化が進んでおり、「2015年農林業センサス」によると、家族経営体の経営者の平均年齢は前回から1.3歳上昇し、67.3歳に達している。また、約8割が60歳以上となっている。さらに、相続に伴う所有権の移転等により、森林の所在する市町村に居住し、又は事業所を置く者以外の者(不在村者)の保有する森林が増加している。「2005年農林業センサス」によると、不在村者による保有山林面積が、私有林面積の24%を占めており、そのうちの約4割は当該都道府県外に居住する者等の保有となっている(*9)。このような中で、森林所有者や境界が不明で整備が進まない森林もみられ、所有者の特定と境界の明確化が課題となっている(事例 III -1)。

平成27(2015)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で、林業者モニター(*10)に対して森林の境界の明確化が進まない理由について聞いたところ、「相続等により森林は保有しているが、自分の山がどこかわからない人が多いから」、「市町村等による地籍調査が進まないから」、「高齢のため現地の立会ができないから」という回答が多かった(資料 III -11)。

このため、森林所有者の特定や境界の明確化に向けた取組が進められている。

所有者の特定については、平成23(2011)年の「森林法」の改正により、平成24(2012)年4月から、新たに森林の土地の所有者となった者に対して、市町村長への届出を義務付ける制度(*11)が開始され、1ha未満の小規模な森林の土地の所有者の異動も把握することが可能となった(*12)。あわせて、森林所有者等に関する情報を行政機関内部で利用するとともに、他の行政機関に対して、森林所有者等の把握に必要な情報の提供を求めることができることとされた(*13)。さらに、平成28(2016)年5月の「森林法」の改正により、市町村は、森林の土地の所有者、境界測量の実施状況等を記載した林地台帳を作成し、その内容の一部を公表する仕組みが設けられた。林地台帳は平成30(2018)年度末までに整備することとされており、林地台帳の活用により、森林所有者や境界の確認が円滑化されることが期待されている。

平成28(2016)年度には、国土交通省において、有識者による「所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会」のフォローアップ会議が開催され、所有者の探索方法と所有者を把握できない場合に活用できる制度、解決事例等を整理した市区町村等の職員向けのガイドラインの改訂が行われた。

土地の境界については「地籍調査(*14)」が行われているが、林地における実施面積の割合は平成27(2015)年度末時点で44%にとどまっており、平成31(2019)年までに50%とすることが目標とされている(*15)。このような中で、林野庁と国土交通省は、森林の境界明確化活動と地籍調査の成果を相互に活用するなど、連携しながら境界の明確化に取り組んでいる。

事例 III -1 施業集約化に向けた境界明確化の取組

境界調査の様子
境界調査の様子
林相の差による境界の推測
林相の差による境界の推測

茨城県久慈郡(くじぐん)大子町(だいごまち)に位置する大子町森林組合は、施業の集約化に向けて、森林の境界の明確化に取り組んでいる。

大子町は、その面積の約8割が森林であるものの、森林所有者の世代交代や森林経営に対する意欲の減退等により、境界が不明瞭な森林が多く存在しているとされている。また、このような森林では、適切な森林施業が行われず、放置される傾向にある。

そのため、同森林組合では、自主的な取組として、所有者や有識者等と連携して境界調査を行い、境界の明確化を進めている。調査では、高精度のGPSやレーザー式コンパス等を用いることで、精度の高い測量を行っている。

境界情報は、GISシステムを活用することにより、樹種、林齢、樹種別の面積、間伐等の施業の履歴等の様々な情報と共に一括して管理されている。このGISシステム上では、人工衛星による位置情報や年代別の空中写真、公図等を読み込んで表示させることができるため、年代別による林相の差や、古い公図等との比較による境界の推測にも効果を発揮している。

このような取組を進めることにより、同森林組合は、将来的には小規模な森林をまとめて施業を集約化し、低コストで効率的な森林施業を行うとともに、管理が困難な森林所有者に代わり、境界保全や計画的な森林経営を行うことを目指している。


(*8)「2015年農林業センサス」の定義では、「私有林」は「個人、会社、社寺、各種団体等が所有している林野」とされている。

(*9)「2010年世界農林業センサス」以降この統計項目は削除された。

(*10)この調査での「林業者」は、「2010年世界農林業センサス」で把握された林業経営体の経営者。

(*11)「森林法」(昭和26年法律第249号)第10条の7の2、「森林法施行規則」(昭和26年農林省令第54号)第7条、「森林の土地の所有者となった旨の届出制度の運用について」(平成24(2012)年3月26日付け23林整計第312号林野庁長官通知)

(*12)1ha以上の土地取引については、「国土利用計画法」(昭和49年法律第92号)に基づく届出により把握される。

(*13)「森林法」第191条の2、「森林法に基づく行政機関による森林所有者等に関する情報の利用等について」(平成23(2011)年4月22日付け23林整計第26号林野庁長官通知)ほか。

(*14)「国土調査法」(昭和26年法律第180号)に基づき、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査。

(*15)「国土調査事業十箇年計画」(平成22(2010)年5月25日閣議決定)



(イ)林業経営体の動向

(a)全体の動向

(森林施業の主体は林家・森林組合・民間事業体)

我が国の私有林における森林施業は、主に林家、森林組合及び民間事業体によって行われている。このうち、森林組合と民間事業体(以下「林業事業体」という。)は、主に森林所有者等からの受託若しくは立木買いによって、造林や伐採等の作業を担っている。「2015年農林業センサス」によると、山林を持つ林業経営体が保有山林以外で他から作業・管理を任されている山林98万haのうち、約9割が森林組合又は民間事業体に任されている(*16)。

また、森林組合は、植林、下刈り等及び間伐については全国の受託面積の56%を占めており、保育等の森林整備の中心的な担い手となっている。また、民間事業体は、主伐の55%を実施しており、素材生産の中心的な担い手となっている(資料 III -12)。


(*16)森林組合が約48万ha、民間事業体が約41万haを任されている(「2015年農林業センサス」)。



(林業経営体による素材生産量は増加)

「2015年農林業センサス」によると、調査期間(*17)の1年間に素材生産を行った林業経営体は、全体の約12%に当たる10,490経営体(前回比19%減)で、素材生産量の合計は1,989万m3(前回比27%増)となっている(資料 III -13)。また、1林業経営体当たりの素材生産量は1,896m3(前回比57%増)となっている。

このうち、受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体については、3,712経営体(前回比9%増)となっており、その素材生産量の合計は1,555万m3(前回比42%増)となっている(資料 III -13)。1林業経営体当たりの素材生産量については、平成22(2010)年には3,211m3であったが(*18)、平成27(2015)年には4,188m3に達しており(*19)、3割程度の増加となっている。また、年間素材生産量が5,000m3以上の林業経営体による素材生産量の占める割合は、平成22(2010)年には全体の75%であったが、平成27(2015)年には80%に上昇している(資料 III -14)。

受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体について、組織形態別に林業経営体数と素材生産量の割合をみると、森林組合は林業経営体数では全体の16%であるが、素材生産量では全体の33%を占めている。また、民間事業体は林業経営体数では全体の30%であるが、素材生産量では全体の45%を占めている(資料 III -15)。

このように、1年間に素材生産を行った林業経営体の数は減少しているが、素材生産量の合計及び1林業経営体当たりの素材生産量は大幅に増加しており、林業経営体の規模拡大が進んでいる傾向がみられる。また、受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体については、林業経営体数が増加しているとともに、「1年間に素材生産を行った林業経営体の素材生産量」のうち「受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体の素材生産量」が占める割合は78%に達している(資料 III -13)。このことから、受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体による素材生産が全体の素材生産量を底上げしていることがみてとれる。さらに、「受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体の素材生産量」の内訳をみると、森林組合及び民間事業体による素材生産が78%を占めていることから(資料 III -15)、森林組合及び民間事業体が素材生産量の増減に与える影響は大きいことがうかがえる。


(*17)平成26(2014)年2月から平成27(2015)年1月までの間。

(*18)素材生産量の合計10,915,882m3を林業経営体数の合計3,399経営体で除して算出(農林水産省「2010年世界農林業センサス」)。

(*19)素材生産量の合計15,545,439m3を林業経営体数の合計3,712経営体で除して算出(農林水産省「2015年農林業センサス」)。



(林業経営体の生産性は上昇傾向)

「2015年農林業センサス」によると、受託若しくは立木買いにより素材生産を行った林業経営体の素材生産の生産性は、前回から18%上昇して2.7m3/人・日となっている(*20)。しかしながら、欧米諸国と比べると低水準である(*21)。また、素材生産量の規模別にみると、規模が大きい林業経営体ほど生産性が高くなっている(資料 III -16)。この要因としては、規模が大きい林業経営体では機械化が進んでいることなどが考えられる。


(*20)素材生産量の合計15,545,439m3を投下労働量の合計5,858,650人・日で除して算出(農林水産省「2015年農林業センサス」)。

(*21)我が国と欧州との比較については、「平成21年度森林及び林業の動向」(10-11ページ)を参照。



(木材販売収入に対して育林経費は高い)

我が国の林業は、販売収入に対して育林経費が高くなっている。50年生のスギ人工林の主伐を行った場合の木材収入は、平成28(2016)年の山元立木価格に基づいて試算すると、87万円/haとなる(*22)。これに対して、スギ人工林において、50年生(10齢級(*23))までの造林及び保育に掛かる経費は、「平成25年度林業経営統計調査報告」によると、114万円/haから245万円/haまでとなっている(*24)。このうち約9割が植栽から10年間に必要となっており、初期段階での育林経費の占める割合が高い(資料 III -17)。

このため、植栽から保育、伐採までの長期にわたる林業経営を行うには、生産性の更なる向上とともに、育林経費の低コスト化、木材の販売収入の拡大等が重要な課題となっている。


(*22)スギ山元立木価格2,804円/m3(90-91ページを参照。)に、スギ10齢級の平均材積311m3/ha(林野庁「森林資源の現況(平成24(2012)年3月31日現在)」における10齢級の総林分材積を同齢級の総森林面積で除した平均材積414m3/haに利用率0.75を乗じた値)を乗じて算出。

(*23)齢級は、林齢を5年の幅でくくった単位。苗木を植栽した年を1年生として、1~5年生を「1齢級」と数える。

(*24)地域によりばらつきがある。また、林齢によって標本数が少ないものがあることから、集計結果の利用に当たっては注意が必要とされている。



(b)林家の動向

(林家による施業は保育作業が中心)

林家による施業は、保育作業が中心であり、主伐を行う者は少なくなっている。

「2015年農林業センサス」によると、家族経営体のうち、過去5年間に保有山林において植林、下刈り、間伐、主伐等の何らかの林業作業を行った者は、全体の84%であった。作業別の実施割合をみると、下刈りを実施した者、間伐を実施した者はそれぞれ5割前後である一方、主伐を実施した者は8%、植林を実施した者は14%であった(資料 III -18)。これは、保育の必要な人工林が多く存在する一方で、木材販売収入に対して育林経費が高いことなどにより、主伐・再造林が進んでいないことによるものと考えられる。


(林業所得は低く、林業で生計を立てる林家は少ない)

「2015年農林業センサス」によると、家族経営体約7.8万経営体のうち、調査期間の1年間に何らかの林産物(*25)を販売したものの数は、全体の14%にあたる約1.1万経営体である。

また、平成25(2013)年度の1林業経営体当たりの年間林業粗収益は248万円で、林業粗収益から林業経営費を差し引いた林業所得は11万円であった(資料 III -19)。「2005年農林業センサス」によると、山林を保有する家族経営体約18万戸のうち、林業が世帯で最も多い収入となっている林家数は1.7%の3千戸であったことから、現在も林業による収入を主体に生計を立てている林家は少数であると考えられる(*26)。


(*25)用材(立木又は素材)、ほだ木用原木、特用林産物(薪、炭、山菜等(栽培きのこ類、林業用苗木は除く))。

(*26)「2010年世界農林業センサス」以降この統計項目は削除された。



(山林に係る相続税の納税猶予制度等)

大規模に森林を所有する林家では、相続を契機として、所有する森林の細分化、経営規模の縮小、後継者による林業経営自体の放棄等の例がみられる。林家を対象として、林業経営を次世代にわたって継続するために求める支援や対策について聞いたところ、保有山林面積規模が500ha以上の林家では、「相続税、贈与税の税負担の軽減」と回答した林家が53%で最も多かった(*27)。

このような中で、山林に係る相続税については、これまで、「山林に係る相続税の納税猶予制度(*28)」のほか、評価方法の適正化、課税価格の軽減や納税の猶予等を図る措置が講じられてきた。

平成29(2017)年度税制改正では、本制度が拡充され、(ア)一つの小流域内に存する5ha未満の山林のうち、一定の要件を満たす山林を納税猶予の対象に加える、(イ)「森林経営計画」の作成者が身体障害等で経営の継続が困難となった場合には、農林水産大臣の確認を受けた推定相続人に経営の全てを委託することで納税猶予を継続できる、(ウ)災害による森林被害のため規模拡大が困難である場合には、規模拡大の取組期間を延長(10年→15年)することとなった。また、相続時の財産評価の適正化のため、実態を踏まえて、スギ及びヒノキについて現行評価額を全体的に引き下げるとともに、マツについて原則として標準価額を定めず個別に評価する見直しが行われることとなった。


(*27)農林水産省「林業経営に関する意向調査」(平成23(2011)年3月)

(*28)一定面積以上の森林を自ら経営する森林所有者を対象に、経営の規模拡大、作業路網の整備等の目標を記載した森林経営計画が定められている区域内にある山林(林地・立木)を、その相続人が相続又は遺贈により一括して取得し、引き続き計画に基づいて経営を継続する場合は、相続税額のうち対象となる山林に係る部分の課税価格の80%に対応する相続税の納税猶予の適用を受けることができる制度。



(c)林業事業体の動向

(森林組合)

森林組合は、「森林組合法(*29)」に基づく森林所有者の協同組織で、組合員である森林所有者に対する経営指導、森林施業の受託、林産物の生産、販売、加工等を行っている(資料 III -20)。

森林組合の数は、最も多かった昭和29(1954)年度には5,289あったが、経営基盤を強化する観点から合併が進められ、平成26(2014)年度末には631となっている。また、全国の組合員数は、平成26(2014)年度末現在で約154万人(法人含む。)となっており、組合員が所有する私有林面積は約937万ha(*30)で、私有林面積全体の約3分の2を占めている(*31)。

森林組合が実施する事業のうち、新植や保育の事業量は、長期的には減少傾向で推移している。これに対して、素材生産の事業量は、平成14(2002)年度を底に増加傾向にあり、平成26(2014)年度の素材生産量は前年比10%増の495万m3となった(資料 III -21)。素材生産量の内訳をみると、主伐209万m3、間伐286万m3となっている。

新植及び保育の依頼者別面積割合は、半数が組合員を含む個人等であり、公社等と地方公共団体はそれぞれ2割程度を占めている。また、素材生産量のうち、85%が組合員を含む私有林からの出材となっている(資料 III -22)。

現在、森林組合系統では、平成27(2015)年10月に開催された全国森林組合大会において決定した、平成28(2016)年度からの5年間を運動期間とする新たな系統運動の方針に基づき、引き続き施業の集約化等に取り組むことで持続的かつ効率的な事業展開を図るとともに、系統のスケールメリットを活かした国産材の安定供給体制の構築を目指すこととしている(*32)(事例 III -2)。

平成28(2016)年5月の「森林組合法」の改正により、平成29(2017)年度から、森林組合が自ら森林を保有・経営する「森林経営事業」の要件を見直し、森林の保続培養等の目的に加え、林業を行う組合員の利益増進を目的とする森林経営事業を実施できるようになった。また、同改正により、森林組合に加え、森林組合連合会による森林経営事業が可能となった。

森林組合における事業取扱高の割合
データ(エクセル:72KB)
        森林組合の事業量の推移
データ(エクセル:80KB)

事例 III -2 森林組合による大径材の需要拡大に向けた取組

輸出される木材
輸出される木材
飫肥杉を使用した宮崎駅の木質化の様子
飫肥杉を使用した
宮崎駅の木質化の様子

宮崎県南部に位置する南那珂(みなみなか)森林組合では、管内に「飫肥杉(おびすぎ)」として知られるスギが広く造林されてきたこと、比較的平坦な地形であること、シカによる森林被害が少ないことなどの利点を活かし、路網の整備が早い段階で進められ、高性能林業機械による効率的な森林施業が行われている。この結果、年間の素材生産量は約6.4万m3に達している。

しかしながら、近年、国内において、和室等に使用される大径材の需要が縮小してきたこと、40cm以上の径級の丸太を製材できる工場が少ないこと、集成材技術の向上により大径無垢材の需要が減ったこと等により、地域のブランド材である飫肥杉のうち、とりわけ大径材の価格が低迷するとともに、買い手がつかない場合も生じてきた。

そのため、南那珂森林組合では、他の森林組合と共同で中国や韓国へ飫肥杉の材木を輸出することで、販路を拡大させることとした。さらに、40cm以上の大径材を製材することのできる同森林組合が運営する製材工場で大径材を加工し、大径材を利用した製品の企画提案を行うことにより、宮崎駅や地域の企業等の木質化、公共建築物等の建設に使用されるようになったほか、福岡県の工務店と提携することにより、住宅にも使われることとなった。

これらの取組により、飫肥杉の大径材の需要が拡大するとともに、地域のブランド材としての価値も高まりつつある。


(*29)「森林組合法」(昭和53年法律第36号)

(*30)市町村有林、財産区有林も含めた民有林全体においては、組合員(市町村等を含む。)が所有する森林面積は、約1,070万haとなっている。

(*31)林野庁「平成26年度森林組合統計」(平成28(2016)年10月)

(*32)全国森林組合連合会「JForest 森林・林業・山村未来創造運動~次代へ森を活かして地域を創る~」(平成27(2015)年10月)



(民間事業体)

素材生産や森林整備等の施業を請け負う民間事業体は、平成27(2015)年には1,305経営体(*33)となっている。このうち植林を行った林業経営体は31%(*34)、下刈り等を行った林業経営体は47%(*35)、間伐を行った林業経営体は71%(*36)である。

また、受託若しくは立木買いにより素材生産を行った民間事業体は、1,098経営体となっている。これらの林業経営体の事業規模をみると、59%(*37)が年間の素材生産量5,000m3未満の林業経営体となっており、小規模な林業経営体が多い。素材生産の労働生産性は事業規模が大きい林業経営体ほど高いことから、効率的な素材生産を行うためには安定的に事業量を確保することが求められる。このような中で、民間事業体においても、森林所有者等に働きかけ、施業の集約化や経営の受託等を行う取組(*38)が進められている。

また、林業者と建設業者が連携して路網整備や間伐等の森林整備を実施する「林建協働」の取組が、建設業者による「建設トップランナー倶楽部(*39)」等により推進されている。建設業者は既存の人材、機材、ノウハウ等を有効活用して、林業の生産基盤である路網の開設等を実施できることから、林業者との連携によって林業再生に寄与することが期待される。

コラム 民間企業による林業関連事業者の経営実態に関する調査

民間の信用調査会社である株式会社帝国データバンクは、平成28(2016)年6月末時点の自社の企業概要データベース(146万社収録)から、平成26(2014)年決算及び平成27(2015)年決算の売上高が判明した林業関連事業者1,616社を抽出し、経営実態を分析した。

林業関連事業者1,616社の平成27(2015)年の売上高合計は、前年比7.1%増の約4,503億円で、増減の内訳をみると、増収したのは534社(構成比33.0%)、減収は473社(同29.3%)、横ばい(増減が百万円未満)が609社(同37.7%)であった。売上規模別にみると、「1億円未満」が869社(構成比53.8%)、「1億円以上10億円未満」が667社(同41.3%)で、10億円未満の事業者が全体の95%を占める一方、「100億円以上」は3社(構成比0.2%)にとどまっていた。

2期連続で損益が判明した644社の内訳をみると、平成27(2015)年決算での増益は329社(構成比51.1%)、減益は297社(同46.1%)となった。また、増益となった329社のうち増収増益となった企業は223社(同34.6%)、減益となった297社のうち減収減益となったのは192社(同29.8%)となった。なお、平成27(2015)年決算の損益が判明した企業は722社あり、うち596社(同82.5%)が黒字となり、黒字企業が大半を占めた。

業種細分類別にみると、造林、育林を主業とする事業者が762社(構成比47.2%)で約半数を占め、その他は、森林組合(382社、同23.6%)や、原木生産業(282社、同17.5%)と続いた。また、業種細分類別に平成27(2015)年の業績をみると、増収企業の割合はいずれも3割台だったが、森林組合のみ減収企業の割合が4割を超えた。 地域別にみると、東北が322社(構成比19.9%)を占めトップとなるほか、九州(243社)、北海道(230社)を含めた上位3地域で全国の約半数(同49.2%)を占めた。地域別に増収及び減収企業数をみると、北海道、近畿、中国の3地域で減収企業が増収企業を上回った。

代表者の年齢が判明した1,140社をみると、代表者が「60代」の事業者が457社(構成比40.1%)で最多となった。また、平均年齢は64.4歳となり、全業種平均である59.2歳(帝国データバンク:2016年全国社長分析)を5.2歳上回り、他業種に比べ高齢化が進んでいる。

従業員規模別にみると、代表者役員のみを含む「10名未満」が1,053社となり、全体の65.2%と多数を占めた一方、「100名以上」の事業者は19社にとどまった。業歴別では、業歴100年以上の事業者は20社、業歴の平均は40.9年だった。

このように、同社の企業概要データベースに登録されている林業関連事業者は、売上規模や従業員規模は小さいものの、売上高は全体では増加しており、増収増益事業者は全体の3割を超えている。また、他業種に比べ代表者の高齢化が進行しており、後継者の育成が課題と考えられる。

資料:帝国データバンク 特別企画「林業関連事業者の経営実態調査」

業種分類別の損益の内訳
業種分類別の損益の内訳
        従業員規模別の林業関連事業者の内訳
従業員規模別の林業関連事業者の内訳

(*33)「2015年農林業センサス」による調査結果で、調査期間の1年間に林業作業の受託を行った林業経営体のうち、株式会社、合名・合資会社、合同会社、相互会社の合計。

(*34)409経営体(農林水産省「2015年農林業センサス」)。

(*35)610経営体(農林水産省「2015年農林業センサス」)。

(*36)929経営体(農林水産省「2015年農林業センサス」)。

(*37)652経営体(農林水産省「2015年農林業センサス」)。

(*38)例えば、「平成24年度森林及び林業の動向」の136ページを参照。

(*39)複業化や農林水産業への参入に取り組む建設業者の会。



(林業事業体育成のための環境整備)

林業事業体には、地域の森林管理の主体として、造林や保育等の作業の受託から「森林経営計画」等の作成に至るまで、幅広い役割を担うことが期待されることから、施業の集約化等に取り組むための事業環境を整備する必要がある。

このため、各都道府県では、林野庁が発出した森林関連情報の提供等に関する通知(*40)に基づき、林業事業体に対して森林簿、森林基本図、森林計画図等の閲覧、交付及び使用を認めるように、当該情報の取扱いに関する要領等の見直しを進めている。

また、事業発注者等が明確かつ客観的な基準で事業実行者を評価し、選択できるよう、林野庁では、林業事業体に関する技術者・技能者の数、林業機械の種類及び保有台数、都道府県による事業実施の成績評定の結果等の情報を登録し、公表する仕組みの例を示した。平成28(2016)年度までに、北海道、宮城県、山形県、栃木県、三重県、福岡県及び鹿児島県が林業事業体の情報を登録し、公表しており、また、広島県が登録申請の受付を開始している。

さらに、林業事業体の計画的な事業実行体制等の構築を促進するため、地域における森林整備や素材生産の年間事業量を取りまとめて公表する取組も開始されている。


(*40)「森林の経営の受委託、森林施業の集約化等の促進に関する森林関連情報の提供及び整備について」(平成24(2012)年3月30日付け23林整計第339号林野庁長官通知)


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ダイヤルイン:03-6744-2219
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