第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(4)
(4)消費者等に対する木材利用の普及
(「木づかい運動」を展開)

林野庁は、一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」の展開を図っている。都市(まち)の木造化推進法で、10月が「木材利用促進月間」として位置付けられたことから、10月を中心に木材利用促進本部の関係省庁、地方公共団体及び企業や団体と連携して、木の良さを体感するイベントや、木材利用の意義に関する情報発信等を行っている。企業やNPO等においても、林野庁の補助事業を活用し、地域材を用いた玩具、食器、家具等の木製品の選択的消費を促すオンライン上のショッピングサイトが開設されているほか、建築物の現地視察を伴う企画、木材利用に関するセミナーのウェブ開催等、多様な機会を通じて国民各層への発信が行われている。
また、林野庁は、「ウッド・チェンジ」を合言葉として、身の回りのものを木に変える、建築物を木造化・木質化するなどの具体的な行動の促進を図っており、その一環として様々なロゴマークの使用を推奨している。例えば、「ウッド・チェンジ」の趣旨に賛同し木材利用の取組をPRする企業や団体等が「ウッド・チェンジロゴマーク」を使用できることとしており、ロゴマークの露出を増やすことで、その認知度向上や行動促進を図っている(資料3-27)。令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までの間に500件を超える使用登録が行われることを目標としており、令和7(2025)年3月末時点で387の企業や団体等でロゴマークが使用されている。
「木づかいサイクルマーク」は、パンフレット等による広報活動や国産材を使用した製品への添付等により木材利用をPRするもので、令和7(2025)年3月末時点で、320の企業や団体で使用されている(資料3-27)。
そのほか、林野庁では、個々の建築物や製品等における国産材の使用状況、炭素貯蔵量の可視化を目的として、「Japan Wood Label」及び「Wood Carbon Label」のロゴマークを定め、国産材利用や2050年ネット・ゼロの実現に関心のある消費者層への訴求力を向上していくこととしている(資料3-28)。また、国土交通省及び関係団体と協力し、国産材を多く活用した住宅生産者による花粉症対策の取組の見える化を実施しており、これらのロゴマークが活用されている。
さらに、令和5(2023)年度には、森林資源の循環利用の普及啓発のため、漫画「サザエさん」の著作権を有する⾧谷川町子美術館と協力体制を構築し、農林水産大臣からサザエさん一家に「森林(もり)の環(わ)応援団」を委嘱した。令和6(2024)年度も引き続き、吹き出しコンテストやSNS等を通じ、森林(もり)の環(わ)応援団による情報発信等を行っている(資料3-29)。



(表彰に係る取組の展開)
一般社団法人日本ウッドデザイン協会が主催する「ウッドデザイン賞」は、木の良さや価値を再発見できる建築物や木製品、木材を利用して地域の活性化につなげている取組等について、特に優れたものを表彰している。10回目となる令和6(2024)年度は、226点が入賞し、このうち31作品が最優秀賞(4大臣賞)や優秀賞(林野庁⾧官賞)など上位賞を受賞した(資料3-30)。
また、木材利用推進中央協議会が主催する「木材利用推進コンクール」では、特に優れた木造施設や内装を木質化した建築物等を対象にその整備主体(施主、設計者、施工者)等を表彰している。
これらの表彰により木の良さに対する理解が進み、建築物等における木材の利用や調達の新たな手法等がモデルとなって全国各地で木材利用の機運が高まることが期待される。

(「木育(もくいく)」の取組の広がり)
林野庁では、木材利用に対する国民の理解を深めるため、子供から大人までが木に触れつつ木の良さや利用の意義を学ぶ「木育」を推進している。木育の取組は全国で広がっており、行政機関、木材関連団体、NPO、企業等の幅広い連携により様々な活動が実施されている(事例3-6)。林野庁の支援により、木のおもちゃに触れる体験や木工ワークショップ等を通じた木育活動、それらを支える指導者の養成のほか、関係者間の情報共有やネットワーク構築等を促す取組として、令和6(2024)年10月に「第10回木育(もくいく)・森育楽会(もりいくがっかい)」が開催され、同年11月には「木育サミットin福岡あさくら」が開催された。
事例3-6 木に触れる体験を提供できる「木育(もくいく)トラック」の取組
広島県三次(みよし)市の有限会社一場木工所は、ネズミサシ等の里山未利用樹種の高付加価値化プロジェクトやコンサルタント事業を実施するとともに、木のおもちゃや木製キッズスペースを製作するなど、人と木と森林に対する自主的な関わりを持つための「木育」に力を入れており、令和6(2024)年には関係企業の協力を得ながら、クラウドファンディングを通じて多目的サポートトラック「木育トラックmanaviba(マナビバ)」を完成させた。
木育トラックのコンセプトは「都市から森への入り口」となっており、内部は全て木質化しているほか、木製おもちゃも常備するなど、木に触れる・知る体験を重視している。授乳室や机、椅子等を搭載した移動インフラでもあり、イベント開催時や災害時などの際の一時的な保育所・休憩所として活用できる。トラック内部の木質化は日本初の試みであり、移動可能であるという利点により全国各地の企業やイベントなどにおいて活用できるため、森林・木材に対する親しみや理解の輪が広がることが期待される。
(木材利用における林福連携の取組)
林福連携として、福祉関係者、林業・木材産業者、デザイナー、地域関係者等が協力し、福祉施設の利用者の作業性に配慮しつつ、高いデザイン性も備えた製品を開発する取組がみられる(*63)。障害者等のやりがいや収入の向上などに資するとともに、地域ブランドの創出や地域材の魅力のPRにつながることが期待される。
(*63)例えば、「令和4年度森林及び林業の動向」第3章第2節(4)の資料3-25(141ページ)を参照。
お問合せ先
林政部企画課
担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219