第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(5)
(5)木材輸出の取組
(木材輸出の概況)

我が国の木材輸出は、中国等における木材需要の増加等を背景に増加傾向にある。令和6(2024)年の木材輸出量は、為替相場の円安進行等の影響を受け、丸太が182万m3(前年比14.0%増)、製材が15万m3(前年比12.5%増)となった一方、合板等は11万m3(前年比3.5%減)となった(*64)。また、令和6(2024)年の木材輸出額は、前年比6.5%増の538億円となり、品目別にみると、丸太が282億円(前年比22.2%増)で全体の52.5%と最も多く、製材が74億円(前年比14.1%増)、合板等が74億円(前年比27.9%減)となった(資料3-31)。
丸太については、その約9割が中国へ輸出され、こん包材、土木用等に利用されている。また、米国へ輸出されている製材については、主にフェンス材に利用されている。
(*64)財務省「令和6年分貿易統計」(確々報値)
(木材輸出拡大に向けた方針)
人口減少等により、国内の農林水産物・食品の市場規模の縮小が見込まれる中、海外市場を獲得していくことが重要である。「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」に基づき、農林水産物・食品輸出本部を農林水産省に設置し、輸出促進の取組を進めてきた。また、食料・農業・農村基本計画(令和7(2025)年4月閣議決定)において、農林水産物及び食品の輸出額目標を設定している。木材、特用林産物、木製家具を合わせた林産物の輸出額については、令和12(2030)年までに1,660億円を目指すこととしており、輸出重点品目ごとの目標として、製材850億円、合板115億円と設定している。
「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」においては、輸出重点品目である付加価値の高い製材及び合板について、中国、米国、韓国、台湾等をターゲットに輸出拡大を目指すこととしている。同戦略では、輸出先国・地域のニーズに応じて、業界一体となって輸出促進に取り組むこととしている。また、木材製品を生産する木材加工施設を中心に、原料を供給する川上から販売を担う川下までの企業等が連携する輸出産地の育成・展開を図ることとしている。
(木材輸出拡大に向けた具体的な取組)
林野庁では、輸出拡大に向け、様々なコンテンツを活用した日本産木材製品の認知度向上の取組、海外販路の開拓、輸出に取り組む産地の育成、相手国の建築士等を対象にした木造技術講習会の開催、輸出先国・地域のニーズ・規格等に対応した性能検証等の取組を支援している。
また、農林水産省が製材と合板の認定農林水産物・食品輸出促進団体に認定した一般社団法人日本木材輸出振興協会では、海外展示会等への出展や現地関係者向けのセミナー等を通じた販売促進活動、米国への構造用製材の輸出に向けた米国検査機関での性能検証等が行われている(事例3-7)。オールジャパンでの輸出促進に向け、業界共通の課題解決に向けた取組や輸出環境の整備、新規輸出先国・地域の市場開拓が期待される。
事例3-7 日本産ヒノキのツーバイフォー構造材が米国の設計強度認可を取得
米国の住宅市場向けに日本産スギ、ヒノキのツーバイフォー構造材の輸出を行うためには、米国の建築物で使用される構造材に必要な設計強度の認可を樹種ごとに取得しなければならない。これまで日本産の木材は構造材として認められていなかったため、我が国から米国へ輸出されている製材は、非構造材、特に住宅フェンス用の材料として利用されている。
このような状況から、一般社団法人日本木材輸出振興協会及び一般社団法人全国木材検査・研究協会は、令和3(2021)年度から、米国におけるスギ、ヒノキのツーバイフォー構造材設計強度の認可取得に向けた取組を開始した。米国内に同属の樹種があるヒノキから先行して試験を実施することとし、日本国内で選定した試験用のヒノキ材を米国に輸送して、米国の試験機関であるオレゴン州立大学で強度試験を行ってきた。
令和6(2024)年4月に、米国製材規格委員会において試験結果に基づくヒノキのツーバイフォー構造材の設計強度が認可され、米国で構造材として利用することが可能(注)となったことから、米国において、日本産ヒノキのツーバイフォー構造材の普及に向けた活動を実施している。また現在、スギについても、ヒノキと同様の認可を受けることを目標に取組が進められている。
(注)実際に米国において利用するためには、米国の木材検査機関の審査員・判定員による格付が必要となる。

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