第1部 特集 第3節 花粉発生源対策の加速化と課題(5)
(5)林業の生産性向上と労働力の確保
スギ人工林の伐採・植替えを促進するためには、伐採・搬出コストや造林コストの低減を図ると同時に、その際に増加が見込まれる伐採や植替え等の事業量に対応するため、林業の生産性向上と労働力の確保が必要である。このため、「花粉症対策の全体像」では、過去10年と同程度の生産性の向上を図った上で、10年後も現在と同程度の労働力が確保されるよう取り組むこととしている。
林野庁では、生産性の向上のため、高性能林業機械の導入等を推進することとしている(資料 特-23)。
また、労働力確保のため、新規就業者に対する体系的な研修の実施や林業への就業相談を行うイベント開催への支援等を行う「緑の雇用」事業により、新規就業者の確保・育成を図っている(*36)。
新規就業者の確保や定着率の向上のためには、林業従事者の所得水準の向上など雇用環境の改善が重要であり、林業経営体の収益力を向上させることが不可欠となる。林野庁では、生産性向上による伐採・搬出コストの低減、原木供給のロットの拡大や流通の合理化等による運搬コストの低減に加え、木材の有利販売や事業体間の事業連携などこれからの経営を担う「森林経営プランナー」の育成等、収益力の向上を図る取組を推進している。
一方で、林業における令和4(2022)年の労働災害発生率(死傷年千人率)は全産業平均の約10倍となっており、林業従事者を守り、継続的に確保し定着させるため、安全な労働環境の整備が急務となっている。林野庁では、労働安全衛生関係法令の遵守など安全意識の向上を図るとともに、保護衣等の導入、作業の安全性向上や軽労化にもつながる林業機械の開発・導入を支援している。
林業従事者のうち、伐木・造材・集材従事者数は近年横ばいで推移しているが、育林従事者数は減少傾向が継続しており、植替えに必要な育林従事者の確保が特に急務となっている。斜面での植栽や下刈りといった造林・育林作業は労働負荷が大きいことから、作業の軽労化等に向けた機械の開発が進められている(資料 特-24)。
また、外国人材の受入れ拡大のほか、季節により作業量が変動する農業や、機械の操作等において共通点の多い建設業等の他産業との連携、施業適期の異なる他地域との連携も、林業従事者の通年雇用化等により労働力の確保に資するものである。さらに、地域おこし協力隊との連携により、林業分野の労働力確保とともに、山村地域の定住促進・活力向上に貢献することが期待される。



(*36)林業労働力の動向については、第2章第1節(3)89-96ページを参照。
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