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林野庁

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第1部 特集 第4節 気候変動等に対応したこれからの治山対策(2)

(2)具体的な取組

(国土強靱(じん)化のための治山対策の推進)

防災・減災、国土強靱(じん)化のための5か年加速化対策に関する中期目標として、山地災害危険地区のうち特に緊要性の高い地区について、令和2(2020)年度時点での治山対策の実施率65%に対し、令和7(2025)年度に80%まで向上させることを設定している。このため、林野庁では、治山ダムの配置、渓流での危険木の除去等の対策を集中的に実施している。

これまでの取組においては、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策により施工した箇所が、その後の大雨時において土砂流出を抑制し、下流の人家や高速道路等の重要インフラへの被害を防止するなど、各地で効果を発揮している(資料 特-23)。


(流域治水との連携)

気候変動の影響による水害の激甚化・頻発化等を踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で水害を軽減させる「流域治水」を国土交通省はじめ関係省庁等が連携して推進している。令和3(2021)年3月には全ての一級水系等で流域治水プロジェクトが策定・公表され、その全てにおいて森林整備・治山対策も位置付けられた(資料 特-24)。

資料 特-24 流域治水の取組

林野庁では、流域治水に資する取組として、下流への雨水流出を抑制するため、森林の保水力の維持・向上のための筋工等の設置や間伐等を行っている。また、流木等による下流域での通水の阻害を抑制するため、砂防事業と連携した土砂・流木の流出抑制対策を実施している。


(治山施設の長寿命化対策)

我が国全体で、高度経済成長期以降に集中的に整備したインフラの老朽化への対応が求められる中で、林野庁においても、平成26(2014)年8月に治山施設等に係る長寿命化対策の方向性について取りまとめた「林野庁インフラ長寿命化計画」を策定した。同計画に基づき、治山施設の管理者である都道府県及び国(森林管理局)が治山施設の長寿命化個別施設計画を策定しており、これに基づき、既存治山施設の補修や機能強化(かさ上げ、増厚、流木捕捉機能の付加等)に係る対策を各地で進め、効率的な事前防災対策につなげている(資料 特-25)。

資料 特-25 治山施設の長寿命化・機能強化
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(新たな技術を活用した効果的・効率的な取組)

山地災害の激甚化・同時多発化により、復旧にかかる事業量が増加するとともに、急峻(しゅん)な地形など厳しい現場条件での施工が増えつつある。こうした状況に対応し、安全かつ効率的に事業を実施するため、ICT等の活用が進んでいる。

地形が険しく足場の悪い現場での実測調査に係る作業負担を軽減するため、安全な位置からの3Dレーザスキャナ測量により3D設計データを作成する取組が増えている。地上からの測量が困難な箇所等では、航空レーザ計測や、ドローンによる空中写真測量等の取組も増えている。GPS等を使用したリアルタイムの位置計測・表示システム(マシンガイダンス機能)により経験の少ないオペレータでも正確な掘削作業が可能となるICTバックホウ等の活用により、作業の手戻りリスクを軽減した工事も可能となっている(資料 特-26)。落石等の危険がある現場での無人施工機の活用や、ワイヤー支持により急斜面でも施工が可能なロッククライミングマシンの活用も広がりつつある。

資料 特-26 治山事業におけるICTの活用
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また、工事の迅速化を図るため、発注者の現場確認や検査にウェアラブルカメラ等による双方向通信を導入する取組も進められている。

さらに、山地災害危険地区の把握に当たっては、リモートセンシング技術を活用するなどして、その精度の向上を図っていくこととしている。


(山地災害に関する情報の提供)

減災・防災のためには、ハード面での整備を推進することと併せて、災害に関する情報を関係者で共有し、行政機関が迅速に対応できるようにするとともに、地域住民に提供することにより危機意識を啓発することも有効である。

このため、森林管理局・署では、災害発生の早期発見・対応のため、山地災害危険地区のうち特に土石流等の発生頻度が高い箇所等を土石流センサー等の遠隔システムにより監視し、災害発生を感知した場合には情報を速やかに都道府県、市町村等に提供することとしている。また、地域における避難体制の整備等の取組と連携して、山村地域の住民に対する山地災害危険地区の地図情報の提供、防災講座等を実施しているほか、自治体や消防、警察と連携して、治山工事が完了した箇所のパトロールなどの取組を実施している(資料 特-27)。

資料 特-27 山地災害に関する情報の提供
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