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林野庁

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第1部 特集 第1節 森林の機能と治山事業の役割(2)

(2)森林の機能の維持・向上を図る治山事業

(治山事業の目的及び実施主体)

治山事業は、森林の持つ公益的機能の確保が特に必要なものとして指定される保安林(*3)等において、山腹斜面の安定化や荒廃した渓流の復旧整備等を実施するものであり、森林の維持・造成を通じて森林の機能を維持・向上させ、山地災害等から国民の生命・財産を守ることに寄与するとともに、水源の涵(かん)養や、生活環境の保全・形成を図る重要な国土保全施策の一つである。

民有林内は都道府県が、国有林内は国(森林管理局)が実施主体となる。また、民有林内であっても事業規模の大きさや高度な技術の必要性を考慮し、国土保全上特に重要と判断されるものについては、都道府県の要請を受けて国が実施主体となる場合がある(民有林直轄治山事業)。


(*3)保安林制度については、第1章第3節(1)61ページを参照。



(治山事業の工法)

山地における治山事業の工法としては、山の斜面を安定させる山腹工と、渓流の侵食を抑え山の斜面下部(山脚)を安定させる渓間工がある。

山腹工は、山崩れ等が発生した斜面に、土留工(どどめこう)や筋工(すじこう)等の構造物を設置し、土砂の移動を止めて植生が生育しやすい条件を作り、植生の自然侵入又は樹木の植栽等により森林の復旧・再生を図るものである。

渓間工は、侵食の激しい渓流等に治山ダム等を設置し、その背後に土砂を堆積させることで渓岸・渓床の侵食を防止し両岸の山脚を安定化させ(山脚固定)、森林の生育基盤の確保を図るものである。また、渓流の勾配が緩和されることから、土石流等の流下速度を低減させ、下流への土砂流出の防止・軽減が図られる。

このほか、地すべり発生地やその発生のおそれがある土地では、地すべり防止工が実施される。地すべりは、地下水等に起因して斜面の一部が滑る現象であり、特定の地質条件で発生しやすく、斜面の土砂が塊の状態でゆっくりと移動するという特徴がある(*4)。地すべり防止工には、発生の原因となる地下水を除去する集水井(しゅうすいせい)や排水トンネル等を設置する抑制工と、アンカーや杭などにより斜面の動きを直接止める抑止工がある(資料 特-5)。

また、過密化し根系の発達が遅れている保安林や、裸地化して表面侵食が発生している保安林など国土保全機能が低下した保安林においては、機能回復のため本数調整伐や補植等の整備を実施している。

資料 特1-5 治山事業の主な工法

(*4)地すべりは、広義では斜面の土砂災害を総括して使われるが、本報告書では「地すべり等防止法」が定義する現象に対して使う。


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