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林野庁

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第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(3)

(3)国産材活用に向けた製品・技術の開発・普及

(大径材の利用に向けた取組)

これまで製材工場は中丸太からの柱角生産を中心としてきており、大径材を効率的に製材する体制となっていない工場が多い。一方、人工林が本格的な利用期を迎え大径材の出材量の増加が見込まれる中で(資料3-33)、大径材の利用拡大に向けた取組が必要である。


大径材では、横架材に利用される平角や、ツーバイフォー工法用の構造材、内装材等に利用される板材など、様々な木取り(*81)を行うことが可能である(事例3-5、6)。

木取りが複雑になると生産効率が落ちることから、国内の製材機械メーカーでは、大径材に対応した機械の改良・開発が進められており、製材工場では自動で効率的な木取りができる大径材用の製造ラインも導入され始めている。

また、大径材では芯を外して平角や板材等を木取りすることは可能であるが、その場合、乾燥時に反りや曲がりが出やすいといった課題がある。そのため林野庁では、大径材に対応した製材や加工、乾燥の技術の開発・普及などを支援している。

事例3-5 スギの大断面製材を製造し自社で施工する大規模木造建築に活用

山形県新庄(しんじょう)市の株式会社ヤマムラは、既存の設計・工事業務に大断面・長尺材の製材加工を組み合わせることで、非住宅木造建築物の円滑な施工と大径材の価値の最大化を実現している。

同社では、創業以来、製材・販売を行ってきたが、昭和52(1977)年頃からは内装工事・建設業に進出し、製材の比率は低くなっていた。平成28(2016)年に大型木造小学校の建設に参画し、大断面で長尺の製材品を調達することの難しさを感じたことから、その内製化のためにJAS認証を取得した。米(べい)マツ大径材に対応した既存の製材機を活用し、丸太は山形県を中心として東北一円からスギの大径材を集めている。さらに、人工乾燥機や貯木場等を整備して生産能力を増強するとともに、連携工場でのプレカット工程においてボトルネックとなっていた羽柄材のプレカット加工機を導入して工程全体の迅速化を図るなど、地域材を使って幅広い木造建築に対応する能力を構築している。

事例3-6 スギ大径材を活用したツーバイフォー材と輸出用外構材の製造

群馬県では、スギを中心とする豊富な森林資源の有効活用が課題となっていた。このため、森林組合連合会等と製材工場等が連携して、県産スギ材を使用したツーバイフォー工法部材の製造を平成29(2017)年から開始している。

丸太の生産に当たっては、ツーバイフォー工法部材の一般的な長さ(8フィート)に合わせて2.4mで採材して製材工場に直送し、効率的な生産体制を実現している。加工に当たっては、大径材を扱うことのできる既存の製材工場が一次加工工場として参画するとともに、JAS認証を取得している中核工場において、JASマークを付して出荷するといった水平連携体制を構築している。

また、同サイズの丸太を用いて米国向けの外構材(フェンス材)も製造・輸出している。

米国向け外構材には材質が従来製品(ウェスタンレッドシダー)に似ており耐久性が高い心材が、国内向けツーバイフォー工法部材には節の少ない辺材が適していることから、大径材から各部材を切り出すとともに、需要の状況に応じてその生産比率を変えており、多様な販路の確保が丸太の価値の最大化と経営の安定化に寄与している。


(*81)丸太から所定の寸法の部材に分割すること。



(CLTの利用と普及に向けた動き)

非住宅・中高層建築物での木材利用拡大において、CLTが注目されている。CLTは主に壁や床等に使用され、コンクリート等と異なり養生期間が不要なため工期の短縮が期待できること、また、建物重量が鉄筋コンクリート造等よりも軽くなり基礎工事の簡素化が可能なことなどが利点として挙げられる。

我が国では、令和4(2022)年4月には、北海道、秋田県、宮城県、石川県、鳥取県、岡山県、愛媛県、宮崎県及び鹿児島県において、JAS認証を取得したCLT工場が稼働しており、計9工場で年間9万m3の生産体制となっている。これにより、令和4(2022)年度末までに共同住宅、ホテル、オフィスビル、校舎等、960件を超える建物でCLTが使われている(*82)。

CLTの普及に向けて、平成26(2014)年に「CLTの普及に向けたロードマップ(*83)」を林野庁と国土交通省が共同で作成したほか、平成28(2016)年からは「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」を開催し、政府を挙げてCLTの普及に取り組んでいる。

このロードマップに基づき、建築基準の合理化を進め、「建築基準法」に基づく告示に基づき構造計算を行うことにより、国土交通大臣の認定を個別に受けることなくCLTを用いた建築が可能となった。

令和3(2021)年3月には同連絡会議において令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までを期間とする「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」を策定した。この新ロードマップに基づく建築基準の合理化として、令和4(2022)年3月には、CLTの基準強度について、ラミナの積層の組合せに関し、実験で新たに性能が確認された層構成(7層7プライ)を基準に位置付け、構造計算に使えるようにした。さらに、令和4(2022)年9月にはCLTの更なる普及拡大を図るため、新ロードマップを改定しており、従来の取組に加え、標準的な木造化モデルの作成・普及、CLTパネル等の寸法等の標準化、防耐火基準の合理化などの取組を進めることとしている。

そのほか、林野庁では、設計等のプロセスの合理化、低コスト化に資する技術の開発・普及、設計者・施工者向けの講習会の開催等への支援を行っている。


(*82)内閣官房ホームページ「CLTを活用した建築物の竣工件数の推移」

(*83)農林水産省プレスリリース「CLTの普及に向けたロードマップについて」(平成26(2014)年11月11日付け)



(木質耐火部材の開発)

「建築基準法」に基づき、木質耐火部材を用いることなどにより所要の性能を満たせば、木造でも大規模な建築物を建設することが可能である。耐火部材に求められる耐火性能は、建物の階数に応じて定められており、平成29(2017)年12月には、同法の規定により求められる耐火性能(*84)のうち最も長い3時間の性能を有する木質耐火部材の国土交通大臣認定が取得され、これにより耐火要件上は15階建て以上の高層建築物の建築が可能となっている。

木質耐火部材には、木材を石膏(こう)ボードで被覆したものや、モルタル等の燃え止まり層を備えたもの、鉄骨を木材で被覆したものなどがある。令和3(2021)年11月には、設備配管を貫通できる鉄骨内蔵型の木質耐火部材が国土交通大臣認定を取得するなど、設計自由度の向上や低コスト化に資する新たな木質耐火部材が開発されている。


(*84)通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能。



(その他の非住宅・中高層建築物での木材利用に向けた技術開発)

非住宅分野・中高層分野では、新たな工法・木質部材の開発や低コスト化に向けた技術開発が進んでいる。

例えば、非住宅分野では、体育館、倉庫、店舗等において柱のない大空間が求められる場合があるが、大断面集成材を使わず、一般流通材でも大スパン(*85)を実現できる構法の開発等により、材料費や加工費を抑え、鉄骨造並のコストで低層非住宅建築物を建設できるようになってきているとともに、規格化による簡易見積もり等の取組も進められている。

また、中高層分野では、CLTや木質耐火部材の開発に加えて、荷重を支えるために接合部の強度を高める新たな構法等の開発が進められている。


(*85)建築物の構造材(主として横架材)を支える支点間の距離。



(リフォーム・家具分野における需要拡大)

今後、リフォーム分野の市場の拡大が期待されること等から、内装材についても、消費者ニーズに合わせた技術・製品の開発が進められている。例えば、圧密加工により表面硬度を高めた床板が開発されており、住宅に加え、学校等の公共施設での利用が行われている。一方で、住宅用には購入者自らが敷ける無処理の床板など、DIY需要に対応した商品も販売されている。

また、広葉樹材の輸入が減少する一方、国内広葉樹資源が増加している中で、これまで使用されてこなかった国内広葉樹の活用に向けた商品開発の取組が行われている。例えば、北海道や岐阜県では、小径木の広葉樹を用いた家具の製品開発が行われている。さらに、福岡県や熊本県では、センダン等の早生樹の広葉樹の家具等への活用に向けた取組や、植林地の拡大による資源確保が進められている。

このように山側の資源と消費者ニーズに対応した技術・製品開発により、リフォーム・家具分野における国産材の需要拡大が期待される。


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