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第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(4)

(4)木材産業の各部門の動向

(ア)製材業

(製材品生産の概要)

我が国における製材品出荷量は平成21(2009)年までは減少を続け、その後はほぼ横ばいとなっている。令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症等の影響による新設住宅着工戸数の減少を受けて大きく落ち込んだが、令和3(2021)年には経済活動の回復により、前年比10.8%増の約909万m3となり、令和元(2019)年の水準に回復した。また、令和3(2021)年に発生した輸入木材の不足・価格高騰を受けて、各地の製材工場等で、国産材製品の増産や原料の国産材への転換の動きがみられた(事例3-7)。令和3(2021)年の製材品出荷量の用途別内訳をみると、建築用材(板類、ひき割類、ひき角類)が約728万m3(80.0%)、土木建設用材が約41万m3(4.5%)、木箱仕組板・こん包用材が約115万m3(12.6%)、家具建具用材が約8万m3(0.9%)、その他用材が約18万m3(2.0%)となっている。建築用材に占める人工乾燥材の割合は56.3%となっている(資料3-34)。

事例3-7 輸入木材の入手難を踏まえ、原料を輸入丸太から国産丸太に転換

西尾木材株式会社(北海道札幌市)では、主に北米から輸入した丸太を原料として製材を行っていたが、令和3(2021)年に丸太の入荷が困難になったため、令和4(2022)年春からトドマツを中心とした国産材(道産材)に切り替えた。

苫小牧工場における道産材消費量は年間約1万m3であり、製材ラインは北米産の丸太に対応しているため、60cmまでの大径材も投入可能となっている。

また、同社は輸入木材製品の販売も行っていたことから、地域の販売店等の顧客に対して道産材製品の販売提案を行うことで、製品の販路拡大に向けて製材事業との相乗効果を生み出している。同社では、これからもトドマツ8割、エゾマツ2割の製材に取り組んでいきたいと考えている。


また、製材工場における製材用原木入荷量は令和3(2021)年には約1,665万m3となっており、このうち国産材は前年比10.7%増の約1,286万m3で、全体に占める国産材の割合は77.2%であった。輸入材は前年比17.1%増の約379万m3であり、このうち米材(べいざい)が約306万m3、ニュージーランド材が約35万m3、北洋材が約19万m3となっている(資料3-35)。


これに対し、製材品の輸入量は前年比2.1%減の約483万m3であり(*86)、製材品の供給量(*87)に占める輸入製材品の割合は約3割となっている。


(*86)財務省「令和3年分貿易統計」

(*87)製材品出荷量909万m3と製材品輸入量483万m3の合計。



(大規模製材工場に生産が集中)

我が国の製材工場数は、令和3(2021)年末現在で3,948工場であり、前年より167工場減少した(*88)。出力階層別にみると、75kW未満の階層で減少し、それ以外の階層では増加した。

令和3(2021)年の出力階層別の素材消費量をみると、出力規模300.0kW以上の大規模工場の消費量の割合が75.7%、うち出力規模1,000.0kW以上の工場の消費量の割合は43.5%となっており、製材品の生産は大規模工場に集中する傾向がみられる(資料3-36)。


(*88)農林水産省「令和3年木材需給報告書」



(イ)集成材製造業

(集成材製造業の概要)

集成材は、一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を複数、繊維方向が平行になるよう集成接着した木材製品である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定していることから、プレカット材の普及を背景に住宅の柱、梁(はり)及び土台に利用が広がっている。我が国における集成材工場数は、近年減少傾向にあり、令和3(2021)年時点で132工場となっている(*89)。


(*89)農林水産省「令和3年木材需給報告書」



(集成材の動向)

国内での集成材の生産量は、平成22(2010)年以降は新設住宅着工戸数の回復等を受けて増加傾向にあり、令和2(2020)年は新型コロナウイルス感染症等の影響を受け大きく減少したが、令和3(2021)年は前年比13.9%増の約198万m3であった。令和3(2021)年の集成材生産量(*90)を品目別にみると、構造用が約190万m3、造作用等その他が約9万m3となっており、構造用が大部分を占めている(*91)。また、令和3(2021)年の集成材生産量のうち、国産材を原料としたものの割合は32.7%(約65万m3)、国産材と輸入材を混合したものは6.9%(約14万m3)となっている。国産材を原料としたものの割合は、長期的には増加傾向にある(資料3-37)。


また、集成材の製品輸入は、令和3(2021)年には約97万m3となっており、集成材の供給量に占める割合は32.8%である。そのうち構造用集成材の輸入量は約83万m3となっている。構造用集成材の主な輸入先国及び輸入量は、フィンランド(約35万m3)、ルーマニア(約14万m3)、オーストリア(約12万m3)等である(*92)。


(*90)農林水産省「令和3年木材需給報告書」

(*91)造作用とは、建築物の内装用途のこと。構造用とは、建築物の耐力部材用途のこと。

(*92)財務省「令和3年分貿易統計」



(ウ)合板製造業

(合板製造業の概要)

合板は、木材を薄く剝いた単板を3枚以上、繊維方向が直角になるよう交互に積層接着した板である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定しており、また、製材品では製造が困難な大きな面材が生産できることから、住宅の壁・床・屋根の下地材やフロア台板、コンクリート型枠(かたわく)等、多様な用途に利用される。

我が国の合単板工場数は、令和3(2021)年末時点で、前年より15工場減の158工場であり、単板のみを生産する工場が17工場、普通合板(*93)のみが30工場、特殊合板(*94)のみが108工場、普通合板と特殊合板の両方を生産する工場が3工場となっている(*95)。また、LVL(*96)工場は1工場増の15工場となっている(*97)。


(*93)表面加工を施さない合板。用途は、コンクリート型枠用、建築(構造)用、足場板用・パレット用、難燃・防炎用等。

(*94)普通合板の表面に美観、強化を目的とする薄板の貼り付け、オーバーレイ、プリント、塗装等の加工を施した合板。

(*95)農林水産省「令和3年木材需給報告書」

(*96)「Laminated Veneer Lumber」の略。単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したもの。本報告書では合板の一種として整理。

(*97)農林水産省「令和3年木材需給報告書」



(合板の動向)

普通合板の生産量は、令和3(2021)年は前年比5.8%増の約317万m3であった。このうち、針葉樹合板は全体の97.3%を占める約309万m3となっている。また、厚さ12mm以上の普通合板の生産量は全体の82.1%を占める約260万m3となっている。また、令和3(2021)年におけるLVLの生産量は約34万m3となっている(*98)。

用途別にみると、普通合板のうち、構造用合板(*99)が約288万m3、コンクリート型枠用合板が約4万m3等となっており、構造用合板が大部分を占めている(*100)。コンクリート型枠用合板では、輸入製品が大きなシェアを占めており、この分野における国産材利用の拡大が課題となっている。一方、海外における丸太輸出規制等の影響により、合板の原料をスギ、カラマツ、ヒノキを中心とする国産針葉樹に転換する動きがみられる。

令和3(2021)年における合板製造業への原木供給量は前年比10.1%増の約509万m3であったが(*101)、このうち、国産材は前年比11.1%増の約466万m3、輸入材は前年と同様の約43万m3となっており、令和3(2021)年には国内の合板生産における国産材割合は91.5%に上昇している。国産材のうち、スギは60.5%、カラマツは15.9%、ヒノキは11.8%、アカマツ・クロマツは4.2%、エゾマツ・トドマツは6.5%で、輸入材のうち、米材は88.9%、北洋材は5.3%となっている(*102)。

一方、輸入製品は前年比21.2%増の約520万m3となっているが、輸入製品を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は長期的には増加傾向にあり、令和3(2021)年は45.3%であった(資料3-38)。


(*98)農林水産省「令和3年木材需給報告書」

(*99)合板のうち、建築物等の構造として利用されるもの。

(*100)農林水産省「令和3年木材需給報告書」。コンクリート型枠用合板の数値は、月別調査でのみ調査実施しており、12か月分の合計となる。

(*101)LVL分を含む。丸太換算値。

(*102)農林水産省「令和3年木材需給報告書」。LVL分を含む。



(エ)木材チップ製造業

(木材チップ製造業の概要)

木材チップのうち、原木や工場残材等を原料とするものは、主に製紙用や燃料用に供される。一方、廃材等を原料とするものは、主にボイラー等の燃料及び木質ボードの原料に用いられる。我が国の木材チップ工場数は、令和3(2021)年末時点で、前年より114工場減の1,082工場となっている(*103)。このうち、製材又は合単板工場等との兼営が770工場、木材チップ専門工場が312工場となっている。


(*103)農林水産省「令和3年木材需給報告書」



(木材チップの動向)

木材チップ工場における木材チップの生産量(*104)(燃料用チップを除く(*105)。)は、令和3(2021)年は前年比27.7%増の約607万トンであった。原材料別の生産量は、原木は前年比25.6%増の約266万トン(生産量全体の43.8%)、工場残材は前年比47.4%増の約262万トン(同43.2%)、林地残材は前年比53.1%増の約8万トン(同1.2%)、解体材・廃材は前年比11.8%減の約71万トン(同11.7%)となっている。

原材料のうち、木材チップ用原木の入荷量(燃料用チップを除く。)は、令和3(2021)年は前年比6.6%増の約434万m3であり、そのほとんどが国産材となっている。国産材のうち、針葉樹は約272万m3(63.0%)、広葉樹は約160万m3(37.0%)となっている。国産材の木材チップ用原木は、近年では針葉樹が増加し、広葉樹を上回っている(資料3-39)。


一方、木材チップの輸入量(*106)(燃料用チップを含む。)は、令和3(2021)年には前年比15.9%増の約1,100万トンであり、木材チップの供給量(*107)に占める輸入割合は64.4%であった。


(*104)農林水産省「令和3年木材需給報告書」

(*105)燃料用チップについては、第2節(3)136ページを参照。

(*106)財務省「令和3年分貿易統計」

(*107)木材チップ生産量607万トンと木材チップ輸入量1,100万トンの合計。



(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業

(パーティクルボード製造業・繊維板製造業の概要)

パーティクルボード(削片板)、繊維板(ファイバーボード)等の木質ボードは、建築解体材を主な原料としているが、このほか工場残材(*108)、間伐材、林地残材等を原料としている。

パーティクルボードは、細かく切削した木材に接着剤を添加して熱圧した板製品である。遮音性、断熱性及び加工性に優れることから、家具や建築用に利用されている。

繊維板は、原料をいったん繊維化してから成型した板状製品である。密度によって種類があり、高密度繊維板(ハードボード)は建築、こん包、自動車内装等に、中密度繊維板(MDF(*109))は建築、家具・木工、キッチン等に、低密度繊維板(インシュレーションボード)は畳床(たたみどこ)等に利用される。


(*108)製材業や合板製造業等において製品を製造した後に発生する端材等をいう。

(*109)「Medium Density Fiberboard」の略。



(パーティクルボード・繊維板の動向)

令和3(2021)年におけるパーティクルボードの生産量(*110)は前年比4.4%増の約100万m3、輸入量(*111)は前年比6.8%増の約26万m3となっている。

令和3(2021)年における繊維板の生産量(*112)は、前年比3.6%増の約72万m3となっている。


(*110)経済産業省「2021年生産動態統計年報」

(*111)財務省「令和3年分貿易統計」

(*112)経済産業省「2021年生産動態統計年報」における「繊維板換算値合計」。



(カ)プレカット製造業

(プレカット材の概要)

プレカット材は、木造軸組住宅等を現場で建築しやすいよう、柱や梁(はり)、床材や壁材等の継手(つぎて)や仕口(しぐち)といった部材同士の接合部分等をあらかじめ一定の形状に加工したものである。プレカット工場で、部材となる製材品、集成材、合板等を機械加工して生産する。


(プレカット材の動向)

プレカット加工率は上昇しており、令和3(2021)年には、木造軸組工法におけるプレカット加工率は94.1%に達している(*113)。

プレカット工場における材料入荷量は、平成30(2018)年は平成28(2016)年比21.7%減の約768万m3で、その内訳は、国産材が約285万m3(37.1%)、輸入材が約483万m3(62.9%)となっている。材料入荷量のうち、人工乾燥材は約324万m3(42.2%)、集成材は約343万m3(44.7%)となっている(*114)。


(*113)一般社団法人全国木造住宅機械プレカット協会「プレカットニュース Vol.106」(令和4(2022)年10月)

(*114)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(キ)木材流通業

(木材流通業の概要)

木材流通業者は、素材生産者から原木を集荷し、樹種、径級、品質、長さ等によって仕分けた上で、製材工場等が必要とする規格や量に取りまとめて供給する、又は、製材工場等から木材製品を集荷し、個々の実需者のニーズに応じて供給する者であり、具体的には、木材市売市場や木材販売業者等がある。

平成30(2018)年の国産原木の流通において、素材生産者から木材市売市場に出荷したものは40.7%、木材販売業者等へ販売されたものは19.1%、伐採現場等から工場へ直送されたものは40.2%となっており、直送される割合は長期的に増加傾向にある(*115)。


(*115)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(木材市売市場の動向)

木材市売市場は、平成30(2018)年には、403事業所(*116)となっており、原木市売市場(*117)と製品市売市場に区分できる。原木市売市場は、主に原木の産地に近いところに立地し、生産者等から集荷した商品(原木又は製品)を仕分け、土場に椪積(はいづみ)して、セリ等により販売する(*118)。同年における原木取扱量(*119)は、約1,118万m3となっている(*120)。

原木市売市場における国産材の主な入荷先については、自ら素材生産したものの割合(15.6%)が上昇傾向である(*121)。流通業者の中には、運搬に加え、素材生産を複合的に行い、木材の効率的な需給調整に貢献している例もみられる。

一方、製品市売市場は、主に木材製品の消費地に近いところに立地し、製材工場等の出荷者ごとに製品を陳列してセリ等により販売する。平成30(2018)年における製材品取扱量(*122)は、約185万m3となっている(*123)。


(*116)農林水産省「平成30年木材流通構造調査」(組替集計)

(*117)森林組合が運営する場合は「共販所」という。

(*118)このほか、相対取引(売方と買方の直接交渉により価格を決める売買方法)により販売を行う場合もある。また、市場自らが商品を集荷し、販売を行う場合もある。

(*119)統計上は出荷量。「木材センター」への出荷量を含まない。

(*120)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」

(*121)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」

(*122)統計上は出荷量。「木材センター」への出荷量を含まない。

(*123)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(木材販売業者の動向)

木材販売業者は、原木又は製品を仕入れた上で、これを必要とする者(木材市売市場、製材工場等、消費者・実需者)に対して販売を行う。木材販売業者には木材問屋や材木店・建材店があり、実需者に対して木材製品に係る様々な情報等を直接提供する立場にある。平成30(2018)年における木材販売業者の数は、8,552事業所(*124)となっており、原木取扱量(*125)は約1,648万m3、製材品取扱量(*126)は約1,720万m3となっている(*127)。


(*124)農林水産省「平成30年木材流通構造調査」(組替集計)

(*125)統計上は入荷量。

(*126)統計上は出荷量。

(*127)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」。原木取扱量(入荷量)及び製材品取扱量(出荷量)のいずれも、木材販売業者間の取引も含めて集計された延べ数量である。


3章挿絵

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