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第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(2)

(2)木材産業の各部門の動向

(ア)製材業

(製材品出荷量はやや減少)

我が国における製材品出荷量は平成21(2009)年までは減少を続け、その後はほぼ横ばいとなっていたが、令和2(2020)年には、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けて新設住宅着工戸数が1割程度減少したことから前年比9.2%減の820万m3であった。令和2(2020)年の製材品出荷量の用途別内訳をみると、建築用材(板類、ひき割類、ひき角類)が665万m3(81%)、土木建設用材が40万m3(5%)、木箱仕組板・こん包用材が97万m3(12%)、家具建具用材が6万m3(1%)、その他用材が13万m3(2%)となっており、主な用途となっている建築用材に占める人工乾燥材の割合は57.2%となっている(資料3-18)。


また、製材工場における製材用原木入荷量は令和2(2020)年には1,485万m3となっており、このうち国産材は前年比9.8%減の1,162万m3で、全体に占める国産材の割合は78%であった。輸入材は前年比14.0%減の324万m3であり、このうち米材(べいざい)が256万m3、ニュージーランド材が30万m3、北洋材が21万m3となっている(資料3-19)。


これに対し、製材品の輸入量は前年比13%減の493万m3であり(*86)、製材品の供給量(*87)に占める輸入製材品の割合は約4割となっている。


(*86)財務省「令和2年分貿易統計」

(*87)製材品出荷量820万m3と製材品輸入量493万m3の合計。



(イ)集成材製造業

(集成材の概要)

集成材は、一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を複数、繊維方向が平行になるよう集成接着した木材製品である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定していることから、プレカット材の普及を背景に住宅の柱、梁(はり)及び土台にも利用が広がっている。我が国における集成材工場数は、近年減少傾向にあり、令和2(2020)年時点で148工場となっている(*88)。


(*88)農林水産省「令和2年木材需給報告書」



(集成材の動向)

国内での集成材の生産量は、平成22(2010)年以降は新設住宅着工戸数の回復等を受けて増加傾向であったが、新型コロナウイルス感染症等の影響を受け、令和2(2020)年は前年比9.4%減の174万m3であった。令和2(2020)年の集成材生産量(*89)を品目別にみると、構造用が167万m3、造作用等その他が7万m3となっており、構造用が大部分を占めている(*90)。また、令和2(2020)年の集成材生産量のうち、国産材を原料としたものの割合は26%(46万m3)、国産材と輸入材を混合したものは6%(11万m3)となっている。国産材を原料としたものの割合は、長期的には増加傾向にある(資料3-20)。


集成材の製品輸入は、令和2(2020)年には102万m3となっており、集成材の供給量に占める割合は37%である。そのうち構造用集成材の輸入量は91万m3で、輸入製品の割合は35%となっている(*91)。


(*89)農林水産省「令和2年木材需給報告書」

(*90)造作用とは、建築物の内装用途のこと。構造用とは、建築物の耐力部材用途のこと。

(*91)財務省「令和2年分貿易統計」



(ウ)合板製造業

(合板の概要)

合板は、木材を薄く剝いた単板を3枚以上、繊維方向が直角になるよう交互に積層接着した板である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定しており、また、製材品では製造が困難な大きな面材が生産できることから、住宅の壁・床・屋根の下地材やフロア台板、コンクリート型枠(かたわく)等、多様な用途に利用される。

我が国の合単板工場(*92)数は、令和2(2020)年末時点で、前年より3工場減の173工場であり、単板のみを生産する工場が15工場、普通合板(*93)のみが33工場、特殊合板(*94)のみが124工場、普通合板と特殊合板の両方を生産する工場が1工場となっている。また、LVL(*95)工場は1工場増の14工場となっている(*96)。


(*92)単板、普通合板及び特殊合板を生産する事業所。

(*93)表面加工を施さない合板。用途は、コンクリート型枠用、建築(構造)用、足場板用・パレット用、難燃・防炎用等。

(*94)普通合板の表面に美観、強化を目的とする薄板の張り付け、オーバーレイ、プリント、塗装等の加工を施した合板。

(*95)「Laminated Veneer Lumber」の略。単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したもの。

(*96)農林水産省「令和2年木材需給報告書」



(合板の動向)

普通合板の生産量は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、令和2(2020)年は前年比10.1%減の300万m3であった。このうち、針葉樹合板は全体の97%を占める290万m3となっている。また、厚さ12mm以上の合板の生産量は全体の83%を占める249万m3となっている(*97)。また、令和2(2020)年におけるLVLの生産量は21万m3となっている(*98)。

用途別にみると、普通合板のうち、構造用合板(*99)が267万m3、コンクリート型枠用合板が3万m3等となっており、構造用合板が大部分を占めている(*100)。コンクリート型枠用合板では、輸入製品が大きなシェアを占めており、この分野における国産材利用の拡大が課題となっている。また、丸太輸出規制等の影響により、合板の原料をスギ、ヒノキ、カラマツを中心とする国産材針葉樹に転換する動きが急速に進んでいる。

令和2(2020)年における合板製造業への原木供給量は前年比15%減の463万m3(*101)であったが、このうち、国内生産における国産材は前年比12%減の420万m3、輸入材は前年比39%減の43万m3となっている。一方、輸入製品は前年比15%減の429万m3となっている(資料3-21)。国産材のうち、スギは60%、カラマツは20%、ヒノキは11%、アカマツ・クロマツは5%、エゾマツ・トドマツは5%で、輸入材のうち、米材は66%、北洋材は14%となっている(*102)。


(*97)農林水産省「令和2年木材需給報告書」

(*98)農林水産省「令和2年木材需給報告書」

(*99)合板のうち、建築物等の構造として利用されるもの。

(*100)農林水産省「令和2年木材需給報告書」

(*101)LVL分を含む。丸太換算値。

(*102)農林水産省「令和2年木材需給報告書」。LVL分を含む。



(エ)木材チップ製造業

(木材チップの概要)

木材チップには、刃物による切削チップと衝撃を加えることによる破砕チップがある。切削チップは一般的に原木や工場残材(*103)等を原料とし、製紙用(*104)や燃料用に供される。一方、破砕チップは廃材を原料とすることが多く、ボイラー等の燃料及び木質ボードの原料に用いられる。我が国の木材チップ工場数は、令和2(2020)年時点で、前年より54工場減の1,196工場となっている(*105)。


(*103)製材業や合板製造業等において製品を製造した後に発生する端材等をいう。

(*104)紙は木材を、板紙は木材のほか古紙等を主原料として生産される。

(*105)農林水産省「令和2年木材需給報告書」



(木材チップの動向)

木材チップ工場における木材チップの生産量(*106)(燃料用チップを除く(*107)。)は、平成30(2018)年から減少しており、令和2(2020)年は前年比9.7%減の475万トンであった。原材料別の生産量は、原木は前年比9%減の212万トン(生産量全体の45%)、工場残材は前年比7%減の178万トン(同37%)、林地残材は前年比14%減の5万トン(同1%)、解体材・廃材は前年比17%減の81万トン(同17%)となっている。

原材料のうち、木材チップ用原木の入荷量(燃料用チップを除く。)は、令和2(2020)年には前年比4.5%減の407万m3であり、そのほとんどが国産材となっている。国産材のうち、針葉樹は236万m3(58%)、広葉樹は172万m3(42%)となっている。国産材の木材チップ用原木は、近年では針葉樹が増加し、広葉樹を上回っている(資料3-22)。


一方、木材チップの輸入量(*108)(燃料用チップを含む。)は、令和2(2020)年には949万トンであり、木材チップの供給量(*109)に占める輸入割合は67%であった。


(*106)農林水産省「令和2年木材需給報告書」

(*107)燃料用チップについては、第2節(2)142-143ページを参照。

(*108)財務省「令和2年分貿易統計」

(*109)木材チップ生産量475万トンと木材チップ輸入量949万トンの合計。



(オ)プレカット製造業

(プレカット材の概要)

プレカット材は、木造軸組住宅等を現場で建築しやすいよう、柱や梁(はり)、床材や壁材等の継手(つぎて)や仕口(しぐち)といった部材同士の接合部分等をあらかじめ一定の形状に加工したものである。プレカット工場で、部材となる製材品、集成材、合板等を機械加工して生産する(*110)。


(*110)昭和60(1985)年代には、コンピューターに住宅の構造を入力すると部材加工の情報が自動で生成され、これを基にコンピューター制御により機械で加工するシステム(プレカットCAD/CAMシステム)が開発された。



(プレカット材の動向)

プレカット材の加工率は上昇しており、令和2(2020)年には、木造軸組構法におけるプレカット加工率は93%に達している(*111)。

プレカット工場における材料入荷量は、平成30(2018)年は平成28(2016)年比22%減の768万m3で、その内訳は、国産材が285万m3(37%)、輸入材が483万m3(63%)となっている。材料入荷量768万m3のうち、人工乾燥材は324万m3(42%)、集成材は343万m3(45%)となっている(*112)。使用される集成材については、これまで輸入集成材や輸入ラミナを用いて国内で集成材に加工したものが多く利用されてきたが、国産材ラミナ及びそれを用いた集成材の安定供給の見通しが立ったことなどから、国産材の集成材に転換する動きがみられる。


(*111)一般社団法人全国木造住宅機械プレカット協会調べ。

(*112)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(カ)木材流通業

(木材流通業の概要)

平成30(2018)年の国産原木の流通において、素材生産者から木材市売市場(*113)に出荷したものは41%、木材販売業者等へ販売されたものは19%、伐採現場等から工場へ直送されるものは40%となっており、直送される割合は長期的に増加傾向にある(*114)。


(*113)「木材センター」(二つ以上の売手(センター問屋)を同一の場所に集め、買手(木材販売業者等)を対象として相対取引により木材の売買を行わせる卸売機構)を含む。

(*114)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(木材市売市場の動向)

木材市売市場は、平成30(2018)年には、403事業所(*115)となっており、原木市売市場(*116)と製品市売市場に区分できる。原木市売市場は、主に原木の産地に近いところに立地し、生産者等から集荷した商品(原木又は製品)を樹種、径級、品質、長さ等によって仕分け、土場に椪積(はいづみ)して、セリ等により販売する(*117)。同年における原木取扱量(*118)は、1,118万m3となっている(*119)。

原木市売市場における国産材の主な入荷先については、自ら素材生産したものの割合(16%)が上昇傾向である(*120)。流通業者の中には、素材生産と運搬を複合的に行い、木材の効率的な需給調整に貢献している例もみられる。

製材工場へ入荷する国産材のうち、原木市売市場のコーディネートにより市場の土場を経由せず伐採現場等から直接入荷(*121)されるものは14%(171万m3)を占めており、平成28(2016)年の7%(85万m3)から倍増している(*122)。

一方、製品市売市場は、主に木材製品の消費地に近いところに立地し、製材工場等の出荷者ごとに製品を陳列してセリ等により販売する。平成30(2018)年における製材品取扱量(*123)は、185万m3となっている(*124)。


(*115)農林水産省「平成30年木材流通構造調査」(組替集計)

(*116)森林組合が運営する場合は「共販所」という。

(*117)このほか、相対取引(売方と買方の直接交渉により価格を決める売買方法)により販売を行う場合もある。また、市場自らが商品を集荷し、販売を行う場合もある。

(*118)統計上は入荷量。「木材センター」の入荷量を含まない。

(*119)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」

(*120)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」

(*121)製材工場が、原木市売市場との間で事前に取り決めた素材の数量、造材方法等に基づき、市場の土場を経由せず、伐採現場や中間土場から直接入荷する場合。市場を経由する輸送やセリ等に係るコストの削減が図られる。

(*122)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」

(*123)統計上は入荷量。「木材センター」の入荷量を含まない。

(*124)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」



(木材販売業者の動向)

木材販売業者は、原木又は製品を仕入れた上で、これを必要とする者(木材市売市場、木材加工業者、消費者・実需者)に対して販売を行う。木材販売業者には木材問屋や材木店・建材店があり、実需者に対して木材製品に係る様々な情報等を直接提供する立場にある。平成30(2018)年における木材販売業者の数は、8,552事業所(*125)となっており、原木取扱量(*126)は1,648万m3、製材品取扱量(*127)は1,720万m3となっている(*128)。


(*125)農林水産省「平成30年木材流通構造調査」(組替集計)

(*126)統計上は入荷量。

(*127)統計上は出荷量。

(*128)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」。原木取扱量(入荷量)及び製材品取扱量(出荷量)のいずれも、木材販売業者間の取引も含めて集計された延べ数量である。



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