このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第1部 第1章 第2節 森林整備の動向(1)

目標15
目標14
目標13
目標11
目標6
目標4

(1)森林整備の推進状況

(森林整備による健全な森林づくりの必要性)

森林の有する多面的機能の持続的発揮に向けては、間伐や主伐後の再造林等を着実に行いつつ、森林資源の適切な管理・利用を進めることが必要である。また、自然条件等に応じて、複層林化(*19)、長伐期化(*20)、針広混交林化や広葉樹林化(*21)を推進するなど、多様で健全な森林へ誘導することも必要となっている。

特に、山地災害防止機能・土壌保全機能を発揮させるためには、樹冠や下層植生が発達し、樹木の根系が深く広く発達した森林とする必要がある。このため、植栽、保育、間伐等の森林整備を適切に行う必要がある。

「国土強靱(じん)化基本計画」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)では、森林の整備・保全等を通じた防災・減災対策を推進することとしている。また、継続的な林業生産活動による森林の保全管理を通じた国土保全機能の発揮や、地域材の積極的な利用及び建築・土木分野でのCLT等の木材利用等を進めることとしている。


(*19)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に人工更新等により複数の樹冠層を有する森林を造成すること。

(*20)従来の単層林施業が40~50年程度以上で主伐(皆伐等)することを目的としていることが多いのに対し、これのおおむね2倍に相当する林齢以上まで森林を育成し主伐を行うこと。

(*21)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に広葉樹を天然更新等により生育させることにより、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林や広葉樹林にすること。



(地球温暖化対策としての森林整備の必要性)

我が国におけるパリ協定下の森林吸収量の目標(令和12(2030)年度で約3,800万CO2トン(平成25(2013)年度総排出量比約2.7%))達成や、2050年カーボンニュートラルの実現への貢献のため、森林吸収量の確保・強化が必要となっている。

他方、我が国の人工林は、高齢林の割合が増え、二酸化炭素吸収量は減少傾向にある。

また、主伐後の再造林が進んでいないことも課題となっている。

このため、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(*22)」(以下「間伐等特措法」という。)を令和3(2021)年3月に改正し、間伐等の実施や成長に優れた種苗の母樹(特定母樹(*23))の増殖を促進する措置を継続するとともに、成長に優れた種苗の母樹から採取された種穂から育成された苗木(特定苗木(*24))を積極的に用いた再造林を推進する仕組みを創設したところである。


(*22)「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」(平成20年法律第32号)

(*23)エリートツリー等のうち、成長や雄花着生性等の基準を満たすものを「特定母樹」として指定(間伐等特措法第2条第2項)。

(*24)間伐等特措法第2条第4項



(森林整備の実施状況)

林野庁では、森林整備事業により森林所有者等による再造林や間伐、路網整備等を支援するとともに、国有林野事業においては、再造林や間伐、針広混交林化等の多様な森林整備を実施している(*25)。また、国立研究開発法人森林研究・整備機構では、水源林造成事業により奥地水源地域の保安林を対象として、森林の造成等を実施している。

このような取組の結果、令和2(2020)年度の主な森林整備の実施状況は、主伐面積が約8万ha(推計値)に対し、人工造林面積が3.4万haであったほか、保育等の森林施業を行った面積が49万ha、うち間伐の面積が36万haであった(資料1-9)。

林野庁では、令和3(2021)年度から令和12(2030)年度までに、年平均で人工造林7万ha、間伐45万haとする目標を設定している。


(*25)国有林野事業の具体的取組については、第4章第2節(1)159-162ページを参照。



(伐採造林届出制度の運用見直し)

森林の立木の伐採行為の実態や伐採後の森林の更新状況を把握することは、適正な森林施業の確保を図る上で重要となるため、森林所有者等が立木の伐採を行おうとするときは、あらかじめ、市町村長に対して伐採及び伐採後の造林の届出を行うこととされている。

林野庁では、令和3(2021)年9月に、新たな森林・林業基本計画に基づき、適正な伐採と更新の確保を一層図るため、届出様式を伐採計画書と造林計画書に分け、伐採権者と造林権者の役割の明確化を図ること、造林計画の記載事項の充実を図ることなどの伐採造林届出制度の運用見直しを行った。


(優良種苗の安定供給)

我が国の人工林は本格的な利用期を迎えており、主伐の増加が見込まれる中、再造林に必要な苗木の安定供給が一層重要となっている。令和2(2020)年度の山行(やまゆき)苗木(*26)の生産量は、約6,600万本となり、このうち約3割をコンテナ苗(*27)が占めるようになっている(資料1-10)。また、苗木生産事業者数は、全国で804となっている(*28)。


(*26)その年の造林に用いる苗木。

(*27)コンテナ苗については、第2章第1節(4)114ページを参照。

(*28)林野庁整備課調べ。



(成長等に優れた苗木の供給に向けた取組)

農林水産大臣は、間伐等特措法に基づき、成長や雄花着生性等に関する基準(*29)を満たすものを特定母樹として指定しており、令和4(2022)年3月末現在、456種類が指定されている。国立研究開発法人森林研究・整備機構では、収量の増大と造林・保育の効率化に向け、林木育種によるエリートツリーの選抜を行っており、320種類のエリートツリーが特定母樹に指定されている(資料1-11)。


特定苗木は、従来の苗木と比べ成長に優れることから、下刈り期間や伐期の短縮による育林コストの削減及びその回収期間の短縮とともに、二酸化炭素吸収量の向上も期待される。

令和2(2020)年度(2020年秋~2021年春)の特定苗木の出荷本数は、スギが九州を中心に280万本、グイマツ(クリーンラーチ)が北海道で20万本、合計が304万本となっており、全苗木生産量の約5%となっている(資料1-12)。


農林水産省では、「みどりの食料システム戦略」において、特定苗木の活用を、令和12(2030)年までに林業用苗木の3割(*30)、令和32(2050)年までに9割とする目標を設定している。

林野庁では、特定⺟樹を増殖する事業者の認定や採種園・採穂園の整備を推進しており、九州を中⼼に、徐々に特定苗⽊が出荷されるようになってきている。現在、更なる品種改良に向け、エリートツリー同⼠を交配した精英樹の開発が進められている。


(*29)成長量が同様の環境下の対照個体と比較しておおむね1.5倍以上、材の剛性や幹の通直性に著しい欠点がなく、雄花着生性が一般的なスギ・ヒノキのおおむね半分以下等の基準が定められている。

(*30)林野庁では、3,000万本程度を想定。



(花粉発生源対策)

国民の約4割が罹(り)患しているといわれる花粉症については、関係省庁が連携し、総合的な対策を進めている。林野庁では、(ア)花粉を飛散させるスギ人工林等の伐採・利用、(イ)花粉症対策に資する苗木(*31)による植替えや広葉樹の導入、(ウ)スギ花粉の発生を抑える技術の実用化の「3本の“斧”」による花粉発生源対策に取り組んでいる。

平成30(2018)年4月に改正された「スギ花粉発生源対策推進方針(*32)」では、スギ苗木の年間生産量に占める花粉症対策に資する苗木の割合を令和14(2032)年度までに約7割に増加させるなどの目標を掲げており、令和2(2020)年度のスギの花粉症対策に資する苗木の生産量は約1,400万本、スギの苗木全体の約5割にまで増加した(資料1-13)。このほか、林野庁では、スギ花粉飛散を抑える技術の実用化に向け、スギ林への効果的な薬剤散布方法の確立や薬剤散布による生態系への影響調査等を進めている。


(*31)花粉症対策品種(ほとんど、又は、全く花粉を作らない品種)の苗木及び特定苗木。

(*32)国、都道府県、市町村、森林・林業関係者等が一体となってスギ花粉発生源対策に取り組むことが重要であるとの観点から、技術的助言等を林野庁が取りまとめたもの。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219