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林野庁

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第1部 特集2 第2節 林業・木材産業における対応(2)

(2)ウィズコロナ下での事業展開の可能性

新型コロナウイルスの感染を予防するため、「新しい生活様式」等の取組が広がり、人口密度が低く自然豊かな地方への関心が高まるなど、都市で働く人の生活、考え方にも変化が生まれている。林業・木材産業においても、新型コロナ感染症の下での社会経済の変化に対応した事業展開を模索する動きが出てきている。


(「新しい生活様式」に対応した商品開発)

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、令和2(2020)年5月4日の提言において、感染拡大を予防する「新しい生活様式」を行うことや、業種ごとに感染拡大予防のガイドラインを作成することを求め、その実践例、考え方、留意点の例を公開した。この中では、テレワークやオンライン会議、人が対面する場面でのアクリル板等での遮蔽、入り口での手指消毒が例示されている。

これを受けて、林業・木材産業でも対応した商品・サービス開発が行われた。

例えばオフィス向けでは、木材を使った飛沫を防止する仕切り板、足踏式の消毒液スタンド、飲食店等がテイクアウト用に使える屋台等が製作されている(資料 特2-10)。

資料 特2-10 「新しい生活様式」に対応した木製品の例
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また、自宅等でリモートワークを行うため、仕事用のスペースが必要となり、リフォームも行われている。DIYで机等を作る者もいる一方、木材で半個室を製作し販売する企業もみられた。

さらに、抗ウイルスの製品が注目されており、ヒノキを用いたフローリングでも、抗ウイルス塗装を行う商品の販売が開始されている(*10)。

また、密集・密接・密閉の「3密」を避ける場所として、森林での散策や個人・家族のみで行うキャンプにも関心が高まっている。キャンプ愛好家に向け、年間契約で山林をレンタルするサービスを開始した企業も出ている。

一方で、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、森林ボランティアや森林環境教育、体験等の活動が中止や延期を余儀なくされた。このような中、公益社団法人国土緑化推進機構等では新型コロナウイルス感染症対策に関するガイドライン等の作成・周知を行い、一部で活動の再開につながっている。


(*10)令和2(2020)年9月18日付け日刊木材新聞7面



(感染拡大防止に対応した営業)

新型コロナ感染症の対応により、働き方にも変化が生じた。テレワークやオンライン会議の導入が進み、イベント等の人が多く集まる場は中止や延期等の検討を迫られた。この中で、働き方改革や新型コロナに対応した新しい営業も行われている。

内閣府の調査によれば、最初の緊急事態宣言の令和2(2020)年5月に、全国で27.7%、東京で48.4%の就業者がテレワークを実施し、その後の12月にも、全国では21.5%、東京では42.8%の就業者が実施している(*11)。

実際の効果として、「働き方改革が進んだ(46.2%)」、「業務プロセスの見直しが進んだ(39.7%)」とした企業が多く、「遠方の取引先であってもオンライン会議を活用することで従来よりも頻繁に、かつ出張費をかけずに打合せをできるようになった」という声も聞かれた。

木材関連の会合、シンポジウム等もオンラインが増えており、地方からでも、リモート会議による人脈づくり、商談等による販売促進の可能性が出ている。

木材市場においては、首都圏を中心に多くの大型市が中止、規模縮小された。コロナ禍の状況に鑑み、ホームページで出品情報を掲載してFAXによる入札を開始する市場があったほか、これを契機として、ウェブ入札システムの導入を検討している市場もあり、このような形態による入札が定着していく可能性もある。課題としては、既存の買い手が新しい入札方法に対応できるか、新規の買い手をどう取り込むかという点が挙げられている(*12)。


(*11)内閣府「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2(2020)年12月)

(*12)令和3(2021)年1月1日付け日刊木材新聞14面



(山村地域でのテレワーク拠点整備やワーケーション)

テレワークの拡大により、居住地から離れて仕事を行うことも可能となった。ホテルの個室等で仕事をすることも可能だが、各地で電源とWi-Fi環境が整備されたコワーキングスペース等も開設されている。さらに、自然豊かなリゾート地等で余暇を楽しみつつ仕事を行うワーケーションにも注目が集まっている。

内閣府の調査によれば、就業者の中で4つの形態のワーケーションのいずれかを希望する者は34.3%と高く、特に20代で希望する者が多かった(資料 特2-11)。


地方公共団体等が公表しているリモートワークやワーケーション施設の中には、森林が豊かな地域に立地する施設もあり、自然を楽しみながら仕事を行うことが可能となっている(資料 特2-12)。


(移住への関心の高まり)

内閣府の調査によれば、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県(以下「東京圏」という。)では、令和元(2019)年12月と比べ、徐々に地方への移住に関心を持つ在住者が増えており、特に20代では多くなっている(資料 特2-13)。


関心がある理由として、「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」を挙げた人が多く、また、「テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため」、「ライフスタイルを都市部での仕事重視から、地方での生活重視に変えたいため」が続いており、新型コロナウイルス感染症の影響による意識の変化がみられる(資料 特2-14)。関心があるだけではなく、実際の行動に結びついており、地方への移住に関心がある人の中で、地方移住に向けて情報収集を行うなど、何らかの行動を起こした人が27.2%、引っ越し予定がある人が2.6%となっている。


総務省の住民基本台帳人口移動報告でみても、東京と他の都道府県の移動は、令和2(2020)年5月から12月まででは転出超過となっている月が多く、東京近隣県以外でも転入超過となった都道府県も出ている。

令和2(2020)年も3、4月に東京への転入が多く、年間でみると東京への転入超過の傾向は変わらないが、地方移住への関心は高まっており、地方での受け皿づくりが望まれる。


(移住への受け皿、体制づくり)

このような関心の高まりから考えると、自然の中で過密になるリスクの低い林業も地方移住時の受け皿の一つとなり得ると考えられる。

毎年、「森林の仕事ガイダンス」として、森林・林業に関心のある方を対象に、林業の仕事を紹介し、相談を受けるイベントが実施されている。複数の都道府県が参加する全国版と都道府県ごとのエリア版があるが、令和2(2020)年度の全国版は、東京都、大阪市、名古屋市及び福岡市の4会場での実施に加え、オンラインによるガイダンスを実施し、前年度を上回る2,744名の相談者があった。

また、新型コロナウイルス感染症拡大前の令和元(2019)年と比べ、令和3(2021)年の志願者数及び県外の志願者数が増加した林業大学校もみられる。

各都道府県の林業労働力確保支援センターによる林業体験や研修、林業大学校への就学、「緑の雇用」事業の活用、地域おこし協力隊制度(*13)など、山村地域で新たに生活を始めながら林業分野での就業を考える人々をサポートできる種々の枠組みを最大限に活用しつつ、各地域での受入れに向けた動きが広がることが期待される。


(*13)過疎地域等の条件不利地域で、地方公共団体が都市住民を受け入れ、「地域おこし協力隊員」として委嘱し、地域おこしの支援等の「地域協力活動」に従事してもらいながら、その地域への定住・定着を図る取組。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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