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林野庁

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第1部 特集2 第2節 林業・木材産業における対応(1)

(1)感染症の影響に対する行政の対応

林野庁は、このような新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、林業・木材産業関連事業者の業務継続及び影響緩和に向けた各般の措置を講じた。

令和2(2020)年3月には、林業・木材産業関連事業者が雇用する従業員に新型コロナウイルス感染症の患者が発生した際の対応及び事業継続を図る際の基本的なポイントをまとめたガイドラインを策定し、関係者に周知した。

林業・木材産業に及んだ多大な影響の緩和については、各地域の状況を把握しながら、滞留した原木の一時保管、資金繰り支援、需給情報の共有、減少した需要の喚起など、令和2年度第1次から第3次までの補正予算等も活用して、対策を行った(資料 特2-8)。

資料 特2-8 林業・木材産業関係の主な対策

(滞留した原木の一時保管)

令和2(2020)年2月頃から中国等への丸太輸出が滞り、原木が港や山土場等に滞留する事態が生じたことに対応し、同年4月に、新たな一時保管場所における借地料や一時保管場所への原木の運搬経費等の掛かり増し経費に対する支援を措置した。また、その後、国内の製材・合板工場等において減産に伴う原木の入荷制限が発生し、工場に出荷できず滞留する原木が増加したことから、同年6月には、国内工場へ出荷できずに山土場等で滞留している原木についても支援できるよう保管事業の対象を拡大した。


(林業者・木材産業事業者の資金繰り支援等)

原木価格の低下や在庫の増加、丸太出荷量の減少等に伴う事業採算性の悪化により、林業者・木材産業事業者の資金繰りが悪化することが懸念されたことから、令和2(2020)年3月から、このような事業者に対して経営の維持や安定に必要な資金を円滑に調達するための資金繰り支援を行った。

具体的には、林業者に融通する株式会社日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金について、貸付限度額の引上げを行うとともに、実質無利子化、実質無担保・無保証人化を措置した。また、林業者・木材産業事業者が民間金融機関から融資を受ける際に独立行政法人農林漁業信用基金の債務保証を利用する場合、保証料を最大5年間実質免除し、実質無担保・無保証人による保証引受を行う措置を講じた。さらに、令和2年度第1次補正予算により、林業者が既往債務の借換えを行う際の利子助成と債務保証に係る保証料免除等を新たに措置した。同年6月には、農林漁業セーフティネット資金の融資枠を拡大するとともに、償還期限の延長等を行った。また、感染拡大防止対策を行いながら販路回復・開拓や事業継続・転換を行う農林漁業者の取組を支援する経営継続補助金について、雇用調整助成金、持続化給付金と併せて活用を図るよう周知を行った。


(需給情報の共有・現場への周知等)

木材輸出の停滞や各地の製材・合板工場等の減産により原木の入荷が難しくなり、原木価格が下落した状況から、地域の木材の需給動向に応じた素材生産を行うことが重要となった。このため、川上から川下まで幅広い関係者による需給情報の共有を促進すべく、令和2(2020)年6月19日には、国産材の安定供給体制の構築に向けた中央需給情報連絡協議会を開催し、全国的な需給情報の共有を行うとともに、政府の支援策等の周知を図った。また、地方レベルにおいて需給情報を共有するため、全国7か所で地区別需給情報連絡協議会を開催し、各地域の関係者へ地域における木材需給情報を共有するとともに、支援策の周知を図った。

素材生産を中心とした事業を展開する林業経営体においては、原木価格の下落及び出荷量の減少に伴う売上の減少により、経営の継続や従業員の雇用維持が困難となることが懸念された。このため、令和2(2020)年6月、令和2年度当初予算で講じられていた林業・木材産業成長産業化促進対策の持続的林業確立対策の運用改善を行い、保育間伐、造林、下刈り等の原木生産を伴わない森林整備へと転換する取組を支援することとし、出荷量を抑制しつつ従業員の雇用が確保されるよう支援した。令和3(2021)年1月には、令和2年度第3次補正予算において、同様の取組を支援する追加措置を講じた。また、森林整備事業においても、原木生産を伴わない森林整備へと転換する取組を支援するため、令和2(2020)年5月、保育間伐の対象齢級の拡大等の運用改善を行った。

また、都道府県においても、林業経営体の原木生産を伴わない森林整備を独自に支援するなどの対応がみられた。


(国有林における対応)

国有林においては、国産材の1割強を供給し得ることから、今般のように地域の木材需要が大きく変動した際に、地域の実情に応じて木材の供給調整機能を発揮することも重要な役割としており、各地域の需給動向を見定めながら、供給調整を実施した。具体的には、各森林管理局に設置されている国有林材供給調整検討委員会での意見を踏まえ、販売済みの立木の搬出期間の延長について、令和2(2020)年4月以降全ての森林管理局において順次措置し、地域の木材需要の動向に応じた搬出を可能とした。このほか、立木販売の一般競争入札の一時見合わせや、丸太販売の先送りを措置するとともに、雇用の確保を図るため、原木生産を伴わない森林整備への振替えを実施した。

これまで、令和2(2020)年度に開催された中央及び各森林管理局の供給調整検討委員会においては、「国有林材の供給調整については、民有林の取組とあいまって、一定の効果があったものとみられる」とされるなど、国有林の取組に対して一定の評価もあった。

国有林においては、木材需要の見通しが依然として不透明であることから、今後も引き続き各地域での需給動向を注視し、必要な対策を実施していくこととしている。


(需要喚起対策)

新型コロナウイルス感染症の影響により、中国への丸太の輸出が停滞し、特に国内で加工できる工場が限られている大径原木については、輸出できずに市場に滞ってしまう状況が生じた。減少した需要の喚起策として、令和2(2020)年4月より、このような行き場のなくなった大径原木を有効活用し、付加価値の高い製品に加工して輸出するための木材加工施設の整備を緊急的に支援した。また、原木を有効活用するため公共施設等における木材利用を支援し、原木在庫の解消に貢献した(資料 特2-9)。さらに、輸出力の維持・強化に向けた海外販路の開拓等の販売促進の取組を支援するとともに、令和3(2021)年1月には、非住宅建築物や外構での木材利用への支援を追加措置した。

学校給食休止に伴い未利用となったきのこ類等については、食品の通販サイトを通じた販売を支援した。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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