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林野庁

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第1部 特集2 第1節 新型コロナウイルス感染症の影響(2)

(2)木材需給動向及び木材産業への影響

(世界の木材需給は一時大幅に停滞)

令和2(2020)年は、各国政府が外出禁止等の措置を講じたことから、各国の生産活動が滞った影響で、各国の貿易も大幅に減退した。

最初に感染者が報告された中国では、経済活動の停止により、一時的にコンテナが港湾に滞留したものの(*2)、経済活動は他国に比べていち早く再開され、中国から各国への輸出が急回復した。夏以降は、欧米における「巣ごもり需要」の拡大等により、消費地である欧米向けの貨物が急増した結果、欧米でコンテナの滞留が生じ、アジア圏でコンテナ不足となった。令和3(2021)年に入っても、このようなコンテナの偏在が続いており、それに伴う海上運賃の上昇が、各国からの輸出に影響を与えている(*3)。

このような中、木材についても、移動等の行動制限や国外からの入国制限による労働力不足等により、東南アジアやニュージーランド等で一時的に原木や製品の減産が広がった。他方、米国では、自宅待機要請に伴って自宅の改築・改修が増加するとともに、新たな生活様式による住宅需要の増加や記録的な低金利の住宅ローンによって住宅着工数が増加したことから、5月以降、木材需要が回復し、7月以降は、木材価格が急激に上昇し続けた(*4)。欧州では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い需要が減少したが、米国の木材需要の高まりに伴い、米国への輸出が増加した(*5)。


(*2)経済産業省(2020) 通商白書2020:195.

(*3)令和3(2021)年2月15日付けNHKビジネス特集「コロナ禍の異変 コンテナはどこへ?」、令和3(2021)年2月24日付け日経新聞電子版 「コンテナ不⾜、資材価格押し上げ」

(*4)令和2(2020)年12月14日付け木材建材ウィークリー:3、令和3(2021)年1月6日付けRandom Lengths「Outlook 2021 ― Part One Pandemic rebound, domestic strength govern prospects」

(*5)令和3(2021)年1月27日付けRandom Lengths「Outlook 2021 ― Part Two Recovery from pandemic will set the 2021 tone in Europe」



(我が国の木材輸入額は大幅に減少)

令和2(2020)年における我が国の木材輸入額は、国内における木材需要減退と国際的な木材の需給動向を受けて、対前年比19%減の9,430億円となった。

国・地域別にみると、EUが同8%減の1,328億円、中国が同13%減の1,317億円、フィリピンが同22%減の853億円と軒並み減少した。

品目別の輸入量を見ると、丸太は、230万m3(対前年比24%減)、製材は、493万m3(同13%減)、合板は、166万m3(同13%減)、チップは、949万トン(同22%減)、集成材については、102万m3(同5%増)となった(*6)(資料 特2-2)。


(*6)集成材の増加は、2020年東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会に伴う物流の停滞・混乱を見越して、夏頃まで輸入が増加したことによる(令和3(2020)年3月29日付け木材建材ウィークリー:4-5)。



(我が国の木材輸出の動向)

我が国の木材の輸出額については、丸太の主要な輸出先である中国の経済成長の減速の影響により令和元(2019)年後半から徐々に減少傾向であったが、中国向け丸太の輸出額は、中国において新型コロナウイルス感染症拡大により移動等の行動制限が実施され企業活動に影響が及んだ令和2(2020)年1月から急減し、3月には対前年同月比約5割にまで落ち込んだ。しかし、その後の中国の経済活動の再開とともに令和2(2020)年4月以降の中国向け丸太の輸出額は急回復をみせ、同年後半は堅調に推移した。また、米国の新設住宅着工戸数が4月を底に回復基調に転じたことに伴い、スギのフェンス材等の需要が増加しており、米国向け製材品の輸出が大きく伸びている。こうした状況により、令和2(2020)年の全体の木材輸出額は、前年を3%上回り357億円となった(資料 特2-3、4)。


(住宅建設を取り巻く動向)

新設住宅着工戸数(対前年同月比)は、令和元(2019)年7月以降から減少傾向をみせていたが、令和2(2020)年6月にマイナス13%となった後、徐々に回復しつつある。令和2(2020)年1月から中国国内において新型コロナウイルス感染症拡大防止のため移動等の行動制限が実施され、経済が停滞したことにより、2月以降、中国から入荷する住宅設備機器の部品供給が停滞し、工期延長や新規着工の遅れにつながった。また、同年4月から5月にかけての緊急事態宣言の間においては、企業の営業活動の自粛による新規需要開拓の減少や、個人の外出自粛により住宅販売店舗や住宅展示場への来場者の減少等がみられ、特に大手の注文住宅において大幅な受注減少等につながった。また、経済の先行きが見通せないこと等による消費者心理の冷え込みの影響も考慮される。一方、近年の住宅市場では若年層による低価格帯の分譲住宅等の購入が増加していることや、今般の外出自粛生活やテレワークの普及に伴い住環境を見直す動きも受けて、分譲住宅等の需要は堅調に推移した(*7)。これらの結果、令和2(2020)年の新設住宅着工戸数は、前年比1割減にとどまる82万戸、うち木造住宅については47万戸となった(資料 特2-1、5)。


(*7)令和3(2021)年1月6日付け日刊木材新聞2面



(木材産業の出荷量等の動向)

住宅建設着工の遅れや住宅の受注減は、製材・合板製造業に大きな影響を及ぼした。

製材業においては、製材品出荷量は、令和2(2020)年第1四半期は対前年同月比で低調に推移していたが、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大するにつれ、住宅メーカーからの受注減や木材需要の先行きが見通せないこと等により、生産調整が行われ、4月以降大幅に減少した。8月以降は、経済活動の持ち直しに伴い、製材品出荷量は回復傾向に転じた。一方で、製材品出荷量の推移(対前年同月比)を地域ごとにみると、北海道では梱包材の供給量が多いが、その需要回復が遅れていることが影響し回復の遅れがみられるなど、地域ごとに状況が異なる。素材入荷量も製材品出荷量と同様に推移している。全体として、製材品出荷量及び素材入荷量は、令和2(2020)年12月時点で前年同月の水準を下回っており、いまだ回復していない状況にある。

合板製造業においても同様に、減産体制に入る工場が続出し、合板出荷量が4月以降大幅に減少したが、8月以降は回復傾向に転じている。それに伴い、素材入荷量も9月以降は増加している(資料 特2-5、6)。


なお、4月に林野庁が都道府県を通じて製材・合板工場等を対象に実施した調査(有効回答数348社)では、4月時点で通常より減産体制に入っていると回答した工場数は、製材工場においては調査対象の4割、合板工場においては6割であり、素材の入荷量を制限していると回答した工場数は、製材工場においては2割、合板工場においては4割に上っており、大きな影響があったことがうかがえる。

プレカット工場においては、令和2(2020)年前半の工場稼働率は約1割減で推移していたが、9月以降は徐々に回復し、12月時点では100%となっている(*8)。

木質バイオマスのエネルギー利用施設においては、発電施設は安定稼働を継続するなど、燃料用チップ等の原料の入荷量への影響は、他の木材製品と比べて限定的であった。


(*8)日刊木材新聞社調べ。



(木材価格の動向)

新設住宅着工戸数が減少傾向の中、令和2(2020)年1月から中国向け木材輸出が急減し、3月には先行き不透明感から製材工場、合板工場の生産調整が始まり、4月には原木入荷制限が始まるなど、スギ中丸太価格(対前年同月比)は、木材需要の減少に伴い下落傾向を続けた。しかし、前述のとおり分譲住宅等の需要が堅調に推移し、一定の木材需要が確保されたことに加え、原木の生産調整が行われ、供給が減少したことなどにより、スギ中丸太価格は同年6月に全国平均で前年同月比1割減まで下落したのを底に、回復傾向となった。

5月以降、米国において住宅着工戸数が回復し、木材需要が高まってきたこと等により、日本向け米材製材品及び欧州材製材品の供給量が縮小した。さらに、コンテナ不足による海上運賃の上昇等も影響し、令和2(2020)年の年末に向けて、国内の米マツ製品等の輸入材価格の上昇がみられた。このように、輸入材の供給が逼迫したことから、国産材製材で需要が高まったが、国内の原木供給量が縮小していたことから、令和2(2020)年のスギ中丸太の全国平均価格は、年末にかけて上昇傾向となった(資料 特2-5)。

地域別の原木市場・共販所の素材価格の動向をみると、九州地方では、令和2年7月豪雨の影響による素材生産活動の停滞により原木不足が生じ、素材価格が急騰した。九州や関東では、夏以降の素材価格の回復がみられる一方で、中部、北海道においては、夏以降の価格の回復がみられず、令和3(2021)年1月時点でも依然として低調に推移している(資料 特2-7)。

また、スギ柱角・乾燥材や針葉樹構造用合板等の製品価格の推移をみると、令和2(2020)年4月以降、需要の減少から多くの地域で価格が低下したが、10月以降は一部の製品、地域において回復がみられている。

資料 特2-7 原木市場・共販所における木材価格の推移

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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