このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第1部 第5章 第1節 復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(4)

(4)林業・木材産業の被害と復旧状況

(林業・木材産業の被害)

東日本大震災による林業の被害は、林地や林道施設等への直接の被害に加え、東北地方の太平洋沿岸地域に位置する大規模な合板工場・製紙工場が被災したことから、これら工場に供給されていた合板用材や木材チップの流通が停滞するなど、間接の被害もあった。

例えば、岩手県では、県内素材生産量のうち約3割が、合板用材として宮古みやこ市・大船渡おおふなと市の合板工場3か所に供給されていたが、これら工場が津波被害により操業を停止したことから、合板用材の流通が滞った。

また、青森県八戸はちのへ市、宮城県石巻いしのまき市・岩沼いわぬま市の製紙工場3か所も、東北地方等で生産される木材チップを大量に受け入れていたが、これら工場も津波被害により操業を停止したことから、木材チップやその原料となるパルプ・チップ用材の流通が滞った(*21)。

さらに、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の影響により、東日本地域では原木調達が困難になるなど、しいたけ等の生産体制に大きな被害を受けた(*22)。

木材産業に関しては、木材加工流通施設115か所や特用林産施設等476か所が被災した(*23)。このうち合板工場については、岩手県・宮城県に位置する大規模な工場6か所が被災した。これら工場は、全国における合板生産量の約3割を生産していた。


(*21)山本信次 (2011) 林業経済, 64(4):19-28.

(*22)特用林産物については、第2節(3)261-266ページを参照。

(*23)林野庁調べ(平成24(2012)年3月5日時点)。



(林業の復旧)

林野庁では、平成23(2011)年度、被災工場に原木等を出荷する場合等にかかる流通コストに対する支援を行った。平成23(2011)年中に、被災工場が順次操業を再開したことに伴い、用材等の流通も回復した。各関係者の復興に向けた取組により(事例5-2)、素材生産については、おおむね震災前の水準にまで回復している(資料5-4)。

事例5-2 森林施業管理委託を推進し、地域の森林を育てる

石巻いしのまき地区森林組合(宮城県)は、地域が東日本大震災により大きな被害を受け、一時は組合員の脱退が相次いだが、現在では震災前の事業量の水準を回復し、組合員から組合へ山林の長期委託を進めている。

同組合では、組合員の高齢化や東日本大震災によりやむなく地域を離れるなどにより、山林の管理が困難になった森林所有者にも対応し、10年間の長期委託契約を結び、所有者に代わり山林の管理や経営を行う森林施業管理委託を行っている。位置や現状の調査、巡視、森林経営計画の作成を原則無料で実施した上で、施業が必要であれば経費を含め所有者と協議した上で実施する。

また、持続可能な森づくりのため再造林の推進は欠かせないとし、皆伐後は再造林を行い、さらに5年間下刈りをしてから所有者に返す方法をとっている。所有者の負担の軽減を図るため、独自の森林整備積立金を活用し、伐採と一貫した再造林推進に努めており、今後は所有者の負担金がゼロになることを目指している。また同組合では、被災した海岸林の植栽にも取り組み、様々な方法で地域の森づくりに貢献してきた。

同組合では、若手職員に対し、交流の場づくりや評価体制を整える等、人材育成にも力を入れている。災害の困難を乗り越え、長期的な観点から林業の再生が進められている。

資料:宮城県林業振興協会「みやぎの林業だより」平成29(2017)年8月第212号:2-3.



(木材産業の復旧)

特に東北地方の木材産業は、東日本大震災により大きな被害を受けた。林野庁では、平成23(2011)年度から平成25(2013)年度にかけて、復興に取り組む木材産業事業者等に対し、被災した木材加工流通施設の廃棄、復旧及び整備や港湾等に流出した木材の回収等への支援、特用林産施設の復旧や再建等の支援を行った。

なお、合板については、日本合板工業組合連合会が、震災直後から、合板の安定供給に全力を挙げる旨の声明を発出して、非被災工場での増産体制を整備することとした。林野庁では、「合板需給情報交換会」等の開催や毎週の合板価格の調査等を通じて、積極的な情報収集・交換・提供を行い、市場の安定化に努めた。これにより、国内における合板生産量は、平成23(2011)年3月の16.6万m3から同4月には19.6万m3まで増加し、以後、20万m3/月程度の生産量を維持した(資料5-5)。また、針葉樹合板の価格は、同6月には上昇が止まり、それ以降は安定的に推移した。

各関係者の復興に向けた取組により、被害を受けた木材加工流通施設のうち復旧する方針となったものについては、平成26(2014)年3月末までに復旧が完了し、全体で98か所が操業を再開した。木材製品の生産についても、おおむね震災前の水準にまで回復している。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader