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第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(2)

(2)我が国の木材需給の動向

(木材需要は回復傾向)

我が国の木材需要量(*21)の推移をみると、戦後の復興期と高度経済成長期の経済発展により増加を続け、昭和48(1973)年に過去最高の1億2,102万m3(丸太換算値。特記ない限り以下同じ。)を記録した。その後、昭和48(1973)年秋の第1次石油危機(オイルショック)、昭和54(1979)年の第2次石油危機等の影響により減少と増加を繰り返し、昭和62(1987)年以降は1億m3程度で推移した。

しかしながら、平成3(1991)年のバブル景気崩壊後の景気後退等により、平成8(1996)年以降は減少傾向となった。特に、平成21(2009)年にはリーマンショック(*22)の影響により、前年比19%減の6,480万m3と大幅に減少したが、近年は平成20(2008)年の水準を上回るまでに回復している。令和元(2019)年には、製材用材の需要の減少等から用材の需要量は前年に比べて192万m3減少し前年比2.6%減の7,127万m3となる一方、燃料材は木質バイオマス発電施設等での利用により、前年に比べて137万m3増加し、前年比15%増の1,039万m3となった。このことから、令和元(2019)年の木材の総需要量は8,191万m3となり、前年比0.7%減ではあるが、3年連続で8千万m3台に達した。内訳をみると製材用材が30.9%、合板用材が12.8%、パルプ・チップ用材が37.9%、その他用材が5.5%、燃料材が12.7%を占めている。また、令和元(2019)年の我が国の人口一人当たり木材需要量は0.65m3/人となっている(資料3-5)。


(*21)製材品や合板、パルプ・チップ等の用材に加え、しいたけ原木及び燃料材を含む総数。このうち、燃料材とは、木炭、薪、燃料用チップ、木質ペレットである。

(*22)2008年に起こった、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発する金融市場の混乱のこと。



(製材用材の需要はほぼ横ばい)

令和元(2019)年における製材用材の需要量は、前年比1.7%減の2,527万m3となっている。製材用材の需要量は、昭和48(1973)年に6,747万m3でピークを迎えた後は減少傾向で推移し、平成20(2008)年以降、ピーク時の4割程度でほぼ横ばいで推移している。我が国では、製材品の約8割は建築用に使われており、製材用材の需要量はとりわけ木造住宅着工戸数と密接な関係にある(*23)。


(*23)木造住宅着工戸数については、第2節(2)174-176ページを参照。



(合板用材の需要はほぼ横ばい)

令和元(2019)年における合板用材の需要量は前年比4.8%減の1,047万m3となっている。合板用材の需要量は、製材用材と同様に木造住宅着工戸数の動向に影響され、昭和48(1973)年に1,715万m3でピークに達した後は増減を繰り返し、平成20(2008)年以降はほぼ横ばいで推移している。

合板は住宅の壁・床・屋根の下地材やフロア台板(*24)、コンクリート型枠かたわく(*25)など多様な用途に利用される。


(*24)フローリングの基材となる合板。

(*25)コンクリート等の液状の材料を固化する際に、所定の形状になるように誘導する部材。



(パルプ・チップ用材の需要はほぼ横ばい)

令和元(2019)年におけるパルプ・チップ用材の需要量は、前年比3.0%減の3,106万m3となっている。パルプ・チップ用材の需要量は、平成7(1995)年に4,492万m3でピークを迎えた後、平成20(2008)年の3,786万m3まで緩やかに減少し、平成21(2009)年には景気悪化による紙需要の減少等により前年比23%減の2,901万m3まで減少した。平成22(2010)年には前年比12%増となったものの、その後ほぼ横ばいで推移しており、平成20(2008)年の水準までは回復していない。

パルプ・チップ用材を原料とする紙・板紙の生産量をみると、平成12(2000)年に3,183万トンで過去最高を記録して以降、3,100万トン前後で推移していたが、リーマンショックを機に、平成21(2009)年には前年比14%減の2,627万トンまで減少した。平成22(2010)年には景気の回復により前年比4%増の2,736万トンまで回復したが、その後は再び平成21(2009)年の水準でほぼ横ばいで推移しており、令和元(2019)年は、前年比2.5%減の2,540万トンとなっている(資料3-6)。令和元(2019)年の紙・板紙生産量の内訳をみると、新聞用紙、印刷用紙等の紙が1,350万トン(53%)、段ボール原紙等の板紙が1,190万トン(47%)となっている。


令和元(2019)年にパルプ生産に利用された木材チップ(*26)は2,840万m3で、このうち850万m3(30%)が国産チップ(輸入材の残材・廃材や輸入丸太から製造されるチップを含む。)、1,990万m3(70%)が輸入チップであった。樹種別にみると、針葉樹チップが988万m3(35%)、広葉樹チップが1,852万m3(65%)となっている(資料3-7)。国産チップの割合は、針葉樹チップが24%、広葉樹チップが6%となり、前年と同様である。


(*26)木材チップはパルプ(植物繊維)に加工されることで紙・板紙の原料となるが、広葉樹の繊維は細く短いため平滑さ等に優れ、印刷適性のあるコピー用紙等の原料として利用されるのに対し、針葉樹の繊維は太く長いため強度に優れ、紙袋や段ボール等の原料として利用される。また、広葉樹と針葉樹において違いがあるだけでなく、国産針葉樹チップと輸入針葉樹チップとでは樹種の違いからパルプの収率や繊維長等が異なる。これらの違いが、製紙業における原料選択や、木材チップ(紙・パルプ用)価格等に影響している。



(国産材供給量はほぼ横ばい)

我が国における国産材供給量(*27)は、森林資源の充実や合板原料としてのスギ等の国産材利用の増加、木質バイオマス発電施設での利用の増加等を背景に、平成14(2002)年の1,692万m3を底として増加傾向にある。令和元(2019)年の国産材供給量は、前年比2.6%増の3,099万m3であった(資料3-8)。用材部門では、前年比0.5%増の2,381万m3となっており、その内訳を用途別にみると、製材用材は1,288万m3、合板用材は475万m3、パルプ・チップ用材は465万m3となっている。

樹種別にみると、製材用材の約8割がスギ又はヒノキ、合板用材の約8割がスギ又はカラマツ、木材チップ用材の約4割が広葉樹、約3割がスギとなっている(*28)。


(*27)製材品や合板、パルプ・チップ等の用材に加え、しいたけ原木及び燃料材を含む総数。いずれの品目についても丸太換算値。

(*28)農林水産省「令和元年木材需給報告書」



(木材輸入の8割以上が製品での輸入)

我が国の木材輸入量(*29)は、平成8(1996)年の9,045万m3をピークに減少傾向で推移している。令和元(2019)年の我が国の木材輸入量は、前年に比べて2.6%減の5,092万m3となった。そのうち、製材品、木材チップ、合板等の木材製品の輸入量は、前年から3.6%減少して4,335万m3となった。一方、燃料材等の輸入量は前年から24.6%増加して345万m3となった。木材の輸入形態は丸太から製品へとシフトしており、令和元(2019)年は、木材輸入量全体の85%が製品での輸入となった。

なお、我が国における令和元(2019)年の木材(用材)供給の地域別及び品目別の割合は(資料3-9)のとおりである。


(*29)製材品や合板、パルプ・チップ等の用材に加え、燃料材を含む総数。



(木材輸入は丸太、製材、合板で減少傾向)

我が国の輸入品目別の木材輸入量(製品ベース。以下この項目において同じ。)について、貿易統計の値から平成22(2010)年と令和元(2019)年を比較すると、丸太、製材、合板で減少傾向がみられる。

丸太については、カナダ、ニュージーランド、ロシア、マレーシアからの輸入が大幅に減少したことにより、総輸入量も476万m3から302万m3へと37%減少した。カナダについては、州有林における伐採上限量の引下げによる原木供給の減少、ニュージーランドについては、中国による同国産丸太の調達急増、ロシアについては、丸太輸出税の引上げ、マレーシアについては、サバ州の丸太輸出禁止措置等の影響により、丸太輸入量が減少した。

製材については、総輸入量は641万m3から570万m3へと11%減少した。国別では、カナダからの輸入が232万m3から148万m3へと36%減少した。カナダからの輸入量は長期的に減少傾向にあり、特に令和元(2019)年は、カナダの大手製材業者のストライキにより、前年比17%の大幅な減少となった。

合板については、総輸入量は265万m3から192万m3へと28%減少した。国別では、マレーシアからの輸入が、違法伐採対策等による伐採量の制限及び資源の制約等によって、143万m3から86万m3へと40%減少した。

チップについては、総輸入量は1,212万トンから1,217万トンと横ばいで推移している。国別では、オーストラリア及びチリからの輸入が、それぞれ432万トンから243万トンへ44%、238万トンから157万トンへ34%減少する一方、ベトナムからの輸入が、アカシア等の早生樹の植林地が拡大したことにより、106万トンから366万トンへと3.4倍増加した(資料3-10)。


(木材自給率は9年連続で上昇)

我が国の木材自給率(*30)は、昭和30年代以降、国産材供給の減少と木材輸入の増加により低下を続け、平成7(1995)年以降は20%前後で推移し、平成14(2002)年には過去最低の18.8%(用材部門では18.2%)となった。その後、人工林資源の充実や、技術革新による合板原料としての国産材利用の増加等を背景に、国産材の供給量が増加傾向で推移したのに対して、木材の輸入量は大きく減少したことから、木材自給率は上昇傾向で推移している。令和元(2019)年は、丸太輸入量が減少するとともに、燃料材の需要及び国産材供給量が増加した結果、木材自給率は前年より1.2ポイント上昇して37.8%(用材部門では33.4%)となり、9年連続で上昇した(資料3-8)。木材自給率を用途別にみると、製材用材は51.0%、合板用材は45.3%、パルプ・チップ用材は15.0%、燃料材は66.7%となっている(資料3-11)。

資料3-11 令和元(2019)年の木材需給の構成

平成28(2016)年5月に変更された「森林・林業基本計画」では、令和7(2025)年の木材の総需要量を7,900万m3と見通した上で、木材供給量及び利用量について4,000万m3を目指すこととしており(*31)、この目標の達成により、令和7(2025)年には、木材の総需要量に占める供給量の割合は5割程度になることを見込んでいる。木材供給量及び利用量は、直近10年間では順調に推移しているものの、今後も目標の達成に向けて利用拡大の取組を強化する必要がある。


(*30)林野庁「令和元(2019)年木材需給表」。木材自給率の算出は次式による。自給率=(国内生産量÷総需要量)×100

(*31)「森林・林業基本計画」については、第1章第1節(2)69-71ページを参照。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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