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第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(1)

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世界の木材需給は、中国における木材需要の増大等、主要国の需給動向に伴って大きく変化している。我が国の木材需給も、国産材供給量が増加傾向にあるなどの変化がみられる。

以下では、世界と我が国における木材需給の動向について記述するとともに、併せて木材価格の動向、違法伐採対策及び木材輸出対策について記述する。


(1)世界の木材需給の動向

(ア)世界の木材需給の概況

(2019年の世界の産業用丸太消費量は減少)

国際連合食糧農業機関(FAO(*1))によると、世界の丸太消費量は2010年以降増加傾向にあり、産業用丸太と燃料用丸太がそれぞれ約半分を占める。2019年の世界の産業用丸太の消費量は、前年比2%減の20億3,096万m3であった(資料3-1)。産業用丸太以外の燃料用丸太については、2019年の世界の消費量は前年比0.2%減の19億4,265万m3であり、99%以上が生産国内で消費されている。2019年の製材及び合板等の消費量は、前年からほぼ横ばいで、製材は4億8,178万m3、合板等は3億5,880万m3であった。


また、2019年の世界の木材の生産量は、産業用丸太は前年比2%減の20億2,466万m3、製材は前年比0.5%減の4億8,892万m3、合板等は前年比0.3%減の3億5,765万m3であった。

2019年の世界の木材の輸出入量は、産業用丸太では、輸入量が前年比0.3%増の1億4,437万m3、輸出量が前年比0.4%増の1億3,806万m3であった。中国は、産業用丸太の世界最大の輸入国で、2019年の世界の産業用丸太の輸入量に占める割合は44%であった(資料3-1)。製材では、輸入量が前年比1%減の1億4,917万m3、輸出量が前年比2%減の1億5,631万m3であった。合板等では、輸入量が前年比5%減の8,886万m3、輸出量が前年比7%減の8,772万m3であった(*2)(資料3-2、3)。


(*1)「Food and Agriculture Organization of the United Nations」の略。

(*2)FAO「FAOSTAT」(2021年3月1日現在有効なもの)による。輸入量と輸出量の差は、輸出入時の検量方法の違い等によるものと考えられる。



(主要国の木材輸入の動向)

2019年における品目別及び国別の木材輸入量を2010年と比べると、産業用丸太については、中国が世界最大の輸入国で、輸入量は3,434万m3から6,378万m3に倍増した。世界の輸入量に占める中国の割合も31%から44%に上昇した。一方、我が国の輸入量は476万m3から303万m3に減少し、全世界の輸入量に占める割合は4%から2%に低下した。

製材については、中国の輸入量が、国内の需要増加により、1,476万m3から2.6倍の3,811万m3に増加し、世界最大の製材輸入国となった。米国では、同期間に輸入量が1,658万m3から1.5倍の2,532万m3に増加したが、中国の輸入量を下回った。

合板等については、世界全体の輸入量が増加する一方、我が国の輸入量は400万m3から364万m3に9%減少した(資料3-2)。


(主要国の木材輸出の動向)

2019年における品目別及び国別の木材輸出量を2010年と比べると、産業用丸太については、中国の需要増加により、ニュージーランドの輸出量が1,075万m3から2.1倍の2,267万m3へと増加し、世界一の産業用丸太輸出国になった。一方、2010年に最大の輸出国であったロシアの輸出量は、2007年以降の丸太輸出税の引上げにより、2,098万m3から1,586万m3へと24%減少した。

製材については、ロシアの輸出量が、丸太輸出税の引上げにより、丸太から製品へ輸出形態がシフトしたことから、1,769万m3から1.9倍の3,336万m3に増加し、カナダを抜いて世界一の製材輸出国になった。

合板等については、中国の輸出量が、ポプラ等の早生樹を原料とした合板の生産拡大等により、994万m3から1,057万m3へと6%増加し、世界一の輸出国となった(資料3-3)。


(イ)各地域における木材需給の動向

このように、世界の木材貿易では、北米や欧州のみならず、ロシアや中国も大きな存在感を示している。これらの地域の木材需給は、世界の木材需給に大きな影響を与え得る。以下では、それぞれの地域における木材需給動向を記述する(*3)。


(*3)各地域における木材需給の動向の記述は、主にUNECE/FAO (2020) Forest Products Annual Market Review 2019-2020による。



(北米の動向)

2019年における北米の産業用丸太生産量は、前年比3.0%減の5.32億m3となった。このうち、米国が3.88億m3、カナダが1.44億m3で、カナダの丸太生産量は、過去10年間で最低となった。米国の針葉樹丸太輸出量は、前年の980万m3から590万m3に減少し、過去30年で最低水準となった。

2019年における北米全体の針葉樹製材の消費量は、前年比2.7%減の9,673万m3、生産量も、前年比3.9%減の1.02億m3となった。これは、米国での多雨により2019年上半期の住宅着工が制限されたことによる。

2019年における北米全体の針葉樹製材の輸出量は、前年比7.7%減の3,002万m3となった。米国の輸出量は、前年比20.1%減の231万m3、カナダの輸出量は、前年比6.5%減の2,771万m3となった。カナダでは、2017年から、米国によるカナダ産針葉樹製材輸入に対する相殺関税(*4)及びアンチダンピング税(*5)の賦課が、製材輸出に影響を与えてきたが、2020年11月に定期的な見直しが行われ、両関税が20.23%から8.99%に引き下げられた(*6)。

米国は、中国との貿易赤字を不服として、2018年から、木材を含む中国からの多数の輸入品に対して、一方的な関税の引上げを行った。これに対して、中国も、同規模の輸入額に相当する米国からの輸入品に対して、関税の引上げを行った(「米中貿易摩擦」)。これにより、2019年における米国の中国からの木材輸入額は、前年比25%減の29億ドル、中国への木材輸出額は、前年比45%減の16億ドルとなった(*7)。


(*4)政府補助金を受けて生産等がなされた貨物の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される特別な関税。

(*5)輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺する関税。

(*6)令和2(2020)年12月2日付けJETROビジネス短信「米商務省、カナダ産針葉樹材へのAD・相殺関税を見直し」

(*7)IHS Markit「Global Trade Atlas」



(欧州の動向)

欧州では、2018年から、キクイムシによるトウヒ林の立木被害が拡大している。2019年における被害木の処理量は前年から倍増し、1億m3を超えた。この結果、針葉樹産業用丸太の価格が下落するとともに、欧州から中国への丸太の輸出量が、2017年の約44万m3から、2019年の約700万m3へと16倍増加した。特に、ドイツからの輸出量は前年の18倍に当たる約380万m3に、チェコからの輸出量は前年の12倍に当たる約230万m3に増加した。

2019年における欧州の針葉樹製材の消費量は、前年比1.8%減の9,710万m3、針葉樹製材の生産量は、前年比0.6%増の1.13億m3となった。特に、ドイツとオーストリアでは、キクイムシ被害木の搬出処理により比較的安価な丸太が調達可能となったことから、針葉樹製材の生産量が増加傾向にある。北欧では、同年の針葉樹製材の生産量は、スウェーデンで前年比2.0%増となる一方、フィンランドでは、木材産業におけるストライキにより、前年比3.8%減となった。

2019年における欧州からの針葉樹製材の輸出量は、主に中国への輸出が増加したことにより、前年比3.4%増の5,564万m3となった。


(ロシアの動向)

2019年におけるロシアを含むEECCA諸国(*8)の産業用丸太生産量は、前年比6.6%減の2.29億m3となった。このうち、ロシアは、前年比7.5%減の2.03億m3となった。EECCA諸国の丸太輸出量は、前年比15%減の1,620万m3で、ほぼ全量がロシアからとなっている。また、ロシアの針葉樹丸太の輸出量は、輸出関税の引き上げにより、前年比17%減の910万m3となった。

2019年におけるEECCA諸国の針葉樹製材の消費量は前年比5.3%減の1,610万m3、生産量は前年比3.2%増の4,870万m3であった。この生産量のうち85%をロシアが占め、前年比4.5%増の4,130万m3となった。

2019年におけるロシアの針葉樹製材の輸出量は、前年比5%増の3,150万m3で、過去最高を更新した。最大の輸出先である中国への輸出量は、5年連続で増加し、2019年には1,920万m3となった。日本への輸出量は、前年比13%増の97万m3となった。

ロシアは、2007年から、輸出される木材の高付加価値化を進めている。2017年12月には、エゾマツ、トドマツ、ロシアカラマツの丸太について、年間400万m3の輸出枠を設定した上で、枠内数量には低い税率(6.5%)、枠外数量には、高い税率(2018年:25%→2021年:80%)を設定した。2019年10月には、枠内税率が6.5%から13%に引き上げられた(*9)。2020年9月には、プーチン大統領が、2022年1月から丸太及び粗く加工された木材の輸出を禁止するよう指示した(*10)。


(*8)「Eastern Europe, Caucasus and Central Asia」の略。アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ベラルーシ、ジョージア、モルドバ、ロシア連邦の12か国。

(*9)経済産業省 (2020) 不公正貿易報告書:124.

(*10)令和2(2020)年10月6日付け日刊木材新聞1面



(中国の動向)

中国では、近年の所得の向上等を背景とし、木材需要が増加しているが、需要を満たすに足る森林資源を国内には有していない。中国では、2017年から商業ベースでの天然林伐採を全面的に停止しており、国内需要の増加に伴い、輸入量が増加傾向にある。2019年における中国の丸太輸入量は、前年比17%増で過去最高の5,744万m3に達し、19年連続で世界一の丸太輸入国となった。

米国からの丸太輸入量は、2018年からの「米中貿易摩擦」により、中国が木材を含む輸入品への関税率を大幅に引き上げたことから、2018年の第3四半期から2020年の第1四半期にかけて80%減少した。一方、欧州からの丸太輸入は、キクイムシ被害木の搬出処理により、2017年から2019年にかけて20倍増加した。これにより、中国の針葉樹丸太輸入量に占める欧州の割合は、2018年の第1四半期の3%から、2020年の同時期には25%にまで上昇した。

2020年には、中国政府が、豪州産の輸入木材から害虫が見つかったことを理由として、豪州内の全ての州からの丸太輸入を停止した。また、前述のとおり、ロシア政府は、2022年から丸太及び粗く加工された木材の全面的な輸出禁止に向けた準備を進めている。中国は、2019年に丸太輸入量の約2割を豪州(515万m3)とロシア(755万m3)から輸入している(*11)ことから、これらの措置により、今後、他産地からの丸太調達のニーズが高まると考えられる。


(*11)国連経済社会局「UN COMTRADE」



(ウ)国際貿易交渉の動向

(EPA/FTA等の交渉の動き)

我が国は、平成14(2002)年にシンガポールと初めて経済連携協定(EPA(*12))を締結してから、幅広い国や地域とのEPA・FTA(*13)等の締結に取り組んできた。平成30(2018)年には、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)(*14)」、平成31(2019)年には、「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)」が発効し、令和2(2020)年には、「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(日米貿易協定)」が発効、「地域的な包括的経済連携(RCEPアールセップ(*15))協定」が署名されるとともに、令和3(2021)年には、「包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定(日英EPA)」が発効した。令和3(2021)年3月31日時点で、合計21のEPA・FTA等(*16)が発効済・署名済となっている。また、日トルコEPA等が交渉中となっている。


(*12)「Economic Partnership Agreement」の略。

(*13)「Free Trade Agreement」の略。

(*14)TPP11協定:「Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership(CPTPP)」。TPP協定は2016年に12か国が署名したもので、TPP11協定は、米国の離脱宣言後の2017年に大筋合意したもの。

(*15)「Regional Comprehensive Economic Partnership」の略。

(*16)シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、EU、米国、英国、RCEP。



(TPP11協定の発効)

TPP11協定は、平成30(2018)年12月30日に、我が国を含む6か国(メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア)に対して発効した。また、平成31(2019)年1月14日には、ベトナムに対して発効した。

TPP11協定では、林産物の輸入に関しては、輸入額が多い国や輸入額の伸びが著しい国からの合板、製材、OSB(*17)(配向性削片板)に対して、16年目までの長期の関税撤廃期間と、輸入量が一定量に達した場合に関税を自動的にTPPの発効前の水準に引き上げる「セーフガード」が措置されている。


(*17)「Oriented Strand Board」の略。薄く切削した長方形の木片を繊維方向が揃うように並べた層を、互いに繊維方向が直交するように重ねて高温圧縮した板製品。



(日EU・EPAの発効)

日EU・EPAは、平成31(2019)年2月1日に発効した。

日EU・EPAでは、林産物の輸入に関しては、構造用集成材、SPF(*18)製材等の林産物10品目について、7年の段階的削減を経て8年目に関税を撤廃することとなり、一定の関税撤廃期間を確保した。その他の品目については、10年間の段階的撤廃又は即時撤廃となった。また、輸出に関して、EUは、製材(関税率2.5%まで)、合板等(同6%から10%まで)、木製品(同4%まで)の関税を課していたが、全て即時撤廃となった(*19)。


(*18)トウヒ(Spruce)、マツ(Pine)、モミ(Fir)類。

(*19)日EU・EPAにおける林産物交渉の結果については、「平成29年度森林及び林業の動向」トピックス2(4-5ページ)を参照。日EU・EPAの交渉結果を受けた木材製品の競争力強化対策については、第3節(5)213ページを参照。



(日米貿易協定の発効)

日米貿易協定は、令和2(2020)年1月1日に発効した。

木材については、全て関税削減・撤廃の対象から除外となり、一部の特用林産物については、米国とのTPP合意の範囲内で即時撤廃等となった。


(日英EPAの大筋合意・発効)

令和2(2020)年1月に、英国がEUを離脱したことを受け、英国との日EU・EPAに代わる新たな貿易・投資の枠組みとして、令和2(2020)年6月から、日英EPAの交渉が開始された。両国は、同年9月に大筋合意に達し、令和3(2021)年1月1日に同協定が発効した。

林産物に関しては、構造用集成材、SPF製材等の主な林産品10品目について、一定の関税撤廃期間を確保し、日EU・EPAと同内容となった。


(地域的な包括的経済連携(RCEPアールセップ)協定の署名)

地域的な包括的経済連携(RCEPアールセップ)協定は、平成24(2012)年11月に、我が国を含む16か国(ASEAN 10か国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)で交渉立上げを宣言し、平成25(2013)年5月から交渉を開始した。8年に及ぶ交渉の結果、令和2(2020)年11月15日に開催された第4回RCEP首脳会議において、インドを除く15か国が同協定に署名した。

RCEP協定のうち、林産物の輸入については、(ア)ASEAN10か国、オーストラリア、ニュージーランドに対する関税撤廃率を、TPP、日EU・EPAよりも大幅に低く、既結EPAの範囲内の水準に抑制するとともに、(イ)中国に対しては、半数の品目を関税削減・撤廃から除外し、関税削減・撤廃は、輸入実績ゼロ又は少額の品目のみ、(ウ)韓国に対しては、約3分の1の品目を関税削減・撤廃から除外し、関税削減・撤廃は、輸入実績ゼロ又は少額の品目のみとした。

輸出については、輸出関心品目として、中国に対しては、合板(針葉樹)、加工木材(針葉樹)等、韓国に対しては、建築用木工品(窓、戸、杭・梁)等が関税撤廃となった(資料3-4)。

資料3-4 RCEP協定における林産物の交渉結果

(WTO交渉の状況)

世界貿易機関(WTO(*20))では、平成13(2001)年から「ドーハ・ラウンド交渉」が行われているが、先進国と開発途上国との溝が埋まらず、交渉は進展していない。


(*20)「World Trade Organization」の略。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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