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第1部 第2章 第2節 特用林産物の動向(1)

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「特用林産物」とは、一般に用いられる木材を除き、森林原野を起源とする生産物の総称であり、食用のきのこ類、樹実類、山菜類等、伝統工芸品の原材料となる漆や木ろう等、竹材、桐材、木炭等が含まれる。特用林産物は、林業産出額の約5割を占めており(*70)、地域の企業や団体など多様な主体の参画を得ながら生産に取り組む事例もみられるなど、木材とともに、地域経済の活性化や雇用の確保に大きな役割を果たしている(*71)。以下では、きのこ類を始めとする特用林産物の動向について記述する。


(*70)林業産出額における栽培きのこ類等の産出額(庭先販売価格ベース)については、第2章第1節(1)118ページを参照。なお、以下では、林野庁「令和元年特用林産基礎資料」等による、東京都中央卸売市場等の卸売価格等をベースにした生産額を取り扱う。

(*71)特用林産物生産の取組については、「令和元年度森林及び林業の動向」特集第2節(2)23ページを参照。


(1)きのこ類の動向

(きのこ類は特用林産物の生産額の8割以上)

令和元(2019)年の特用林産物の生産額は、前年比2%減の2,784億円であった。このうち、「きのこ類」は前年比2%減の2,407億円となり、全体の8割以上を占めている。このほか、樹実類、たけのこ、山菜類等の「その他食用」が283億円、木炭、うるし等の「非食用」が94億円となっている。

きのこ類の生産額の内訳をみると、生しいたけが674億円で最も多く、次いでぶなしめじが514億円、まいたけが482億円の順となっている。

また、きのこ類の生産量は、長期的に増加傾向にあったが、近年は46万トン前後で推移しており、令和元(2019)年は前年比2%減の45.6万トンとなった。内訳をみると、えのきたけ(12.9万トン)、ぶなしめじ(11.9万トン)、生しいたけ(7.1万トン)で生産量全体の約7割を占めている(*72)(資料2-23)。


きのこ生産者戸数は、減少傾向で推移しており、きのこ生産者戸数の多くを占める原木しいたけ生産者戸数についても同様の傾向となっている(資料2-24)。


(*72)林野庁プレスリリース「令和元年の特用林産物の生産動向について」(令和2(2020)年8月31日付け)



(輸入も輸出も長期的には減少)

令和元(2019)年のきのこ類の輸入額は、前年比5%減の133億円となった。このうち、乾しいたけが前年比5%減の58億円(4,869トン)、まつたけが同3%減の43億円(849トン)、生しいたけが同10%減の5.8億円(1,835トン)、乾きくらげが同7%減の25億円(2,532トン)となっている。これらのきのこ類の輸入元のほとんどは中国である(*73)。生しいたけの輸入量は、ピーク時の平成12(2000)年には4万トンを超えたものの、平成13(2001)年のセーフガード暫定措置の影響等により大幅に減少した。その後も減少傾向で推移し、令和元(2019)年は前年比6%減の1,835トンとなっている(資料2-25)。


一方、輸出について乾しいたけをみると、令和元(2019)年は、主要な輸出国である香港、米国、台湾及びシンガポール向けが増加した影響により、輸出額は前年比17%増の1.6億円(33トン)となっている。乾しいたけは、戦後、香港やシンガポールを中心に盛んに輸出され、昭和59(1984)年には216億円(4,087トン)に上ったが、中国産の安価な乾しいたけが安定的に供給されるようになったことから、日本の輸出額は長期的に減少してきている。


(*73)林野庁「令和元年特用林産基礎資料」



(きのこ類の消費拡大・安定供給に向けた取組)

きのこ類の消費の動向を年間世帯購入数量の推移でみると、他のきのこが増加傾向であるのに対し、生しいたけはほぼ横ばい、乾しいたけは下落傾向で推移している(資料2-26)。


令和元(2019)年のきのこ類の価格は、品目によって異なる傾向となった。しいたけとなめこについては3年連続で下落したが、ひらたけは前年比8%増、まいたけは同3%増と上昇した(資料2-27)。まつたけは、天候不順等の影響で過去最少の生産量となったことなどにより、前年比66%増の58,553円/kgと大幅に上昇した。


きのこ類の消費拡大のため、林野庁は、きのこ類のおいしさや機能性(*74)を消費者に伝えるPR活動を関係団体と連携して実施している。きのこの生産団体等においても様々な取組が行われている(事例2-3)。

事例2-3 地域の間伐材を活用した木質培地によるえのきたけ生産の取組

えのきたけを生産する培地は、かつては木質が中心だったが、近年は、木質より収量増加を図ることができ安価な外国産トウモロコシ芯が主流となっており、木質培地を活用したえのきたけ生産は少なくなっている。

このような中、株式会社丸金(長野県長野市)は、国産材のスギ間伐材から作ったオガ粉等を活用した木質培地を自社生産し、天然きのこに近い育成環境でえのきたけを育成することにこだわっている。木質培地に地域の間伐材を使用していることや、風味や食感の良さなどが評価され、このえのきたけは、ミシュラン星付きレストラン、高級旅館等の食材として提供されている。

また、きのこ収穫後の培地を廃棄することなく有機堆肥や畜産用の敷地用として全て活用する循環型の取組であることも評価され、同社は間伐材を活用したえのきたけ生産の取組により、特用林産物生産の取組としては初の受賞となる、ウッドデザイン賞2020(ソーシャルデザイン部門)を受賞した。



また、食品の品質に対する消費者の意識の高まりを背景に、食品の原産地等の表示への関心が高くなっている。このような中、近年、しいたけ菌床(きのこ菌糸)の輸入量が増加しており、通常、作付地と採取地は同一であると認識している消費者の誤認を招かないよう、消費者庁では、令和2(2020)年3月に「食品表示基準Q&A」を一部改正し、しいたけ(菌床栽培)について、菌床製造地と採取地が異なる場合は、採取地に加え菌床製造地を表示することを推奨している。種菌生産団体等のしいたけ関係団体では、菌床製造地の表示を進めるとともに、菌床やほだ木に国産材が使用されていることを表示するマーク等の自主的な取組を行っている。引き続き、このような一般消費者の選択に資するための適切な情報を提供する取組が求められている。

なお、きのこの安定供給に向けて、林野庁は、効率的で低コストな生産を図るためのほだ場等の生産基盤や生産・加工・流通施設の整備に対して支援している。


(*74)低カロリーで食物繊維が多い、カルシウム等の代謝調節に役立つビタミンDが含まれているなど。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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