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第1部 第3章 第2節 特用林産物の動向(1)


「特用林産物」とは、一般に用いられる木材を除き、森林原野を起源とする生産物の総称であり、食用のきのこ類、樹実類や山菜類等、漆や木ろう等の伝統工芸品の原材料、竹材、桐材、木炭等が含まれる。特用林産物は、林業産出額の約5割を占めており、木材とともに、地域経済の活性化や雇用の確保に大きな役割を果たしている(*97)。以下では、きのこ類を始めとする特用林産物の動向について記述する。


(*97)林業産出額における栽培きのこ類等の産出額(庭先販売価格ベース)については、110ページを参照。なお、以下では、林野庁「平成29年特用林産基礎資料」等による、東京都中央卸売市場等の卸売価格等をベースにした生産額を取り扱う。



(1)きのこ類の動向

(きのこ類は特用林産物の生産額の8割以上)

平成29(2017)年の特用林産物の生産額は、前年比1%減の2,783億円であった。このうち、「きのこ類」は前年比2%減の2,362億円となり、全体の8割以上を占めている。このほか、樹実類、たけのこ、山菜類等の「その他食用」が317億円、木炭やうるし等の「非食用」が104億円となっている。

きのこ類の生産額の内訳をみると、生しいたけが730億円で最も多く、次いでぶなしめじが486億円、まいたけが364億円の順となっている。

また、きのこ類の生産量は、長期的に増加傾向にあったが、近年は46万トン前後で推移しており、平成29(2017)年は前年比0.3%増の45.9万トンとなった。内訳をみると、えのきたけ(13.6万トン)、ぶなしめじ(11.8万トン)、生しいたけ(7.0万トン)で生産量全体の約7割を占めている(*98)(資料3-33)。

きのこ生産者戸数は、減少傾向で推移しており、きのこ生産者戸数の多くを占める原木しいたけ生産者戸数についても同様の傾向となっている(資料3-34)。


(*98)林野庁プレスリリース「平成29年の特用林産物の生産動向等について」(平成30(2018)年9月7日付け)



(輸入も輸出も長期的には減少)

きのこ類の輸入額は、平成29(2017)年には、前年末の円安方向への推移による輸入単価の上昇等の影響で、前年比2%増の144億円となった。このうち、乾しいたけが前年比2%減の61億円(5,050トン)、まつたけが同5%増の50億円(787トン)、生しいたけが前年とほぼ同額の6.8億円(2,108トン)、乾きくらげは前年比5%増の24億円(2,401トン)となっている。これらのきのこ類の輸入元のほとんどは中国である(*99)。生しいたけの輸入量は、ピーク時の平成12(2000)年には4万トンを超えたものの、平成13(2001)年のセーフガード暫定措置の影響等により大幅に減少した。その後も減少傾向で推移したが、平成29(2017)年度は前年比5%増の2,108トンとなっている(資料3-35)。

一方、輸出について乾しいたけをみると、平成29(2017)年は、前年に大きく減少した台湾向けはやや回復したものの、香港、アメリカ及びシンガポール向けが減少した影響により、輸出額は前年比6%減の1.7億円(26トン)となっている。乾しいたけは、戦後、香港やシンガポールを中心に盛んに輸出され、昭和59(1984)年には216億円(4,087トン)に上ったが、中国産の安価な乾しいたけが安定的に供給されるようになったことから、日本の輸出額は長期的に減少してきている。


(*99)林野庁「特用林産基礎資料」



(きのこ類の消費拡大・安定供給に向けた取組)

きのこ類の消費の動向を年間世帯購入数量の推移でみると、他のきのこが増加傾向であるのに対し、生しいたけはほぼ横ばい、乾しいたけは下落傾向で推移している(資料3-36)。

平成29(2017)年のきのこ類の価格は、品目によって異なる傾向となった。生産量が減少したまいたけとエリンギについてはやや上昇したが、えのきたけについては2年連続で下落した。乾しいたけについては平成21(2009)年から下落が続いていたが、平成27(2015)年に大幅に上昇した後は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響により生産量が少ない状況が続いていることなどにより、高い水準で推移している(資料3-37)。


きのこ類の消費拡大のため、林野庁は、きのこ類のおいしさや機能性(*100)を消費者に伝えるPR活動を関係団体と連携して実施している(事例3-2)。きのこの生産団体等においても様々な取組が行われている。

また、きのこの安定供給に向けて、林野庁は、効率的で低コストな生産を図るためのほだ場等の生産基盤や生産・加工・流通施設の整備に対して支援している。

事例3-2 第32回きのこ料理コンクール全国大会

第32回きのこ料理コンクール全国大会が、平成31(2019)年3月14日に東京都渋谷区の服部栄養専門学校で開催された。この大会は、日本特用林産振興会が毎年開催しているもので、しいたけ等のきのこについての正しい知識や新しい料理方法を普及することによって、きのこの消費を拡大させることを目的としている。

今大会では、全国から応募のあった2,114点の作品のうち、各地区大会を勝ち抜いた13名が出場した。服部栄養専門学校校長の服部幸應氏を始めとした審査員が見守る中、出場者は緊張した面持ちながら、制限時間の1時間の中で手際よく調理を行った。

審査の結果、群馬県代表の松島杏奈さんの「椎茸とズッキーニの肉巻き丼」と愛媛県代表の秋山未知さんの「鶏としいたけのオーブン焼き」が最高賞である林野庁長官賞を受賞した。

今大会の出場者13名中12名を高校生が占めており、各地の高等学校において夏休みの課題等として食育に熱心に取り組まれていることなどから、今後一層のきのこの消費拡大につながることが期待される。


(*100)低カロリーで食物繊維が多い、カルシウム等の代謝調節に役立つビタミンDが含まれているなど。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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