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第1部 第3章 第2節 特用林産物の動向(2)


(2)その他の特用林産物の動向

(木炭の動向)

木炭は、日常生活で使用する機会が少なくなっているが、電源なしで使用できる、調理だけでなく暖房にも利用できる、長期保存が可能であるなどの利点があり、災害時の燃料としても期待できる。このため、木炭業界では、木炭の用途に関する周知や家庭用木炭コンロの普及等により、燃料としての需要の拡大を図っている。また、木炭は多孔質(*101)であり吸着性に優れるという特性を有することから、土壌改良資材、水質浄化材、調湿材等としての利用も進められている。

木炭(黒炭、白炭、粉炭、竹炭、オガ炭)の国内生産量は、1990年代半ば以降長期的に減少傾向にあり、平成29(2017)年は前年比3%減の2.3万トンとなっている。一方で、近年、木炭生産における生産性向上や、生産者の育成、ブランド化等に取り組む動きもみられる(事例3-3)。

木炭の輸入量は、長期的に増加傾向で推移しているが、平成29(2017)年は前年比0.7%減の12.5万トンとなった。国別にみると、主な輸入先国である中国、マレーシア、インドネシアで全体の約8割を占めている。

また、木炭等を生産する際に得られる木酢液等は、主に土壌改良用として利用されている。その国内生産量は、長期的に減少傾向が続く中で、近年は2,000~3,000kLで推移しており、平成29(2017)年の生産量は前年比13%減の2,603kLとなっている。

事例3-3 地理的表示(GI)による国産木炭ブランド化に向けた取組

平成30(2018)年8月、地域ならではの特徴的な産品を知的財産として保護する地理的表示(GI)保護制度に、「岩手木炭」が木炭としては国内で初めて登録された。

登録生産者団体は一般社団法人岩手県木炭協会で、「岩手木炭」、「岩手切炭」、「IWATE CHARCOAL」の3名称が登録されている。

「岩手木炭」に使用する原木は、材質が硬く木炭に最適な県内産のナラやクヌギのみを使用しており、独自に開発した窯を使用し高温で時間をかけて製炭する等、品質管理方法を基準化することで、木炭の品質向上を図っている。

木炭のGI取得により、良質な木炭の差別化が図られ、付加価値の向上及び普及促進につながることが期待される。


(*101)木炭に無数の微細な穴があることで、水分や物質の吸着機能を有し、湿度調整や消臭の効果がある。



(竹材の動向)

竹は我が国に広く分布し、従来、身近な資材として、日用雑貨、建築・造園用資材、工芸品等に利用されてきたが、代替材の普及や安価な輸入品の増加等により、竹材の生産量は減少傾向で推移してきた。しかし、近年、竹紙の原料としての利用の本格化等を背景に、平成22(2010)年の96万束(*102)を底に増加傾向で推移しており、平成29(2017)年は前年比6%減の120万束となっている。

これまで、竹資源の有効利用に向けて、竹材の低コストな伐採・集材システムの構築に向けた取組や、竹チップをきのこ菌床用資材、バイオマス燃料(*103)、パルプ等に利用する技術の研究開発、竹チップを原料とする建築資材(ボード)等の製造技術の開発が行われてきた。

また、近年、竹チップボイラーの導入、竹を原料とした建材の製造、竹を燃料とするバイオマス発電所の建設等の取組も進んでいる。

このような中、林野庁は、竹の生態、伐採・搬出を含む竹林の整備、利用等に関する情報収集等を行い、竹の利活用の現状や利用拡大に向けたアプローチ等について取りまとめた報告書「竹の利活用推進に向けて」を、平成30(2018)年10月に公表した。


(*102)1束は人が持ち運びするためひとまとめにしたサイズ。例えば、マダケでは直径8cmのマダケ3本分。

(*103)平成29(2017)年には、林野庁の補助事業により、竹をバイオマス発電用燃料として木質と同等品質に改質する技術が国内企業によって開発された。



(漆の動向)

漆は、ウルシの樹液を採取して精製した塗料で、古来、食器、工芸品、建築物等の塗装や接着に用いられてきた。漆の国内消費量は平成29(2017)年には42.4トンであるが、そのうち国内生産量は3%に当たる1.4トンとなっており(資料3-38)、中国からの輸入が大部分を占めている。文化庁は、平成30(2018)年度を目途に、国宝・重要文化財建造物の保存修理に原則として国産漆を使用する方針としており、年平均で約2.2トンの国産漆が必要と予測している(*104)ことから、漆の増産が必要な状況となっている。このため、国産漆の産地においてウルシ林の育成・確保(*105)や漆搔(か)き職人の育成等の取組が進められている。


(*104)文化庁プレスリリース「文化財保存修理用資材の長期需要予測調査の結果について(国宝・重要文化財建造物の保存修理で使用する漆の長期需要予測調査)」(平成29(2017)年4月28日)

(*105)国有林野における取組については、「平成28年度森林及び林業の動向」の197ページを参照。



(薪の動向)

薪は、古来、煮炊きや風呂等に利用され、生活に欠くことのできないエネルギー源であったが、昭和30年代以降、石油やガスへの燃料転換等により利用が減少し、全国の販売向け薪の生産量は、平成18(2006)年まで減少傾向が続いた。

しかし、平成19(2007)年以降は、従来のかつお節製造用に加え、ピザ窯やパン窯用等としての利用や、薪ストーブの販売台数の増加(*106)等を背景に、薪の生産量は増加傾向に転じた。平成24(2012)年には東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響等により大きく減少したが、平成29(2017)年には5.2万m3(丸太換算(*107))となり、近年は5万m3程度で推移している(資料3-39)。平成29(2017)年の生産量を都道府県別にみると、多い順に長野県(10,689m3)、北海道(7,521m3)、鹿児島県(7,119m3)となっている。価格については、長期的に上昇傾向で推移していたが、平成25(2013)年以降は25,200円/層積m3となっている(資料3-39)。

薪は、近年は、備蓄用や緊急災害対応用の燃料としても販売されている(*108)。このほかにも、自家消費用に生産されるものが相当量あると考えられる(*109)。


(*106)一般社団法人日本暖炉ストーブ協会調べ。一般家庭や団体等による薪ストーブの購入を地方公共団体等が支援する動きもみられる。

(*107)1層積m3を丸太0.625m3に換算。

(*108)「平成26年度森林及び林業の動向」の125ページを参照。

(*109)長野県が平成21(2009)年度に行った調査では、県内の約4%の世帯が薪ストーブや薪風呂を利用していた。また、薪ストーブ利用世帯における年間の薪使用量は平均9.0m3で、使用樹種は広葉樹が76%、針葉樹が24%であり、使用全量を購入せずに自家調達している世帯が約半数を占めた。



(その他の特用林産物の動向)

樹実類やわさび、山菜類等は、古くから山村地域等で生産され、食用に利用されてきた。平成29(2017)年には、樹実類のうち「くり」の収穫量は18,700トン、また、「わさび」については2,214トンとなっている。山菜類のうち「わらび」は755.6トン、「乾ぜんまい」は36.9トン、「たらのめ」は156.0トンとなっている。

また、漢方薬に用いられる薬草等として、滋養強壮剤の原料となる「くろもじ」(平成29(2017)年の生産量131.9トン)、胃腸薬の原料となる「きはだ皮」(同3.8トン)、「おうれん」(同0.7トン)等が生産されている。

林野庁では、山村独自の資源を活用する地域の取組への支援を通じ、このような特用林産物の振興を図っている。

コラム 穂先たけのこを活用した商品づくりで竹林整備に貢献

乾たけのこの生産に関する説明会の様子(愛媛県大洲市)
穂先たけのこの加工商品(糸島コミュニティ事業研究会)
竹林整備の様子(天竜川鵞流峡復活プロジェクト)

新しい竹林の産物利用として、現在多くを輸入に頼っているメンマの代替品として、収穫時期が過ぎた穂先たけのこを利用する取組が広がっている。

愛媛県森林組合連合会では、国内大手飲食店メーカーからメンマの代替品として「乾たけのこ」の生産要請を受け、愛媛県産「乾たけのこ」の生産に取り組んでいる。農林家に対し、たけのこの収穫期を終えた後、今までは山で切り捨てていた穂先たけのこの収穫を呼びかけ、農林家の所得向上、地域の活性化及び竹林整備につなげている。

また、福岡県糸島(いとしま)市の市民団体「糸島コミュニティ事業研究会」は、市内に広がる放置竹林の整備と地域活性化をかねて、平成26(2014)年度から穂先たけのこの活用を始め、平成29(2017)年度には竹に携わる全国の団体とともに「純国産メンマプロジェクト」を開始した。平成30(2018)年度は2トンを生産し、地元糸島では味付けした商品のほか、小籠包等の食材として応用されている。生産に適しているのは、1.5~2m程に成長した穂先たけのことのことで、同研究会主宰の日高氏は「放置竹林の整備は、竹になる前に伐採した方が柔らかくて作業効率が良い。穂先たけのこの採取は鋸や鎌で地上部分をカットするだけで誰でもでき、加工すれば収入源にもなる」と語る。

さらに、長野県飯田(いいだ)市の竜丘地域自治会と天竜川舟下りの運航会社の連携により設立された市民団体「天竜川鵞流峡(がりゅうきょう)復活プロジェクト」は、景勝地の鵞流峡一帯に生い茂る竹林を伐採して景観を整える活動を行っている。これまでは伐採した竹で灯籠などを作っていたが、平成28(2016)年から穂先たけのこを利用し、新たな商品づくりを開始した。平成30(2018)年は370kgの穂先たけのこを収穫し、加工した商品を地元飯田市内で販売している。

竹林は全国で拡大し、約17万haに及ぶ。このうち適切な管理がされていない竹林の面積は把握できていないが、西日本を中心に景観悪化や不法投棄の温床になっている。

一方で、ラーメンに添えられるメンマは、ほとんどを中国産が占めている。国産食材志向が高まっている中、この市場への可能性は大きく、同取組が、竹林問題の解決や中山間地域の活性化の糸口へとつながるか、今後の動向が期待される。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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