平成28年度森林鳥獣被害対策技術高度化実証事業
事業の目的
北海道ではエゾシカによる森林被害は依然高い状況にあり、北海道森林管理局でもエゾシカの捕獲事業を継続して実施する必要があります。
そのため、エゾシカ捕獲事業を継続して実施するためには、費用対効果が高く効率のよいエゾシカの捕獲を実施する必要があり、捕獲時期の決定、小型囲いワナなど新たに開発された捕獲手法の組み合わせ、捕獲したエゾシカの処理及びこれらを継続して実施できる体制の構築など、従来単独で行われた事業を総合的な視点で組み合わせて実施していくことが重要となります。
本事業では空知森林管理署夕張市管内の国有林内にモデル地区を選定して、地域で継続的なエゾシカ捕獲を実施できる体制を構築し、エゾシカの動向を把握した上で最も効果的な林道除雪、捕獲時期、複数の手法を組み合わせた捕獲方法による実証を行いました。
事業内容及び結果(要旨)
モデル地区の選定
- 簡易影響調査や狩猟報告データの分析およびGISによる越冬適地の抽出し、森林整備事業等の社会条件も加味した上で、最終的に関係者との協議によりモデル地区を決定しました。
地域での捕獲体制の構築
- 地域関係者を含めた協議会を設置し、捕獲事業の主要方針を決定するとともに、事業の要所で関係者間の情報共有を図りました。
エゾシカ動向把握調査
- 自動撮影カメラ調査やGPSテレメトリー調査により、エゾシカの生息状況の指標や捕獲実施時期のエゾシカの行動パターンなど、今後の捕獲事業に有用な知見を得ることができました。また、ライトセンサス調査およびドローンによるセンサスの試行では、それぞれの調査手法の長所と短所を明らかにすることができ、今後の運用方法を考える上での材料が得られました。
捕獲手法等の検討
- モバイルカリング、小型囲いワナ、くくりわなの3つの手法について、それぞれの特徴を生かし、捕獲手法の運用方法、スケジュール、捕獲個体の処理方法等も併せて整理し、関係者との協議を経て捕獲事業の計画を作成しました。
捕獲の実施
- 圧片大麦、ビートパルプ、ヘイキューブの3種類の餌について、エゾシカの嗜好性を比較試験したところ、圧片大麦の嗜好性が最も高い結果が得られました。
- 餌場への誘引の成否には、人によるかく乱の有無や積雪が影響していることが示唆され、特に積雪については、積雪深60cm程度を境に、誘引の進行が促進される結果が得られました。
- モバイルカリングでは、8日間で22頭が捕獲されました。途中休止期間を挟むことで、期間中最後まで高い捕獲成功率が維持され、効率のよい捕獲を実施できました。
- 小型囲いワナでは体重計測式で3頭、サークルDで6頭の計9頭が捕獲されました。いずれも複数頭の捕獲があり、特にサークルDでは4頭同時に捕獲することができました。
- サークルDについては、捕獲期間中に移設を行い、餌に十分誘引されている状況であれば、設置からきわめて短い期間で捕獲ができることが実証されました。
- 小型囲いワナの止めさしではポケットネットと電気殺を用いて安全に処理する方法を確立することができました。
- くくりわなでは、4日間で7頭の捕獲があり、捕獲率も高い値を示しました。一方で空落ちも多く発生しており、積雪や餌場への警戒の影響が考えられました。
- くくりわなで捕獲されたオスの成獣を安全に保定する方法を確立することができました。
- 捕獲手法によって捕獲される個体の内訳が異なり、モバイルカリングではメスの成獣、小型囲いワナでは仔、くくりわなではオスの捕獲割合がそれぞれ高い傾向がみられました。
実施結果の検証
- 他地域のモバイルカリングの結果と比較して、今回の事業は捕獲率が高く、結果として効率のよい捕獲を行うことができました。その理由としては、一般狩猟と棲み分けることで、エゾシカの警戒心が上がるのを抑えられたことや、事業実施場所の地形がモバイルカリングに適していることが考えられます。
- 一般狩猟の結果と比較すると、捕獲数は同程度と推察されますが、捕獲の実施回数が少ないため捕獲効率は高い結果となりました。また、捕獲の回数が少ないことで、エゾシカの警戒心を低く抑えることになり、副次的にスレジカの発生を抑制することにつながるものと考えらます。
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報告書(表紙・目次)(PDF : 124KB)報告書(第1章~第4章)(PDF : 7,099KB)
報告書(第5章)(PDF : 8,937KB)
報告書(第6章)(PDF : 3,720KB)
報告書(第7章~第12章)(PDF : 8,454KB)
報告書(巻末資料)(PDF : 6,911KB)
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