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九州森林管理局

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    綾川上流緑の回廊

    ayagawakinkei

    1「緑の回廊」の位置及び区域

    (1)設定の目的

    (省略)
    綾の照葉樹林について既存の保護林を拡充するとともに新たに保護林を設定し、植林地により断片化された林分を自然林に復元しながらそれらを連結して、照葉樹林の連続性を確保することにより、森林生態系の一層の保護・保全を図り、貴重な野生動植物の広域化や相互交流に資する等、生物多様性確保の観点から、より広範で効果的な保全を図る「緑の回廊」を設定することとする。 

    (2)設定区域の概要

       照葉樹林の分布及び保護林の設定状況から、綾森林生態系保護地域(下図エリア2)、掃部岳生物群集保護林(下図エリア7)及び大森岳生物群集保護林(下図エリア4)を連結する「緑の回廊」を設定することとする。
       この地域は、綾の照葉樹林の中核に位置し、ブナ科(ツブラジイ、スダジイ、マテバシイ、アカガシ、イチイガシ、アラカシなど)、クスノキ科(イヌガシ、カゴノキ、タブノキなど)を主体に、これらの樹上や岩上に生育するフウラン、セッコク、ムギランなどの着生植物や、エビネ、シュンランなどの照葉樹林に生育するラン科の自然植生が見られ、生物相も豊かである。
       なお、今後、必要に応じて保護林の新設や拡充を行うとともに、将来は民有林との連携も視野に入れることとする。

     



    林相



    クマタカ

    遠景



    (3)区域の概定に当たっての考え方

    1.ルートの選定

      保護林と保護林を効率的かつ効果的に連結するため、河川部及び稜線部に沿って設定することとする。
    (延長:5km、面積:2,270ha)

    2.着目する野生動植物種

    (1)着目する野生生物種については、キーストーン種のニホンカモシカや生息確認されているクマタカなどの上位性の猛禽類など、別添「評価項目」のとおり多様な生物種を対象とする。特に、緑の回廊の設定後において後発的に実施する林地開発行為等が、当該緑の回廊の区域に掛かる場合にあっては、同評価項目のうち「環境影響評価⼿続等において確認すべきこと」に掲げる事項等に留意する。
       なお、生息区域の拡大・生息密度の高まりにより生態系への悪影響が懸念されるニホンジカについても当面着目する。

    (2)今後、当該区域の指標生物として適した分類群やモニタリング手法が開発された場合や、天然林への誘導を図る人工林等において樹種の多様化や階層の複雑化に伴い新たに出現・定着傾向が見られた種があった場合等は着目種の設定を検討する。 

    3.幅と長さ

      緑の回廊としての幅に関する知見が不十分であることから、当面、野生動植物の生息・生育地の拡大と相互交流を促すよう照葉樹林へ復元する区域を設定することとする。
      また、当該緑の回廊の設定後において後発的に実施する林地開発行為等が、当該緑の回廊の区域に掛かる場合にあっては、野生生物の移動経路の分断を確実に避けるとともに、当該生態系の連続性を維持するために必要な幅と長さ(規模、形状等)を確実に確保するものとする。

    4.「緑の回廊」に設定する林小班

      尾根、沢などの地勢線により区域が明確になるように、林小班単位で設定することとする。

    (4)綾の照葉樹林プロジェクト

    本地域を含む周辺の国有林等を対象に、九州森林管理局、綾町、宮崎県、(財)日本自然保護協会、てるはの森の会の5者が「綾川流域照葉樹林帯保護・復元計画(綾の照葉樹林プロジェクト)」の協定を結び、照葉樹林の保護・復元を進めているところです。その中で本地域は照葉樹林への復元を図るエリアとして位置づけられています。


    2「緑の回廊」の維持・整備について

    「緑の回廊」については、野生動植物の生息や移動にとって良好な状態になるよう、森林のタイプに応じて以下のとおり、維持・整備を適切に実施することとし、照葉樹林への復元を進め階層及び樹冠層の多様化を図ることとする。
    また、実施に当たっては、貴重な野生動植物の繁殖・生育に影響がないよう時期に配慮することとする。

    (1)伐採

    1.原生的な天然林等
    原生的な森林生態系を維持するため、保護林に準じて原則として人手を加えず、自然のままの状態で保存することとする。

    2.人手が加わっている天然林
    照葉樹林への復元を図るため、森林の構成に配慮した択伐等を行うこととする。

    3.人工林
    照葉樹林への復元を進めるにあたっては森林の各種機能を維持する観点から、間伐等を行い照葉樹の発生・育成への誘導を図ることとする。
    なお、餌場を確保するためなど必要な場合には、小規模な伐採を行うこととする。

    4.その他
    また、営巣、餌場、隠れ場として重要な洞等がある巨木、古木を保残するとともに、倒木、枯損木等についても巡視等の森林管理上危険等がない限り保残することとする。

    (2)更新・保育

    1.更新は、稚幼樹の発生状況などに留意しながら画一的に行わないこととし、必要に応じて採餌木の植栽を行うこととする。

    2.人工林の下刈は坪刈や筋刈を基本とし、照葉樹は極力残すことに努める。除伐は照葉樹の復元をはすることから基本的に見合わせる。
    また、野生動物のエサとなるサルナシ、アケビ等については、照葉樹の生育に支障のない限り保残に努めることとする。

    3「緑の回廊」の管理について

    (1)管理

    1.巡視

    巡視に当たっては、特に野生動植物の生息・生育状況および環境の把握に努めるとともに、一般の入林者に対する普及啓発に努めることとする。

    2.動植物の保護

    (1)動物
    「緑の回廊」においては、原則として狩猟は行わないこととし、関係機関と調整を図るとともに、狩猟関係者に自粛申請を行うこととする。
    なお、野生鳥獣被害に対しては、国民の理解の下に、保護と被害防止の両立が図られるよう関係機関と連絡を密にしながら対策を進めていくこととする。

    (2)植物
    「緑の回廊」においては、スギ、ヒノキ等の人工植栽木を除き、原則として植物の採取は認めない。
    ただし、学術調査・研究のための試料等の採取については、関係機関との調整を図り、最小限となるようにすることとする。

    3.林地開発の規制
    設定趣旨を十分に踏まえ、慎重に対応する。ただし、公用、公共用など公益性の高いものについては、上記1の(3)の2.「着目する野生生物種」及び同ウ「幅と長さ」における内容を十分に考慮し、当該緑の回廊への影響度合いや野生生物の移動経路の確保などを総合的に検討して対応する。

    4.自然教育・体験の場としての活用
    保護林等については、森林生態系の厳正な保護を因っていくこととするが、「緑の回廊」においては、森林とのふれあいの推進と動植物の保護との調和に配慮した取扱いに努めることとし、県、地元自治体、森林インストラクター及び自然保護団体等の協力を得ながら動植物の生息・生育環境、移動実態等について子供達や市民に対する森林環境教育、体験学習等の場としてモデル的な活用が図られるよう取り組むこととする。
    また、「緑の回廊」について国民の理解を深めるため、野生動植物の生息・生育に悪影響を及ばさないよう配慮しながら、看板の設置等を行うこととする。
     

    (2)施設の整備

    必要となる治山施設、観察施設等の設置に当たっては、野生動植物の生息・生育環境に悪影響を及ぼすことがないよう配慮することとする。

    4「緑の回廊」のモニタリングに関する事項

    「緑の回廊」の整備や管理等を適切に行うため、野生生物の生息・生育及び移動状況や森林施業との関係などを把握する、次のようなモニタリングを実施することとする。

    (1)実施体制

    モニタリングの実施にあたっては、学術的知見を有する試験研究機関及び自然保護団体等やボランティア団体等の協力を得るとともに、必要に応じて地域住民等の協力を得ることとする。

    (2)情報提供の考え方

    モニタリングの結果得られた知見に基づき、「緑の回廊」の整備や管理等を適切に行うとともに、県及び市町村等の関係部局、大学、研究機関等への情報提供にも努めることとする。

    (3)その他

    林地開発行為等における工事の実施中及び供用開始後において、開発行為をした者が行う事後調査の結果等を確認するとともに、⾧期的なモニタリングを継続して実施するものとする。

    5その他留意事項

    (1)整備・管理体制の充実

    照葉樹林と野生動植物に関する研修等を実施するとともに、関係行政機関、地方公共団体及び自然保護団体等との連携を図り、「緑の回廊」の整備・管理体制の充実に努めることとする。

    (2)普及啓発

    国有林における「緑の回廊」から得られた知見については、民有林における森林生態系に配慮した森林の取扱い等に活用できるよう、県、市町村等に対する情報提供を行うこととする。

    (3)その他

    モニタリングの結果や公益上の理由等により区域の変更等が必要になった場合は、保護林管理委員会の意見を聴取し適切に行う。特に、林地開発行為等に対応するものとして区域の変更等を行う場合にあっては、森林生態系の連続性を維持することについて十分に配慮するものとする。

     

    綾川上流緑の回廊設定方針

    綾川上流緑の回廊設定方針の改正(新旧対照表)(PDF : 146KB)
    綾川上流緑の回廊設定方針 別添「評価項目」(PDF : 511KB)
    綾川上流緑の回廊の設定方針(溶け込み版)(PDF : 686KB)

    お問合せ先

    計画保全部計画課

    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612