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九州森林管理局

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    掃部岳(かもんだけ)生物群集保護林

    1.概要

       当保護林は、宮崎県西都市、国富町、西米良村が接する市町村界に存在し、九州中央山地南部の掃部岳(1,223m)の周辺に位置している。掃部岳周辺からは、北東に前川、南に深年川、西に綾北川となり太平洋に流下する。林相は、上部はモミを中心とした中に冷温帯の落葉広葉樹林を代表するブナの実質的南限域としてシラキ-ブナ群集、下部に向かって常緑広葉樹のツガ、モミ、常緑広葉樹のアカガシ、夏緑広葉樹林のブナ、コハウチワカエデなどが混成するアケボノツツジ-ツガ群集、アカガシが優先しハイノキ、シキミ、ヤブツバキ、ミヤマシキミなどが混成するミヤマシキミ-アカガシ群集、モミ、ツガが優先しアカガシ、ウラジロガシが混成するコガクウツギ-モミ群集、ツクバネガシ、ウラジロガシ、ホソバタブ、ハイノキ、イスノキなどを区分種とするイスノキ-ウラジロ群集、最下部をイチイガシ、ツブラジイを優占種としルリミノキ、カンザブロウノキ、シロバイなどを区分種とするルリミノキ-イチイガシ群集など、温帯域から暖温帯域までの垂直分布を示している。
       掃部岳山塊の森林自然植生の特徴は、日本の冷温帯の落葉広葉樹林つまりブナ林の実質的南限植生が、暖温帯の常緑樹林であるヤブツバキクラスの森林海の中にかろうじて生き残っている点で極めて重要である。日本の自然植生を代表する三大森林植生帯(ヤブツバキクラス、ブナクラス、コケモモ-トウヒクラス)の境界に成立する極めてデリケートで特異な植生域として、その学術的価値は大変高いものがある。一部は買い入れ林分で、林内には数箇所の築窯跡があり、製炭用材として択伐施業を行っていたと思われる。

    2.目的

       掃部岳周辺の森林は、日本の冷温帯の落葉広葉樹林を代表するブナ林が実質的な南限として暖温帯の常緑広葉樹であるヤブツバキクラスの森林の中にかろうじて生き残っている点で極めて重要である。このブナが生育する掃部岳山頂付近のシラキ-ブナ群集、尾根や岩角地にはアケボノツツジ-ツガ群集、標高800m以高の雲霧帯におけるミヤマシキミ-アカガシ群集及びそれに着生するコケ類・シダ類がみられるほか、カモシカ、イヌワシ生育の南限になっているなど西日本の自然を代表する極めて重要な自然生態系を呈している。これらの学術的価値の高い多様な自然生態系を一体的に維持を図り、併せて森林施業、森林管理技術の発展、学術研究等に資する。

     

    掃部岳植物群落保護林_林相 掃部岳植物群落保護林_林内に点在するモミ
     林相 林内に点在するモミ

     

    3.所在地

    宮崎県 東諸県郡 国富町                                                        

    宮崎県 西都市

    宮崎県 児湯郡 西米良村

    4.設定年月日

    旧掃部岳学術参考保護林                   昭和50年3月31日
    旧掃部岳林木遺伝資源保存林(一部)  平成2年3月31日再編
    「綾川上流緑の回廊」設定方針          平成18年3月策定
    旧名称「掃部岳植物群落保護林」       平成18年3月28日再編
    「掃部岳生物群集保護林」                平成30年4月1日   新保護林制度により再編

    5.面積

    626.83 ha       西都児湯署 443.91 ha
                           宮崎署 182.92 ha

    6.関係森林管理署等

    西都児湯森林管理署
    宮崎森林管理署

    7.現況

    標高:800~1,223m

    傾斜:急

    地質:中世層頁岩

    土壌型:BC、BD(d)

    林齢:70~160年生

    気候帯:太平洋岸気候区-九州山地型

    8.法指定等

    保安林(水源かん養)、鳥獣保護区(特別保護、普通)、(県設)掃部岳北部自然環境保全地域(特別)

    9.取り扱い方針

       保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(PDF : 328KB)(平成27年9月28日付け 27林国経第49号)に定められた生物群集保護林の取扱い方針に従う。また、平成22、30年度の保護林モニタリング調査の結果を踏まえて取り扱うこととする。
       本保護林は、シカ被害が甚大な地域であり、平成22年度から平成30年度にかけて、シカ被害程度は、総体的に進行している。平成30年度調査では、全8プロット中4プロットがレベル4の森林が破壊された段階、他がレベル3の森林の内部構造が破壊された段階となり、危機的な状況にある。
       樹木の生育状況については、1プロットを除き、立木は順調に生育しており、林内環境は安定していると考えられる。一方、自動撮影カメラにより、シカが本保護林に多く生息していることが示唆され、草本類の著しい低下及び忌避植物の増加が認められており、餌資源の減少によりニホンカモシカが、本保護林で生息できなくなっている可能性が考えられる。
       今後も引き続きモニタリング調査を継続し、森林の植生構造の回復、既存植生保護柵の定期点検及び増設、早急なシカ個体数管理の実施、保護対象種ブナ等の単木的防護による天然更新の促進、土壌流亡対策、併せて、シカ食害の影響を受けている可能性のあるニホンカモシカの生息基盤の確保を図るため必要な対策を講じることとする。
       モニタリング調査実施間隔5年
      (シカ被害を考慮し、巡視等を通じて状況を確認しつつ、場合によって間隔を3年以下とすることも検討する。)

    10.掃部岳生物群集保護林地図

    掃部岳生物群集保護林位置図

     



    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612