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九州森林管理局

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    奄美群島(あまみぐんとう)森林生態系保護地域

    1.概要


      亜熱帯海洋性気候に含まれる奄美群島は、年平均降水量が2,000mm~3,000mmと非常に多く、森林が群島総面積の66%を占めるため、水源涵養機能や山地災害防止機能が大きな役割を果たしてきた。このうち、国有林は奄美大島の総面積の6%、徳之島の総面積の15%を占め、スダジイ(イタジイ)、イジュ、イスノキ、オキナワウラジロガシ等から構成される亜熱帯常緑広葉樹林(照葉樹林)で覆われる。植物群落全体の種の組み合わせが原生林に極めて近く、学術的にも非常に価値の高い森林を擁していることから、この地域を適切に維持・保存するため、奄美群島森林生態系保護地域設定委員会の審議を経て、奄美大島にある金作原、神屋、谷津野の3団地と徳之島にある徳之島北部、徳之島中部地区の2団地、計5団地が「奄美群島森林生態系保護地域」に設定された(平成25(2013)年3月)。(下記位置図参照:森林生態系保護地域の赤(保存地区)、橙色(保全利用地区)の区域)

      奄美群島が属する琉球諸島は、平成15(2013)年の「世界自然遺産候補地に関する検討会」にて、大陸との関係において独特の地史を有し極めて多様で固有性の高い亜熱帯森林生態系や珊瑚礁生態系を有している点、また優れた陸上・海中景観や多くの絶滅危惧種の生息地となっている点が評価され、世界遺産条約に定める登録基準と完全性の条件を満たす可能性が高い地域の一つとされた。これらを背景に、平成25(2013)年1月には世界遺産条約関係省庁連絡会議において、「奄美・琉球」を自然遺産として我が国の世界遺産暫定一覧表に記載された。また、同年5月には世界自然遺産暫定一覧表への記載を目指して、「奄美・琉球世界自然遺産候補地科学委員会」が設置され、同年12月開催の第3回委員会に、中琉球の奄美大島、徳之島、沖縄島北部の3地域と南琉球の西表島の計4地域を「連続性のある資産」として世界自然遺産推薦候補区域に選定し、世界遺産登録を目指して関係機関による様々な取り組みが進められてきた。その結果、令和2年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島」が、日本で5番目となる世界自然遺産に登録された。

      奄美・徳之島地域は、沖縄島北部(通称、やんばる地域:平成28年12月「やんばる森林生態系保護地域」に設定)https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/keikaku/hogorin/shinrin_seitaikei/yanbaru.htmlとともに、同じ中琉球に位置し植生的類似性を有しつつも、より原生的な森林景観(林相)を呈し、島嶼毎に見られる生物群独自の生物進化、種分化を遂げて遺存種や固有種等が多いなどやんばる地域とも異なる本地域特有の価値を有する自然環境となっている。(本保護林の自然環境に関する詳細は後述)

      本保護林については、人為活動等により自然環境の劣化等の懸念もあることから、科学的根拠に基づく関係者合意の下で保全と利用の調整を図る管理が求められる。このような状況を踏まえ、九州森林管理局においては、一連の保全等に係る取組を計画的に進めるため、有識者意見も取り入れた保護林の総合的管理指針「奄美群島森林生態系保護地域保全管理計画(WORD : 735KB)」が策定されている。

      また、自然遺産登録後の適正な管理と実践の具体的取組を進めるため、関係省庁(環境省、林野庁、文化庁)、地域自治体の鹿児島県、沖縄県ほか関係市町村(2県12市町村)は、遺産地域全体の管理体制を確立し、貴重な自然環境を人類共通の資産と位置づけ、よりよい形で後世に引き継ぐための管理方針「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地包括的管理計画」http://kyushu.env.go.jp/okinawa/amami-okinawa/world-natural-heritage/plan/pdf/b-1-j.pdfが策定されている。

      これらのことから、奄美群島森林生態系保護地域(奄美大島、徳之島)は、世界自然遺産登録後の姿がどうあるべきかを想定し、本保護地域の保全管理計画の取組と上記の遺産地域における包括的管理計画の地域別行動計画に関係する機関・団体等が連携、協力した具体的施策・検討との整合性も保ちながら進めていく必要がある。
      なお、奄美大島の保護林には森林生態系保護地域のほかに、林相が類似する「アマミノクロウサギ希少個体群保護林」が別途指定されているが、これらは類似した林相でもあるため、今後、保護林として統合を検討する予定である。

    奄美 湯湾岳付近からの眺望(奄美大島の常緑広葉樹林)
     奄美群島森林生態系保護地域(金作原地区)
    湯湾岳付近からの眺望(奄美大島のスダジイほか常緑広葉樹林)
    ユワンツチトリモチ
    奄美_徳之島中部
    ユワンツチトリモチ 奄美群島森林生態系保護地域(徳之島中部地区)



              奄美群島森林生態系保護地域位置図
    奄美大島森林生態系保護地域位置図

    2.目的

      奄美群島でしか見られない特徴を持つ原生的な天然林(亜熱帯性常緑広葉樹林)及びアマミノクロウサギやルリカケスなどの大陸遺存種やアマミトゲネズミなどの固有種が多数生息しているなど、貴重な生物が生息する生物多様性の高い世界的ホットスポットである森林生態系地域を保護し、将来にわたって良好な形で維持・保存し、確実に引き継いでいくことを目的としている。

    3.所在地及び主要山系、河川等

     
      奄美群島森林生態系保護地域は、鹿児島県奄美大島(奄美市、宇検村、大和村、瀬戸内町)と徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)に位置している。
      奄美大島の主要な山系は、島の中央からやや西側に位置する湯湾岳(694m)、油井岳(483m)、小川岳(528m)、松長山(455m)、鳥ヶ峰(467m)等、400m以上の山々が脊柱部を構成している。また、河川については、太平洋の住用湾に注いでいる住用川、大川、東シナ海に注ぐ河内川、名音川などがあるが、ほとんどが流路延長の短い急流河川である。
      徳之島の主要な山系は、北部の天城岳(533m)、三方通岳(496m)、大城山(333m)を主峰とした比較的急峻な山が連なり、島の中央部では井之川岳(645m)、美名田山(438m)、島の南部に剥岳(382m)、犬田布岳(417m)と続く山塊が群をなしている。また、河川については天城町の秋利神川のほか、徳之島町の亀徳川、伊仙町の鹿浦川などがある。 

    4.設定年月日

     平成25年3月15日
     平成30年4月1日再編(保護林制度改正に伴う) 

    5.面積

     4,819.71 ha

     保存地区    2,252.44 ha

     保全利用地区  2,567.27 ha

    6.関係森林管理署

     鹿児島森林管理署

    7.保護地域の自然環境

    (1)気候、自然環境と保護地域の生物多様性との関係

       奄美群島は、鹿児島以南に広がる南西諸島に属し、南西諸島は別に琉球列島とも称する。また、琉球列島は、北琉球、中琉球、南琉球の3地域に分けることがあり、このうち奄美群島は、沖縄島などを含めた中琉球に属している。緯度では北緯20度~30度辺りに位置し亜熱帯高圧帯にある。世界的に見れば、通常ならこの地域は、大気循環のハドレー循環(注)の影響により吹き下ろされた乾燥した空気によって、サハラ砂漠などのような乾燥地帯となることが多いが、実際は東アジアの東端にあり、湿潤な亜熱帯モンスーン気候に属すことや近くを流れる温暖な海流(黒潮)の影響から亜熱帯海洋性気候となっている。すなわち、この地域の低地の年平均気温は21.5度、最低気温も平均19度である。また、奄美大島の年降水量は2,900mmと多く、日本でも有数の温暖多雨地帯となっており、温帯的要素と熱帯的要素の両方の特性を持っている。
       さらに、奄美群島は台風常習地であり、土砂災害なども頻発するが、台風による攪乱は、自然環境形成要素の一つともなっている。

       奄美群島の位置する琉球列島の成り立ちは、島嶼域毎に異なる地史(海洋プレートの沈み込みによる列島の形成、氷河期の繰り返しによる海進・海退と時間要素)に起因しており、今日見られる生物多様性豊かな亜熱帯常緑広葉樹林の成立と、そこに息づく多種多様な動植物遺存種の生育や固有種の種分化は、大陸からの多くの動植物の渡来経過と多様な地形、次項で述べる地質・土壌等地史、地域特有の気候風土など様々な自然環境要素が複雑に絡み合い、相互に作用を及ぼした結果、もたらされたものと考えられている。このように、特異な自然環境を有する奄美群島は、世界的にも稀な普遍的価値がある特別な地域となっている。

      (注)ハドレー循環
        地球規模の大気の流れを通した熱輸送の大気現象の一つ。赤道付近で太陽から熱せられた大気が上昇気流となり、それに連動して南北周辺から湿度を含む風が集まり、収束してくることにより、一帯に活発な降水をもたらす。これを熱帯収束帯という。上空に昇った大気は、極側に移動しつつ亜熱帯付近で下降気流となり降りてくる。下降域に当たる地域は亜熱帯高圧帯といい、一般に乾燥していることが多く、サハラ砂漠などがこの位置にある。しかし、琉球列島は、既述のように世界的に見ても例外的な温暖多雨地域となっている。
     

    (2)地質及び土壌

    ア地質:奄美大島の地質は主に中生代の付加体(注)である岩石からなる。北部の笠利半島には前弧海盆堆積物、中部から東部にかけては白亜紀の付加体、また、西部にはジュラ紀の付加体である混在岩層の堆積物が分布している。
      徳之島は、北部・中部にある産地とその周囲は白亜紀の付加体と花崗岩類からなり、その周囲を取り囲むなだらかな地域は基盤岩や中期更新世に堆積したサンゴ礁複合堆積物(琉球層群)が分布している。


    (注)付加体
      プレートテクトニクス理論によると、地球の最外層部は、熱いマントルの上にある十数枚のプレートにより覆われており、マントル対流によって各プレートは一定方向に移動している。各プレート境界域は、海洋プレートが大陸プレートに押しつけられ(あるいは逆に引き離され)、その際に様々な影響を及ぼす(冷えて重くなったプレートが地球内部へ沈み込むと、それに伴い造山運動、断層形成、海溝の形成、マグマだまりからの火山噴火、地震発生などが見られる)。海洋プレートは海洋地殻とその下のマントルの一部からなり、海洋地殻は、海嶺で噴出した玄武岩溶岩の上に、深海堆積物や海山を載せている。海洋プレートは、マントル対流により徐々に移動しながら大陸地殻にぶつかって下に沈み込む。このとき、海溝にたまった土砂とともに大陸側に押しつけられ、一部がはぎ取られる。これを付加作用といい、はぎ取られた地質体を「付加体」という。日本列島は、いくつかの大陸と海洋のプレート境界に位置していることから、プレート沈み込みによる様々な影響を長い間受けてきた。
    (産業技術総合研究所 地質調査総合センター「絵で見る地球科学」より一部引用、加筆)

    イ土壌:奄美大島、徳之島地域では、赤黄色土壌のうち弱乾性赤黄色土が6割強。次いで乾性赤黄色土、適潤性赤黄色土となっている。これらの土壌は、概してA層が薄く、その下部も埴質で腐植土が乏しいため林木の生育環境としては、あまり良好とはいえない。なお、弱乾性赤黄色土の分布は、山腹中部から低山地にかけて出現しており、この土壌を適木とするスダジイ等の広葉樹やリュウキュウマツが生育しており、成長も比較的良好である(しかし、リュウキュウマツについては近年、奄美群島のほぼ全域にマツノザイセンチュウ病が蔓延し、枯損が拡がっている)。乾性赤黄色土(主に黄色土)は、各地の尾根付近の凸地に出現し、透水性、通気性ともに悪くスダジイ、イジュ等広葉樹が生育している。適潤性赤黄色土は、主に奄美大島の中央部にある水系付近の凹地で見られる程度で、分布は少なく、一部にスギが植林されている。

    (3)生態系

       奄美群島の森林は、概要でも触れたように固有種や分布限界の個体群が数多く生息し、独特な生態系を伴う貴重な森林である。
       中琉球を区切る境は、奄美群島の北、中琉球の北側境には、哺乳類、両生類・は虫類の境界ともなる渡瀬線(トカラ構造海峡:トカラ列島の小宝島と悪石島の間にある)がある。反対に南側境には、鳥類の境界ともなる蜂須賀線(慶良間海裂:久米島、慶良間列島の南側、宮古諸島との境にある)があって、それぞれ動物の生物地理区の境界となっている(これらの線は、海底地形を見ると深い谷になっており、区域境となった理由が類推できる)。
       中琉球の奄美群島は、亜熱帯と暖温帯の移行帯に存在する世界的にも珍しい地理的位置にあり、大陸島としての地形の形成過程とそれに伴う生物の渡来と進化によって、このような豊かな生物多様性が創出された。植物では北限種が132種、南限種が20種と北方系と南方系の生物が混在する貴重な移行地域となっている。また、動物では在来の食肉目が存在せず、ハブを食物連鎖の頂点とする独自の生態系がある。熱帯多雨林から暖温帯の常緑広葉樹林につながる世界的にも珍しい亜熱帯常緑広葉樹林が分布する。

       概要でも触れたように、このような多様な植生群からなる森林生態系の形成と、それに付随して多様な動植物が生息していること自体が、この森が世界的にも貴重な価値を有していることの証と言える。この地域の森林を適切に保全管理し将来に引き継いで行くことが、重要課題となっている。
    (以下、本文中に取り挙げた種名の後に希少種区分のランクを付記している。記載ランクの区分は、先に鹿児島県レッドリストランクを記載し、続いて環境省レッドリストランクを記載している。なお、ランク標記はローマ数字を用いるのが基本であるが、機種依存文字のため、ここでは便宜上算用数字( 1、2・・・)を用いた)

    ア植物相:奄美群島の森林は、主に常緑広葉樹が優先し、奄美大島の金作原、湯湾岳周辺、住用川上流の神屋一帯や川内川上流域、徳之島の天城岳、井之川岳、山京などに原生的な状態でまとまった自然林が存在する。また、亜熱帯の森林の特徴として、湯湾岳や井之川岳、天城岳などの山頂部の雲霧帯や谷筋などに着生植物の豊富な生態系が形成されている。着生する植物としては、コケ植物のイトゴケ類、シダ植物のリュウキュウヒモラン(1)・(1A)、アマモシシラン(準絶滅危惧)・(なし)、アマミアオネカズラ(1)・(1A)、ラン科のチケイラン(2)・(2)、キバナノセッコク、シコウラン(1)・(1B)、ツツジ科のヤドリコケモモ(1)・(1B)等が挙げられる。林床植物としては、シダ類のホソバカナワラビ、ウマノスズクサ科のフジノカンアオイ(2)・(2)、サトイモ科のアマミテンナンショウ(1)・(1B)、ラン科のアマミエビネ(1)・(1A)、トクノシマエビネ(1)・(1B)、タネガシマムヨウラン(2)・(1B)、菌従属栄養植物であるヒナノシャクジョウ科のルリシャクジョウ(1)・(なし)、ホンゴウソウ科のホンゴウソウ(1)・(2)等が挙げられる。
      それ以外の森林は、多くが過去に伐採された履歴を持つ二次林であるが、希少動植物の生息・生育も確認されているなど、原生的要素を残している。また、リュウキュウマツ林は、かつて盛んに植林が行われた箇所や伐採跡地に生育し、奄美大島の北部や常緑広葉樹林の外縁部、徳之島の中央部から北部にかけてまとまった分布が見られている。
       しかし、これらの森林では近年、マツノザイセンチュウ病による大規模な松枯れが発生しており、特に大径木の枯損が激しいことから、マツの現存量が減少し、枯損後のギャップでは亜熱帯常緑広葉樹の侵入木に置き換わりつつある。一方でリュウキュウマツは、全滅したわけではなく、道路のり面や林縁、裸地などの開けた箇所等でリュウキュウマツの幼齢木の発生、若齢林が更新しているのが島内至る所で確認されている。
      なお、主要な群集(楽)分布は、ギョクシンカ-スダジイ群集(奄美大島、徳之島の海抜高およそ100m以下の低山地、平地等に発達)、ケハダルリミノキースダジイ群集(奄美大島のスダジイ林の大部分を占め、海抜100~450mの範囲に分布)、アマミテンナンショウ-スダジイ群集(奄美大島、徳之島の海抜450m以上で湿度の高い谷沿いや凹地に発達)、オキナワウラジロガシ群集(徳之島の天城岳、丹発山、犬田布岳等によく発達、奄美大島では一部に発達したオキナワウラジロガシ群集が見られる)アマミヒイラギモチーミヤマシロバイ群集(亜高木層以下の群集で、湯湾岳、井之川岳の山頂などに形成され、中琉球を代表する風衝林)などがある。

    (A)ギョクシンカ-スダジイ群集
      奄美大島や徳之島の海抜高100m以下の低山地や平地に発達する群落で、高木層や亜高木層は、スダジイ、タブノキ、フカノキ、ホルトノキ、ヒメユズリハ、コバンモチ、モクタチバナ、サンゴジュ等によって構成され、低木層はヤマヒハツ、エゴノキ、クチナシ、サザンカ、コンロンカなどの常在度が高く、草本類はノシラン、ホウビカンジュ、シラタマカズラ、クワズイモ、カツモウイノデなどが主な構成種である。奄美大島・徳之島では、回復途上の二次林ないし潮風の影響を受けたシイ林が圧倒的に多い。

    (B)ケハダルリミノキースダジイ群集
      奄美大島のスダジイ林の大部分を占めるもので、海抜高100~450mの範囲に広く分布する群集である。高木層や亜高木層はスダジイ、イジュ、オキナワウラジロガシ、イスノキ、フカノキ、コバンモチなどによって構成され、低木層は、モクタチバナ、シシアクチ、タイミンタチバナ、サクラツツジ、ボチョウジ、モクレイシ、アデク、ヤマヒハツ等の構成種が多い。草本層は、ヒメアリドオシ、ヨゴレイタチシダ、コバノカナワラビ、ケハダルリミノキ、マルバルリミノキなどによって構成されている。高標高帯では若い二次林はギョクシンカ-スダジイ群集になる。

    (C)アマミテンナンショウ-スダジイ群集
      奄美大島、徳之島の海抜450m以上で、湿度の極めて高い谷沿いや凹地において発達する群落である。高木層はスダジイ、オキナワウラジロガシ、タブノキ、ショウベンノキ、フカノキ、アカミズキ、バリバリノキ、イスノキなど、低木層はムッチャガラ、ヒメヒサカキ、アデク、シシアクチ、ボチョウジ、アマシバなど草本層の発達は特に顕著でヒロハノコギリシダ、リュウビンタイ、ヤクカナワラビ、ヘツカシダなどのシダ植物とアマミエビネ、トクノシマエビネ、アマミテンナンショウ、フジノカンアオイによって構成される。草本層の発達は特に顕著でヒロハノコギリシダ、リュウビンタイ、ヤクカナワラビ、ヘツカシダなどのシダ植物と、アマミエビネ、トクノシマエビネ、アマミテンナンショウ、フジノカンアオイなどが密生している。

    (D)オキナワウラジロガシ群集
      徳之島の天城岳や丹発山、犬田布岳等によく発達した群落がある。奄美大島では、一部に発達した北限のオキナワウラジロガシ群集が見られる。高木層はオキナワウラジロガシ、イスノキ、フカノキ、カクレミノ、スダジイなどの優占度が高く、亜高木層や低木層にはモクタチバナ、タイミンタチバナ、アオバノキ、アカミズキ、ギョクシンカ、シマミサオノキ、マルバルリミノキ、シシアクチなど種数が多い。草本層はフウトウカズラ、リュウキュウツルコウジ、コウモリシダ、キノボリシダ、カツモウイノデ、などの優占度が高い。なお、丹発山のオキナワウラジロガシ林は大きな板根を持つことで知られている。

    (E)アマミヒイラギモチーミヤマシロバイ群集
      高木層はなく、アマミヒイラギモチ、ミヤマシロバイ、タイミンタチバナ、シバニッケイ、イヌガシ、シラキ、ムッチャガラ、マメヒサカキなどが混生する亜高木層が特徴的で、草本類は、ヘツカリンドウ(準絶滅危惧)・(なし)、ミヤビカンアオイ(1)・(1B)、トクノシマカンアオイ(1)・(2)、アマミフユイチゴ(2)・(なし)、アマミヒメカカラ(湯湾岳固有:(2)・(なし))、タカサゴキジノオ、ノシラン、ヤクシマスミレ(準絶滅危惧)・(なし)などが現れる。湯湾岳や井之川だけの山頂などに形成され、中琉球を代表する風衝林である。

    イ動物相:奄美群島には、天然記念物に指定されているアマミノクロウサギ、ルリカケス、アマミイシカワガエルなど中琉球の固有種が見られる。これは、300~600万年前に琉球内湖斜面が開き始め、トカラ構造海峡(渡瀬線)と慶良間海裂(蜂須賀線)が形成され、琉球弧が日本本土と台湾から隔てられたためだとされている。地理的隔離とともに、熱帯から温帯への移行帯に位置し、世界的動物分布の地理的移行帯として特徴付けられ、多くの南限種と北限種が生息している。
      なお、分類群(綱以下の分類群)ごとの主な特徴を以下に概説する。

    (A)哺乳類
      奄美群島に生息している哺乳類は、アマミノクロウサギ(1)・(1B)、ケナガネズミ(1)・(1B)、アマミトゲネズミ(1)・(1B)、トクノシマトゲネズミ(1)・(1B)、オリイジネズミ、ワタセジネズミ(準絶滅危惧)・(準絶滅危惧)、リュウキュウテングコウモリ(1)・(1B)、ヤンバルホオヒゲコウモリ(1)・(1A)などの中琉球固有種のほかに、リュウキュウイノシシ(徳之島では、絶滅の恐れがある地域個体群)、リュウキュウユビナガコウモリ、オリイコキクガシラコウモリ(2)・(1B)などが生息している。これらの哺乳類は、いずれも南西諸島に生息する生物多様性の豊かさを象徴する種であり、普遍的価値が高い貴重な種とされている。このほか、外来種として希少種の捕食が問題となっているフイリマングースなどが確認されている。
      以下、重要な種について、概要と最近の研究成果等について記載する。

      a)アマミノクロウサギ
      奄美大島と徳之島だけに生息するアマミノクロウサギは、ウサギ目ウサギ科ムカシウサギ亜科に属し、本亜科には13属含まれるが、本種の他、メキシコと南アフリカに生息する種の計3種しか現存せず、他は全て化石種とされる。クロウサギの生態は不明点が多いが、夜行性で警戒心が強い。巣は岩山の隙間の深い穴か土に穴を掘って作る巣の2タイプがあるとされる。巣穴入り口が急斜面にあるのは、毒蛇ハブの脅威からの対策とも考えられている。最近の遺伝的研究による系統解析の結果、奄美大島の個体群と徳之島の個体群の関係性について、奄美大島内に3個の集団が存在していること、徳之島のハプロタイプ※は、奄美大島のハプロタイプから分岐していることが分かってきている。また、徳之島で確認されている南北に分かれて生育する個体群については、生育する山域が南北に横断する道路や間にある農地などで隔てられていることから、急激な遺伝的多様性低下の要因として懸念されたが、遺伝子解析の結果、それぞれが数千年以前に遺伝的に分化した集団と判明したことから、その分化が短期間に生じた可能性は低いとされた。このため、南北双方の集団維持のために、生息地を人為的に連結する等の措置は慎重に扱う必要があるとされている。一方、近年、奄美大島で脅威となっているマングースやノネコ、ノイヌ等外来種の捕食などにより急減しているとされ、マングース防除事業やノネコ対策などが進められている。

       ※ハプロタイプ:複数の対立遺伝子のそれぞれについて、どちらの親から受け継いだ遺伝子かで分けたとき、片方の親由来の遺伝子の並びを意味する。この個々の遺伝子は、相同染色体の対になっている遺伝子をアレルと言い、ハプロタイプはアレルの組み合わせを言う。(日経バイオテク他HP掲載情報より一部引用)

      b)アマミトゲネズミ
      琉球列島の中琉球には、沖縄本島北部、徳之島、奄美大島の3島の原生的森林内に我が国固有の中型のネズミ、トゲネズミ属3種が生息し、島毎の固有種として分類されている(沖縄本島:オキナワトゲネズミ、奄美大島:アマミトゲネズミ、徳之島:トクノシマトゲネズミ)。トゲネズミは、スダジイなどの木の実を主食とするほか、昆虫類、カニなど甲殻類、カエル等も食べる雑食性とされ、外敵から身を守るトゲ状の体毛を持つ。ピョンピョンと跳ねて移動し、この能力により毒蛇ハブも避けられるなどが特徴である。これら3種の種分化については、オキナワトゲネズミが250万年前に分岐し、トクノシマトゲネズミとアマミトゲネズミがその後約100万年前に分岐した。これら3種が注目されているのは、基本的に哺乳類は、性染色体がXX/XY型で、雌がXX、雄がXYの二本ずつの性染色体を持つが、トゲネズミはそれぞれ性染色体、核型に違いが見られ、オキナワトゲネズミは性染色体のXX/XY型の両方を持つのに対し、奄美大島と徳之島の2種のトゲネズミは、性染色体のY染色体がない(染色体数も異なる)という点にある。2島のトゲネズミは、性染色体のY染色体がなく、雄も雌もX染色体1本しか持たないXO型しかないとされ、3島のトゲネズミは独自の進化を遂げた生物とされている。
      このトゲネズミもマングースやネコなどの外来生物の捕食による個体数急減が問題となっている。
      トゲネズミのほか多様な分類群に見られる琉球列島島嶼域の種分化は、大陸からの分離、分断等複雑な地史に由来し、それぞれの島嶼毎に隔離され生き残った陸生生物が独自に進化を遂げたものである。このことは、冒頭の概要等でも触れたように、琉球列島の生物多様性が、世界的にもまれな普遍的価値を有している所以である。


    (B)鳥類
      奄美群島で確認された鳥類は300種で、鹿児島県で記録された鳥類381種の79%、日本で記録されている633種の47%に相当する。鳥類の中で注目されているのが生息域が奄美群島に集中するルリカケス(2)・(なし)、アマミヤマシギ(1)・(2)、オオトラツグミ(1)・(2)の3種である。他にアカヒゲ(2)・(2)、オオストンオオアカゲラ(1)・(2)、カラスバト(準絶滅危惧)・(準絶滅危惧)など、国の天然記念物に指定されている鳥類も生息する。

    (C)両生類・は虫類
      奄美群島には、オビトカゲモドキ(徳之島)(1)・(1B)、アマミヤモリ(小宝島と奄美諸島固有種)、オキナワキノボリトカゲ(準絶滅危惧)・(2)、バーバートカゲ(2)・(2)、ハブ(奄美大島北限)、ヒャン(奄美大島)(準絶滅危惧)・(準絶滅危惧)、ハイ(徳之島)(準絶滅危惧)・(準絶滅危惧)、アカマタ(奄美大島北限)など13種の固有種もしくは固有亜種を含む20種の爬虫類が生息している。両生類では、アマミイシカワガエル(1)・(1B)、オットンガエル(1)・(1B)、アマミハナサキガエル(1)・(2)、イボイモリ(1)・(2)、シリケンイモリ(準絶滅危惧)・(準絶滅危惧)など7種の固有種もしくは固有亜種を含む11種の両生類が生息している。
      本分類群の内、特徴ある数種について記載する。
      a)オビカゲモドキとその仲間
      徳之島に生息するオビトカゲモドキは、沖縄本島に生息するクロイワトカゲモドキの仲間で、沖縄島周辺の各島、地域毎に生息する以下の5つの固有亜種の内の一つであり、サイズが最も小さい。久米島:クメトカゲモドキ、渡名喜島・阿嘉島・渡嘉敷島・伊江島:マダラトカゲモドキ、伊平屋島:イヘヤトカゲモドキ、沖縄島・瀬底島・古宇利島:クロイワトカゲモドキ、徳之島:オビトカゲモドキ。
      b)アマミイシカワガエルとその仲間
      イシカワガエルは、奄美大島と沖縄本島に生息し、全身が大小のいぼ状突起に覆われた大型のカエル。緑色の体色に、金色から金紫色の斑文が全身を覆う。奄美大島の個体は、金色斑文がより鮮やか。山間部の渓流源流付近、森林に生息する。当初、沖縄の個体群と同じ種として扱われていたが、カエルの形態、DNA分析、交雑実験などから別種とされた。餌は、ヤスデ、アリ、クモ類、サワガニ等地表徘徊性無脊椎動物など。
      c)アマミハナサキガエル
      ハナサキガエル類は、中琉球の沖縄島、奄美大島、徳之島、西表島、石垣島の森林内や沢周辺に生息し、跳躍力があり、地表徘徊性無脊椎動物を捕食する。奄美大島、徳之島にアマミハナサキガエル、沖縄島にハナサキガエル、西表島、石垣島にコガタハナサキガエルとオオハナサキガエルが、それぞれ固有種として分布している。これらは、琉球列島が大陸から分離し、分布していた祖先種が中新世後期に大陸から分断され、その後、鮮新世初期に中琉球集団と南琉球集団に分かれたと考えられている。また、西表島と石垣島に生息する2種は生息域が重なるところもあるが、生息環境でコガタがより奥地に、オオガタが下流域に生息し、生態的共進化を果たして共存、棲み分けをしているとされる。
      上記に例示した、哺乳類、両生・爬虫類の各種群は、海峡や島によって長期間孤立したことで、遺伝的分化を生じ、島や地域毎に形が少しずつ変化し固有種、固有亜種となっている。  

    (D)昆虫類
      奄美群島に生息する昆虫類は、アマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、マルダイコクコガネ、ヨツオビハレギカミキリ、アカボシゴマ、アマミサナエ、アマミトゲオトンボなどの奄美固有種、固有亜種を含む約2,500種が記録されているが、今後も未記載種や分布新記録種の発見が続くと予想され、実際には4,000~5,000種に及ぶのではないかと考えられている。

    (E)陸水魚類
      奄美大島に生息する陸水魚類は、228種が確認されており、奄美群島及び琉球列島で記録された272種の84%、日本で記録されている280種の80%に相当する。生物多様性保全上の重要なものとして注目されているのが、リュウキュウアユ、アカボウズハゼ、ヨロイボウズハゼなどであり、いずれも絶滅危惧1A類に指定されている。他に、国内移入種や国外移入種であるティラピア、コイ、カダヤシ、メダカ、ドジョウが同所的に生息していることから、ギンブナ、ミナミメダカ、ドジョウなどの在来の純淡水魚は激減している。

    8.モニタリング調査

      奄美群島森林生態系保護地域のモニタリング調査は、これまで、生態系保護地域として設定される以前の平成22年度に、2つの林木遺伝子保存林(神屋林木遺伝資源保存林、三京林木遺伝資源保存林のいずれも森林生態系保護地域に編入)に対し、森林調査(第1回目調査)が行われ、森林生態系保護地域設定(平成25年度)後 、平成27年度に2回目が実施され、計2回が行われている。
       調査プロットは、2島の各団地に分散するように設定されており、奄美大島に8プロット、徳之島で7プロットの計15箇所がある。
       平成22年度には、神屋林木遺伝資源保存林では、林冠層にスダジイ、イジュ、エゴノキ、オキナワウラジロガシ等の生育が確認され、林内には、イヌマキ、モクタチバナ等多くの中小径木が確認された。また、保存対象種(イジュ、スダジイ、イスノキ)の後継個体も十分な量が確認された。三京林木遺伝資源保存林においては、林冠層にスダジイ、オキナワウラジロガシ、イスノキ等の生育が確認され、林内には、スダジイ、イスノキ等の中小径木も多く見られた。保存対象種の後継個体も全種が確認された。これにより、いずれの保存林も保護林要件を満たし、今後も継続していくと評価された。
       平成27年度は、 上記の2林木遺伝資源保存林も取り込み、新たに森林生態系地域として保護林設定が行われた。モニタリング調査結果は、奄美大島8プロットのうち、1プロットのイスノキ群落を除き、残りは全てスダジイ群落であった。徳之島の調査プロットは、4箇所がスダジイ群落、2箇所がオキナワウラジロガシ群落、1箇所がアマミアラカシ-イスノキ群落であった。15箇所のプロット殆ど全てで、スダジイの大径木を含め、オキナワウラジロガシも確認され、一部のプロットでは、環境省RLで絶滅危惧1Aに指定されているアカハダコバンノキも確認された。風倒木の目立つプロットが一部見られたほか、徳之島では、外来種のシークァーサーが確認された。動物調査では、痕跡調査の結果、アマミノクロウサギの確認、林道上で幼獣の糞の他、リュウキュウイノシシの足跡も確認された。
       設定プロットは、琉球石灰岩、粘板岩、花崗岩等多様な表層地質に設定されていることから、設定プロットの多様性が評価された。固有種の盗採防止のため、巡視活動の重要性が指摘された。動物調査では、ノヤギ、ノネコ等外来種の森林生態系への影響が懸念された。このため、自動撮影調査の追加が望ましいとされた。
        なお、平成22年度には、上記のモニタリング調査の他、奄美大島の国有林全体に対して「希少野生生物保護林管理対策調査」が行われ、アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミ、オーストンオオアカゲラの4希少種について、生息状況調査も行われている。それによれば、アマミノクロウサギは、殆どの国有林で生息が確認された。アマミヤマシギは全体の確認数は少ないが、これは調査方法によると考えられた。オオトラツグミは、他種に比べて確認個体は少なかった。オーストンオオアカゲラは、定点調査による確認が有効とされた。これらについて、今後とも継続調査が必要とされた。
       また、全体の課題として、ノネコ、ノイヌ、マングース(近年防除事業進展の成果により在来種の回復も示されている。)の外来種対策が、重要との指摘がある。
       モニタリング調査は、現在、世界遺産地域科学委員会の審議が進められていることや専門家意見等も考慮し、基礎調査、モニタリング項目等について調査のあり方も含め、今後検討されていくものと思われる。

    9.法指定等

     水源かん養保安林、 奄美群島国立公園(特別保護地区、第1種特別地域)、史跡名勝天然記念物  

    10.取り扱い方針

    管理及び利用に関する事項

    (1)基本的事項

      奄美群島森林生態系保護地域に係る保護・管理及び利用に関する事項については、基本的には保護林設定管理要領(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた取扱方針に従うものとする。
      奄美群島森林生態系保護地域については、保護林設定後に保全管理計画が策定されており(平成28年3月)、保全管理・利用に関する具体的事項についても記載がある。ここでは、保全管理の考え方と重点事項について、以下に簡潔に記載する。
      同じ琉球列島に属し、将来、一体的に世界自然遺産地域として取り扱うこととなる「やんばる森林生態系保護地域」が、平成29年12月に新たに設定され、その後、同保護林の保全管理計画が平成31年3月に策定されている。これを受けて、奄美群島森林生態系保護地域の保全管理・利用に関する事項についても、将来、世界遺産地域となるとの想定のもとで、「やんばる森林生態系保護地域」で策定された保全管理計画の管理及び利用に関する事項の考え方については、世界遺産地域として登録後(令和2年7月に登録された)を想定した取組と整合性を持たせることとして、一部修正を加えたものが策定されている。
       また、奄美群島の森林生態系を後世に残すには、そこに生活する人々や観光等利用者、関係機関との合意形成が不可欠である。
       このため、人為による影響を最小限に抑えつつ、外来種等の影響や利用実態について定期的なモニタリング調査を継続時して行い、その結果を評価・検証し必要に応じて、対策を実施する順応的管理を行うこととしている。
       詳細は、保全管理計画本文に記載している「奄美群島森林生態系保護地域保全管理計画(WORD : 735KB)」(平成31年3月)。 
       

    (2)具体的事項

      ここでは、管理・利用に関する各島共通の方針と重点事項について概略を簡潔に記載する。
       奄美大島、徳之島には国内希少野生動植物種や国の天然記念物に指定されているアマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミをはじめとする貴重な野生生物種が数多く生息・生育している。
       また、希少なラン等の植物の盗掘や昆虫の密猟、野生化したヤギ、イヌ、ネコ(ノヤギ、ノイヌ、ノネコ)及び外来種の森林への侵入、アマミノクロウサギ、カエル等の地上徘徊性動物の交通事故などにより、一部の野生生物の生息・生育状況の悪化が懸念されている。
       また、観光利用者の増加や集中化に伴い、金作原などの一部地域では、オーバーユースによる森林生態系の劣化が懸念されている。特に夜間の無秩序な林道利用は、希少野生生物の生息地の質の低下に繋がることが懸念されている。
       奄美大島、徳之島の貴重な森林生態系を将来にわたり保全していくため、関係機関と連携し、人為による影響を最小限にし、外来種の影響や利用及び植生や気象条件の経年変化など定期的にモニタリングを継続実施することとしており、その結果について評価・検証、必要に応じて対策を実施する順応的管理を行うこととしている。
       特に、外来種等対策については、外来種の駆除や飼養動物の適切な飼育、盗掘・密猟等対策が重要となっていることから、関係機関、土地所有者、住民等と連携し、監視活動の強化や希少種モニタリング、希少種条例等に基づく適切な対策に取り組むこととされている。
       なお、森林生態系保護地域内には一部スギ人工林があるが、その取扱については、基本的には地帯区分毎の取扱方針を踏まえて、総合的に勘案することとしており、原則として、自然復元のポテンシャルを活かした方法で行うとされており、復元方法の検証に当たっては、有識者の助言を得ることとしている。
       また、利用については、レクリエーション活動、環境教育、調査研究、地域振興等の形で広く利用されているが、関係機関等との連携で、生態系へのインパクトを軽減する措置を講じつつ、利用と保護との調整を図ることとしている。一般観光客等による自然環境への影響や安全確保の観点から、原則として決められた歩道のみの利用とし、公道、貸し付け等の手続きが取られた管理主体が明らかなものに限られる。詳細は「保全管理計画」に記載。

       さらに、保全管理に関する事案については、世界遺産登録を見据え、関係省庁(環境省、林野庁、文化庁)、地域自治体の鹿児島県、沖縄県ほか関係市町村(2県12市町村)との連携や管理体制の確立、貴重な自然環境を人類共通の資産と位置づけ、よりよい形で後世に引き継ぐための管理方針「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地包括的管理計画」(概要にて既出)が策定されており、これに基づく具体的な施策実施が、重要となっている。
       このことから、本保護林の保全管理についても、包括的管理計画との整合を持たせつつ具体的対策を実施していくことが重要である。
     

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612