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関東森林管理局

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    固有森林生態系修復事業(外来種対策)

    固有森林生態系修復事業(外来種対策)

    小笠原諸島の国有林には、希少な野生生物(固有種)が生息、生育しています。
    しかし、人間により持ち込まれた、外来種により生息、生育域を奪われ、危機的状況にあります。
    これらの希少な野生生物を保全するため、関東森林管理局では、アカギ、モクマオウ、ギンネム等の外来植物を駆除し、小笠原の本来の森林生態系を取り戻すための固有森林生態系修復事業を実施しています。

    主な外来植物

    アカギ

    繫殖力が強く、伐採しても萌芽(脇芽)をだして再生し、なかなか枯れません。また、台風等で林内が明るくなると地中に埋もれている種子が一斉に発芽します。


    アカギトンネル アカギ アカギ

    モクマオウ

    大量の落ち葉で他の植物が芽生えないようにしてしまいます。

    モクマオウ


    ギンネム

    ギンネムは、荒廃地や崖地に侵入します。一度駆除しても、90年は発芽が可能とされる地中に埋もれた種子から発芽し、根絶に長期間かかります。

    ギンネム

     

    外来植物の駆除

    外来植物の駆除にあたっては、森林生態系保護地域修復計画を策定し、5年ごとに計画の見直しを行いながら、特に希少な固有種等が多い区域について優先順位をつけて計画的に実施しています。また、植生、昆虫、陸産貝類、鳥類等の専門をはじめ地元関係団体にも参加していただき、修復事業検討会を開催して、駆除方法の検討を行っています。

    外来植物を駆除するためにはいくつかの手法があり、外来植物の周辺の状況等を考慮して駆除手法を決定します。また、駆除前と駆除後のモニタリングを行いながら慎重に進めています。

    外来植物の駆除手法としては、特殊伐採、普通伐採、巻枯らし、抜き取り等、状況に合わせて使い分けます。

    外来種駆除方法



    薬剤注入による駆除

    限られた予算の中で効率k的に外来植物の駆除をい行うため、一般に市販されているの除草剤を使用した駆除が主流となっています。

    1.樹木にドリルで穴をあける
    2.除草剤を規定量注入する
    3.除草剤が流れ出ないようにコルク栓で蓋をする

    薬剤注入後は、土中に除草剤が流れ出ていないか、沢に除草剤が流れ出て水性生物に影響が出ていないかなどのモニタリングを実施しています。

    薬剤駆除 薬剤注入 薬剤注入

    モクマオウ薬剤駆除前
    モクマオウ薬剤駆除前

    モクマオウ薬剤駆除後
    モクマオウ駆除後

    特殊伐採

    伐採する木の下層に、希少な植生等があった場合、根元から伐採してしまうと下層植生を痛めてしまう危険性があることや、歩道の近くでは、薬剤注入をによる駆除を行うと、立ち枯れ木となり通行者に危険が及ぶことから、特殊伐採を行っています。
    特殊伐採は、ロープワークを使用して木の上に上り、枝先から伐採を行う手法で、特別な技術が必要です。

    特殊伐採

     巻枯らし

    樹木の幹回りの樹皮(形成層)を削る方法です。薬剤と比べると、枯れるまでに数年を要します。使用している薬剤は安全とされていますが、念のためダムの上流など、生活用水に関係のある場所で、採用している駆除手法です。

    アカギ巻き枯らし

    抜取り

    小さいものについては、抜き取りを行います。モクマオウやギンネムなどは小さくても抜くのが大変です。


    抜き取り

    薬剤噴霧

    ランタナ、アイダガヤ、シュロガヤツリなどの外来草本が広範囲に繁茂している箇所については、抜き取りによる駆除は困難ですので、エリアを絞って薬剤を撒布する手法を試験中です。

    薬剤噴霧

     

    植栽・播種

    外来植物を駆除した後に、新たな外来種が入ってくる場合が多いことから、在来種の苗の植栽や種の播種(種まき)を行い、外来種の繁茂を抑える試みをしています。
    元々外来種しかなかった場所では、駆除後も新たな外来種が入ってくる場合多いことから、、在来種の苗の植栽や種の播種は有効な手段です。
    ただ、ネズミにより種子や苗木の食害が多いことから、ネットを取り付けや、ベイトステイションによるネズミ対策が欠かせません。

    タコノキの実の播種(ネズミ食害外対策のネット設置)植栽・播種

    タコの実播種

    在来種モモタマナの植栽

    苗木植栽

    事前・事後モニタリング

    外来植物の駆除にあたっては、外来植物の駆除前、駆除後の変化や薬剤の影響がないか等を調べるためにけり継続的にモニタリングを実施しています。

    外来種駆除の課題

    外来種だからといって、一度に駆除してよいわけではありません。
    一度に駆除してしまうと、光が急激に林内に差し込んだことにより、乾燥が起こり、日陰を好む植物や陸産貝類などに大きな影響を与えてしまいます。急激な環境の変化は、生態系に大きな影響を与えてしまいます。
    また、種間相互作用(互いのい種の関係性)を考慮して駆除の順番等を判断する必要があります。
    例えば、
    ノヤギを駆除したらノヤギが食べていた外来種のギンネムが増えた、モクマオウを駆除したら下層にあった外来種のイヌホウズキが増えた、
    さらに、外来種であってもすでに小笠原の生態系に取り込まれており
    例えば
    希少な鳥類が外来種のモクマオウに巣を作っている、希少な鳥類が外来種の実を食べている、といったこともあり、一概に外来種だから駆除してよいということではなく、モニタリングを行いながら総合的に判断して慎重な駆除を行っています。
    また、外来種は人が近づけない崖地にも広がっており、こうした箇所の駆除方法も課題となっています。

    お問合せ先

    小笠原諸島森林生態系保全センター

    担当者:専門官
    ダイヤルイン:04998-2-3403