第1部 特集 第4節 木材利用と再造林をつなぐ取組(2)
(2)持続性の確保に向けて木材利用と再造林をつなぐ取組
(木材取引における合理的な価格形成)
持続性が確保された国産材に対する期待が高まる一方で、素材価格及び山元立木価格は昭和55(1980)年をピークとして長期的に下落してきており、令和3(2021)年には輸入木材の不足等による国産材の製材品価格の高騰に伴って上昇したものの、その後再び下落している(資料 特-32)。造林初期費用が立木販売収入を上回り、主伐後の再造林が進まないといった状況が続くこととなれば、持続的な国産材供給や公益的機能の発揮に影響が及ぶことが懸念される。
森林資源や木材利用の持続性を確保していくためには、川下の国産材需要を高めることや川上・川中の各段階における生産性向上に向けた取組を進めていくことにより、適切な利益を確保していくことが重要である。川上における素材生産や造林の省力化・低コスト化等の取組に加えて、川中においても、これまでに製材・合板工場の大規模化・集約化が進められ、製品生産の効率化が図られてきているが、更なる生産性向上や、付加価値向上などにも取り組んでいくことが求められる。
また、木材取引においては、住宅生産者等の木材利用事業者の価格決定力が高い傾向にあるが(資料 特-33)、森林の育成において植栽から木材の生産に至るまでには一般的に50年以上の長期間がかかることなどから、価格決定の際に森林育成コストが意識されている割合は低位にとどまるのが現状である(資料 特-34)。
このため、持続可能な林業・木材産業を実現し、再造林を進めるためには、川上から川下までの関係者が再造林を含む森林の育成コストへの理解を深めた上で、価格が形成されることが重要である。


(再造林を担保する木材取引に向けた取組)
持続可能な木材利用に向け、再造林が可能となる価格で木材を取引する協定を締結するなど、川上から川下までの関係者が一体となって取り組む先行事例もみられる。
例えば、令和5(2023)年6月には、ウイング株式会社、佐伯広域森林組合、ウッドステーション株式会社、佐伯(さいき)市の4者が都市(まち)の木造化推進法に基づく建築物木材利用促進協定を締結し、伐採、再造林、育林コストを織り込んだ水準で木材の取引価格を設定した。これにより、再造林に関わる費用や負担を透明化し、その応分の責任を取引関係者で相互負担する仕組みとなっている(*52)。
また、一般社団法人国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会では、持続的な森林経営に向けてオープンな立木価格の形成を目指す「立木取引システム」について、試行的な運用を経た上で、令和8(2026)年2月から本格的な取組を開始している(事例 特-2)。
事例 特-2 持続性の確保された木材流通のための立木取引システム
一般社団法人国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会は、持続性が確保された木材の流通のため、令和6(2024)年12月から令和7(2025)年3月までの間、「立木取引システム」をインターネット上に開設し試行的な運用を行うとともに、令和8(2026)年2月から取組を再開し、出品者、買受者の公募を開始している。
同システムでは、持続的に経営される森林のみを対象として、インターネット上で立木の売買を行うことができる。具体的には、森林所有者が伐採後の再造林や保育を実施することを条件に、立木の出品を受け付けている。出品に当たっては、再造林や保育に必要な経費を含めた持続可能な林業経営が可能となる価格を最低希望価格として提示することで、森林資源の持続性を確保することとしている。
同システムを通じて、出品者は再造林等が可能な価格で立木を販売することができ、買受者は持続性が確保された木材をオープンな場で購入することで、森林の持続的な経営への貢献をPRできる。
(*52)具体的な取組内容については、「令和5年度森林及び林業の動向」第3章第2節(2)の事例3-2(137ページ)を参照。
(木材の適正取引の推進に向けた取組)
サプライチェーンの各段階で適切な価格交渉が行われ、適正な木材取引が行われることが、林業・木材産業を持続可能な産業とすることにつながる。我が国全体としても、価格転嫁・取引適正化を進めることが必要不可欠となっている中、林野庁においても取引ルールの周知・徹底を図るとともに、令和7(2025)年11月にサプライチェーン全体の取引の適正化に向けた「林業・木材産業における適正取引推進ガイドライン」を策定し、普及に努めている。本ガイドラインにおいては、取引に当たり、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独占禁止法)や「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(中小受託取引適正化法)に関して問題となり得る事例や留意すべき点、望ましい取引の在り方等について整理している。また、業界団体による本ガイドライン等を踏まえた自主行動計画の策定を促進することで、業界全体での適正取引を推進していくこととしている(資料 特-35)。
また、川上から川下までの幅広い関係者が参加する「国産材の安定供給体制の構築に向けた需給情報連絡協議会」において、木材の価格形成に関する理解の醸成等を図っている。


(再造林支援のための基金等)
再造林を直接担う造林事業者に加えて、素材生産事業者、木材流通事業者、木材加工事業者等が連携して、森林所有者が負担する再造林費用の支援を行うなどの基金等の設立の動きが広がっている。これらの基金等は、道県や市町の単位で地域の関係者が主体となった取組が多く、令和7(2025)年度にも滋賀県、高知県で新たに創設され、令和7(2025)年度末時点で、全国20道県で30の再造林支援の基金等が設立されている(*53)(資料 特-36)。木材の購入者側も含め、関係者が再造林を自らの問題として捉えて資金を拠出することで森林所有者の負担軽減を図っており、再造林促進の効果が期待できる。
このほか、各地域の実情に即して、地方公共団体が森林整備等を主な目的として導入している住民税の超過課税や、森林環境譲与税を財源として、森林所有者等の再造林費用の負担軽減を行う取組もみられる(事例 特-3)。
事例 特-3 栃木県における超過課税を活用した再造林支援等の取組
栃木県では、県民全体の理解と協力の下で、森林を守り育て次の世代に引き継いでいくため、平成20(2008)年度に住民税の超過課税として「とちぎの元気な森づくり県民税」を創設し、森林整備等の財源として活用している。
具体的には、本格的な利用期を迎えた人工林について森林資源の循環利用を進めるため、主伐後の地拵(ごしら)え、植栽、下刈りに対して支援するほか、植栽した苗木への忌避剤の散布等に対して支援しており、再造林や獣害対策等に伴う森林所有者の費用負担の軽減に効果を上げている。また、境界等が不明な森林の解消を図るため、森林組合等による地籍調査への支援等も併せて実施している。
さらに、県の森林環境譲与税を活用して、森林経営管理制度等が円滑に運用されるよう市町村職員を対象とした研修会等を開催するなど、両税を活用した取組を一体的に進めることによって、森林の公益的機能の持続的な発揮に貢献している。
(*53)林野庁整備課調べ。
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