第1部 第1章 第3節 森林保全の動向(3)
(3)森林における生物多様性の保全
生物多様性の保全に関する国際的な取組は、生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)の下で進められており、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。この中で、2030年までに、生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとるとの目標が掲げられており、この考え方は2021年のG7の合意文書において「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と呼ばれている。また、その具体的な目標の一つとして、陸と海のそれぞれ少なくとも30%を保護地域(*63)及び保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域(OECM(*64)により保全する「30by30目標」等が位置付けられている(資料1-25)。
我が国においては、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択を受けて、令和5(2023)年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定され、令和12(2030)年に向けた目標として、ネイチャーポジティブの実現を掲げている。
また、30by30目標を契機として、令和5(2023)年4月から「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する仕組みが開始され、令和7(2025)年4月には、自然共生サイトを法制化する「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(以下「地域生物多様性増進法」という。)が施行された。同法に基づき、ネイチャーポジティブの実現に向けて、企業等による地域における生物多様性の増進のための活動計画(増進活動実施計画等)を国が認定しており、令和8(2026)年3月時点で367件が認定を受けている(事例1-8)。
事例1-8 地域資源の活用と生物多様性保全に貢献する自然共生サイトの取組
東急不動産ホールディングス株式会社(東京都渋谷区)では約660haの広大な敷地を有する東急リゾートタウン蓼科(長野県茅野(ちの)市)において、森林経営計画に基づく森林管理の実施や、希少種を含む動植物のモニタリングを通じて、生物多様性の保全に取り組んでいる。令和6(2024)年2月に自然共生サイトの認定を受け、さらに令和7(2025)年9月には地域生物多様性増進法に基づく増進活動実施計画の認定を受けている。
東急リゾートタウン蓼科の森林は、カラマツを主体とした人工林やミズナラ等の落葉広葉樹林により構成されており、人工林については間伐の実施により林床植生の育成を図るとともに、落葉広葉樹林については自然の推移に委ねることを基本として保全を図っている。間伐材については、建材や家具、バイオマスボイラーの燃料として、同リゾートタウン内での活用に取り組み、地域資源の地産地消も実現している。
同社では、引き続き地域資源の積極的な活用による地域経済への貢献と生物多様性の保全を図っていくこととしている。
林野庁では、針広混交林化、長伐期化等による多様な森林づくりを推進するとともに、国有林野においては「保護林」及び「緑の回廊」の設定等を通じて、原生的な森林生態系の保護・管理等を実施している。また、治山事業においても、現地の実情に応じて、郷土種による緑化や治山施設の改良等により、生物多様性保全の取組を行っている。
さらに、林業生産活動においても、生物多様性を確保していくことが重要となっていることから、令和6(2024)年3月に、生物多様性を高めるための林業経営の在り方を示すことを目的として、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」を取りまとめ、生物多様性の保全に一層配慮した具体的な森林管理手法を示した。令和7(2025)年3月には、森林経営計画の作成者が生物多様性保全の取組を計画に任意で記載できるよう、森林経営計画の運用見直しを行い、同指針の実効性を高める取組を促進している。また、森林整備事業の実施に当たっても、本指針に基づき森林の生物多様性保全に資する取組の推進に努めることとしている。
(*63)陸域については自然公園、自然海浜保全地区、自然環境保全地域、鳥獣保護区、生息地等保護区、近郊緑地特別保全地区、特別緑地保全地区、保護林、緑の回廊、天然記念物、都道府県が条例で定めるその他保護地域。
(*64)Other Effective area-based Conservation Measuresの略。
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