第4章 国有林野の管理経営












1.国有林野の役割
国有林野は、森林面積の約3割を占め、国土の保全、水源の涵養等の国民全体の利益につながる公益的機能を発揮
(1)国有林野の分布と役割
➢ 国有林野(758万ha)は、我が国の国土面積の約2割、森林面積の約3割を占め、奥地脊梁山地や水源地域に広く分布しており、国土の保全、水源の涵養等の国民全体の利益につながる公益的機能を発揮

(2)国有林野の管理経営の基本方針
➢ 国有林野は重要な国民共通の財産であり、国有林野事業として一元的に管理経営
➢ 2023年12月に、2024年4月から2034年3月までの10年間を計画期間とする新たな管理経営基本計画を策定



2.国有林野事業の具体的取組
(1)公益重視の管理経営の一層の推進
多様な森林の育成、治山対策、生物多様性の保全等、公益重視の管理経営を一層推進
➢ 国有林野を、重視すべき機能に応じて「山地災害防止」「自然維持」「森林空間利用」「快適環境形成」「水源涵養」の5つのタイプに区分し管理経営
➢ 国有林野は公益的機能を発揮する上で重要な森林が多く、約9割が保安林に指定。治山事業により荒廃地の整備や災害復旧等を実施
➢ 複層林への誘導や針広混交林化などにより多様な森林を育成するほか、林地保全や生物多様性保全に配慮した施業を実施。また、中⾧期的な森林吸収量の確保・強化に向け、主伐後の再造林等の森林施業を推進
➢ 生物多様性の保全を図るため、「保護林」や「緑の回廊」を設定。また、我が国の世界自然遺産の陸域の86%は国有林野であり、そのほとんどを「森林生態系保護地域」に設定し厳格に保護・管理
➢ 希少な野生生物の保護、シカ等の野生鳥獣による森林被害への対策等を実施


事例 令和6年7月25日からの大雨における治山施設の効果
➢ 秋田県湯沢市の峠の沢では、2018年の豪雨により渓流が荒廃したため、秋田森林管理署湯沢支署は下流の国道・鉄道等の保全に寄与する復旧治山工事を実施し、2基の治山ダムを設置
➢ 令和6年7月25日からの大雨では北日本を中心に土砂災害等の被害が発生。秋田県内でも77か所で山地災害が発生する中、峠の沢では、2基の治山ダムが土砂流出を抑制するなど効果を発揮し、下流の国道や鉄道等への被害が防止
(2)森林・林業施策全体の推進への貢献
民有林への技術普及、木材の安定供給等により森林・林業施策の推進に貢献
➢ 「新しい林業」の実現に向けて、造林の省力化や低コスト化等に資する技術の実証や事業での実用化により効率的な森林施業を推進するとともに、民有林関係者を含めた森林施業に関する現地検討会の開催を通じて、民有林への普及・定着を推進
➢ 効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、国有林野の一定区域において、公益的機能を確保しつつ、一定期間、安定的に樹木を採取できる権利を民間事業者に設定する樹木採取権制度を推進
➢ 製材・合板工場等の需要者と協定を締結し、山元から木材を直送する「システム販売」(2023年度は国有林からの素材販売量の57.6%)等を通じて、地域における木材の安定供給体制の構築に貢献
➢ 地域における施業集約化の取組を支援するため、民有林と連携して167か所に「森林共同施業団地」を設定し、民有林野と国有林野を接続する路網整備や協調出荷等を実施
(3)「国民の森林(もり)」としての管理経営等
フィールド提供や観光資源としての活用等、国民に開かれた管理経営を推進
➢ 森林環境教育や森林(もり)づくり等に取り組む多様な主体に対して、「遊々(ゆうゆう)の森」、「ふれあいの森」、「木の文化を支える森」、「法人の森林(もり)」等を設定し、フィールドを提供
➢ 農林業を始めとする地域産業の振興等に貢献するため、地方公共団体や地元住民等に対して国有林野の貸付けを実施
➢ 「レクリエーションの森」については、地域関係者と連携して管理運営。そのうち、特に観光資源としての潜在的魅力がある93か所を「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」として選定し、標識類等の多言語化や施設修繕などの環境整備、ホームページやSNS等での情報発信を重点的に実施

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