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第3章 木材需給・利用と木材産業

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1.木材需給の動向

(1)世界の木材需給の動向

世界の産業用丸太消費量はおおよそ20億m3で推移

➢ 世界の産業用丸太消費量は、近年おおよそ20億m3で推移し、2023年は前年比4.4%減の19億3,062万m3

➢ 世界の産業用丸太輸入量は2023年は前年比13.2%減の1億268万m3。最大の輸入国は中国で、世界の輸入量に占める割合は37.0%


(2)我が国の木材需給の動向

2023年の我が国の木材需要量、国産材供給量は共に減少したものの、木材自給率は43.0%

➢ 木材需要量は、燃料材の需要が増加したものの、建築用材等の需要が減少した結果、2023年は前年比5.9%減の8,004万m3

➢ 国産材供給量は、我が国の森林資源の充実等により2002年を底に増加傾向であったが、2023年は前年比0.4%減の3,444万m3

➢ 木材輸入量は、燃料材が増加したものの、丸太・製品が共に減少した結果、2023年は前年比9.7%減の4,559万m3

➢ 木材自給率は、木材輸入量の減少幅に対して国産材供給量の減少幅が抑えられたことから、2023年は前年比2.3ポイント上昇し43.0%。建築用材等の自給率は前年比5.8ポイント上昇し55.3%


(3)木材価格の動向

2024年の木材価格は2021年のピーク時からは低下

➢ 2024年の木材価格は、製品・素材(丸太)ともに、2021年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)時から下落傾向。国内企業物価指数が上昇している中ではあるが、価格上昇前の2020年よりも高い状況


(4)違法伐採対策

川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等の義務付け等を内容とする改正クリーンウッド法が2025年4月に施行

➢ 2017年に施行されたクリーンウッド法(正式名称:合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)により、合法性の確認等の措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、登録木材関連事業者として登録。登録件数は729件(2025年3月末時点)。第一種登録木材関連事業者によって合法性が確認された木材は約3,600万m3で、2023年木材需要量の約4割

➢ 川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等の義務付け等を内容とする改正クリーンウッド法が2023年4月に成立し、2025年4月に施行。円滑な施行に向け、説明会・研修等における制度の周知のほか、事業者による合法性確認の取組に対する支援やシステム整備等を実施


2.木材利用の動向

(1)木材利用の意義

木材利用は、(ア)炭素の貯蔵、(イ)エネルギー集約的資材の代替、(ウ)化石燃料の代替の3つの面で地球温暖化防止に貢献

➢ 森林から搬出された木材を建築物等に利用することにより、森林が吸収した炭素を⾧期的に貯蔵することが可能。木材は製造・加工時のエネルギー消費が他資材よりも比較的少なく建築に係る排出削減に貢献。さらに、建築用材等としての利用後も化石燃料の代替とすることが可能

➢ こうした意義は、都市の木造化推進法(正式名称:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)に規定されるとともに、循環型社会形成推進基本計画(2024年8月閣議決定)や地球温暖化対策計画(2025年2月閣議決定)にも反映

➢ 木材には調湿作用や高い断熱性があるほか、生理・心理面に好影響

➢ 我が国は国際社会において、持続可能な木材利用の重要性・必要性について発信・共有。2023年の「G7広島サミット」等において、「持続可能な森林経営と木材利用の促進へのコミット」等が盛り込まれた成果文書が採択

循環利用のイメージ

(2)建築分野における木材利用

建築用木材の需要の大部分は低層住宅分野。非住宅・中高層建築物の木造化・木質化も進展。「都市(まち)の木造化推進法」等により更なる木材利用を後押し

建築分野における木材利用の概況

木材の利用の促進について

➢ 着工建築物(※)の床面積ベースでみると、低層住宅(1~3階建て)の木造率は80%を超えるが、低層非住宅建築物及び中高層建築物(4階建て以上)の木造率は低位。住宅(木造軸組工法)における国産材の使用割合は約5割

➢ 建築用木材の需要の大部分を占める低層住宅分野において、国産材の利用を拡大していくことが重要。同時に、人口減少等により新設住宅着工戸数が⾧期的には減少していく可能性を踏まえると、非住宅・中高層建築物での木造化・木質化を進め、新たな木材需要を創出することが重要

(注)本節における国土交通省「建築着工統計調査」に関する数値は、2025年1月31日に公表された統計情報に基づくもの。



住宅分野における木材利用の動向

➢ 住宅に用いられる木材製品については、寸法安定性や強度等の品質・性能が求められており、人工乾燥材の割合が上昇

➢ 大手住宅メーカーでは、寸法安定性の高い集成材を多く使用する傾向がある一方、柱材等において輸入集成材からスギ集成材等へ転換する動きがみられ、一戸当たりの国産材使用割合が上昇。工務店では、部材によらず国産材製材の使用割合が比較的高い傾向

➢ 林野庁では、素材生産者や製材業者、木材販売業者、大工・工務店、建築士等の関係者が一体となって消費者の納得する家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進

非住宅・中高層建築物における木材利用の動向

建築物木材利用促進協定

➢ 非住宅・中高層建築物に関しては、建築基準の合理化が図られるとともに、製材やCLT、木質耐火部材等の技術開発が進展。木材を構造部材等に使用した10階建てを超える先導的な高層建築等の例も出現

➢ ウッド・チェンジ協議会での検討、都市(まち)の木造化推進法による建築物木材利用促進協定の締結(国:25件、地方公共団体:146件)など、都市の木造化・木質化に向けた官民挙げた取組を実施

➢ 建築物の木造化・木質化に関する国の支援事業・制度等を一元的に案内する窓口である「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」を木材利用促進本部事務局に設置

➢ ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、建築物への木材利用の効果に係る評価項目・評価方法をまとめた「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」を2024年3月に作成・公表


公共建築物等における木材利用

➢ 2023年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は14.8%、うち低層は30.6%

➢ 都道府県ごとでは、低層の公共建築物の木造率について1~2割と低位な都府県がある一方、5割を超える県も存在

➢ 大規模災害後に木造応急仮設住宅を速やかに供給するため、全国で災害協定の締結が進展。令和6年能登半島地震では、⾧屋型の木造応急仮設住宅のほか、戸建風の木造のものが建設


(3)木質バイオマスの利用

新たなマテリアル利用に向け開発を推進。エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加

木質バイオマスの新たなマテリアル利用

➢ 2024年8月に閣議決定された循環型社会形成推進基本計画において、木材については、炭素の貯蔵や化石資源の利用抑制に資することから、建築用材等の利用に加え、改質リグニン等の木質系新素材への活用を進めることが明記

➢ 化石資源由来のプラスチックを代替する改質リグニンの製品開発を推進。SBIRフェーズ3基金事業「農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業」を活用し、愛媛県⿁北町でスタートアップ企業が行う大規模製造技術実証を支援

➢ セルロースナノファイバー(CNF)については、製造設備が各地で稼働しており、食品、輸送機器部品等に使用。森林資源の豊富な中山間地域に適した規模で製造・利用する技術の開発を支援してきており、木材保護塗料が製造・販売

木質バイオマスのエネルギー利用

➢ エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加し、2023年における燃料材の国内消費量は前年比17.9%増の2,047万m3、うち国内生産量は同10.6%増の1,132万m3

➢ 再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度やFIP制度により木質バイオマス発電施設が各地で稼働

➢ 燃料材の安定供給に向けて、全木集材による枝条等の活用や林地残材の効率的な収集・運搬システムの構築等を支援

➢ 木質バイオマスの熱利用におけるエネルギー変換効率は80%以上と高効率であり、積極的な熱利用が必要。地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築を推進


(4)消費者等に対する木材利用の普及

「木づかい運動」「木育(もくいく)」等により木材利用の意義を発信

➢ 一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開。都市(まち)の木造化推進法で10月を「木材利用促進月間」として位置付け、木材利用の意義等を情報発信

➢ 「ウッド・チェンジロゴマーク」や「木づかいサイクルマーク」を企業等に使用してもらうことにより消費者等の認知度を向上させ行動を促進。このほか、「Japan Wood Label」及び「Wood Carbon Label」のロゴマークを定め、製品等における国産材の使用状況や炭素貯蔵量を可視化

➢ ⾧谷川町子美術館の協力の下、サザエさん一家に「森林(もり)の環(わ)応援団」を委嘱。森林資源の循環利用の普及啓発に向け、イベントやSNSを通じた情報発信等を実施

➢ 「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見できる製品や取組等を表彰

➢ 子供から大人までが木に触れつつ木の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」を推進


(5)木材輸出の取組

木材輸出額は近年増加傾向。2024年は538億円

➢ 木材輸出額は近年増加傾向。2024年は前年比6.5%増の538億円

➢ 品目別にみると丸太が52.5%と最も多く、その約9割が中国へ輸出され、こん包材、土木用等に利用。また、米国向けの製材は、主にフェンス材に利用

➢ 製材・合板を輸出重点品目とし、丸太中心の輸出から、付加価値の高い製品の輸出への転換を促進

➢ 輸出に取り組む産地の育成、相手国の建築士等を対象にした木造技術講習会の開催等の取組を支援。また、(一社)日本木材輸出振興協会では、海外展示会等への出展、セミナー等を通じた販売促進活動、米国への製材輸出に向けた性能検証等を実施


3.木材産業の動向

(1)木材産業の概況

木材・木製品製造業の付加価値額は近年増加傾向

➢ 木材・木製品製造業の付加価値額は、近年増加傾向で推移し、2022年は1兆1,926億円


(2)木材産業の競争力強化

木材産業における国際競争力や地場競争力の強化に向けた取組が進展

➢ 国際競争力の強化に向け、品質・性能の確かな製品を低コストで安定供給していくため、製材・合板等の工場において大規模化・集約化が進展

➢ 中小製材工場等の地場競争力の強化に向け、多品目の製品を生産する取組や、地域の素材生産業者、工務店等の関係者の連携による特色ある取組等を支援

➢ 品質・性能の確かなJAS構造材の供給に向け、JAS構造材の生産体制の整備の支援、「JAS構造材活用宣言」を行う建築事業者の見える化、JAS構造材の利用実証の支援、製材工場等におけるグレーディングマシン等導入の支援を実施

➢ 原木の安定供給体制の構築に向け、川上と川中の安定供給協定の締結等を推進

➢ 国産材の供給力強化に向け、生産性の向上や国内人材の確保の取組を推進。また、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる特定技能制度の対象分野として木材産業分野の追加が決定し、2024年9月に運用開始

➢ 労働災害防止に向け、専門家による安全パトロールや研修、製材工場等の「安全診断・評価マニュアル」の作成等を支援


(3)国産材活用に向けた製品・技術の開発・普及

国産材の活用に向けた新たな製品・技術の開発・普及を推進

➢ 今後出材の増加が見込まれる大径材に対応した木取り等、製材や加工、乾燥の技術の開発・普及を支援

➢ 非住宅・中高層建築物への木材利用拡大に向け、「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」を策定し、標準的な木造化モデルの作成・普及やCLTパネル等の寸法等の標準化等を推進。また、木質耐火部材の技術開発等が進展

➢ 低層非住宅建築物の木造化に向け、一般流通材で大スパンを実現できる構法の開発・普及が進展。また、各地域での拡大が期待できる4階建ての事務所及び共同住宅について、コスト・施工性等の面で高い競争性を有し、広く展開が期待できる構法等の普及を推進

➢ 内装・家具等における需要拡大に向け、国内広葉樹等を活用した技術・製品の開発や普及・販売が進展


(4)木材産業の各部門の動向

製材業、集成材製造業、合板製造業では国産材の利用割合が⾧期的に上昇傾向

(ア)製材業

➢ 製材品の出荷量は近年ほぼ横ばいで推移。2023年は前年比7.4%減の797万m3。原木入荷量の81.5%が国産材


(イ)集成材製造業

➢ 国内での集成材の生産量は、2023年には前年比1.0%増の168万m3であり、用途別では構造用が大半。国内の集成材生産量における国産材割合は45.9%で、⾧期的に上昇傾向

➢ 集成材の製品輸入は65万m3で、集成材供給量全体に占める割合は28.0%


(ウ)合板製造業

➢ 普通合板の生産量は、2023年には前年比17.2%減の253万m3であり、用途別では構造用が大半

➢ 合板への国産針葉樹の利用が拡大し、2023年には国内の合板生産における国産材割合は94.5%に上昇

➢ 製品輸入を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は52.3%で上昇傾向


(エ)木材チップ製造業

➢ 2023年の木材チップ(燃料用チップを除く。)の生産量は前年比0.3%減の526万トン。原木以外に工場残材、解体材・廃材等から生産。一方、木材チップの輸入量は2023年には前年比1.7%減の1,112万トン


(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業

➢ 2023年のパーティクルボードの生産量は前年比5.0%減の94万m3、繊維板の生産量は前年比13.2%減の62万m3


(カ)プレカット製造業

➢ 木造軸組工法におけるプレカット加工率は2023年には95%まで上昇


(キ)木材流通業

➢ 2023年の製材工場等に向けた国産原木の流通において、素材生産業者等から製材工場等へ直接販売されたものは41.8%、木材市売市場等を経て販売されたものは31.0%、木材販売業者等を経て販売されたものは27.3%



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