第5章 東日本大震災からの復興



1.復興に向けた森林・林業・木材産業の取組
被災した海岸防災林等の大部分が復旧・再生。復興に向けて森林・林業・木材産業が貢献
(1)東日本大震災からの復興に向けて
➢ 2011年に発生した東日本大震災では、強い揺れや大規模な津波による被害に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故による被害が発生
➢ 2011年からの10年間を復興期間として取組を推進。2021年3月に「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」を閣議決定。2024年3月に基本方針の見直しを行い、帰還困難区域を含め森林・林業再生を進めるため、関係者との調整など必要な対応を進めることを追記。現在、帰還困難区域の森林整備の再開に向け、作業者の安全・安心の確保の方策や整備の必要箇所の把握など、林野庁の対応方向を福島県、市町村等へ説明し、意見交換を実施
(2)森林等の被害と復旧・復興
➢ 林地荒廃等の被害箇所については、国が災害復旧等事業を採択した591か所全てで事業が完了
➢ 津波により被災した海岸防災林については、 2025年3月末時点で要復旧延⾧約164kmのうち、約163kmで植栽等の工事が完了し、健全な生育を促す保育作業を継続的に実施。福島県における植栽未完了部分については、関係機関と調整しつつ、完了に向けて事業を継続

事例 みやぎ海岸防災林における保育管理と伐採木の有効活用
➢ 宮城県では、被災した海岸防災林のうち民有林全域の植栽が完了。下刈りや伐採などの保育管理を実施
➢ 保育管理のコストと伐採木の有効活用が課題であることから、宮城県は廃棄処理していた伐採木を木質バイオマスとして利活用する取組を開始。2024年度に譲渡会を開催し、希望する団体や個人に伐採木を譲渡
(3)復興への木材の活用と森林・林業・木材産業の貢献
➢ 木質バイオマスを含む再生可能エネルギーの導入を促進。各県で木質バイオマス関連施設が稼働
➢ 福島再生加速化交付金を活用し整備した福島高度集成材製造センター(FLAM)では、県産材を活用した集成材を製造
2.原子力災害からの復興
しいたけ等原木となる広葉樹林の再生に向けて「里山・広葉樹林再生プロジェクト」による伐採・更新を推進。安全な特用林産物の供給に向け、栽培管理・検査体制の整備の支援を実施
(1)森林の放射性物質対策
➢ 森林内の放射性物質の分布状況の推移等について継続的に調査・研究を実施。得られた知見に基づき、情報提供・普及啓発活動を実施
➢ 福島県では帰還困難区域やその周辺の一部を除き、おおむね素材生産が可能。2015年度には生産量は震災前の水準まで回復
➢ 間伐等の森林整備と放射性物質対策の一体的な実施や、住居周辺の里山の再生に向けた事業を実施
➢ 林内作業者の放射線安全・安心対策の取組として、作業時の留意事項等をまとめた林内作業者向けのガイドブック等を作成
➢ 木材製品や作業環境等に係る放射性物質の測定・分析、木材製品等の安全証明体制の構築等に対して支援
➢ 放射性物質の影響により製材工場等に一時滞留した樹皮(バーク)は、廃棄物処理施設での処理等の支援により減少
➢ 放射性物質の影響等により、しいたけ等の原木となる広葉樹の伐採・更新が進んでいないことから、2021年度に「里山・広葉樹林再生プロジェクト」を立ち上げ、原木林の計画的な再生に向けた取組を推進。市町村が策定した再生プランに基づき、これまで461haで伐採・更新を実施


(2)安全な特用林産物の供給
➢ 2025年3月31日時点で、14県196市町村において特用林産物22品目に出荷制限
➢ 菌床しいたけの生産はおおむね震災前の水準を上回る一方、原木しいたけの生産は現在も低位
➢ 2013年に「放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドライン」を策定。これにより一部地域でロット単位での原木きのこの出荷が認められ、生産が再開
➢ 安全な特用林産物の生産に必要な放射性物質測定機器、非破壊検査機の整備等を支援
(3)損害の賠償
➢ 避難指示等に伴い事業に支障が生じたことによる減収、原木しいたけの栽培管理に必要な追加的経費等について、東京電力が賠償。財物賠償請求については、2015年3月からは避難指示区域外の福島県内の立木についても受付
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